【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績、財政状態及びキャッ
シュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、全般的に成長は鈍化し続け、各所で調整が見られていた中で、今年に入りコロナ禍と言われる事態に直面しました。当該年度においては、コロナ禍が当社事業全般に及ぼす影響は限定的でした。このような状況のもと、当社グループは、継続的な業績伸長のため、予断をもってあたることなく、常に変化に迅速に対応してまいりました。また、顧客との関係を深耕し、かつ顧客層を拡張するとともに、顧客に密着した製品開発、品質の向上と技術における差別化を推し進めました。加えて、的確な納期対応と厳格なコスト管理を継続し、顧客と市場の需要に応えるための投資を適宜に行ってまいりました。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は、前期に比べ3.2%(505億1千1百万円)減少し、1兆5,435億2千5百万円となりました。営業利益は、前期に比べ0.6%(23億3千6百万円)増加し、4,060億4千1百万円となり、経常利益は、前期に比べ0.7%(29億3千1百万円)増加し、4,182億4千2百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ1.6%(49億2百万円)増加し、3,140億2千7百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の概要及びその分析等は、次のとおりであります。
塩ビ・化成品事業
塩ビ・化成品は、米国のシンテック社において、塩化ビニル、か性ソーダともに高水準の出荷を継続しましたが、市況の影響を受けました。欧州拠点も販売数量の維持に努めたものの、市況の影響を受けました。国内拠点は堅調に推移しました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ7.6%(399億4千8百万円)減少し、4,843億2千2百万円となり、営業利益は、前期に比べ13.5%(143億3千4百万円)減少し、921億8千7百万円となりました。
シリコーン事業
シリコーンは、機能製品を中心に拡販を進めましたが、汎用製品の価格下落の影響を受けました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ2.8%(65億1千1百万円)減少し、2,268億7千2百万円となり、営業利益は、前期に比べ5.0%(29億4千4百万円)増加し、614億9千万円となりました。
機能性化学品事業
セルロース誘導体は、医薬用製品は底堅く推移しましたが、建材用製品が振るいませんでした。フェロモン製品は堅調な出荷となりましたが、ポバール製品は市況の影響を受けました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ5.2%(63億4千7百万円)減少し、1,147億9千6百万円となり、営業利益は、前期に比べ4.2%(11億1千4百万円)増加し、277億1千7百万円となりました。
半導体シリコン事業
半導体シリコンは、半導体デバイス市場での調整局面が続きましたが、販売価格と出荷水準の維持に努めました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ1.9%(72億8千2百万円)増加し、3,876億3千1百万円となり、営業利益は、前期に比べ8.6%(113億円)増加し、1,432億9千8百万円となりました。
電子・機能材料事業
希土類磁石は、産業機器向けが需要鈍化の影響を受けましたが、環境対応自動車向けを中心に販売を維持しました。フォトレジスト製品は、ArFレジストやEUVレジストを中心に総じて好調でした。マスクブランクスも堅調に推移しました。光ファイバー用プリフォームは市況悪化の影響を受けて厳しい状況となりましたが、大型パネル用フォトマスク基板は好調に推移しました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ0.4%(9億8千7百万円)減少し、2,251億1千1百万円となり、営業利益は、前期に比べ2.3%(15億4千7百万円)増加し、685億4千万円となりました。
加工・商事・技術サービス事業
信越ポリマー社の半導体ウエハー関連容器が、半導体デバイス市場関連投資の減速の影響を受けました。
その結果、当セグメントの売上高は、前期に比べ3.7%(39億9千9百万円)減少し、1,047億9千1百万円となり、営業利益は、前期に比べ11.5%(15億2千8百万円)増加し、148億2千4百万円となりました。
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に
比べて1,917億6千8百万円増加し、3兆2,304億8千5百万円となりました。主に有形固定資産及びたな卸資産
が増加したことによるものです。
当期末負債合計額は、前期末に比べ11億8千2百万円増加し、5,073億4千3百万円となりました。
当期末純資産は、剰余金の配当874億1千万円などにより減少した一方、堅調な業績により親会社株主に帰属する
当期純利益が過去最高の3,140億2千7百万円となった結果、2兆7,231億4千1百万円となりました。
この結果、自己資本比率は81.1%から1.0ポイント増加し、82.1%となり、1株当たり純資産額は、前期に比べ
462円46銭増加し、6,377円93銭となりました。
投下資本利益率(ROIC)は21.5%から2.1ポイント減少し、19.4%となり、自己資本利益率(ROE)は、
12.8%から0.5ポイント減少し、12.3%となりました。年間配当金につきましては、前期に比べ20円増配し、1株
当たり220円といたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に対して10.0%(832億2千万円)
減少し、7,451億2千5百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は4,123億8千4百万円(前期比116億9千7百万円増加)とな
りました。これは、税金等調整前当期純利益4,260億1千7百万円、減価償却費1,311億7千2百万円などにより
資金が増加した一方、法人税等の支払額1,078億2千4百万円などで資金が減少したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は3,945億4千7百万円(前期比2,129億9千4百万円増加)と
なりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,683億6千5百万円、有価証券の取得による支出1,170億
円、定期預金の純増額1,275億2千5百万円などにより資金が減少した一方、有価証券の償還による収入1,159億
3千6百万円などにより資金が増加したことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は940億5千5百万円(前期比704億8千3百万円減少)となり
ました。これは、配当金の支払額874億1千万円、自己株式の取得による支出105億6千6百万円、などによるも
のであります。
なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の重要な資本的支出の予定につきまして、当期末後1年間では当期実績に比べ約10%減少の総額2,400億円を見込んでおり、その資金は、自己資金で賄う予定であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
塩ビ・化成品事業
485,073
(-)
6.9
シリコーン事業
224,420
(-)
4.6
機能性化学品事業
120,168
(-)
3.1
半導体シリコン事業
387,317
(-)
2.6
電子・機能材料事業
228,471
(-)
0.6
加工・商事・技術サービス事業
68,553
(-)
2.6
合計
1,514,004
(-)
4.1
(注)1.生産金額は期中販売価格により算出したものであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は主として見込み生産を行っているため、受注実績を記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
塩ビ・化成品事業
484,322
(-)
7.6
シリコーン事業
226,872
(-)
2.8
機能性化学品事業
114,796
(-)
5.2
半導体シリコン事業
387,631
1.9
電子・機能材料事業
225,111
(-)
0.4
加工・商事・技術サービス事業
104,791
(-)
3.7
合計
1,543,525
(-)
3.2
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文
中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、コロナ禍が挙げられます。世界経済は、コロナ禍の真っ只中にあります。コロナ禍がいつどのように終息するか、世界経済への毀損がどのくらいになるのか、現時点では見通せません。このような状況下、従業員の健康と安全の維持、生産の継続と販売の確保、債権保全ほかの事業要件に注力します。顧客との意思疎通を密にして、顧客にとって価値ある製品の開発と製品の安定供給に引き続き努めてまいります。コスト競争力と品質の向上への取り組みも継続してまいります。決定した投資案件は目下計画に沿って実行しています。また、事業の成長のために適時適切な投資を遂行してまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の連結会計年度末の現・預金及び譲渡性預金を含む有価証券(流動資産)の合計額は1兆878億2千5百万円(期間が3カ月を超える分を含む)と流動性を十分に確保しております。また、「1.主要な経営指標等の推移(1)連結経営指標等」に記載のとおり、安定的に「営業活動によるキャッシュ・フロー」を獲得しておりますことから、当面の間は運転資金や設備投資への対応も自己資金で賄える水準にあります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたり、期末時点の状況をもとに見積りと仮定を行っておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は下記になります。
・固定資産の減損
製品の主要な市場がある国および地域の経済動向、また世界的な需要減に伴う価格競争の激化などにより、業績に悪影響を及す場合、減損を考慮していく必要があります。減損を検討するにあたっては、グルーピング、減損の兆候の判定から測定に至るまでの見積りプロセスが複雑かつ主観的であり、また、将来キャッシュ・フローの見積りは多くの仮定に基づくものであるため、前提条件などを慎重に見込む必要があります。その結果算定された将来キャッシュ・フローの額によっては、固定資産の減損損失を計上する可能性があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響については「第5.経理の状況 (追加情報)」に記載しております。