【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績、財政状態及びキャッ
シュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、売上高は、前期に比べ35.4%(7,343億9千6百万円)増加し、2兆8,088億2千4百万円となりました。営業利益は、前期に比べ47.6%(3,218億8千万円)増加し、9,982億2百万円となり、経常利益は、前期に比べ46.9%(3,257億7千7百万円)増加し、1兆202億1千1百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ41.6%(2,081億2千1百万円)増加し、7,082億3千8百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の概要及びその分析等は、次のとおりです。
生活環境基盤材料事業
塩化ビニルに関しては、世界的な景気後退の様相が市況に表れましたが、2022年末に底打ちしました。か性ソーダ市況は塩化ビニルの市況軟化局面で底堅さを維持したものの、年明けから軟化が起こりました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ52.6%(4,509億1千万円)増加し、1兆3,080億9千9百万円となり、営業利益は、前期に比べ70.3%(2,235億5千2百万円)増加し、5,413億4千4百万円となりました。
電子材料事業
半導体市場は昨年秋以降調整局面に入り、状況は年度末時点でも同様でしたが、半導体材料は全体として年度前半の業績に支えられました。希土類磁石も、顧客の生産に対する半導体不足の影響やデータセンター投資の調整の影響が見られましたが、他市場向けの出荷で補いました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ23.5%(1,666億6千7百万円)増加し、8,756億4千6百万円となり、営業利益は、前期に比べ23.1%(566億2千2百万円)増加し、3,014億円となりました。
機能材料事業
一部の製品群で在庫調整や市況下落の影響を受けましたが、機能性の高い製品群で補い、収益性の維持を図りました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ24.7%(977億6千万円)増加し、4,933億8千6百万円となり、営業利益は、前期に比べ37.8%(358億3千4百万円)増加し、1,306億8百万円となりました。
加工・商事・技術サービス事業
半導体ウエハー関連容器は300mm用を中心に販売好調で、自動車用入力デバイスも販売が順調に伸びました。食品包装用塩ビラッピングフィルムや建設材料など塩ビ関連製品は、改定価格の浸透により販売が伸びました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ16.9%(190億5千9百万円)増加し、1,316億9千1百万円となり、営業利益は、前期に比べ26.1%(54億5千5百万円)増加し、263億6千5百万円となりました。
また、財政状態ですが、当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べて6,769億8千2百万円増加し、4兆7,303億9千4百万円となりました。主に、現金及び預金、棚卸資産、並びに有形固定資産が増加しました。
当期末負債合計額は、前期末に比べ799億8千1百万円増加し、7,041億8千5百万円となりました。
当期末純資産は、自己株式の取得2,067億8千8百万円(当連結会計年度に1,954億9千7百万円を消却)、剰余金の配当1,953億6千5百万円等により減少した一方、堅調な業績により親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高の7,082億3千8百万円となったこと、円安に伴い為替換算調整勘定が2,224億8千万円増加したこと等により、4兆262億9百万円となりました。
この結果、自己資本比率は82.1%から0.3ポイント減少し、81.8%となり、1株当たり純資産額(会計基準に基づき、2023年4月1日付の株式分割後の株式数により算出)は、前期に比べ316円92銭増加し、1,918円37銭となりました。
投下資本利益率(ROIC)は27.2%から6.4ポイント増加し、33.6%となり、自己資本利益率(ROE)は、16.3%から3.4ポイント増加し、19.7%となりました。分割前の株式を対象とする年間配当金は、前期に比べ100円増配し、1株当たり500円としました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に対して23.6%(2,384億1千9百万円)増加し、1兆2,473億4千4百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は7,880億1千3百万円(前期比2,344億8千5百万円増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益1兆202億1千1百万円、減価償却費2,136億3千2百万円などにより資金が増加した一方、棚卸資産の増加額2,109億5千9百万円、法人税等の支払額2,669億3千7百万円などで資金が減少したものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は1,864億8千8百万円(前期比672億3千5百万円減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,955億1千7百万円などにより資金が減少した一方、有価証券の償還による収入1,113億9千4百万円などにより資金が増加したものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は4,235億5千9百万円(前期比3,010億5千5百万円増加)となりました。その内容は、自己株式の取得による支出2,067億8千8百万円、配当金の支払額1,953億6千5百万円などです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
生活環境基盤材料事業
1,345,664
56.8
電子材料事業
904,941
24.8
機能材料事業
521,479
26.9
加工・商事・技術サービス事業
95,325
21.2
合計
2,867,411
38.3
(注)生産金額は期中販売価格により算出したものです。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は主として見込み生産を行っているため、受注実績を記載していません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
生活環境基盤材料事業
1,308,099
52.6
電子材料事業
875,646
23.5
機能材料事業
493,386
24.7
加工・商事・技術サービス事業
131,691
16.9
合計
2,808,824
35.4
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文
中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、年度前半と後半で経済情勢が大きく異なる様相を呈しました。インフレーションの沈静化を目指す金融政策が景気を下押しする一方で、3月には欧米で銀行不安の事態に発展しました。欧米での銀行不安が、貸出抑制姿勢を通じて実体経済に悪影響を及ぼしうることも指摘されています。地政学上の問題も引き続き世界経済を揺り動かしています。アジアを中心とする新興国の復調があるものの、産業や企業が受ける逆風はこれからしばらく強まることがあっても、弱まることはないと見込まれます。その中にあって当社は、顧客との意思疎通を密に保ち、顧客にとって価値ある製品の開発を急ぐとともに、揺るぎない品質の製品を安定供給し続けます。逆風を巧みに乗切り、業績の伸張に注力していきます。顧客と市場からの要望・需要に適時に応えられるよう、中長期の展望を持って、投資と開発を継続します。
セグメントごとの経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社の連結会計年度末の現・預金及び譲渡性預金を含む有価証券(流動資産)の合計額は1兆6,006億4千8百万円(期間が3カ月を超える分を含む)と流動性を十分に確保しています。また、「1.主要な経営指標等の推移(1)連結経営指標等」に記載のとおり、安定的に「営業活動によるキャッシュ・フロー」を獲得していることから、当面の間は運転資金や設備投資への対応も自己資金で賄えると考えています。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5.経理の状況 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。