【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在における判断です。
(1)経営成績当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、先行き不透明な状況が継続しております。一方、自然災害の激甚化に伴う防災・減災対策や、公共インフラの老朽化対策など、持続可能な社会のために全国規模でさまざまな改善・強化策が推進され、空間情報技術が貢献できる業務領域が拡大しております。また、民間企業や行政機関などのあらゆる組織において、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが活発化し、AI・IoT・ICTなどを活用した業務の効率化や省力化が推進されております。 このような環境のなか、当社グループでは、リモート環境での事業継続を前提とした体制・環境整備を充実するほか、お客様向けの営業・提案活動の手法も大幅に見直し、ニューノーマル時代への対応を加速してまいりました。また、広域災害の発生時には、最新の測量・計測技術を投入し、被災状況の迅速な把握から、復旧・復興、さらには二次災害の防止などに資する情報の提供にも尽力いたしました。 そして、「パスコグループ中期経営計画2018-2022」の3年目となる当期は、「事業戦略の形成」、「既存事業の深化」、「IoT基盤の強化」の3つの方針を掲げ、持続的な企業成長に向けた利益体質への変革に取り組んでまいりました。
(具体的な活動) 当期は、セコムとの共想による新事業の創出を目指した専門組織「インキュベーション推進室」を新設、リスク情報プラットフォームビジネスのほか、衛星活動ビジネスなど新たな事業戦略の形成に努めてまいりました。また、既存事業領域においては、当社の技術優位性を発揮するため、対応する入札方式を競争入札からプロポーザル方式へシフトを図るほか、生産能力や生産稼働率を総合的に判断した受注戦略の実践、3次元技術を生かした国土強靱化・インフラ老朽化対策事業に注力してまいりました。 また、サイバーセキュリティや基幹システムなどのIoT基盤の強化を図り、ペーパレス化や押印廃止などの推進による管理プロセスの省力化、人事制度の改定、リモート環境での業務体制の強化などにより、事業継続体制の強化を図ってまいりました。
国内公共部門においては、河川の管理や災害対策、ダム・港湾・漁港の維持管理、海岸保全などを目的とした3次元計測業務やデータマネジメントサービスの提供、道路・上下水など公共インフラの老朽化対策と管理のデジタル化、農業・森林分野での空間情報の活用提案に注力しました。さらに、スマートシティの実現に向けた都市のデジタルツイン構築業務にも、当社の3次元技術を活用して積極的に参画しております。 一方、国内民間部門においては、物流・エリアマーケティング・不動産管理などの分野で既存顧客向けの事業拡大に注力したものの、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新たな顧客開拓や新規契約の締結に影響が出ております。 海外部門においては、2019年7月に株式譲渡した米国子会社の連結除外による影響のほか、ASEAN地域を中心に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けております。一方、中期経営計画に沿った海外子会社の事業最適化など海外事業の健全化の取り組み成果により、利益改善につながっております。
(当期の経営成績)当期および前期の連結経営成績は下記のとおりであります。また、連結経営成績の比較にあたり、参考情報として前期に除外した米国の子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の損益および株式売却に関連する損益影響を除外した経営成績を掲示しております。
連結経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
増減率(%)
売上高
54,282
55,479
1,197
2.2
営業利益
3,610
5,075
1,464
40.6
経常利益
3,569
5,020
1,450
40.6
親会社株主に帰属する当期純利益
3,511
3,519
7
0.2
(参考資料)Keystone Aerial Surveys,Inc.の損益および株式売却に関連する損益影響を除外した連結経営成績
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
増減率(%)
売上高
53,167
55,479
2,312
4.3
営業利益
3,437
5,075
1,637
47.7
経常利益
3,395
5,020
1,624
47.8
親会社株主に帰属する当期純利益
2,380
3,519
1,138
47.8
受注高、売上高等の損益の状況を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。当社グループは、主要顧客である官公庁からの受注が第1四半期に集中し、収益は年度末の納期に向けて増加する傾向にあります。
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)
(単位:百万円)
(会計期間)
当連結会計年度
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
受注高
22,659
16,020
8,627
6,048
53,355
売上高
10,125
12,697
14,509
18,148
55,479
営業利益
21
415
1,551
3,087
5,075
経常利益
△40
409
1,520
3,131
5,020
親会社株主に帰属する当期純利益
△148
312
1,018
2,337
3,519
前連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)
(単位:百万円)
(会計期間)
当連結会計年度
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
受注高
26,328
15,083
8,928
6,888
57,229
売上高
9,868
13,119
14,053
17,240
54,282
営業利益
△849
586
1,653
2,219
3,610
経常利益
△863
513
1,706
2,213
3,569
親会社株主に帰属する当期純利益
△514
1,111
1,377
1,537
3,511
受注高、売上高の状況をセグメントごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)
(単位:百万円/前期比:%)
前連結会計年度末受注残高
受注高
前期比
売上高
前期比
当連結会計年度末受注残高
前期比
1 国内部門
(21,387)21,387
51,994
△3.6
53,528
4.2
19,853
△7.2
(1) 公共部門
(15,031)15,031
46,803
△0.2
47,832
5.5
14,003
△6.8
(2) 民間部門
(6,355)6,355
5,190
△26.3
5,696
△5.5
5,850
△8.0
2 海外部門
(1,523)1,507
1,361
△58.7
1,951
△33.5
916
△39.8
合計
(22,911)22,894
53,355
△6.8
55,479
2.2
20,770
△9.3
(注) 1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。2 前連結会計年度末受注残高の上段( )内表示額は、前連結会計年度における年度末受注残高であり、下段は当連結会計年度の外国為替相場の変動を反映させたものであります。
<国内部門>(公共部門・民間部門)国内公共部門の受注高は、前期に引き続き航空レーザーによる測量業務の受注は堅調に推移したものの、道路台帳作成や固定資産土地評価業務の受注が減少したことにより前期比84百万円減少(前期比0.2%減)の46,803百万円となりました。売上高は、航空レーザーによる測量業務等が増加したことにより前期比2,513百万円増加(同5.5%増)の47,832百万円となりました。受注残高は前期比1,028百万円減少(同6.8%減)の14,003百万円となりました。
国内民間部門の受注高は、前期において一部ソリューションのリプレース等もあり受注が好調であったこと、また、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い顧客予算縮小等の影響も生じており、前期比1,852百万円減少(同26.3%減)の5,190百万円となりました。売上高についても前期比332百万円減少(同5.5%減)の5,696百万円となりました。受注残高は前期比505百万円減少(同8.0%減)の5,850百万円となりました。
この結果、国内部門(公共部門・民間部門)合計では、受注高が前期比1,937百万円減少(同3.6%減)の51,994百万円、売上高は前期比2,181百万円増加(同4.2%増)の53,528百万円、受注残高は前期比1,533百万円減少(同7.2%減)の19,853百万円となりました。
<海外部門>海外部門の受注高は、米国子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の連結除外に伴う減少により、全体で前期比1,936百万円減少(同58.7%減)の1,361百万円となりました。売上高は、米国子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の連結除外による減少等により全体で前期比983百万円減少(同33.5%減)の1,951百万円、受注残高は前期比606百万円減少(同39.8%減)の916百万円となりました。
この結果、受注高合計は前期比3,873百万円減少(同6.8%減)の53,355百万円、売上高は前期比1,197百万円増加(同2.2%増)の55,479百万円、受注残高は前期比2,140百万円減少(同9.3%減)の20,770百万円となりました。
利益面につきましては、売上総利益は、国内公共部門の売上高が増加し、生産効率の向上を図ってきたこと等もあり原価率が改善したほか、海外部門の事業最適化の取り組みにより前期比1,240百万円増益(同9.2%増)の14,788百万円となりました。営業利益は、米国子会社の連結除外の影響のほか、コロナ禍においてリモート環境を活用した営業プロセスの見直し等に伴い販売費及び一般管理費が前期比223百万円減少(同2.3%減)したことや売上総利益の増加により前期比1,464百万円増益(同40.6%増)の5,075百万円となりました。経常利益は、前期に貸倒引当金戻入額32百万円の計上がありましたが、為替差損が前期比で31百万円減少したことや営業利益の増加により前期比1,450百万円増益(同40.6%増)の5,020百万円となりました。税金等調整前当期純利益は、前期に減損損失を1,621百万円計上した一方で、関係会社株式売却益を2,016百万円計上しましたが、経常利益の増加により前期比556百万円増益(同13.1%増)の4,796百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税を490百万円計上し、法人税等調整額を損失方向に770百万円計上しましたが、税金等調整前当期純利益の増加により前期比7百万円増益(同0.2%増)の3,519百万円となりました。
(2)財政状態当社グループは、納品後の入金が年度明けの4、5月に集中することから、「受取手形及び売掛金」および「短期借入金」が年度末にかけて増加していき、第1四半期で減少する傾向があります。「受取手形及び売掛金」および「短期借入金」の推移を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度
(単位:百万円)
第1四半期連結会計期間
第2四半期連結会計期間
第3四半期連結会計期間
連結会計年度
受取手形及び売掛金
10,538
17,094
26,734
34,904
短期借入金
-
5,000
12,500
18,500
前連結会計年度
(単位:百万円)
第1四半期連結会計期間
第2四半期連結会計期間
第3四半期連結会計期間
連結会計年度
受取手形及び売掛金
11,180
18,013
26,035
33,313
短期借入金
1,500
5,000
12,100
17,400
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」)より3,015百万円増加し67,345百万円となりました。その主な要因は、前期末営業債権の回収や、「短期借入金」が1,100百万円増加したことで「現金及び預金」が前期末より2,437百万円増加したことによるものです。
負債合計は前期末より1,125百万円減少し45,148百万円となりました。その主な要因は、「退職給付に係る負債」が前期末より929百万円減少したことによるものです。
純資産合計は、前期末より4,140百万円増加し22,197百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益3,519百万円により「利益剰余金」が増加したことによるものです。
(3)キャッシュ・フロー当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ2,437百万円増加し16,164百万円となりました。当期におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは4,674百万円の資金の増加(前期は2,903百万円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益4,796百万円、固定資産の減価償却費1,695百万円、たな卸資産の減少による1,341百万円です。また、主な資金の減少要因は、売上債権の増加による1,823百万円、法人税等の支払額955百万円です。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは2,827百万円の資金の減少(前期は949百万円の資金の増加)となりました。主な資金の減少要因は、生産機材・ツール等の有形・無形固定資産の取得による支出2,222百万円です。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは722百万円の資金の増加(前期は4,427百万円の資金の減少)となりました。主な資金の増加要因は、短期借入金の純増減額1,100百万円です。また、主な資金の減少要因は、配当金の支払額360百万円です。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。(貸倒引当金)債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額について貸倒引当金を計上しております。経済状況、販売先の財務状況、支払能力および支払状況、担保の処分可能見込額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。(固定資産の減損)当社グループは、事業用資産については管理会計上の区分に基づいて、賃貸用資産および遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、将来キャッシュ・フローを割り引いた使用価値または不動産鑑定評価額等より処分費用見込額を控除した正味売却価額により算定しております。将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況・予算等)と整合的に修正し、各資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積っております。将来キャッシュ・フロー、割引率および不動産鑑定評価額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、固定資産の減損の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。(繰延税金資産)繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性および将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度および繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況、予算等)と整合的に修正し見積っております。当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産および法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。(工事進行基準)請負業務について成果の確実性が認められる部分は、工事進行基準を適用しております。適用にあたっては、工事収益総額、工事原価総額および連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積る必要があります。工事進行基準による収益の計上の基礎となる工事原価総額は、契約ごとに見積りを行っております。工事原価総額の見積り時に想定していなかった原価の発生等により工事原価総額を見直した場合は、工事進捗度が変動するため、売上高および売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。(工事損失引当金)将来損失が発生すると見込まれ、かつ、連結会計年度末時点で当該損失額を合理的に見積ることが可能な請負業務について、翌連結会計年度以降の損失見積額を引当計上しております。受注規模の大きい請負業務において、想定していなかった原価の発生や工期の延長等により見積りを超えた原価が発生する場合は、工事損失引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付に係る負債)確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があります。当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記情報 追加情報」に記載のとおりであります。