【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
<当社グループを取り巻く経営環境>我が国では、5月に新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同等の感染症法上の分類に引き下げられて以降、経済社会活動正常化の動きが一段と強まっています。エネルギーの分野では、2015年のパリ協定(COP21)を契機としてカーボンニュートラルの流れが一気に加速し、今年11月に開催されるCOP28では、これまで以上に踏み込んだ対応が求められることが予想されます。脱炭素への対応が企業価値に大きな影響を与える時代が到来したといっても過言ではありません。加えて、昨年のロシアによるウクライナ侵攻以降、サプライチェーンに関連した地政学リスクが顕在化しています。エネルギー原料の供給不足や価格変動などへのレジリエンスを高めることも、解決すべき重要な社会課題であると認識しています。 <組織再編とエネルギー・ソリューション>当社は、来年1月、当社および当社の完全子会社の都市ガス3社を統合したうえで、「総合エネルギー小売会社」と「エネルギープラットフォーム会社」の2つに再編成します。近未来のエネルギー事業の在り方からバックキャストして組織体制を構築するものであり、この組織再編によって、従来のエネルギー小売という事業モデルから、お客様とエネルギー業界の双方にむけて新たな価値を提供するビジネスモデル(NICIGAS3.0)に、進化させます。NICIGAS3.0において、お客様に対しては、エネルギー利用の最適化サービス(エネルギー・ソリューション)を提供します。これは、エネルギーの安定調達や需給バランス、CO2削減という社会課題に対する新たな価値提供であり、具体的には太陽光や蓄電池、ハイブリッド給湯器、EV充電器などの分散型エネルギー源(DER)を利用してご家庭のエネルギーをコミュニティのなかで生産・循環・相互活用を実現します。エネルギー業界にむけては、当社のDXによる高効率なオペレーションを他社と共同利用する環境を構築し、事業インフラのシェアリングサービスを提供します(プラットフォーム事業)。業界全体のオペレーション最適化を通じて、CO2削減や労働力不足といった社会課題に対し、価値を提供します。複雑化する社会課題に対してエネルギー・ソリューションや未来型のインフラを拡充し、社会に必要とされる会社であることは、中長期的な企業価値創出の前提です。当社は企業価値向上の枠組みの中で課題を解決しながら、いち早く新たなテクノロジーを導入・普及させることにより、地域社会と共に持続的な成長を目指す方針です。 <資本政策>当社は、資本政策を株主資本のパフォーマンスを最大化するための戦略と認識し、投下資本利益率(ROIC)を強く意識して、バランスシートの内容を効率性の低い資産から高い資産へと組み替えてきました。投資対象の収益性を更に高めながら、不要な株主資本はお預かりしない方針は今後も変えることなく、組織再編を機会に成長を加速させることで2026年3月期にROE22%を達成します。また、組織再編で将来のグループの在り方が定まったことから、このタイミングで有利子負債の調達能力を検証し、現時点におけるグループ全体の最適な自己資本比率を定めました。これにより、2023年3月期の48%から2026年3月期に40%まで、同比率を引き下げて最適化することを計画しています。 <消費者庁からの行政処分通知に対する当社の対応について>当社は、消費者庁から、2023年5月25日から3ヶ月間の役務提供契約に係る訪問販売停止等の行政処分通知を受領しました。本件は2021年3月から2022年3月までにおいて当社に電気及びガスのお申込みを頂いた約22万件のうち、当社が業務委託した事業者による6件の勧誘行為について違反が指摘されたものです。ステークホルダーの皆様におかれましては、多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。従来より、当社はコンプライアンス遵守に最大限の注意を払ってまいりました。更に昨年の消費者庁の調査以降は速やかに営業品質向上のためのコンプライアンス体制、委託先の不適切行為防止策を再検証し、適切かつ必要と考えられる改善策・強化策について、2023年3月末までに全て導入し、実施しております。このたびの消費者庁からの本処分を真摯に受け止め、今後の営業活動におきましては、コンプライアンス遵守に一層の注意を払ってまいります。当社はこれまで、地域社会の中で、エネルギー自由化の中で、お客様からの信頼を積み上げて成長してまいりました。これからも、お客様からの信頼を大切にしながら企業価値を向上させ、ステークホルダーの皆様からご支持頂けるよう、全力を尽くしてまいります。
《 連結業績 》当第1四半期連結累計期間は以下の通り、増収増益の決算となりました。 (単位:百万円)
23年3月期第1四半期
24年3月期第1四半期
前期差
前期比
売上高
44,789
47,131
2,342
5.2%
売上総利益
16,842
17,344
501
3.0%
営業利益
3,804
4,033
228
6.0%
経常利益
3,838
4,105
267
7.0%
親会社株主に帰属する四半期純利益
2,658
2,874
215
8.1%
当第1四半期は、暖かな気候を要因としてガス・電気販売量ともにお客さまあたりの販売量は減少いたしましたが、ガス原料の価格が低下傾向に推移したことより粗利が良化、スライドタイムラグもプラス方向に影響し、売上総利益を伸長させました。営業利益以下におきましても、昇給等により人件費を増加させながらも営業先の絞り込み等により販管費を抑え、全ての段階で利益を伸長させております。
【セグメント別の状況】
◇ LPガス事業 (附帯事業としてLP機器・工事の他、プラットフォーム事業等を含む) LPガス事業セグメントは、LPガス事業による売上総利益が103億11百万円(前年同期比1億63百万円増)、附帯事業による売上総利益が8億48百万円(同1百万円増)となりました。 LPガス事業による売上総利益が増加したのは、23年2月以降原料価格が下げ局面となったことにより、粗利が良化したことによるものです。営業につきましても、電気セットを前提としたファミリー層に営業先を絞り込みながら顧客基盤拡大をすすめております。日本瓦斯においては、行政処分により訪問営業を5月25日から3か月停止しておりますが、お客様のお問い合わせに丁寧にお応えするなど、信頼の回復と関係強化に努めております。本処分が発表されて以降も、解約数には大きな動きはなく、グループ全体のお客様数は前年同期末から2万3千件積み重ね、97万7千件としております。
23年3月期第1四半期
24年3月期第1四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
LPガス
10,147
10,311
163
1.6%
機器,工事,プラットフォーム他
846
848
1
0.2%
ガス販売量(千トン)※
家庭用
44.4
42.0
△2.3
△5.4%
業務用
29.3
28.3
△0.9
△3.4%
お客さま件数(千件)
954
977
23
2.4%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 電気事業 電気事業セグメントの売上総利益は、7億46百万円(前年同期比5百万円減)となりました。 電気事業による売上総利益が、販売量が増加した一方で、微減した理由は、託送費用ならびに電源費用といった原価が上昇したことによるものです。当社は、当該原価の上昇に伴い、23年7月に小売料金の改定を実施しております。適切な粗利を確保しながら、既存顧客への電話営業やネット申込などを強化し、高使用量のファミリー層をターゲットに電気ガスセットの顧客基盤を拡大してゆく予定です。 また、昨年の夏以降、燃料費調整制度の上限設定により、規制料金が最も割安な状況が続いておりましたが、23年6月から東京電力の同料金が値上げとなり、当社の7月料金改定後においてもこの状況は解消されております。規制料金に対し当社電気の価格競争力が戻り、規制料金ユーザーからの切替(=新規獲得)が足元、少しづつ回復してきております。電気のセット率は前年同期末17.5%から当四半期末20.0%に上昇、お客さま数は前年同期末より3万5千件増加の32万7千件となりました。
23年3月期第1四半期
24年3月期第1四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
電気
751
746
△5
△0.7%
電気販売量(GWh)※
家庭用
252
258
6
2.3%
お客さま件数(千件)
292
327
35
12.3%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 都市ガス事業 (附帯事業として都市ガス機器・工事等を含む) 都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が52億23百万円(前年同期比3億80百万円増)、附帯事業による売上総利益が2億14百万円(同39百万円減)となりました。 都市ガス事業による売上総利益の増加は、原料価格が前下期より下げ局面に転じたことによるスライドタイムラグのプラス影響によるものであります。
23年3月期第1四半期
24年3月期第1四半期
前期差
前期比
売上総利益
(百万円)
ガス
4,842
5,223
380
7.9%
機器,工事等
254
214
△39
△15.7%
ガス販売量(千トン)
家庭用
45.9
38.9
△6.9
△15.1%
業務用
48.6
50.1
1.5
3.1%
お客様件数(千件)
711
657
△54
△7.6%
(2)財政状態の状況
当社は、株主資本の収益率、すなわちROEを高めることを目的として、まずは、資産の収益性を高めるべく、新たに投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。第1四半期末の資産の部は、1,410億円と前期末より123億円減少(8.1%減)しております。資産の主要な減少は、季節的要因により営業債権が78億円、在庫が17億円減少したことによるものです。 また、同期末の負債の部は、684億円と前期末から114億円減少(14.3%減)、純資産の部は、725億円と前期末から9億円(1.3%減)減少しております。負債の部が減少した主な要因は、季節的要因により仕入債務が73億円、未払法人税等が25億円減少したこと、及び有利子負債を389億円と前期末から16億円減らしたことによるものです。純資産の部が減少した主な要因は配当37億円を支払い、株主還元を進めたためです。 同期末のデッドエクイティレシオは0.5倍、自己資本比率は51.5%となりました。財務基盤の安定性を確保しながらも、最適な資本構成(2026年3月期末には40%を計画)に向け、第2四半期以降には、適切なタイミングで自己株式取得をすすめ、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行なってまいります。
(単位:百万円)
23年3月末
23年6月末
増減
流動資産
51,001
38,967
△12,034
内 現預金
13,049
12,181
△868
営業債権
25,435
17,561
△7,874
在庫
6,522
4,764
△1,758
固定資産
102,427
102,109
△317
有利子負債
40,582
38,921
△1,660
自己資本(自己資本比率)
73,524(47.9%)
72,587(51.5%)
△937
総資産
153,429
141,076
△12,352
(3)キャッシュフローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ9億12百万円減少し、119億51百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュフローは、68億12百万円の収入(前年同期比32億72百万円増加)となりました。増加した要因は、LPガス原料価格の下げ局面において原料の調達支払が減少したこと、消費税の清算支払が減少したことによるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュフローは、22億63百万円の支出(前年同期比70百万円減少)となり、前年と同程度となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュフローは、54億65百万円の支出(前年同期比18億51百万円減少)となりました。支出の減少要因は、当第一四半期は、自己株式の取得を行わなかったことによるものです。
(単位:百万円)
23年3月期第1四半期
24年3月期第1四半期
前期差
営業キャッシュフロー
3,539
6,812
3,272
投資キャッシュフロー
△2,334
△2,263
70
財務キャッシュフロー
△7,316
△5,465
1,851
現金及び現金同等物の増減
△6,103
△912
5,191
現金及び現金同等物の期末残高
10,809
11,951
1,141
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。