【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在における判断です。
(1)経営成績中期経営計画の2年目となる当期は、「稼ぐ力」の強化、海外事業の健全化、管理コストの適正化に注力し、さらに、未来人材の育成、IoT時代のサイバーセキュリティ、NewSpace時代への挑戦を掲げ、将来の成長に向けた戦略的投資を推進してまいりました。
(当期の具体的な活動)当期は、前期に引き続き、営業と技術の本社機能を一体化した、短期的な事業戦略を遂行する「事業統括本部」と、中長期的な事業戦略の立案を担う「経営戦略本部」の体制のもと、受注促進と生産改革、新ビジネスの創出に取り組みました。具体的には、各種業務分野における生産能力や稼動状況に即した営業戦略を実践し、受注拡大と生産効率の向上を図りました。さらに、中長期的な新たなビジネスの創出に向けた活動として、各分野における技術的な優位性を保有する民間企業や大学研究機関との提携や共同研究等も進めてまいりました。また、2019年に発生した台風15号・19号等の広域災害においては、空間情報技術を保有する企業としての使命を果たすため、最先端の技術を駆使し、迅速な被災状況の把握、情報分析、情報提供等を通じて、災害の復旧・復興にも貢献いたしました。 なお、世界的に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症による当期の事業活動への影響は軽微でした。
セグメント別の活動状況について、国内公共部門においては、国土強靭化対策やインフラ老朽化対策に関連する事業に注力いたしました。国土強靭化対策におきましては、河川・ダム・砂防等の分野における地形の高精度な3次元計測事業が拡大いたしました。この3次元計測成果は、自然災害に対する危険性の判定や被災時の影響範囲の評価等に活用する重要な基礎資料となります。また、インフラ老朽化対策におきましては、道路の老朽化対策のための3次元計測のほか、道路や学校等の公共施設の長寿命化にかかわる計画業務が拡大いたしました。国内民間部門においては、物流事業者向けの業務の効率化支援のためのサービスと販売チャネルの拡充に努めてまいりました。また、不動産向けの物件管理サービスのクラウド化を進めてまいりました。 海外部門においては、前期より取り組んでまいりました海外子会社の事業最適化を完了いたしました。これにより連結売上高への貢献度は低下したものの、利益改善につながりました。また、来期以降の事業の方向性を構築すべく、衛星活用の市場拡大に向けた取り組みのほか、独立行政法人国際協力機構(JICA)の政府開発援助(ODA)事業の拡大に努めてまいりました。
(当期の経営成績)受注高、売上高等の損益の状況を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。当社グループは、主要顧客である官公庁からの受注が第1四半期に集中し、収益は年度末の納期に向けて増加する傾向にあります。
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)
(単位:百万円)
(会計期間)
当連結会計年度
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
受注高
26,328
15,083
8,928
6,888
57,229
売上高
9,868
13,119
14,053
17,240
54,282
営業利益
△849
586
1,653
2,219
3,610
経常利益
△863
513
1,706
2,213
3,569
親会社株主に帰属する当期純利益
△514
1,111
1,377
1,537
3,511
前連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日)
(単位:百万円)
(会計期間)
当連結会計年度
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
受注高
22,691
14,288
9,683
5,823
52,487
売上高
9,153
11,282
13,493
18,016
51,945
営業利益
△1,072
△188
1,160
2,864
2,764
経常利益
△1,047
△160
1,094
2,960
2,847
親会社株主に帰属する当期純利益
△834
△258
739
1,736
1,383
受注高、売上高の状況をセグメントごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)
(単位:百万円/前期比:%)
前連結会計年度末受注残高
受注高
前期比
売上高
前期比
連結除外による減少
当連結会計年度末受注残高
前期比
1 国内部門
(18,802)18,802
53,931
10.0
51,346
7.8
-
21,387
13.7
(1) 公共部門
(13,461)13,461
46,888
9.9
45,318
9.5
-
15,031
11.7
(2) 民間部門
(5,341)5,341
7,043
10.8
6,028
△3.6
-
6,355
19.0
2 海外部門
(2,052)2,009
3,298
△4.9
2,935
△31.9
848
1,523
△25.8
合計
(20,854)20,811
57,229
9.0
54,282
4.5
848
22,911
9.9
(注) 1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。2 前連結会計年度末受注残高の上段( )内表示額は、前連結会計年度における年度末受注残高であり、下段は当連結会計年度の外国為替相場の変動を反映させたものであります。 3 連結除外による減少は、連結子会社のKeystone Aerial Surveys,Inc.の連結除外に伴い、当該子会社の連結除外時の受注残高を記載しております。
<国内部門>(公共部門・民間部門)国内公共部門の受注高は、当社において航空レーザーや車両搭載型レーザー(MMS:モービル・マッピング・システム)による測量業務の受注が好調であったことにより前期比4,224百万円増加(前期比9.9%増)の46,888百万円となりました。売上高は、航空レーザーによる測量業務等が増加したことにより前期比3,937百万円増加(同9.5%増)の45,318百万円となりました。受注残高は前期比1,570百万円増加(同11.7%増)の15,031百万円となりました。
国内民間部門の受注高は、各種ソリューションの受注が好調だったことにより前期比687百万円増加(同10.8%増)の7,043百万円となりました。売上高は、自動運転システムのデータ整備が前期に一巡したことにより減少し、前期比223百万円減少(同3.6%減)の6,028百万円となりました。受注残高は前期比1,014百万円増加(同19.0%増)の6,355百万円となりました。
この結果、国内部門(公共部門・民間部門)合計では、受注高が前期比4,911百万円増加(同10.0%増)の53,931百万円、売上高は前期比3,713百万円増加(同7.8%増)の51,346百万円、受注残高は前期比2,585百万円増加(同13.7%増)の21,387百万円となりました。
<海外部門>海外部門の受注高は、当社においてGISデータの整備業務の受注が増加しましたが、米国の子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の連結除外に伴う減少により、全体で前期比169百万円減少(同4.9%減)の3,298百万円となりました。売上高は、米国の子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の連結除外による減少等により全体で前期比1,377百万円減少(同31.9%減)の2,935百万円、受注残高は前期比528百万円減少(同25.8%減)の1,523百万円となりました。
この結果、受注高合計は前期比4,742百万円増加(同9.0%増)の57,229百万円、売上高は前期比2,336百万円増加(同4.5%増)の54,282百万円、受注残高は前期比2,056百万円増加(同9.9%増)の22,911百万円となりました。
利益面につきましては、売上総利益は、売上高の増加により前期比1,093百万円増益(同8.8%増)の13,547百万円となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費が前期比246百万円増加(同2.5%増)しましたが、売上総利益の増加により前期比846百万円増益(同30.6%増)の3,610百万円となりました。経常利益は、為替差損益が前期比50百万円の損失となりましたが、営業利益の増加により前期比722百万円増益(同25.4%増)の3,569百万円となりました。税金等調整前当期純利益は、特別損失として売却予定の事業用資産等の減損損失を1,621百万円計上しましたが、関係会社株式売却益を2,016百万円計上したこと等から前期比2,154百万円増益(同103.3%増)の4,240百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税を747百万円計上し、法人税等調整額を利益方向に55百万円計上し、前期比2,128百万円増益(同153.8%増)の3,511百万円となりました。
(2)財政状態当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」)より2,564百万円減少し64,330百万円となりました。また、負債合計は前期末より5,313百万円減少し46,273百万円となりました。その主な要因は、前期末営業債権の回収資金や、米国の子会社Keystone Aerial Surveys,Inc.の売却による収入等で借入金を返済し、「短期借入金」が2,800百万円減少、「長期借入金」が1,600百万円減少したことによるものです。
純資産合計は、前期末より2,748百万円増加し18,056百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益3,511百万円により「利益剰余金」が増加したことによるものです。
(3)キャッシュ・フロー当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ686百万円減少し13,727百万円となりました。当期におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは2,903百万円の資金の増加(前期は4,957百万円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益4,240百万円、固定資産の減価償却費1,726百万円、減損損失 1,621百万円です。また、主な資金の減少要因は、売上債権の増加額2,276百万円、関係会社株式売却益 2,016百万円です。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは949百万円の資金の増加(前期は1,803百万円の資金の減少)となりました。主な資金の増加要因は、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入2,670百万円、有形固定資産の売却による収入911百万円です。また、主な資金の減少要因は、生産機材・ツール等の有形・無形固定資産取得による支出2,904百万円です。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは4,427百万円の資金の減少(前期は3,744百万円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、短期借入金の純減額2,800百万円、長期借入金の返済による支出1,600百万円です。
資金調達はセコム㈱、セコムクレジット㈱および金融機関から行っております。社会に対し真に価値あるサービスの提供を継続させるためには、常に最新の生産技術を保持し、さらには、生産技術の継続的な改革改善を推し進め、事業者間での競争優位(技術優位性)を維持しなければなりません。当連結会計年度の有形・無形固定資産の取得による支出は2,904百万円、研究開発費は411百万円となりました。今後においても、事業運営に即応した所要資金の機動的調達を行ってまいります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。(貸倒引当金)債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額について貸倒引当金を計上しております。経済状況、販売先の財務状況、支払能力および支払状況、担保の処分可能見込額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。(固定資産の減損)当社グループは、事業用資産については管理会計上の区分に基づいて、賃貸用資産および遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、将来キャッシュ・フローを割り引いた使用価値または不動産鑑定評価額等より処分費用見込額を控除した正味売却価額により算定しております。将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況・予算等)と整合的に修正し、各資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積っております。将来キャッシュ・フロー、割引率および不動産鑑定評価額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、固定資産の減損の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性および将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度および繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況、予算等)と整合的に修正し見積っております。当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産および法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。(工事進行基準)請負業務について成果の確実性が認められる部分は、工事進行基準を適用しております。適用にあたっては、工事収益総額、工事原価総額および連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積る必要があります。工事進行基準による収益の計上の基礎となる工事原価総額は、契約ごとの計画原価を使用して見積りを行っております。計画原価の策定時に想定していなかった原価の発生等により計画原価を見直した場合は、工事原価総額および工事進捗度が変動するため、売上高および売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。(工事損失引当金)将来損失が発生すると見込まれ、かつ、連結会計年度末時点で当該損失額を合理的に見積ることが可能な請負業務について、翌連結会計年度以降の損失見積額を引当計上しております。受注規模の大きい請負業務において、想定していなかった原価の発生や工期の延長等により見積りを超えた原価が発生する場合は、工事損失引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。(退職給付に係る負債)確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があります。当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記情報 追加情報」に記載のとおりであります。