【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。(1)経営成績の状況
《 当社グループを取り巻く経営環境 》現在、我が国は、ウィズコロナの新たな段階への移行がすすみ、社会生活は徐々にコロナ前の水準に戻りつつあります。エネルギーの分野では、2015年のパリ協定(COP21)を契機に、地球温暖化という課題に向けたカーボンニュートラルの動きが急速に拡がっていく中で、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、といった要因によりグローバル規模でサプライチェーンの混乱が深まり、原料価格の高騰が継続しています。加えて、世界的な金融引締めが続く中、我が国では金融緩和と超低金利政策を継続しており、急激な円安の進行や物価の上昇などによる消費や所得が上がらない不況(スタグネーション)の中でコストプッシュ型のインフレーションが進行する、いわゆるスタグフレーションに差し掛かり、先行きが不透明かつ流動的な経営環境に直面しています。
《 エネルギーソリューション 》2022年5月、当社グループは「エネルギーソリューション」(“NICIGAS3.0”)へビジネスモデルの進化を加速させるため、新経営体制へ移行しました。これからの地域社会に最も重要になるのは、脱炭素への移行期間を支える最重要エネルギーであるガスと、災害時でもエネルギーを自立的に供給できるレジリエントな分散型エネルギーシステムの構築です。この中長期的な社会課題に対して、当社は従来の事業モデルを刷新し、「エネルギーソリューション」へと事業を進化させる新たな挑戦に着手しました。 当社が目指す「エネルギーソリューション」は、太陽光発電設備、蓄電池としての電気自動車、大型蓄電池、ハイブリッド給湯器といった分散型エネルギーリソース(DER)を活用してお客様宅をスマートホーム化し、これを配電ネットワークで繋ぎ、地域コミュニティに広くエネルギーマネジメントを提供する「ニチガス版スマートシティ」構想を実現するものです。スマートシティにおいては、従来の電気とガス供給サービスにとどまらず、設備の提供や、エネルギーの需給状況に応じたDERの最適制御サービスも提供する計画です。
スマートシティの実現に向けた取り組みは、着実に前進しています。当社は団地内でLPガスを気化して各家庭に供給するコミュニティガス(簡易ガス)の国内最大手であり、300か所以上で展開していますが、これらの簡易ガス団地が候補地となります。エネルギーソリューションをお客様にお届けする準備段階として、これまで電気とガスのセットを前提として顧客基盤を拡大し、2022年9月末現在、電気とガスのセット率は顧客基盤の約2割の規模(30万件)に達しています。また、地域内の電力需給調整に必要な「配電事業ライセンス」の取得を目指し、一般送配電事業者との協議も開始しています。蓄電池の普及に向けては、2022年5月、最先端のテクノロジーを基盤に、高性能な蓄電池の開発・製造・販売を展開する株式会社パワーエックスと資本業務提携しました。同社は蓄電池を制御する高度な技術を有しており、将来的には当社お客さまへの蓄電池のご提供、営業拠点への蓄電池導入、エネルギーマネジメントシステムなどの取り組みを共に進めることを計画しています。
《 企業価値、サステナビリティ方針 》当社は、資本政策とは、株主資本のパフォーマンスを最大化するための戦略と認識し、投下資本利益率(ROIC)を強く意識して、効率性の低い資産から高い資産に、バランスシートの内容を組み替えてきました。今後は、投資対象の収益性を更に高めながら、不要な株主資本を持たない方針を徹底することで、2025年3月期に目標として掲げているROE20%を達成してまいります。複雑化する社会課題に対してエネルギーソリューションを提供し、社会に必要とされる会社であることは、中長期的な企業価値創出の前提です。当社は、企業価値向上という枠組みの中で、他社とのパートナーシップを通じ、より広範囲に、多様な形で、持続可能な社会の実現にむけて取り組む方針です。「エネルギーソリューション」は、当社のサステナビリティトランスフォーメーションの中核です。お客様にエネルギーをお届けする最後の接点(ラストワンマイル)を担う当社は、70年にわたりお客様と強固な信頼関係を築いてまいりました。今後ともこれを礎に、多様化する地域社会の課題と向き合い、常に変わり続け、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
《 連結業績 》当第2四半期連結累計期間の業績は以下の通りです。 (単位:百万円)
22年3月期第2四半期
23年3月期第2四半期
前期差
前期比
売上高
65,410
85,115
19,705
30.1%
売上総利益
29,231
29,275
44
0.2%
営業利益
2,322
2,737
415
17.9%
経常利益
2,342
2,800
457
19.5%
親会社株主に帰属する四半期純利益
2,448
1,875
△572
△23.4%
当第2四半期累計期間は、高気温、原料価格の高騰と厳しい環境でありましたが、ガスの原料価格上昇を適切に販売価格に転嫁し、また、獲得顧客のターゲットを絞り込む戦略により経費を抑えたことにより売上高及び経常利益までの各段階利益において増収増益となりました。
《 セグメント別の状況 》◇ LPガス事業 (附帯事業としてLP機器・工事の他、プラットフォーム事業等を含む) LPガス事業セグメントは、LPガス事業による売上総利益が175億51百万円(前年同期比3億15百万円増)、附帯事業による売上総利益が16億98百万円(同30百万円増)となりました。 LPガス事業による売上総利益の増加は、原料高騰を踏まえて実施した価格改定による価格転嫁の効果が、7月より続いた暑い気候による家庭用のガス販売量の減少の影響を上回ったことによるものです。 営業につきましても、電気セットを前提としたファミリー層に営業先を絞り込みながら顧客基盤の拡大をすすめております。原料高を背景に事業売却を検討するLPガス会社も増加しており、商圏買収の協議を少しずつ実行に繋げ、お客様数を前年同期末から2万6千件積み重ね、96万1千件としております。
22年3月期第2四半期
23年3月期第2四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
LPガス
17,236
17,551
315
1.8%
機器,工事,プラットフォーム等
1,667
1,698
30
1.8%
ガス販売量(千トン)※
家庭用
73.9
70.7
△3.2
△4.3%
業務用
53.5
55.3
1.7
3.3%
お客さま件数(千件)
935
961
26
2.8%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 電気事業 電気事業セグメントの売上総利益は、12億38百万円(前年同期比63百万円増)となりました。 電気事業による売上総利益の増加は、既存のガス利用のお客様を中心に電気をセットで販売し、顧客を積み重ねていることによるものです。卸電力市場の価格高騰が続く中、新電力事業者の事業撤退や新規契約の受付停止も追い風となり、電気のセット率は前年同期末15.5%から当四半期末18.3%に上昇、お客様数は前年同期末より4万6千件増加の30万4千件となりました。エネルギーソリューションの提供に向け、ハイブリッド給湯器や分散型エネルギー源(蓄電池等)の提案をすすめ、ガス・電気セットの契約獲得に繋げております。
22年3月期第2四半期
23年3月期第2四半期
前期差
前期比
売上総利益(百万円)
電気
1,175
1,238
63
5.4%
電気販売量(GWh)※
家庭用
463
582
119
25.6%
お客さま件数(千件)
258
304
46
17.6%
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 都市ガス事業 (附帯事業として都市ガス機器・工事等を含む) 都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が82億94百万円(前年同期比3億62百万円減)、附帯事業による売上総利益が4億93百万円(同1百万円減)となりました。 都市ガス事業による売上総利益の減少は、都市ガス原料の上昇基調を要因としたスライドタイムラグのマイナス影響並びに暑い気候による家庭用のガス販売量の減少によるものであります。
22年3月期第2四半期
23年3月期第2四半期
前期差
前期比
売上総利益
(百万円)
ガス
8,657
8,294
△362
△4.2%
機器,工事等
494
493
△1
△0.3%
ガス販売量(千トン)
家庭用
71.4
68.2
△3.2
△4.5%
業務用
95.5
99.1
3.6
3.8%
お客様件数(千件)
729
698
△32
△4.3%
(2) 財政状態の状況 当社は、株主資本の収益率、すなわちROEを高めることを目的として、まずは、資産の収益性を高めるべく、投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。・当第2四半期末の資産の部は、1,419億円と前期末より118億円減少(7.7%減)しております。資産の主要な減少は、季節的要因により営業債権が39億円減少したこと、及び現預金を63億円減少させたことによるものです。・同期末の負債の部は、735億円と前期末から83億円減少(10.2%減)、純資産の部は、684億円と前期末から34億円減少(4.8%減)しております。負債の部が減少した主な要因は、季節的要因により仕入債務が13億円、未払法人税等が29億円減少したこと、及び有利子負債を435億円と前期末から23億円減らしたことによるものです。純資産の部が減少した主な要因は配当29億円、自己株式の取得23億円と株主還元を進めたためです。・デッドエクイティレシオは0.6倍、自己資本比率は48.2%と、財務基盤の安定性を確保しながらも、最適な資本構成を心掛け、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行っております。
(単位:百万円)
22年3月末
22年9月末
増減
流動資産
49,467
38,957
△10,509
内 現預金
17,020
10,680
△6,339
営業債権
21,474
17,536
△3,937
固定資産
104,344
103,021
△1,322
有利子負債
45,941
43,591
△2,349
自己資本(自己資本比率)
71,887
(46.7%)
68,405
(48.2%)
△3,481
総資産
153,811
141,979
△11,832
(3) キャッシュフロー状況の分析
当第2四半期末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ63億74百万円減少し、105億38百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュフローは、58億61百万円の収入(前年同期比24億15百万円減少)となりました。減少した要因は、法人税・消費税等の支払の増加によるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュフローは、40億76百万円の支出(前年同期比5億81百万円減少)となりました。減少の要因は、「夢の絆・川崎」等の大規模投資の支払が一巡したことによるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュフローは、81億71百万円の支出(前年同期比51億86百万円増加)となりました。支出の増加要因は、借入の減少及び、配当金の支払の増加によるものです。
(単位:百万円)
22年3月期
第2四半期
23年3月期
第2四半期
前期差
営業キャッシュフロー
8,276
5,861
△2,415
投資キャッシュフロー
△4,658
△4,076
581
財務キャッシュフロー
△2,984
△8,171
△5,186
現金及び現金同等物の増減
633
△6,374
△7,008
現金及び現金同等物の期末残高
13,045
10,538
△2,507
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題当第2四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。