【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。(1) 経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の概要当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立が進むなか、ウクライナ問題や資源・エネルギー価格の高騰が長期化し、インフレ抑制のための金利引き上げの影響等により景気の減速懸念が強まりました。わが国経済においては、感染予防対策の緩和により、経済活動が正常化に向かいましたが、日米金利差を背景とした不安定な為替相場や資源・エネルギー価格上昇による物価高の影響が個人消費や企業活動に見られ、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いています。このような状況のなか、受注においては、コロナ禍が長期化する一方で、世界的にもウィズコロナの局面に入り、行動制限の緩和等からアパレル製品の需要は回復傾向にあります。中国のロックダウンやウクライナ問題等グローバルな地政学的リスクから、顧客が生産地を見直し、多元化を検討する動きがあるなかで、当社グループのもつ幅広い生産拠点と生産体制が顧客ニーズの受け皿となり、受注は堅調に推移いたしました。生産においては、工場新設に伴う先行経費や急激な円安進行による生産コストの上昇等が利益を押し下げる要因として影響しましたが、世界的な物流混乱や、素材・副資材の着荷遅延も徐々に解消され、既存の生産拠点における稼働率は総じて好調を維持しました。
当社グループが展開する国ごとの生産状況は以下のとおりであります。(中国)ゼロコロナ政策によるロックダウンとその解除による感染再拡大で混乱が生じ、受注および販売面で伸び悩みましたが、生地加工の事業においては、安定した稼働率が顧客ニーズに合致し、好調に推移しました。また、かねてより進めているASEAN諸国等への生産地シフトの一環として、縫製工場を1か所閉鎖しましたが、当該工場で生産していたものは他国の生産拠点へ適宜移管し、最適地での生産体制を整備しました。(バングラデシュ)ISHWARDI MATSUOKA BANGLADESH.LTD.第1期工場では生産ラインを増やし生産能力が伸長したほか、同第2期工場が完成し、バングラデシュにおける生産能力拡大の体制が整いました。今後は、受注状況に合わせて工員を増員し機械設備も拡充する計画ですが、本格的な稼働開始は2024年3月期以降になる見込みです。(ベトナム) 2022年1月に生産開始したAN NAM MATSUOKA GARMENT CO.,LTD第2期工場での生産が軌道に乗り、ベトナムにおける生産基盤の強化に寄与しました。新型コロナウイルスの影響も限定的となったことで稼働率が安定し、中国からの生産移管先として生産量が伸長しました。(ミャンマー)新型コロナウイルス感染拡大やクーデターによる政情不安の影響で減少していた従業員数もコロナ前の水準に近づき、稼働率の安定とともに生産量も復調しました。継続して工場独自で新規顧客開拓にも取り組み、新たな受注獲得の成果も見え始めました。(インドネシア) PT. MATSUOKA INDUSTRIES INDONESIAにおいては、継続して品質や生産性の向上に取り組んだ結果、生産能力が伸長し、生産量や売上高の増加に貢献しました。引き続き収益改善の途上ではありますが、生産コスト低減や生産管理精度向上に対する取り組みが実を結びつつあります。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は627億78百万円(前期比23.0%増)、営業利益は67百万円(同62.8%減)となりました。また、経常利益は為替差益等の計上により32億2百万円(同208.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は16億76百万円(同199.8%増)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べて74億16百万円増加し、592億95百万円となりました。負債は、前連結会計年度末に比べて45億55百万円増加し、269億90百万円となり、純資産は前連結会計年度末に比べて28億60百万円増加し、323億5百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー5億6百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フロー61億97百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フロー49億9百万円の獲得となった結果、前連結会計年度末に比べて7億25百万円減少し、144億80百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは5億6百万円の支出(前期は8億21百万円の獲得)となりました。主な要因としては、税金等調整前当期純利益の計上29億2百万円、減価償却費の計上18億46百万円等があったものの、仕入債務の減少20億33百万円、棚卸資産の増加12億4百万円、売上債権の増加11億86百万円、法人税等の支払額6億41百万円等があったことによるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは61億97百万円の支出(前期は28億11百万円の支出)となりました。主な要因としては、有形固定資産の取得による支出61億32百万円等があったことによるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは49億9百万円の獲得(前期は31億49百万円の獲得)となりました。主な要因としては、長期借入金の返済による減少10億75百万円、配当金の支払による減少3億92百万円等があったものの、長期借入れによる収入24億35百万円、短期借入金の純増額23億73百万円、社債の発行による収入14億75百万円等があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
金額(百万円)
前期比(%)
アパレルOEM事業
58,683
122.3
合計
58,683
122.3
(注) 金額は、製造原価によっております。
b.受注実績当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
アパレルOEM事業
58,019
100.2
16,464
77.6
合計
58,019
100.2
16,464
77.6
c.販売実績生産国別の販売実績は次のとおりであります。
国名
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
販売高(百万円)
前期比(%)
中国
26,696
105.3
バングラデシュ
17,314
121.9
ベトナム
12,481
157.4
ミャンマー
2,881
145.3
インドネシア
3,405
214.6
合計
62,778
123.0
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
Toray Industries(H.K.)Ltd.
11,721
23.0
13,147
20.9
東レインターナショナル株式会社
7,388
14.5
10,562
16.8
株式会社ユニクロ
6,091
11.9
8,593
13.7
迅消(中国)商貿有限公司
8,248
16.2
4,684
7.5
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容a.経営成績の分析(売上高)当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立が進むなか、ウィズコロナの局面に移行しつつあり、行動制限の緩和等からアパレル製品の需要は回復傾向にありました。ウクライナ問題等の地政学的リスクに対し、当社グループの幅広い生産拠点と生産体制が顧客ニーズの受け皿となり、受注は堅調に推移いたしました。売上高につきましては、生産能力の増強など各生産拠点での生産量が増加し、また新型コロナウイルス感染症の行動制限の緩和等の影響により、前連結会計年度に比べて117億22百万円増加の627億78百万円(前期比23.0%増)となりました。中期経営計画「ビジョン2025」では、当連結会計年度の売上高は560億円を計画しておりましたが、計画比12.1%増と計画達成しております。生産国別の売上高では、中国からASEAN諸国等への生産地シフトを実施しておりますが、バングラデシュ・ベトナムをはじめ各生産拠点の生産は堅調に推移し、売上高が増加しました。(売上原価、売上総利益)当連結会計年度の売上原価は、堅調な受注増加に伴い増加するとともに、円安による工場コスト増加等により、前連結会計年度に比べて107億2百万円増加の569億87百万円(同23.1%増)となりました。売上総利益率は、売上原価の増加の他、円安による工場コスト増加の影響により、前連結会計年度9.3%から当連結会計年度では9.2%へと0.1ポイント低下しました。この結果、売上総利益は57億91百万円(同21.4%増)となりました。 (販売費及び一般管理費、営業利益)当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、売上高増加による影響とともに、円安による工場コスト増加等により、前連結会計年度に比べて11億33百万円増加の57億23百万円(同24.7%増)となりました。この結果、営業利益は67百万円(同62.8%減)となりました。(営業外収益、営業外費用及び経常利益)当連結会計年度の営業外収益は、為替レートがドル高現地通貨安に推移したことにより為替差益28億48百万円を計上し、前連結会計年度に比べて24億19百万円増加の34億24百万円となりました。連結会計年度の営業外費用は、借入金の増加に伴う支払利息の増加等により前連結会計年度に比べて1億40百万円増加の2億89百万円となりました。この結果、経常利益は32億2百万円(同208.6%増)となりました。中期経営計画「ビジョン2025」では、当連結会計年度の経常利益は12億円を計画しておりましたが、計画比166.9%増と計画達成しております。(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度にありました中国での土地使用権及び建物売却に伴う固定資産売却益1億1百万円の計上が剥落したことにより、前連結会計年度に比べて90百万円減少しております。当連結会計年度の特別損失は、嘉興茉織華華為制衣有限公司の華為工場閉鎖に係る特別退職金の発生等があり、前連結会計年度に比べて3億11百万円増加しております。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は16億76百万円(同199.8%増)となりました。
b.財政状態の分析(資産) 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて74億16百万円増加し、592億95百万円となりました。主な要因としては、有形固定資産の増加47億44百万円、棚卸資産の増加17億11百万円、受取手形、電子記録債権及び売掛金の増加13億35百万円等があったことによるものです。棚卸資産の増減については、商品及び製品の納期に連動しております。仕掛品や原材料及び貯蔵品の期末金額は毎年変動いたします。(負債)当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて45億55百万円増加し、269億90百万円となりました。主な要因としては、支払手形及び買掛金、電子記録債権の減少10億49百万円等があったものの、短期借入金の増加24億15百万円、転換社債型新株予約権付社債の増加15億円、長期借入金の増加13億59百万円等があったことによるものです。長期借入金及び転換社債型新株予約権付社債の増加については、主に子会社への投資を行うために金融機関より調達をしたものです。(純資産)当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて28億60百万円増加し、323億5百万円となりました。主な要因としては、配当金の支払3億92百万円等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加16億76百万円、為替換算調整勘定の増加11億52百万円等があったことによるものです。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)内容につきましては本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。 (資本の財源及び資金の流動性に係る情報)当社グループの運転資本需要のうち主なものは、原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。当連結会計年度末において借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は148億43百万円、現金及び現金同等物の残高は144億80百万円となっております。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による事業活動に支障が生じるような資金繰りの悪化は発生しておりません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・固定資産の減損 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として会社別にグルーピングを行い、収益性が低下した資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。 収益性の低下の評価において用いる将来キャッシュ・フローについては、各社及び各工場の事業計画等に基づき見積っていますが、経営環境の変化等により当初見込んでいた利益が得られなかった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
(3) 経営者の問題認識と今後の方針についてコロナ禍により生産地における「つくり場」が減少したことや、国際物流の混乱から、生産地の見直しや代替え地での生産を検討する顧客が増えております。ものづくりが困難な時期だからこそ、顧客の求めるタイミングで良質な製品をお届けできる生産体制の整備が最重要な課題であるとの認識のもと、当社グループでは中期経営計画「ビジョン2025」に基づき、2022年3月期、2023年3月期の2年間で大型設備投資を行い、ベトナム・バングラデシュにおいて新しい生産拠点の建設を推進いたしました。これにより両国における生産能力の拡大とともに、当社グループがかねてより注力してきた、中国からASEAN諸国等への生産シフトがさらに進行し、中期経営計画達成に向けて前進することを目指しております。今後は、アフターコロナへの移行に加え、インバウンド需要の急回復によってアパレル流通在庫の調整が進み、当社顧客からの発注が回復すると想定しております。その需要(顧客ニーズ)の回復をしっかりと受け止め、受注と収益につなげられるよう、新設したベトナムおよびバングラデシュの工場をしっかりと立ち上げ、フル稼働に向けた体制を整備してまいります。また、当社グループの強みの一つであるグローバルな工場展開をベースに、国・拠点ごとの特性を活かし、アイテムやロット、納期等の顧客ニーズに最適な生産地を提案することにより営業力を強化し、同時に展示会等を通じて新規顧客へもその優位性を訴求してまいります。素材開発を得意とするグループ子会社においては、これまでに培った生地加工技術や素材特性に関するノウハウを活かし、お客様の製品戦略に沿う潜在的なニーズを引き出し、それに見合った素材を積極的に提案あるいは開発することにより、新領域への製品展開を目指してまいります。
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