【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 業績の状況当第2四半期連結累計期間における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、原材料・エネルギー価格の高騰、新型コロナウイルス感染症の影響等、引き続き先行き不透明な状況が続きました。米国では、急激な金利上昇と物価上昇の中、底堅い企業業績を背景とした良好な雇用・所得環境により個人消費は総じて堅調に推移しました。中国では、ゼロコロナ政策による経済活動の抑制等から成長率が低下しましたが、足元では回復傾向も見られます。国内経済では、ウクライナ情勢を受けた資源価格の上昇による物価高や為替相場における急激な円安等の影響もあり、先行き不透明な状況が続いております。このような経済情勢の下、当第2四半期連結累計期間における売上高は2,892億93百万円と前年同四半期比5.7%の増収、利益面においては、営業利益が191億32百万円と7.1%、海外の倉庫火災に伴う保険金の受け取りや、円安による為替差益の計上により経常利益が218億44百万円と19.0%、親会社株主に帰属する四半期純利益が138億81百万円と15.5%のそれぞれ増益となりました。 セグメントごとの業績は次のとおりであります。
① 物流事業港湾国際事業では、国内の海上コンテナ取扱いの増加やこれに伴うヤード内作業・保管作業が増加となりました。また、昨年度完工した東南アジアでのプロジェクト案件の剥落はあるものの、国内外での海上貨物の輸出入取扱いが好調に推移しました。3PL一般事業では、中国・東南アジアでの自動車部品・消費財等の輸送・保管作業等が堅調に推移したものの、国内では消費財等の取扱量減少がありました。構内では、国内客先の単価改定が進む一方、作業量が減少となったことに加え、海外での装置の不具合に伴う先行コストおよび、設備修繕費用の増加がありました。以上の結果、物流事業全体の売上高は1,509億85百万円と前年同四半期比8.6%の増収、セグメント利益(営業利益)は48億82百万円と前年同四半期比20.4%の減益となりました。なお、当第2四半期連結累計期間の売上高に占める割合は52.2%であります。
② 機工事業設備工事では、昨年度完工した化学プラント建設工事や重量物輸送での風力関連の建設工事等の剥落があったものの、鉄鋼関連設備の改修や更新に伴う工事量の増加がありました。メンテナンスでは国内SDM(大型定期修理工事)の工事や検査工事が増加となりました。以上の結果、機工事業全体の売上高は1,262億89百万円と前年同四半期比2.9%の増収、セグメント利益(営業利益)は133億3百万円と前年同四半期比20.2%の増益となりました。なお、当第2四半期連結累計期間の売上高に占める割合は43.6%であります。
③ その他機材・資材貸出では、国内SDMや検査工事の増加に伴う取扱量の増加や、コスト抑制により利益は増加しました。以上の結果、その他の事業全体の売上高は120億18百万円と前年同四半期比1.0%の増収、セグメント利益(営業利益)は8億35百万円と前年同四半期比72.8%の増益となりました。 なお、当第2四半期連結累計期間の売上高に占める割合は4.2%であります。
(2) 財政状態の分析
① 流動資産当第2四半期連結会計期間末における流動資産は2,630億92百万円であり、前連結会計年度末に比べ245億49百万円、10.3%増加しました。主な要因は、作業量の増加による受取手形、売掛金及び契約資産の増加等によるものです。
② 固定資産当第2四半期連結会計期間末における固定資産は2,278億70百万円であり、前連結会計年度末に比べ39億45百万円、1.8%増加しました。主な要因は、設備投資による有形固定資産の増加等によるものです。
③ 流動負債当第2四半期連結会計期間末における流動負債は1,426億90百万円であり、前連結会計年度末に比べ18億93百万円、1.3%増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金、未払法人税・消費税の増加と社債の償還による減少との差等によるものです。
④ 固定負債当第2四半期連結会計期間末における固定負債は819億26百万円であり、前連結会計年度末に比べ89億80百万円、12.3%増加しました。主な要因は、長期借入金の増加等によるものです。
⑤ 純資産当第2四半期連結会計期間末における純資産は2,663億46百万円であり、前連結会計年度末に比べ176億20百万円、7.1%増加しました。主な要因は、利益剰余金および為替換算調整勘定の増加等によるものです。当第2四半期連結会計期間末の自己資本比率は、前連結会計年度末を0.4ポイント上回る53.6%となっております。
(3) キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ87億93百万円増加し、512億73百万円となりました。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー当第2四半期連結累計期間における営業活動による資金の増加額は、191億2百万円となりました。
前年同四半期との比較では、売上債権及び契約資産は増加したものの、法人税等の支払額及び消費税の支払額の減少や税金等調整前四半期純利益の増加等により、資金の収入は33億73百万円増加しました。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー当第2四半期連結累計期間における投資活動による資金の減少額は、国内倉庫の建替え、新築等の投資支出により81億43百万円となりました。前年同四半期との比較では、有形固定資産の売却による収入が増加したこと等により、資金の支出が12億7百万円減少しました。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー当第2四半期連結累計期間における財務活動による資金の減少額は、58億65百万円となりました。前年同四半期との比較では、社債の償還による支出等は増加したものの、ソーシャルローン(長期借入)による収入の増加に加え自己株式の取得による支出が減少したこと等により、資金の支出は14億45百万円減少しました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社連結グループの主な資金需要は、事業運営に必要な労務費、外注費、材料費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには当社連結グループの設備新設、改修等に係る投資であります。上記以外にも、当社連結グループの企業価値向上の観点において、効果的なM&Aや、AI・IoT等の最新技術を用いた作業の効率化、新しいビジネスモデルの構築のための成長投資の検討も行っております。また、自己株式の取得については、株価水準や市場環境等を勘案し適宜実施すること、自己株式の保有については、発行済株式総数の5%程度を目安とし、それを超える株式は原則として消却することを基本方針としております。これらの必要資金は、まずは営業活動によるキャッシュ・フローと自己資金にて賄い、必要に応じ、適正な範囲内での金融機関からの借入、または社債発行等による資金調達によって対応しております。現金及び現金同等物を含む手許の資金流動性につきましては、可能な限り圧縮し資金効率の向上に努めております。また、急激な金融環境の変化や突発的な資金需要への備えとして、迅速かつ機動的に資金調達ができるコミットメントライン契約を金融機関と締結しております。当第2四半期連結累計期間のフリーキャッシュ・フローは、前年同四半期から45億81百万円増加し、109億59百万円のプラスとなりました。このフリーキャッシュ・フローを主な財源にして社債の償還等の財務支出を賄う一方、9月末には協力会社への支払早期化対応として、ソーシャルローンによる資金調達を実施いたしました。この結果、当第2四半期連結会計年度末における有利子負債残高(リース債務除く)は468億91百万円と、前連結会計年度末から12億4百万円増加しておりますが、D/Eレシオは0.18倍と、前連結会計年度末の水準を維持いたしました。なお、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」の項目をご参照ください。
(5) 経営方針・経営戦略等① サステナビリティ基本方針とマテリアリティ当社グループは、第1四半期連結会計期間においてサステナビリティ基本方針を制定しております。経営理念に込められていた精神を具体的に明示することで、企業と社会が共に持続可能な発展を遂げるための取組みを推し進めることを狙いとしています。
山九グループのサステナビリティ基本方針 山九グループは創業以来、経営理念に込められた精神を受け継ぎ、社会要請に応じて事業形態を変化させ、社会の発展と共に歩んでまいりました。これからも経営理念に基づき、事業活動を通じて、環境問題を含む社会課題の解決に貢献し、企業と社会が共に持続的に発展していくことを目指します。
山九グループの「経営理念」は、サステナビリティと深く結びついています。 1.「人を大切にすることを基本理念とする」 誰もが安心して働き、山九グループに関わる全ての人々が幸せに暮らせる未来を目指します。 2.「お客様にとってなくてはならない存在となる」 環境の変化に対応し、社会の要請に応じたサービスを提供することで、世の中から選ばれ続ける企業 を目指します。 3.「社業の発展を通じて、社会の発展に貢献する」 グローバルに展開する事業活動を通して、社会の発展に貢献することを目指します。
また、当社グループの事業における重要度とステークホルダーにおける重要度で社会課題を評価し、マテリアリティを特定しました。特定した16のマテリアリティを6つのテーマに整理し、テーマ毎に対応方針を定め、取り組みを推進してまいります。
テーマ
マテリアリティ
対応方針
関連するSDGs
E
環境保全
気候変動への対応
「地球環境は全人類にとってかけがえのないものである」との共通認識に立ち、事業活動に伴う環境負荷の低減を積極的に推進します。
資源循環
S
働きがいのある職場づくり
働きがいのある職場環境づくり
「人を大切にする」という経営理念のもと、ワークライフバランスを推進し、多様な人財が一人ひとりの能力を高め、誇りを持って意欲的に働くことができる環境づくりに取組みます。
人財育成
ダイバーシティ
労働安全衛生の向上
サービスの安全・品質の担保
「安全を全てにおいて優先する」という強い決意のもと、安全を全ての事業の根幹として技術・技能を磨き、サービス品質の向上に努めます。社会要請に応じたサービスを提供することで、事業の発展を目指します。
サービスの安全・品質の担保
社会変化に対応した価値提供
情報セキュリティの担保
革新技術を活用したサービスの提供
地域社会への貢献
人権尊重および地域社会への貢献
「社業の発展を通じて社会の発展に貢献する」という経営理念に込められた精神のもと、地域社会と共に持続可能な成長を目指します。
G
経営基盤の強化
ガバナンス体制の確保
適切なガバナンス体制の構築によりリスク管理を行い、経営の透明性を確保して公平公正な事業活動を行うことで、ステークホルダーから信頼される企業であることを目指します。
リスク管理の徹底
ステークホルダーとの対話
事業活動の情報開示
コンプライアンス
コンプライアンスの徹底
企業倫理ならびに、法令および社内で取り決めたルールを遵守し、国際社会の一員として社会良識をもって行動します。
② 気候変動への対応当社グループは、気候変動は重要な経営課題の一つと捉え、気候変動が与える2030年までのリスクと機会を定量的・定性的の両面から評価を実施し、気温が1.5℃(環境保全シナリオ)と4.0℃(成行シナリオ)上昇することを想定としたシナリオを用いて財務影響の評価と対応策を検討しております。複数のシナリオから対応策を検討することで、環境変化・社会情勢に応じた臨機応変な対応が出来るよう検討しております。また、気候変動の原因となる温室効果ガス(特に影響の大きいCO2)について、中長期的な目標を設定し削減に向けた取り組みを推進し、2050年までに、CO2排出削減目標である実質ゼロを目指して活動していきます。 (CO2排出量の削減目標) ・2030年度目標:42%削減(2020年度比) ・2050年度目標:実質ゼロ(2020年度比) ※対象はスコープ1と2、範囲は山九単体および国内連結子会社とする。
[ シナリオ分析、リスクと機会の評価 ]
中分類
小分類
移行リスク
政策・法規制
炭素価格
リスク
各国政府の炭素税の導入により、コスト負担分をサービス料金に転嫁しきれずに利益率が低下
主な対応策
・CO2排出量削減取り組みの推進
評判
金融機関・投資家・社職員の行動変化
リスク
グリーン戦略の実行・管理可能な体制整備の遅れ及び役職員の行動変容が伴わずに戦略推進の停滞により売上・利益が低下、市場評価も低下
主な対応策
・施策推進機能の構築・評価制度導入
市場
顧客の行動変化
リスク
機工・物流領域における脱炭素施策の取り組み遅れにより、顧客から選ばれず、既存売上が減少
主な対応策
・脱炭素施策の推進
顧客の市場規模縮小
リスク
主要顧客の環境コスト負担が大きく、海外メーカーとの製造コスト差が発生し、日本の生産量及びサプライチェーンが縮小、既存売上が減少
主な対応策
・海外のプラントにおける事業展開の強化
設備寿命の延伸
リスク
サーキュラーエコノミーの加速で、顧客の設備寿命延長の取り組みが進み、保全に係る既存売上が減少
主な対応策
・新技術による予知保全領域への事業拡大
顧客の製造プロセス変化
リスク
主要顧客のCO2削減対応設備の採用や循環型原料への代替など、脱炭素への対応が進むことにより、既存領域での作業が減少、売上が減少
主な対応策
・各種のCO2削減対応設備および非石油原料プラント技術に関する対応の強化
機会
新たな製造技術が進むことにより、老朽化設備の解体工事や、設備新設工事が増え、工事参画により売上機会を獲得
主な対応策
・工事対応力の強化
代替エネルギーインフラへの要請
機会
水素・アンモニアのサプライチェーン形成に伴い、製造プラントや燃料を利用する発電所・製造業等の事業機会に参画することで新たな売上機会を獲得
主な対応策
・水素・アンモニア設備に関する事業参画
廃棄物リサイクルへの要請
機会
化学製品/鉄/非鉄の領域において、商流・物流・情報流のエコシステムへの参画により、新たな売上機会を獲得
主な対応策
・静脈物流網構築、エコシステムへの参画
再エネ発電普及
機会
再エネ事業(太陽光、風力、水力等)の施工体制の整備、工法等のノウハウ習得による売上機会の獲得
主な対応策
・再エネ事業対応力の強化
中分類
小分類
物理的リスク
急性リスク
自然災害の頻発
リスク
気候変動により引き起こされる将来の海面上昇に伴う台風豪雨発生時の被害甚大化により、倉庫移転のリスクや機材等の修繕コスト増加
主な対応策
・浸水対策等自然災害に対する対応強化
慢性リスク
平均気温の上昇
リスク
ヒートストレス対策コストの増加、ヒートストレスによる労働生産性の悪化により利益率が低下
主な対応策
・労働環境の整備
(6) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第2四半期連結累計期間において、当社連結グループが対処すべき課題について、重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(7) 研究開発活動特記すべき事項はありません。
(8) 主要な設備の状況当第2四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設計画は以下のとおりであります。
会社名
所在地
セグメントの名称
設備の内容
投資予定金額
資金調達方法
着手及び完了予定
完成後の増加能力
総額(百万円)
既支払額(百万円)
着手
完了
山九㈱
横浜市中区
物流事業
山九本牧物流センター
3,904
–
自己資金
2023年6月
2024年8月
倉庫面積:21,398㎡建屋:鉄骨鉄筋コンクリート造4階建