【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況(経営成績の状況)当期のわが国を含む世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和され、経済社会活動の正常化が進みました。このような景気回復への期待が寄せられる一方、世界的な金融引締めに伴う影響、原燃料価格の高騰、半導体の不足およびウクライナ情勢の長期化による影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続きました。このような状況のなか、当社グループは、新型コロナウイルス感染症に対し感染予防と感染リスク低減に努めて安定的に事業活動を継続しております。第1四半期初めには、同感染症の再流行に伴う中国でのロックダウンにより、機能製品事業の炭素製品分野の現地工場が一時稼働を停止しましたが、影響は軽微でした。また、原燃料価格の高騰による業績への悪影響はあるものの、顧客の理解を得ながら、製品価格への転嫁等の対策を進めております。当連結会計年度は、機能製品事業のリチウムイオン二次電池用バインダー向けのフッ化ビニリデン樹脂を中心に売上げが伸張しましたが、原燃料価格高騰の影響等により、セグメント営業利益合計は減益となりました。営業利益では、当連結会計年度に「その他の費用」で業務用食品包装材分野に係る固定資産の減損損失を計上しましたが、前年同期は機能樹脂分野に係る固定資産において当期を上回る減損損失の計上があったことから、前期比で増益となりました。売上収益は前期比13.6%増の1,912億77百万円、営業利益は前期比11.0%増の223億50百万円、税引前利益は前期比12.7%増の229億92百万円、当期利益は前期比18.8%増の169億78百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比19.1%増の168億68百万円となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。(単位:百万円)
売
上
収
益
営
業
損
益
前期
当期
増減
前期
当期
増減
機能製品事業
66,687
82,693
16,005
9,953
10,147
193
化学製品事業
26,157
31,784
5,627
1,432
1,849
417
樹脂製品事業
44,773
46,792
2,018
9,862
8,607
△1,254
建設関連事業
12,174
11,310
△864
985
881
△104
その他関連事業
18,547
18,696
148
3,069
2,821
△248
セグメント合計
168,341
191,277
22,936
25,304
24,308
△995
調整額 (注)
-
-
-
△5,161
△1,957
3,203
連結合計
168,341
191,277
22,936
20,142
22,350
2,207
(注) 営業損益の調整額には、報告セグメントに配分していないその他の収支が含まれております。詳細は、連結財務諸表注記「24.その他の収益」および「25.その他の費用」に記載しております。
機能製品事業
機能樹脂分野では、リチウムイオン二次電池用バインダー向けのフッ化ビニリデン樹脂、シェールオイル・ガス掘削用途向けのPGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品、PPS樹脂、その他の樹脂加工品等の売上げが増加したことから、この分野での売上げは増加しましたが、米国のPGA樹脂製造会社において生産活動を中止している影響もあり、営業利益は減少しました。炭素製品分野では、高温炉用断熱材および自動車部品用摺動材向けの炭素繊維の売上げが増加し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。この結果、本セグメントの売上収益は前期比24.0%増の826億93百万円となり、営業利益は前期比1.9%増の101億47百万円となりました。
化学製品事業
農薬・医薬分野では、農業・園芸用殺菌剤の売上げは増加し、この分野での売上げは増加しましたが、慢性腎不全用剤「クレメジン」の売上げが減少したこと等により、営業利益は減少しました。工業薬品分野では、無機および有機薬品類の売上げが増加し、前年同期の営業損失から営業利益となりました。この結果、本セグメントの売上収益は前期比21.5%増の317億84百万円となり、営業利益は前期比29.1%増の18億49百万円となりました。
樹脂製品事業
コンシューマー・グッズ分野では、フッ化ビニリデン釣糸「シーガー」の売上げが増加しましたが、家庭用ラップ「NEWクレラップ」の売上げが減少したことおよび原燃料価格高騰の影響により、この分野での売上げ、営業利益はともに減少しました。業務用食品包装材分野では、塩化ビニリデンフィルムの売上げが増加し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。この結果、本セグメントの売上収益は前期比4.5%増の467億92百万円となり、営業利益は前期比12.7%減の86億7百万円となりました。
建設関連事業
建設事業では、民間工事の減少により、売上げ、営業利益はともに減少しました。この結果、本セグメントの売上収益は前期比7.1%減の113億10百万円となり、営業利益は前期比10.6%減の8億81百万円となりました。
その他関連事業
環境事業では、売上げは前期並みでしたが、営業利益は減少しました。運送事業では、売上げ、営業利益はともに減少しました。病院事業では、売上げは前期並みでしたが、営業損失は増加しました。この結果、本セグメントの売上収益は前期比0.8%増の186億96百万円となり、営業利益は前期比8.1%減の28億21百万円となりました。
(財政状態の状況)当期末の資産合計につきましては、前期末比137億64百万円増の2,964億4百万円となりました。流動資産は、営業債権及びその他の債権が減少した一方で、棚卸資産ならびに現金及び現金同等物等が増加したこと等により、前期末比85億76百万円増の1,209億94百万円となりました。非流動資産は、有形固定資産およびその他の非流動資産が増加したこと等により、前期末比51億88百万円増の1,754億9百万円となりました。負債合計につきましては、前期末比22億84百万円減の796億29百万円となりました。これは、有利子負債が社債の償還等により前期末比22億31百万円減の262億75百万円となったこと等によるものです。資本合計につきましては、前期末比160億49百万円増の2,167億74百万円となりました。これは、剰余金の配当を48億79百万円実施した一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益を168億68百万円計上するとともに、為替市場での円安の影響によりその他の資本の構成要素が増加したこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは227億44百万円の収入となり、前期に比べ58億37百万円収入が減少しました。これは、棚卸資産が増加したこと等によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは111億円の支出となり、前期に比べ1億円支出が増加しました。これは、持分法で会計処理されている投資の売却による収入が発生した一方、政府補助金による収入が減少したこと、有形固定資産及び無形資産の取得による支出が増加したこと等によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは104億84百万円の支出となり、前期に比べ43億78百万円支出が増加しました。これは、長期借入れによる収入が発生した一方、社債の償還による支出が発生したこと、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少による支出が増加したこと等によるものです。以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ15億65百万円増加し322億5百万円となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
a.
生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
機能製品事業
91,099
+33.9
化学製品事業
21,330
+33.5
樹脂製品事業
44,333
+17.4
合計
156,764
+28.7
(注)
金額は平均販売単価によっております。
b.
受注実績当連結会計年度における土木・建築工事の施工請負等の受注実績は次のとおりです。なお、これ以外の製品については見込生産を行っております。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
建設関連事業
14,535
+42.1
7,807
+70.4
その他関連事業
1,303
+90.6
813
+104.2
合計
15,838
+45.1
8,621
+73.1
c.
販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
機能製品事業
82,693
+24.0
化学製品事業
31,784
+21.5
樹脂製品事業
46,792
+4.5
建設関連事業
11,310
△7.1
その他関連事業
18,696
+0.8
合計
191,277
+13.6
(注)
主な相手先の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先
前連結会計年度自 2021年4月1日至 2022年3月31日
当連結会計年度自 2022年4月1日至 2023年3月31日
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
伊藤忠商事㈱
13,748
8.2
19,484
10.2
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(経営成績)
当社グループは、中期経営計画「Kureha’s Challenge 2022」の2年間(2021年度および2022年度)を「Kureha’s Challenge 2020」で掲げた重点課題を完遂させるとともに、将来に向けて持続的な成長を果たすための具体的目標とアクションプランを策定する期間と位置づけ、事業活動を推進してまいりました。
当連結会計年度は、広範にわたる原燃料価格高騰による当社グループ業績への影響を軽減すべく、顧客の理解を得ながら製品価格への転嫁等、対策を進めてまいりました。また、新型コロナウイルス感染症の再流行に伴う中国でのロックダウンにより機能製品事業の炭素製品の現地工場が一時的に稼働を停止しましたが、その後の生産再開と出荷の回復により業績は持ち直しました。原材料等の調達や物流においては、一部で遅延が生じましたがいずれも大きな影響はなく、財務面では業務用食品包装材分野における熱収縮多層フィルムの将来収益見通しを見直し、関連設備の減損損失を計上しましたが、資金流動性は確保した安定的な事業運営にあたりました。
引き続き、世界的な金融引締めやエネルギー価格を含む物価の高騰、政治的・軍事的緊張の高まり等による影響が懸念され、先行きが不透明な状況ではありますが、各セグメントにおいて事業への影響を注意深くモニタリングし、適時適切な対応を図り、安定した事業運営を図ってまいります。
なお、経営成績の分析については、「4. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に、分析に基づく検討内容については、「1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(経営成績に重要な影響を与える要因)
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「3. 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容)機能製品事業フッ化ビニリデン樹脂は、各国政府の積極的な政策導入等による電気自動車普及に支えられ、リチウムイオン二次電池用バインダー用途向け販売が伸長しております。本用途での需要は底堅く、競争力のある製品の安定供給が求められており、引き続き製造設備の増強を推進します。PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品は、米国のPGA樹脂製造会社で生産活動を中止したことによる損失はあったものの、販売は増加しました。PPS樹脂は、原燃料価格の高騰を受け、利益は減少しましたが、需要は自動車向けを中心に底堅く推移しており、販売は増加しました。
化学製品事業農薬は、原材料コスト、物流コストともに上昇が継続しましたが、顧客の理解を得ながら製品価格へ転嫁し、営業利益への影響は軽微なものとなりました。工業薬品は、原燃料価格の高騰に早期に対応し、前年同期の営業損失から営業利益へと改善しました。
樹脂製品事業コンシューマー・グッズ分野では、原燃料価格の高騰に伴い、家庭用ラップ「NEWクレラップ」の価格改定を行いましたが、コスト増を補いきれず、利益は減少しました。フッ化ビニリデン釣糸「シーガー」は、販売が増加しましたが、原燃料価格の高騰により、利益は減少しました。業務用食品包装材分野では、東南アジアを中心としたアジア地域で塩化ビニリデンフィルムの販売が伸長しました。一方、熱収縮多層フィルムにおいては欧州およびオーストラリアでの競合他社との競争激化や原燃料価格の高騰、プラスチック規制の強化等による市場環境の変化により、収益性が悪化していることから、将来収益見通しを見直し、当連結会計年度に2,141百万円の減損損失を計上しました。
建設関連事業建設事業では、大手ゼネコンの中小案件への参入等、受注競争が激化しており、販売、利益とも前年同期を下回りました。
その他関連事業環境事業については、販売は前期並みでしたが、原燃料価格の高騰に伴い、利益は減少しました。社会的にゼロエミッション、リサイクル推進の流れが進む中、確実な顧客獲得と原価低減等による競争力の強化を推進するとともに、新たな事業の開拓を進めております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に関する情報(キャッシュ・フロー)「4. 経営者による財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(資本の財源および資金の流動性)当社グループは、必要な資金を金融機関からの借入、社債およびコマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。また、当社グループとしての資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、コマーシャル・ペーパーの発行枠の確保、金融機関とのコミットメントライン契約、当座貸越契約等の活用により、流動性を確保できております。当社グループは、計画利益の確保と資産の効率化による営業キャッシュ・フローの最大化を図り、優先的に新規事業および既存事業拡大のための設備投資、投融資、研究開発投資、および株主への配当等に資金を配分することを基本方針としております。その上で、長期的な資金の確保を第一としながら、長短借入金のバランスについても考慮し、必要な資金調達を実施しております。重要な資本的支出の予定およびその資金の調達源については、機能製品事業を中心に設備投資を予定し、その資金調達は自己資金、社債及び借入金を考えております。
③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5.経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。