【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況
<経営成績>
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による社会活動の制限が緩和され、経済活動や個人消費は緩やかに持ち直しました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化やそれに伴う原燃料価格の高騰、円安の長期化による物価の上昇、海外経済の減速等が、個人消費や経済回復に影響を与えています。
紙パルプ業界におきましては、コロナ禍において堅調に推移していた包装用紙や衛生用紙の需要が2023年に入り堅調さにかげりが見え始め、印刷・情報用紙の構造的な需要減少や原燃料高騰に伴う製紙メーカーの価格改定による需要の冷え込みも続いていることから、紙・板紙合計での国内出荷量は、前年実績を下回りました。
このような中で当社グループは、観光やイベント需要の緩やかな回復を見込み、主力商品である高付加価値特殊紙の販売強化、需要伸長が見込める高級パッケージや機能紙分野への注力、新規の顧客及び新規需要の獲得推進等の施策を実施し、収益性の向上に努めました。円安や原燃料の高騰による紙・板紙の価格改定においては、お客様への情報提供をはじめとする丁寧な対応を行い、販売数量への影響縮減を図りました。また、紙・板紙の需要減少局面での事業再構築に伴う製紙メーカー抄造設備の停機等が進行し、それに起因する当社商品の改廃やリニューアルにおいては、これを好機として高付加価値商品への転換と安定供給の継続を図るとともに、社会ニーズの高い脱炭素、SDGsに対応した新商材の開発を進行いたしました。東アジア地区での海外販売は、中国における感染拡大の影響を大きく受けて減速しましたが、足元では人流回復に伴い緩やかな回復基調にあります。
このような基盤商材販売活動の強化や商品リニューアルへの投資、SNS等を活用した新たな顧客層への販売促進と情報の受発信力の拡大、価格改定による販売単価の上昇も相まって、和洋紙卸売業の売上高は前期実績を上回り、当連結会計年度の業績は、売上高160億68百万円(前期比2.9%増)、経常利益1億92百万円(前期比43.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億74百万円(前期比902.6%増)となりました。
なお、第1四半期連結会計期間に、名古屋地区にて保有している固定資産を同地で建築される建物の一部(オフィス及び賃貸用住宅)に買い換えることを条件として譲渡し、特別利益11億33百万円を計上しております。
当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は、次のとおりです。なお、以下の数値はセグメント間の取引消去前となっております。
[和洋紙卸売業]
和洋紙卸売業は、情報伝達媒体のデジタルシフトによる印刷・情報用紙の需要縮小や、価格改定による販売量減少等の影響はあるものの、イベント事業や観光等の経済活動の回復や個人消費を中心とした国内需要の回復傾向が続いたことから、当社の主力商品である高付加価値特殊紙の販売が堅調に推移し、価格改定による販売単価の上昇もあり、売上高は166億82百万円(前期比2.8%増)となりました。営業利益は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実施しておりました出勤日数の削減等による休業手当の営業外費用への計上額が減少したため、1億24百万円(前期比7.9%減)となりました。
[不動産賃貸業]
不動産の売買、賃貸借、管理及び仲介で構成される不動産賃貸業は、2021年9月9日に「固定資産の譲渡及び特別利益の計上に関するお知らせ」にて公表しましたとおり、名古屋地区にて保有している固定資産を譲渡したことにより不動産賃貸収入が減少し、売上高は18百万円(前期比45.8%減)、営業利益は14百万円(前期比46.6%減)となりました。
<財政状態>
[資産]
資産合計は、175億65百万円(前期比17億98百万円増)となりました。
流動資産の増加(前期比2億60百万円増)は、現金及び預金2億44百万円、受取手形及び売掛金71百万円が減少しましたが、電子記録債権2億67百万円の増加、商品3億42百万円の増加が主な要因となっております。
固定資産の増加(前期比15億37百万円増)は、無形固定資産17百万円が減少しましたが、有形固定資産の増加11億43百万円、投資その他の資産の増加4億11百万円が主な要因となっております。
[負債]
負債合計は、81億55百万円(前期比9億19百万円増)となりました。
流動負債の増加(前期比7億18百万円増)は、支払手形及び買掛金の増加2億87百万円、短期借入金の増加2億45百万円、未払法人税等の増加51百万円、賞与引当金の増加39百万円が主な要因となっております。
固定負債の増加(前期比2億円増)は、繰延税金負債の増加2億34百万円が主な要因となっております。
[純資産]
純資産合計は、94億9百万円(前期比8億79百万円増)となりました。
自己株式の取得により75百万円減少しましたが、利益剰余金の増加7億78百万円、その他有価証券評価差額金の増加1億31百万円が主な要因となっております。
(参考)
当社単体の和洋紙卸売業の品目別の営業成績
品目別
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減率(%)
金額(百万円)
構成比
(%)
金額(百万円)
構成比
(%)
ファンシーペーパー
3,360
22.9
3,525
23.3
4.9
ファインボード
1,716
11.7
1,899
12.6
10.6
高級印刷紙
3,203
21.8
3,462
22.9
8.1
ベーシックペーパー
4,299
29.3
4,116
27.2
△4.3
技術紙
1,912
13.0
1,920
12.7
0.4
その他
195
1.3
207
1.3
6.2
合計
14,688
100.0
15,130
100.0
3.0
[ファンシーペーパー]
多様な色、表面性、風合いを持つ高付加価値特殊紙のファンシーペーパーは、需要におけるコロナ禍の影響が徐々に減少し、リモートやSNS、再開した展示会等での販売促進活動の効果も伴い、出版、商業印刷物用途が緩やかに回復し、売上高は35億25百万円、前期比4.9%の増加となりました。
[ファインボード]
ファンシーペーパーの厚物(板紙)であるファインボードは、各種観光イベント需要の再開に伴い、化粧品・食品等の高級パッケージ向けの販売が緩やかに回復し、売上高は18億99百万円、前期比10.6%の増加となりました。
[高級印刷紙]
独自の風合いを持ち、通常の印刷用紙より高価格帯の高級印刷紙は、商業印刷物等の販売が緩やかに回復し、出版物や紙製品用途も増加したことで、売上高は34億62百万円、前期比8.1%の増加となりました。
[ベーシックペーパー]
上質紙、塗工紙、色上質紙等の印刷用紙、包装用紙、パッケージ向け板紙等で構成されるベーシックペーパーは、一般パッケージ用途や東アジア向けの輸出は堅調に推移しましたが、価格改定の影響が大きく、商業印刷物、出版、紙製品用途の販売が減少し、売上高は41億16百万円、前期比4.3%の減少となりました。
[技術紙]
通常の紙にはない特殊機能が付与されている技術紙は、各種工業品製造用工程紙や耐水撥水性機能紙の販売が減少しましたが、偽造防止用途や合成紙の販売が堅調に推移し、売上高は19億20百万円、前期比0.4%の増加となりました。
[その他]
家庭紙、紙加工品、製紙関連資材等で構成される当区分では、製紙関連資材、紙加工品の販売は減少しましたが、観光需要の回復に伴い家庭紙の販売が伸長し、売上高は2億7百万円、前期比6.2%の増加となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2億44百万円減少し、30億72百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動の結果得られた資金は1億21百万円(前期比48.2%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益12億79百万円に固定資産除売却損益11億30百万円の減算調整を行ったこと等によるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動の結果使用した資金は4億8百万円(前期は13百万円の使用)となりました。これは主に、 有形固定資産の売却による収入12億円がありましたが、有形固定資産の取得による支出12億55百万円、投資有価証券の取得による支出70百万円及び、 定期預金の預入による支出3億円等によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動の結果獲得した資金は43百万円(前期は1億23百万円の使用)となりました。これは主に、 自己株式の取得による支出75百万円及び、配当金の支払額96百万円がありましたが、短期借入金の増加2億38百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自
2022年4月1日
至
2023年3月31日)
前期比(%)
和洋紙卸売業(千円)
16,058,598
103.0
不動産賃貸業(千円)
10,287
39.2
合計(千円)
16,068,886
102.9
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
<当連結会計年度の財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容>
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
<経営成績に重要な影響を与える要因>
当社グループは「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、経営環境、事業の内容、事業体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向及び業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保及び適切な教育を実施するとともに、事業体制及び内部管理体制を強化し、社会のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に対し適切な対応を行ってまいります。
<セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容>
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
<経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等>
当社グループは、安定的な収益基盤を構築するため、売上高、営業利益及び収益性を判断する観点から売上高営業利益率を重視しております。また、株主資本利益率(ROE)を重要な指標として位置づけ、総資産利益率(ROA)も意識しております。
当連結会計年度においては、当初2022年5月13日の時点で、売上高が2022年3月期比8.8%増の170億円、営業利益が同55.5%減の72百万円と予想し、その達成に努めてまいりました。新型コロナウイルス感染症による社会活動の制限が緩和され、再開傾向にある各種イベント事業や観光関連の需要が徐々に回復する中で、全体の販売量は当初の予想に届かず売上高は160億68百万円と、計画比9億31百万円減(5.5%減)となりましたが、当社主力商品である高付加価値特殊紙の販売が当初の予想を超えて推移したため、営業利益については1億38百万円と、計画比66百万円増(92.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容>
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
<資本の財源及び資金の流動性>
(a)資本の財源
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの運転資金需要のうち主なものは商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備投資を目的とした資金需要は、主に倉庫等における機械装置等の固定資産購入によるものであります。運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備資金の調達につきましては、自己資金を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は24億12百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は30億72百万円となっております。
(b)資本政策
当社グループが創出したフリー・キャッシュ・フローについては、有事の際に機動的な対応がとれるよう備えつつも、平時においては手元資金の適正な範囲内で、成長投資と株主還元とをバランスよく保ちながら、分配することとしております。
株主還元につきましては安定的な配当として第2四半期末配当と期末配当の年2回を基本方針としております。原則として、連結による損益を基礎とし、特別な損益の状態である場合を除き、第2四半期末配当と期末配当の年間2回配当を確実に実施することで、安定的・継続的な利益還元に努めていくこととしております。
なお、2023年3月期の期末配当につきましては、2021年3月期の第2四半期末が無配であったことと2023年3月期連結業績を踏まえ、1株につき1円増額の6円にとさせていただき、年間配当金は、1株につき11円といたしました。
今後の市場回復傾向や、それに伴う業績の見通し踏まえながらではございますが、株主の皆様に還元できるよう、努力してまいります。
成長投資については、経営状況を判断しながら、さまざまな施策の優先順位を検討してまいります。また、名古屋に続き、大阪に保有している事務所用の土地についても有効活用を検討すると同時に、保有ビルの老朽化対応も兼ねながら収益物件として投資をすることも検討していきます。また、特殊紙を中心とする紙の販売・流通を軸としたオーガニックな成長に加え、M&A等による成長機会に関しては、常時、情報を収集し、案件次第で検討してまいります。その際には、当社の事業領域との親和性に加え、事業成長性を重視した上で、成長投資としてキャッシュを一定量振り向ける準備もしてまいります。当社グループにおいては、引き続き利益成長を図りながらキャッシュの創出力を高め、資本コストと財務の柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく考えです。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。