【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の予防を行いながら徐々に行動制限の緩和を行い、政府による景気刺激策も導入され、海外からの入国規制も緩和されるなど、景気は緩やかに持ち直しています。世界経済におきましては、ウクライナ情勢の長期化による政情不安、インフレの加速による政策金利の引き上げに伴う為替変動、米国による更なる中国への貿易規制の強化、中国ではゼロコロナ政策からの転換など、先行き不透明な状況が続いています。 当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、年度を通じて半導体の供給不足はあるものの、スマートフォンやパソコン向けが主になるメモリーや最先端製品など一部製品について需要の減速がみられ、半導体製品の供給不足の状況は、全体的にピークは越えましたが、まだら模様になっています。そのような中、産業機器市場におきましては、米国内での半導体の生産・研究開発を促進するCHIPS法の受付が始まるなど、半導体確保に向け各国政府主導により半導体設備への投資が行われています。また、効率化や省人化、脱炭素化を背景に製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)向けのFA機器や工作機械への設備投資が継続的に行われました。車載市場では、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとした安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きが加速し、半導体を必要とする領域が増加しています。IT産業におきましては、DX等をテーマとする企業の高いIT投資意欲が継続しています。ワークスタイル変革や業務の自動化においては、先端企業を中心に成果が出始めており、事業のデジタル化に関連する製品・サービスへの投資も拡大しています。また、機密情報の持ち出しやランサムウェアによるサプライチェーンへの影響等、国内でもセキュリティインシデントによる大規模な被害が複数確認され、企業のリスク認識が高まっており、サイバーセキュリティ強化への投資が継続しています。以上の結果、当連結会計年度における売上高は、年度を通じて為替が円安傾向だったこともあり1,029,263百万円(前年同期比35.1%増)、営業利益は61,646百万円(前年同期比67.9%増)、経常利益は56,832百万円(前年同期比60.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては41,030百万円(前年同期比59.0%増)となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。
集積回路及び電子デバイスその他事業当事業におきましては、当社グループが主に取扱いをしているアナログIC、PLD、その他標準ICなど全般的に半導体の供給不足は続いていますが、一部メモリーなどの製品については改善しています。そのような中、当社グループの注力市場である産業機器市場においては、生産の高度化・自動化を目的としたFA機器や工業用ロボット、半導体需要の高まりに応じた各種半導体製造装置への設備投資も継続しており、幅広い分野へアナログICやその他標準ICの需要が大幅に増加しました。車載市場では、世界的な脱炭素化の流れによるEV化やより高度な自動化・電動化が進み、半導体搭載量も増加していることから、アナログICやその他標準ICを中心に伸長しました。コンピュータ市場では、中国向けサーバー需要が落ち込んだ影響を受けメモリーの需要が減少しました。また、年度を通じて為替が円安傾向だったこともあり、増収、増益となりました。これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は929,020百万円(前年同期比36.9%増)、営業利益は55,329百万円(前年同期比101.2%増)となりました。
ネットワーク事業当事業におきましては、働き方改革やリモートワークの普及によりクライアント端末へのセキュリティ対策の重要性認識が浸透してきたことから、エンドポイントセキュリティ関連商品が大幅に伸長しました。また、大型案件の獲得等によりアプリケーションやデータ分析関連商品も拡大しました。加えて、東南アジア地域を中心とした海外ネットワーク事業も大幅に伸長しました。また、国内の米国ドル建て仕入れ日本円販売ビジネスにおいて、期中の為替の円安傾向により売上原価が上昇し、売上総利益率にマイナスの影響がありました。これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は100,254百万円(前年同期比20.3%増)、営業利益は6,316百万円(前年同期比30.4%減)となりました。
(資産)流動資産は、前連結会計年度末に比べ156,047百万円増加となりました。これは主に売掛金が41,556百万円、商品が80,141百万円、その他の流動資産が15,342百万円それぞれ増加したことによるものです。固定資産は、前連結会計年度末に比べ1,011百万円減少となりました。これは主に繰延税金資産が967百万円増加したものの、のれんが530百万円、その他の無形固定資産が630百万円、投資有価証券が963百万円それぞれ減少したことによるものです。(負債)流動負債は、前連結会計年度末に比べ137,514百万円増加となりました。これは主に支払手形及び買掛金が129,146百万円、短期借入金が1,920百万円、未払法人税等が6,278百万円それぞれ増加したことによるものです。固定負債は、前連結会計年度末に比べ10,476百万円減少となりました。これは主に長期借入金が5,835百万円、退職給付に係る負債が4,111百万円それぞれ減少したことによるものです。(純資産)純資産は、前連結会計年度末に比べ27,997百万円増加となりました。これは主に資本剰余金が8,930百万円減少したものの、利益剰余金が33,245百万円、為替換算調整勘定が4,941百万円それぞれ増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の25,099百万円に比べ12,393百万円増加し、37,492百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは38,896百万円の増加
(前連結会計年度は、15,534百万円の減少)となりました。これは主に売上債権の増加、棚卸資産の増加、その他流動資産の増加及び法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益58,149百万円の計上及び仕入債務の増加があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは869百万円の減少
(前連結会計年度は、1,653百万円の減少)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入があったものの、有形固定資産、無形固定資産及び投資有価証券の取得による支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは27,100百万円の減少
(前連結会計年度は、14,368百万円の増加)となりました。これは主に短期借入金の純減、自己株式の取得による支出、配当金の支払い及び連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出があったことによるものです。
③ 仕入、受注及び販売の実績
a. 仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前年同期比(%)
集積回路及び電子デバイスその他事業
891,565
+37.9
ネットワーク事業
92,502
+26.8
合計
984,068
+36.8
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
b. 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
集積回路及び電子デバイスその他事業
972,895
△20.5
860,655
+5.4
ネットワーク事業
103,417
+15.8
37,289
+9.3
合計
1,076,313
△18.0
897,945
+5.5
(注)
セグメント間取引については、相殺消去しております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
集積回路及び電子デバイスその他事業
929,020
+36.9
ネットワーク事業
100,242
+20.5
合計
1,029,263
+35.1
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度の当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、年度を通じて半導体の供給不足はあるものの、スマートフォンやパソコン向けが主になるメモリーや最先端製品など一部製品について需要の減速がみられ、半導体製品の供給状況は、全体的にピークは越えましたが、まだら模様になっています。そのような中、産業機器市場におきましては、米国内での半導体の生産・研究開発を促進するCHIPS法の受付が始まるなど、半導体確保に向け各国政府主導により半導体設備への投資が行われています。また、効率化や省人化、脱炭素化を背景に製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)向けのFA機器や工作機械への設備投資が継続的に行われました。車載市場では、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとした安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きが加速し、半導体を必要とする領域が増加しています。IT産業におきましては、DX等をテーマとする企業の高いIT投資意欲が継続しています。ワークスタイル変革や業務の自動化においては、先端企業を中心に成果が出始めており、事業のデジタル化に関連する製品・サービスへの投資も拡大しています。また、機密情報の持ち出しやランサムウェアによるサプライチェーンへの影響等、国内でもセキュリティインシデントによる大規模な被害が複数確認され、企業のリスク認識が高まっており、サイバーセキュリティ強化への投資が継続しています。このような経済環境下、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ35.1%増加の1,029,263百万円、営業利益は前連結会計年度に比べ67.9%増加の61,646百万円、経常利益は、60.1%増加の56,832百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ59.0%増加の41,030百万円となりました。
a. 売上高当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ35.1%増加の1,029,263百万円となりました。集積回路及び電子デバイスその他事業におきましては、当社グループが主に取扱いをしているアナログIC、PLD、その他標準ICなど全般的に半導体の供給不足は続いていますが、一部メモリーなどの製品については改善しています。そのような中、当社グループの注力市場である産業機器市場においては、生産の高度化・自動化を目的としたFA機器や工業用ロボット、半導体需要の高まりに応じた各種半導体製造装置への設備投資も継続しており、幅広い分野へアナログICやその他標準ICの需要が大幅に増加しました。車載市場では、世界的な脱炭素化の流れによるEV化やより高度な自動化・電動化が進み、半導体搭載量も増加していることから、アナログICやその他標準ICを中心に伸長しました。コンピュータ市場では、中国向けサーバー需要が落ち込んだ影響を受けメモリーの需要が減少しました。その結果、前連結会計年度に比べて36.9%増加の929,020百万円となりました。ネットワーク事業におきましては、働き方改革やリモートワークの普及によりクライアント端末へのセキュリティ対策の重要性認識が浸透してきたことから、エンドポイントセキュリティ関連商品が大幅に伸長しました。また、大型案件の獲得等によりアプリケーションやデータ分析関連商品も拡大しました。加えて、東南アジア地域を中心とした海外ネットワーク事業も大幅に伸長しました。その結果、前連結会計年度に比べて20.3%増加の100,254百万円となりました。
b. 売上原価、販売費及び一般管理費売上原価は、前連結会計年度の671,104百万円から34.6%増加し、903,359百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は87.8%となりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ19.0%増加し、64,256百万円となりました。なお、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は6.2%であります。
c. 営業利益営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度の36,707百万円から67.9%増加し、61,646百万円となりました。
d. 営業外収益営業外収益は、受取利息76百万円及び受取配当金117百万円の増加等により、前連結会計年度の844百万円から32.6%増加し、1,119百万円となりました。
e. 営業外費用営業外費用は、支払利息1,566百万円、債権譲渡損1,092百万円及び為替差損1,423百万円の増加等により、前連結会計年度の2,064百万円から187.4%増加し、5,933百万円となりました。
f. 経常利益経常利益は、前連結会計年度の35,487百万円から60.1%増加し、56,832百万円となりました。
g. 特別利益特別利益は、段階取得による差益が1,918百万円減少したものの、投資有価証券売却益1,566百万円及び投資有価証券交換益503百万円の増加等により、前連結会計年度の1,928百万円から12.6%増加し、2,170百万円となりました。
h. 特別損失特別損失は、投資有価証券評価損504百万円の増加等により、前連結会計年度の334百万円から155.6%増加し、853百万円となりました。
i. 税金等調整前当期純利益税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の37,081百万円から56.8%増加し、58,149百万円となりました。
j. 法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、前連結会計年度の25.8%から0.6%増加し、26.4%となりました。
k. 親会社株主に帰属する当期純利益親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の25,798百万円から59.0%増加し、41,030百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a. 財政状態「第2 事業の状況 4
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
b. キャッシュ・フロー「第2 事業の状況 4
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
c. 資金需要当社グループの運転資金需要の主要なものは、売上の増加に伴う支払と回収のサイト差及び商品在庫の保有によるものです。サイト差については、主に海外の仕入先に支払う仕入代金のサイトが20日から50日程度なのに対し、国内外の得意先からの回収サイトは30日から150日程度と長くなっていることが主な要因であります。また商品在庫に関しては、得意先への納入期限に対応するために適正水準を保持しております。
d. 財務政策当社グループにおける増加運転資金につきましては、内部資金、売上債権の流動化、金融機関からの借入及び増資等によって調達しております。グループ各社の必要資金は、主に子会社である㈱マクニカが資金調達を行い、他のグループ企業に融資していく方針であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の報告数字に影響を与える見積りは、主として棚卸資産、貸倒引当金、投資の減損、繰延税金資産、賞与引当金、退職給付費用等であり、継続して評価を行っております。見積り及び判断については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 棚卸資産当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価額を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。
b. 貸倒引当金当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 投資の減損当社グループは長期的な取引関係維持のために、特定の顧客、仕入先及び金融機関等に対する少数持分を保有しています。また新規仕入先の開拓を目的とした情報収集のために、投資事業有限責任組合及びそれに類する組合(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるもの)等への出資をしています。これらには市場価格のある公開企業等への投資と市場価格のない未公開企業等への投資があります。市場価格のある投資につきましては、市場価格が取得原価に比べ50%以上下落した場合には無条件で減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には個別に下落率の推移、発行体の財政状態等を勘案し、減損処理を行っております。一方、市場価格のない投資の減損につきましては、実質価額が著しく低下した場合、合理的な事業計画等に基づき、回復可能性が認められない場合には実質価額まで減損処理を行っております。また非連結の子会社及び関連会社の株式等についても、有価証券の評価方法に準じて処理を行っております。当連結会計年度において減損処理を行い、投資有価証券評価損800百万円を計上しております。今後も株式市場の悪化や投資先の業績不振などにより、評価損を計上する可能性があります。
d. 繰延税金資産当社グループは、将来の課税所得と慎重かつ実現可能性の高い継続的な経営計画を検討したうえで繰延税金資産を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を回収又は解消できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上する可能性があります。
e. 賞与引当金賞与引当金は、支給対象期間の業績に応じて支給見込額のうち当期に帰属する額を計上しておりますが、実際の支給額は支給時点における外部環境及び当社グループの状況を勘案のうえ決定されるため、実際の支給額が見積りと異なる場合には追加の費用計上が必要となる可能性があります。
f. 退職給付費用従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び直近の統計数値に基づいて算出される死亡率が含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。近年の割引率の低下及び年金資産運用での損失は当社グループの年金費用に対して悪影響を及ぼします。