【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況《当社グループを取り巻く経営環境》
現在、我が国は、ウィズコロナの新たな段階への移行がすすみ、経済活動の正常化や供給制約の緩和により、景気は緩やかに持ち直しつつあります。エネルギーの分野では、2015年のパリ協定(COP21)を契機に、地球温暖化という課題に向けたカーボンニュートラルの動きが急速に拡がりました。そして、コロナ禍からのリバウンド、ロシアによるウクライナ侵攻といった要因によりグローバル規模でサプライチェーンの混乱が深まり、エネルギー原料価格は記録的なレベルでの高騰が続きました。インフレへの対応で世界的な金融引き締めが続く中、我が国でも長年継続されてきた金融緩和政策が正常化へと歩みを進めています。国際的に米中経済対立が激化して国際経済秩序が混乱する中、世界的に広がる物価の上昇、エネルギー危機など、変化する事業環境にスピードをもって対応することが、失われた30年から日本が復活する絶好の機会だと考えております。
《エネルギーソリューション》 これからの地域社会に最も重要になるのは、脱炭素への移行期間を支える最重要エネルギーであるガスと、災害時でもエネルギーを自立的に供給できるレジリエントな分散型エネルギーシステムの構築です。この中長期的な社会課題に対して、当社は従来の事業モデルを刷新し、「エネルギーソリューション」へと事業を進化させる新たな挑戦に着手しました。 当社が目指すエネルギーソリューションは、太陽光発電設備、蓄電池としての電気自動車、大型蓄電池、ハイブリッド給湯器といった分散型エネルギーリソース(DER)を活用してお客様宅をスマートホーム化し、これを配電ネットワークで繋ぎ、地域コミュニティに広くエネルギーマネジメントを提供するニチガス版スマートシティ構想を実現するものです。スマートシティにおいて、従来の電気とガス供給サービスにとどまらず、機器販売・メンテナンスサービスや、蓄電池を活用したエネルギーマネジメントサービスの提供、市場価格に合わせて蓄電池を充放電するアービトラージによる収益獲得等も計画しております。分散型エネルギーのハードウェアの結合だけでなく、データを連携することで、新しい価値を提供し、新市場を開拓してまいります。
エネルギーソリューションをお客様にお届けする準備段階として、電気とガスをセットにしながら顧客基盤を拡大、2022年12月末現在、電気とガスのセット率は顧客基盤の約2割の規模(31万件)に達しています。昨年秋のガス展では、当社におけるソリューション元年の催しとして、ハイブリッド給湯器や蓄電池、V2Hといった分散型エネルギー源を中心に、お客様に積極的にご提案いたしました。特にハイブリッド給湯器は、前年比3-4倍と販売を急増させ、太陽光発電や蓄電池のセットについても多数ご成約頂くなど、お客様の環境意識の高まりをベースとしたソリューションビジネスの大きな可能性を確信しました。蓄電池の普及に向けては、2022年5月、最先端のテクノロジーを基盤に、高性能な蓄電池の開発・製造・販売を展開する株式会社パワーエックスと資本業務提携しました。同社は蓄電池を制御する高度な技術を有しており、来年度は営業拠点へのEV充電用蓄電池の導入、将来的には当社お客さまへの蓄電池のご提供、スマートシティでのエネルギーマネジメントシステムなどの取り組みを共に進めることを計画しています。
《企業価値、サステナビリティ方針》
当社は、資本政策を株主資本のパフォーマンスを最大化するための戦略と認識し、投下資本利益率(ROIC)を強く意識して、バランスシートの内容を効率性の低い資産から高い資産に組み替えてきました。今後も、投資対象の収益性を更に高めながら、不要な株主資本を持たない方針を徹底することで、2025年3月期に目標として掲げているROE20%を達成してまいります。複雑化する社会課題に対してエネルギーソリューションを提供し、社会に必要とされる会社であることは、中長期的な企業価値創出の前提です。当社は、企業価値向上という枠組みの中で、他社とのパートナーシップを通じ、より広範囲に、多様な形で、持続可能な社会の実現にむけて取り組む方針です。「エネルギーソリューション」は、当社のサステナビリティトランスフォーメーションの中核です。お客様にエネルギーをお届けする最後の接点を担う当社は、70年にわたりお客様と強固な信頼関係を築いてまいりました。今後ともこれを礎に、多様化する地域社会の課題をデジタルの力で解決し、常に変わり続け、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
《連結業績》当第3四半期連結累計期間の業績は以下の通りです。 (単位:百万円)
22年3月期第3四半期
23年3月期第3四半期
前期差
前期比
売上高
107,134
140,422
33,287
31.1%
売上総利益
46,412
46,811
399
0.9%
営業利益
6,291
6,043
△247
△3.9%
経常利益
6,354
6,132
△222
△3.5%
親会社株主に帰属する四半期純利益
5,161
4,195
△966
△18.7%
当第3四半期累計期間は、LPガス事業で原料価格の上昇分を販売価格へ転嫁することなどでLPガス事業の売上総利益は伸長いたしましたが、都市ガス事業で原料の上昇基調を要因としたスライドタイムラグによる売上総利益のマイナス影響が大きく、営業利益以下の段階利益において減益の決算となりました。
《セグメント別の状況》◇ LPガス事業 (附帯事業としてLP機器・工事の他、プラットフォーム事業等を含む) LPガス事業による売上総利益が288億67百万円(前年同期比8億45百万円増)、附帯事業による同利益が26億93百万円(同4億91百万円増)となりました。 LPガス事業による売上総利益の増加は、原料高騰に対応して実施した価格改定の効果によるものです。附帯事業による同利益の増加は、前年から続いたガス機器の生産の遅れが概ね正常化し、ソリューション事業に繋がるハイブリッド給湯器も含めた機器販売が増加したことによるものです。
営業面では、電気セットの対象となりやすいファミリー層に重点をおきながら顧客基盤の拡大をすすめております。原料高を背景に事業売却を検討するLPガス会社も増加しており、商圏買収の協議を実行に繋げ、お客様数を前年同期末から2万6千件積み重ね、96万8千件としております。
22年3月期第3四半期
23年3月期第3四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
LPガス
28,022
28,867
845
3.0%
機器,工事,プラットフォーム等
2,201
2,693
491
22.3%
ガス販売量(千トン)※
家庭用
125.9
121.7
△4.2
△3.3%
業務用
84.3
86.4
2.1
2.4%
お客さま件数(千件)
941
968
26
2.9%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 電気事業 電気事業セグメントの売上総利益は、21億4百万円(前年同期比1億72百万円増)となりました。 この利益の増加は、電気契約の増加によるもので、主には当社のガスを既にご利用のお客様にセットで契約をいただいております。電源価格の急激な高騰が続く中で、営業対象となる規制料金契約の価格が自由化後の商品より安くなるという逆転現象が生じましたが、電源を持たない新電力ユーザーへの価格競争力は上昇、獲得を伸ばし、お客様数は前年同期末より4万4千件増加の31万3千件、電気のセット率は前年同期末16.1%から当四半期末18.9%に上昇しました。このガスと電気のセット契約は、今後のエネルギーソリューションのステップとなる、ハイブリッド給湯器、太陽光、蓄電池の販売に繋がっていきます。
22年3月期第3四半期
23年3月期第3四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
電気
1,932
2,104
172
8.9%
電気販売量(GWh)※
家庭用
767
913
146
19.0%
お客さま件数(千件)
269
313
44
16.5%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 都市ガス事業 (附帯事業として都市ガス機器・工事等を含む) 都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が123億31百万円(前年同期比11億6百万減)、附帯事業による同利益が8億15百万円(同4百万円減)となりました。 この利益の減少は、都市ガス原料の上昇基調を要因としたスライドタイムラグがマイナスに影響したためです。原料価格の上昇幅は前年より大きく、マイナス影響は前年より拡大いたしました。
22年3月期第3四半期
23年3月期第3四半期
前期差
前期比
売上総利益
(百万円)
ガス
13,437
12,331
△1,106
△8.2%
機器,工事等
819
815
△4
△0.5%
ガス販売量(千トン)
家庭用
113.3
106.1
△7.2
△6.4%
業務用
146.0
150.8
4.8
3.3%
お客様件数(千件)
729
685
△44
△6.0%
(2) 財政状態の状況 当社は、株主資本の収益率、すなわちROEを高めることを目的として、まずは、資産の収益性を高めるべく、新たに投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。・当第3四半期末の資産の部は、1,543億円と前期末より5億円増(0.4%増)の同水準となりました。資産が同水準となりましたのは、原料価格の高騰で在庫が15億円、販売価格の上昇により営業債権が50億円膨らみましたが、一方で手元の現預金を66億減少させたことによるものです。・同期末の負債の部は、875億円と前期末から56億円増加(6.9%増)、純資産の部は、667億円と前期末から51億円(7.1%減)減少しております。負債の部が増加した主な要因は、原料価格の高騰に伴う仕入債務の73億円増加であり、純資産の部が減少した主な要因は、配当66億円、自己株式の取得24億円と株主還元を進めたためです。・デッドエクイティレシオは0.7倍、株主資本比率は43.3%と、財務基盤の安定性を確保しながらも、最適な資本構成を心掛け、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行なっております。 (単位:百万円)
22年3月末
22年12月末
増減
流動資産
49,467
51,107
1,640
内 現預金
17,020
10,327
△6,692
営業債権
21,474
26,536
5,061
固定資産
104,344
103,241
△1,103
有利子負債
45,941
47,346
1,405
自己資本(自己資本比率)
71,887
(46.7%)
66,787
(43.3%)
△5,100
総資産
153,811
154,349
537
(3) キャッシュフロー状況の分析 当第3四半期末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ67億71百万円減少し、101億41百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュフローは、84億97百万円の収入(前年同期比36億11百万円減少)となりました。減少した要因は、売上債権の増加や消費税等の支払の増加によるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュフローは、60億44百万円の支出(前年同期比8億81百万円減少)となりました。減少の要因は、「夢の絆・川崎」等の大規模投資の支払が一巡したことによるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュフローは、92億31百万円の支出(前年同期比51億6百万円増加)となりました。支出の増加要因は、借入の減少及び配当金の支払の増加によるものです。
(単位:百万円)
22年3月期
第3四半期
23年3月期
第3四半期
前期差
営業キャッシュフロー
12,108
8,497
△3,611
投資キャッシュフロー
△6,926
△6,044
881
財務キャッシュフロー
△4,124
△9,231
△5,106
現金及び現金同等物の増減
1,060
△6,771
△7,832
現金及び現金同等物の期末残高
13,471
10,141
△3,330
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。