【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績、財政状態及びキャッ
シュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、4-6月期で世界的な経済活動制限に起因する落ち込みを経験したのち、地域や業種によって差がありながらも需要の回復が見られ、10-12月期は主要な事業分野で需要と市況の復調が進みました。その後も引き続き、需要と市況が総じて改善しました。3月には、米国政府が1.9兆ドル(約200兆円)規模の経済対策法を成立させ、また米連邦準備制度理事会が完全雇用に向けて金融緩和を継続することを確認しました。その一方で、中国政府が5か年計画を更新して、経済成長のため柔軟に策を講ずるとしました。当社グループは、従業員の健康と安全を最優先に、高操業の維持と安定供給の確保、債権保全などの事業要件に注力し、顧客との意思疎通を保ち、顧客にとって価値ある製品の開発を推進し、揺るぎない品質の製品を安定的に供給しました。また、決定した投資案件は計画に沿って実行してまいりました。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は、前期に比べ3.0%(466億1千9百万円)減少し、1兆4,969億6百万円となりました。営業利益は、前期に比べ3.4%(138億2千8百万円)減少し、3,922億1千3百万円となり、経常利益は、前期に比べ3.1%(131億4千1百万円)減少し、4,051億1百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ6.5%(202億9千5百万円)減少し、2,937億3千2百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の概要及びその分析等は、次のとおりであります。
塩ビ・化成品事業
塩ビ・化成品は、米国のシンテック社において、フル操業を継続し、塩化ビニル、か性ソーダともに高水準の出荷を維持しました。同社は4-5月の経済活動制限による市況下落の影響を受けましたが、その後世界的に需給が引き締まり値上げを実施しました。欧州拠点及び国内拠点も販売数量の維持に努め、市況の改善を享受しました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ3.0%(145億5千9百万円)減少し、4,697億6千3百万円となり、営業利益は、前期に比べ5.3%(48億6千4百万円)増加し、970億5千1百万円となりました。
シリコーン事業
シリコーンは、汎用製品の価格下落に加え、化粧品向けや車載向けの需要鈍化の影響を受けました。秋口から顧客需要が復調し始めました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ8.2%(185億4千8百万円)減少し、2,083億2千4百万円となり、営業利益は、前期に比べ26.6%(163億7千8百万円)減少し、451億1千2百万円となりました。
機能性化学品事業
セルロース誘導体は、医薬用製品は底堅く推移しましたが、建材用製品が振るいませんでした。フェロモン製品やポバール製品は出荷が低調に推移しました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ1.9%(21億6千4百万円)減少し、1,126億3千2百万円となり、営業利益は、前期に比べ21.3%(58億9千1百万円)減少し、218億2千6百万円となりました。
半導体シリコン事業
半導体シリコンは、経済活動の再開に伴い、需要が増加しました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ3.5%(135億3千4百万円)減少し、3,740億9千7百万円となり、営業利益は、前期に比べ0.6%(8億2百万円)増加し、1,441億円となりました。
電子・機能材料事業
希土類磁石は、第1四半期当初経済活動制限により一時海外工場の稼働が影響を受けましたが、下期に入り、車載向けは強い回復を示し、ハードディスクドライブ向けも好調に推移しました。フォトレジスト製品は、ArFレジストやEUVレジストを中心に好調を持続しました。マスクブランクスも先端、汎用用途ともに堅調に推移しました。光ファイバー用プリフォームは市況悪化の影響を受け厳しい状況が続きました。大型パネル用フォトマスク基板は需要鈍化の影響を受けました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ4.3%(97億7千2百万円)増加し、2,348億8千3百万円となり、営業利益は、前期に比べ2.6%(17億5千8百万円)増加し、702億9千8百万円となりました。
加工・商事・技術サービス事業
信越ポリマー社の半導体ウエハー容器の出荷は堅調でしたが、自動車用入力デバイスが自動車市況悪化の影響を受けました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ7.2%(75億8千7百万円)減少し、972億4百万円となり、営業利益は、前期に比べ3.1%(4億6千5百万円)減少し、143億5千9百万円となりました。
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比
べて1,501億3千万円増加し、3兆3,806億1千5百万円となりました。主に、現金及び預金、有価証券、並びに有
形固定資産の増加によるものです。
当期末負債合計額は、前期末に比べ133億5千3百万円減少し、4,939億9千万円となりました。
当期末純資産は、剰余金の配当914億2千万円などにより減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益が
2,937億3千2百万円となった結果、2兆8,866億2千5百万円となりました。
この結果、自己資本比率は82.1%から1.1ポイント増加し、83.2%となり、1株当たり純資産額は、前期に比べ
391円79銭増加し、6,769円72銭となりました。
投下資本利益率(ROIC)は19.4%から2.2ポイント減少し、17.2%となり、自己資本利益率(ROE)は、
12.3%から1.6ポイント減少し、10.7%となりました。年間配当金につきましては、前期に比べ30円増配し、1株
当たり250円といたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に対して7.6%(564億7千1百万円)
増加し、8,015億9千6百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は4,011億7千6百万円(前期比112億8百万円減少)となりま
した。これは、税金等調整前当期純利益4,021億4千5百万円、減価償却費1,438億7百万円などにより資金が増
加した一方、法人税等の支払額1,014億2百万円などで資金が減少したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は2,507億1千9百万円(前期比1,438億2千8百万円減少)と
なりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,361億9千5百万円、有価証券の取得による支出875億円、定期預金の純増額123億3千4百万円などにより資金が減少した一方、有価証券の償還による収入823億5千4百
万円などで資金が増加したことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は911億2千3百万円(前期比29億3千2百万円減少)となりま した。これは、配当金の支払額914億2千万円、自己株式の取得による支出106億5千7百万円などによるものであります。
なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の重要な資本的支出の予定につきまして、当期末後1年間では当期実績に比べ約4%減少の総額2,200億円を見込んでおり、その資金は、自己資金で賄う予定であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
塩ビ・化成品事業
459,065
(-)5.4
シリコーン事業
202,281
(-)9.9
機能性化学品事業
109,683
(-)8.7
半導体シリコン事業
359,901
(-)7.1
電子・機能材料事業
238,143
4.2
加工・商事・技術サービス事業
62,044
(-)9.5
合計
1,431,119
(-)5.5
(注)1.生産金額は期中販売価格により算出したものであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は主として見込み生産を行っているため、受注実績を記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
塩ビ・化成品事業
469,763
(-)3.0
シリコーン事業
208,324
(-)8.2
機能性化学品事業
112,632
(-)1.9
半導体シリコン事業
374,097
(-)3.5
電子・機能材料事業
234,883
4.3
加工・商事・技術サービス事業
97,204
(-)7.2
合計
1,496,906
(-)3.0
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文
中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、4-6月期で世界的な経済活動制限に起因する落ち込みを経験したのち、地域や業種によって差がありながらも当社の事業分野では需要が総じて回復してきており、また主要国の打ち出したあるいは打ち出そうとする経済対策が、世界経済に功を奏すると期待されています。その一方で、インフレーションの上振れの兆候があり、供給網(サプライチェーン)が乱れる現象が表れました。感染の状況も、ワクチン接種が進むものの、感染の揺れ戻しが起きており、予断を許しません。局所的な地政学リスクに加え、米中間で顕在化しつつある対立に注意を払わねばなりません。気象の大きな振れも懸念材料です。こうしたことに対する耐性を備えつつ、事業を遂行して収益の向上を図ってまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の連結会計年度末の現・預金及び譲渡性預金を含む有価証券(流動資産)の合計額は1兆1,529億2千2百万円(期間が3カ月を超える分を含む)と流動性を十分に確保しております。また、「1.主要な経営指標等の推移(1)連結経営指標等」に記載のとおり、安定的に「営業活動によるキャッシュ・フロー」を獲得しておりますことから、当面の間は運転資金や設備投資への対応も自己資金で賄える水準にあります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5.経理の状況 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。