【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における連結売上高は、メディカルシステム、電子材料、ビジネスイノベーション、イメージング等を中心に売上を伸ばし、2,859,041百万円(前年度比13.2%増)となりました。営業利益は、273,079百万円(前年度比18.9%増)となりました。税金等調整前当期純利益は282,224百万円(前年度比8.4%増)、当社株主帰属当期純利益は219,422百万円(前年度比3.9%増)となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
(事業セグメント別の連結売上高)
セグメント
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減額
(百万円)
増減率
(%)
ヘルスケア
801,743
917,945
116,202
14.5
マテリアルズ
630,718
692,723
62,005
9.8
ビジネスイノベーション
759,949
838,080
78,131
10.3
イメージング
333,363
410,293
76,930
23.1
連結合計
2,525,773
2,859,041
333,268
13.2
ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の801,743百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより116,202百万円増加し、917,945百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の630,718百万円に対し、電子材料事業、グラフィックコミュニケーション事業等で売上を伸ばしたことにより62,005百万円増加し、692,723百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の759,949百万円に対し、オフィスソリューション事業、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより78,131百万円増加し、838,080百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の333,363百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより76,930百万円増加し、410,293百万円となりました。
(事業セグメント別の営業利益)
セグメント
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減額
(百万円)
増減率
(%)
ヘルスケア
100,536
100,507
△29
△0.0
マテリアルズ
68,380
67,729
△651
△1.0
ビジネスイノベーション
57,920
69,491
11,571
20.0
イメージング
36,977
72,876
35,899
97.1
全社費用及び
セグメント間取引消去
△34,111
△37,524
△3,413
-
連結合計
229,702
273,079
43,377
18.9
ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の100,536百万円に対し、部材・エネルギー価格高騰等の影響により29百万円減少し、100,507百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の68,380百万円に対し、部材・エネルギー価格高騰等の影響により651百万円減少し、67,729百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の57,920百万円に対し、オフィスソリューション事業、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより11,571百万円増加し、69,491百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の36,977百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより35,899百万円増加し、72,876百万円となりました。
当連結会計年度末では、総資産は建設仮勘定の増加等により179,031百万円増加し、4,134,311百万円(前年度末比4.5%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の減少等により83,889百万円減少し、1,346,451百万円(前年度末比5.9%減)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益の計上等により262,920百万円増加し、2,787,860百万円(前年度末比10.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より217,720百万円減少し、当連結会計年度末において268,608百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により得られた資金は210,452百万円となり、前連結会計年度と比較して113,482百万円減少(△35.0%)しておりますが、これは未払法人税等及びその他負債が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に使用した資金は323,225百万円となり、前連結会計年度と比較して169,683百万円増加(110.5%)しておりますが、これは有形固定資産の購入額の増加等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に使用した資金は123,695百万円となり、前連結会計年度と比較して18,511百万円増加(17.6%)しておりますが、これは長期債務の返済額の増加等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。
販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(連結キャッシュ・フロー指標)
前連結会計年度
当連結会計年度
株主資本比率(%)
63.3
66.8
時価ベースの株主資本比率(%)
76.0
65.0
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
1.4
1.8
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
139.9
42.0
(注)株主資本比率
:株主資本/総資産
時価ベースの株主資本比率
:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産
*自己株式を除く
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ
:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息)
ⅱ)財務政策
当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。
運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。
(株主還元方針)
配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%以上を目標としております。
これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。
なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は106,093百万円、長期の社債及び借入金の残高は270,060百万円であります。
② 経営成績
ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益
当連結会計年度の売上高は、前年度の2,525,773百万円に対し、333,268百万円増加し、2,859,041百万円(前年度比13.2%増)となりました。国内売上高は1,026,295百万円(前年度比3.5%増)、海外売上高は1,832,746百万円(前年度比19.5%増)となりました。実績為替レートは136円/米ドル(前年度比23円安)、141円/ユーロ(前年度比10円安)となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度の652,995百万円に対し、57,707百万円増加し、710,702百万円(前年度比8.8%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は24.8%となりました。
研究開発費は、前年度の150,527百万円に対し、3,620百万円増加し、154,147百万円(前年度比2.4%増)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は5.4%となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
「ヘルスケア部門」
本部門の連結売上高は、917,945百万円(前年度比14.5%増)となりました。営業利益は、100,507百万円(前年度比0.0%減)となりました。
メディカルシステム事業では、内視鏡、医療IT、超音波診断等の分野を中心に販売が好調に推移したことや為替影響等により、売上が増加しました。X線画像診断分野では、東南アジア、中南米、中東・アフリカを中心にデジタルマンモグラフィシステム「AMULET Innovality」の販売が伸長したことに加え、X線撮影装置「FDR Smart X」、回診用X線撮影装置「FDR Go Plus」の販売が欧州を中心に好調に推移し、売上が増加しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売に加え、病理分野への参入も寄与し、米国、欧州、日本の主要市場を中心に伸長し、売上が大幅に増加しました。超音波診断分野では、POC(Point of Care)向け超音波診断装置 「Sonosite PX」や据置型超音波診断装置の新製品「ARIETTA 850DI」「ARIETTA 650DI」が寄与し、米国を中心に売上が増加しました。内視鏡分野では、粘膜の僅かな色の違いを強調し、内視鏡観察をサポートするLCI(Linked Color Imaging)をはじめとする画像強調機能を搭載した「7000システム」等の販売が欧州を中心に伸長し、売上が増加しました。体外診断(IVD)分野では、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドや、富士フイルム和光純薬㈱の生化学試薬及び免疫関連の検査機器の販売が好調に推移しました。加えて、国内でのCOVID-19の流行拡大により、COVID-19関連の検査機器・各種試薬の販売が伸長し、売上が増加しました。CT・MRI分野では、半導体等部品不足の影響から回復傾向にあったことや、国内ではデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Open / CUREVISTA Apex」や全身用X線CT診断装置「Supria Optica」、北米では超電導オープンMRI「OASIS Velocity」等の新製品の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2023年3月には、富士フイルムヘルスケア㈱が、AI技術の活用により検査ワークフローの効率化と検査時間の大幅な短縮を実現したワイドボア1.5テスラ超電導MRIシステム「ECHELON Synergy」を発売しました。当社は、効率的な検査ワークフローや読影しやすい撮像の提供等、医療従事者が注力できる検査環境を実現し、検査の効率化と医療の質の向上を図ることで、人々の健康維持増進に貢献していきます。
バイオCDMO事業では、バイオ医薬品の製造受託がデンマーク拠点で堅調に推移したことや為替影響等により、売上が増加しました。2022年4月には、米国バイオベンチャー Atara Biotherapeutics, Inc.の細胞治療薬製造拠点の買収が完了しました。今後、遺伝子改変細胞治療薬をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスを本格的に展開し、バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大を図っていきます。2022年6月には、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズに対応するデンマーク拠点への大型設備増強、及び培養から精製まで原薬の一貫生産が可能な商業用連続生産システムによるGMP製造設備の米国テキサス拠点への導入を、総額2,000億円を投じて行うことを発表しました。当社は、幅広いバイオ医薬品を対象に生産プロセスの開発受託、小規模生産から大規模生産、原薬から製剤・包装までの製造受託ニーズに応えていきます。また、バッチ生産方式のみならず、連続生産方式による新たな製造手法の商用化をいち早く実現し、製薬企業等からの受託サービスをさらに拡充していきます。
ライフサイエンス事業では、COVID-19用ワクチン・治療薬向け培地の需要が一巡した一方で、試薬と細胞の売上が伸長したことや、為替影響等により、事業全体の売上は増加しました。2022年11月には、米国ノースカロライナ州に培地の生産拠点を新設することを発表しました。抗体医薬品の需要増や、細胞治療・遺伝子治療といった先端医療の発展に伴い、培地のグローバル市場は成長が続いています。当社は米国・欧州・日本のグローバル生産体制で、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。
医薬品事業では、2022年3月に富士フイルム富山化学㈱の放射性医薬品事業をペプチドリーム㈱へ譲渡したこと等により、売上が減少しました。2022年10月には、平時はバイオ医薬品を製造し、パンデミック時はワクチン製造に切り替えられるデュアルユース対応の設備を富士フイルム富山化学㈱が導入することを発表しました。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬会社に提供し、パンデミック時には、受託サービスを通じて製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートしていきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、ダイエット需要が堅調であった前年度に対してサプリメントの販売が減少したこと等により、売上が減少しました。2023年3月には、当社独自のリポソーム技術を化粧品分野に応用した高機能美容液シリーズ「ASTALIFT THE SERUM (アスタリフト ザ セラム)」から、紫外線や空気の乾燥等による肌への刺激ダメージを防ぎ、シミの根本原因であるメラニンの生成を抑える薬用シミ予防美容液「ASTALIFT THE SERUM BRIGHTENING(アスタリフト ザ セラム ブライトニング)」(医薬部外品)の販売を開始しました。今後も顧客のニーズを捉えた独自性の高い製品を提供し、人々の美容と健康に貢献していきます。
「マテリアルズ部門」
本部門の連結売上高は、692,723百万円(前年度比9.8%増)となりました。営業利益は、67,729百万円(前年度比1.0%減)となりました。
電子材料事業では、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、ポリイミド等の販売が伸長し、売上が大幅に増加しました。5Gや自動運転の発展に伴い需要が伸びていく先端半導体向けに、幅広い製品を安定的に供給していくことで成長を加速させていきます。2022年9月には当社国内初のCMPスラリー生産設備を熊本に建設すること、12月にはイメージセンサー用カラーフィルター材料の工場を韓国に新設することを発表しました。今後もグローバルな生産体制の下、高い品質基準の材料を安定的に生産・提供するとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させ、さらなるビジネス拡大を図っていきます。
ディスプレイ材料事業では、前年度にCOVID-19の流行下でモニター、タブレット及びTV需要が増加したことの反動や、サプライチェーン全体での生産調整の影響を受け、売上が減少しました。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」が主用途である業務用PCの需要低迷により減収となったものの、非破壊検査用機器・材料で、中国・インドを中心にオイルガス業界向けの販売が好調に推移したことや、為替影響等により、売上は前年度並みを維持しました。
ファインケミカル事業では、重合材料等の化成品の販売が伸長したことにより、売上が増加しました。
記録メディア事業では、世界的な景気後退リスクが顕在化する中、大手IT企業によるデータセンター建設への投資が抑制されたことで、データアーカイブ用のテープ需要が停滞したものの、為替影響等により売上が増加しました。
グラフィックコミュニケーション事業では、刷版材料分野において、各地域で販売価格の見直しを実施したこと等が寄与したことに加え、デジタル印刷分野において、プロダクションプリンターの欧米向け出荷が市況回復に伴い伸長したこと等により、売上が増加しました。
インクジェット事業では、産業用インクジェットヘッドにおいて、ラベル市場向けインクジェットヘッドの販売が伸長したことに加え、インクにおいても、商業印刷市場向けの顔料分散液を中心に堅調に推移し、事業全体で売上が増加しました。
「ビジネスイノベーション部門」
本部門の連結売上高は、838,080百万円(前年度比10.3%増)となりました。営業利益は、69,491百万円(前年度比20.0%増)となりました。
オフィスソリューション事業では、複合機・プリンター及び消耗品の国内販売と欧米向け輸出の増加、東南アジアでの販売増加、及び為替影響等により、売上が増加しました。2023年1月には、様々なクラウドサービスとの連携や、コンパクトなサイズで設置場所の自由度を向上させたデジタルカラー複合機「Apeos C4030 / Apeos C3530」とデジタルモノクロ複合機「Apeos 5330」の3機種、及び当社が販売するA4デジタルカラー・モノクロの複合機・プリンターラインアップで最小・最軽量モデルとなる「ApeosPort / ApeosPort Print」6機種を発表しました。今後も複合機・プリンターのマーケティングを一層強化し、お客様の要求に迅速に対応していきます。また、海外市場に対しては、地域毎のニーズに対応した商品戦略を構築し、競争優位性を確保するとともに、OEM供給を含むビジネスの拡大を積極的に進めていきます。
ビジネスソリューション事業では、ソリューション・サービス売上が国内で増加したことや海外でのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業の伸長、及び為替影響等により、売上が増加しました。2022年5月には、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援し、中堅・中小企業のDXを加速する新ソリューション「Bridge DX Library」の提供を開始し、2023年3月には、合計146種類のソリューションにラインアップを拡大しました。また、2023年3月には、基幹システムの販売・導入支援事業のさらなる成長加速に向けて、豪州ITサービス企業MicroChannel Servicesを買収しました。今後当社は、MicroChannel Servicesの豊富な経験を有するIT人材と高度な技術力を生かし、当社の既存事業とも連携する等、お客様への価値提供を拡大するとともに、ビジネスソリューション事業の成長を加速していきます。
「イメージング部門」
本部門の連結売上高は、410,293百万円(前年度比23.1%増)となりました。営業利益は、72,876百万円(前年度比97.1%増)となりました。
コンシューマーイメージング分野では、インスタントフォトシステム、カラーペーパー、ドライプリント機器及び材料の販売が好調に推移し、売上が増加しました。インスタントフォトシステムは、デバイスとフィルムともに販売が好調に推移し、前年度を上回る売上となりました。2023年3月には、INSTAX“チェキ”の最新エントリーモデル「INSTAX mini 12」の発売、及びチェキプリントをデジタル化してスマホで楽しむことができるスマートフォン用アプリ「INSTAX UP!」の提供開始を発表しました。INSTAX“チェキ”は今後もアナログとデジタルの技術を掛け合わせ、世界中の人々に「新たな価値」を提供していきます。
プロフェッショナルイメージング分野では、デジタルカメラ「Xシリーズ」にて、第5世代となる最新デバイスを搭載した新製品「X-H2S」「X-H2」「X-T5」の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2023年3月には、4Kを超える光学性能を有し、2つの大型センサーに対応するデュアルフォーマット方式を採用した箱型タイプの放送用ズームレンズ「FUJINON HZK25-1000mm」の販売を開始しました。近年、放送業界で利用が進む大型センサー搭載のシネマカメラでの撮影に対応し、浅い被写界深度によるボケ味を生かしたシネマライクな映像表現を、スポーツ中継やライブ・コンサート中継等で実現します。今後も、当社は高性能なカメラ、レンズ、アクセサリー等を開発・提供し、多様化するコンテンツ制作現場のニーズに応えていきます。
ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益
営業外収益及び費用は、前年度30,744百万円の営業外収益に対し21,599百万円減少し、9,145百万円の営業外収益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年度の260,446百万円に対し21,778百万円増加し、282,224百万円となりました。
ⅲ)法人税等
法人税等は、前年度の57,129百万円に対し8,077百万円増加し、65,206百万円となりました。
ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益
持分法による投資損益は、前年度13,128百万円の利益に対し8,472百万円減少し、4,656百万円の利益となりました。
非支配持分帰属損益は、前年度の5,265百万円に対し3,013百万円減少し、2,252百万円となりました。
ⅴ)当社株主帰属当期純利益
当社株主帰属当期純利益は、前年度の211,180百万円に対し8,242百万円増加し、219,422百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の527.33円に対し、547.21円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の526.11円に対し、546.41円となりました。
③ 次期の見通し
(単位:億円)
2023年度
(次期の見通し)
2022年度
(実績)
増減率・増減額
売上高
29,500
28,590
3.2%
営業利益
2,900
2,731
6.2%
税金等調整前当期純利益
2,950
2,822
4.5%
当社株主帰属当期純利益
2,250
2,194
2.5%
ROE(%)
8.0
8.3
0.3ポイント減
ROIC(%)
5.9
6.1
0.2ポイント減
為替レート(円/米ドル)
135円
136円
△1円
為替レート(円/ユーロ)
145円
141円
4円
2023年度業績は、連結売上高は2兆9,500億円(前年度比3.2%増)、営業利益は2,900億円(前年度比6.2%増)、税金等調整前当期純利益は2,950億円(前年度比4.5%増)、当社株主帰属当期純利益は2,250億円(前年度比2.5%増)を予想しております。
通期での対米ドル円為替レートを135円、対ユーロ円為替レートを145円で想定しております。
④ 重要な会計上の見積り
当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。
COVID-19の影響については、今後の当社への影響は限定的であるとの仮定に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、上記仮定に変化が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ)企業結合
企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。
なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「22 事業売却」に記載しております。
ⅱ)営業権の減損
営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。
見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。
なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。
ⅲ)長期性資産の減損
営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。
これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。
長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。
ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用
当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。
数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。
なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。
ⅴ)貸倒引当金
営業債権、リース債権及びその他の債権に対する貸倒引当金は、過去の貸倒実績、延滞状況及び問題が生じている取引先の財政状態に基づき決定しております。裁判所による決定等によって、回収不能であることが明らかになった場合は、その時点で帳簿価額を直接減額しております。
貸倒引当金は、過去の実績や評価時点で利用可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で見積りを行っていますが、相手先の財政状態が悪化した場合等見積りの根拠となる仮定又は条件等が変化した場合には、貸倒引当金を積み増すことになる可能性があります。
なお、貸倒引当金の残高については、連結財務諸表注記「20 金融債権の状況」に記載しております。
ⅵ)繰延税金資産
資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。
回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。
なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。
ⅶ)棚卸資産
棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。
評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。