【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
新型コロナウイルス禍により大きく事業環境が変化する中、日本のみならず世界全体としてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の波が押し寄せ、本格的なデジタル・ソーシャル時代が到来しようとしています。また当社グループが事業を展開するマーケティング領域におきましてもDXの流れは一気に加速しております。
このような背景のもと、当社グループでは、企業のマーケティングDXへの対応を支援するため、自社開発のマーケティングSaaSツールの提供やSNS活用を中心としたソリューション提供といった『顧客企業と人をつなぐ』BtoBビジネスを展開しております。
中期テーマとして「マーケティングDX支援企業として圧倒的ポジションの確立」を掲げて、を掲げ、2022年12月期は『来期以降の飛躍に向けてプロダクト・サービスを磨き上げ、グループ成長力の更なる向上を目指す』という方針のもと成長投資を実施いたしました。
当社の報告セグメントは、マーケティングDX支援事業の単一セグメントとしておりますが、事業区分ごとの概況は以下のとおりであります。
①国内SaaS事業
自社開発のマーケティングSaaSツールの提供及びSaaSで補いきれないマーケティングDX施策の提供、さらにはカスタマーサクセス人員がサポートすることによって、顧客企業のマーケティング人材の質的・量的な不足を補い、効率的かつ効果的に成果を上げるための支援を行っております。ダイレクトマーケティングの成果向上を実現するツール「Letro(レトロ)」、動画作成ツール「LetroStudio(レトロスタジオ)」、Twitterによるプロモーションを効率的に行うためのツール「echoes(エコーズ)」が主要ツールとなっております。
2022年戦略としては、『プロダクトの強化』、『提案メニューの拡充』、『カスタマーサクセスの強化』の3つを重点ポイントとし、人材を中心に成長投資を実施いたしました。競争優位性を確立した「Letro」を注力商材に据えアップグレードを強化した結果、第4四半期(10‐12月)でストック売上が四半期過去最高を更新し、ストック売上比率は61.4%(前年同期比12.4pt増)となりました。ARRは8.72億円(前年同期比29.8%増)に拡大、Letro ARRについては5.40億円(前年同期比58.8%増)に成長しております。
②海外SaaS事業
シンガポールの連結子会社であるCreadits Pte. Ltd.(以下、「Creadits」という。)は、3D広告クリエイティブ制作における高品質・ハイスピード・低価格を実現する仕組みを提供するサービス「Craft(クラフト)」をグローバルに展開しております。顧客企業はメタバース時代を牽引する欧米のゲーム会社中心で、新興国分業体制による「リモートでつながったマイクロファクトリー(小型制作工場)」を構築していることが最大の強みとなっています。
2022年戦略としては、メタバース時代を牽引するゲーム業界における3D動画クリエイティブ需要に応えるべく、『スキル特化型クリエイターの拡充・内製力強化の2軸での供給力を向上』、『カスタマーサクセス人材の拡充』、『新SaaSツール開発による生産性向上』の3つを重点ポイントとし、新たな拠点を増設した他、内部クリエイターを中心とした人材拡充など積極的な成長投資を実施いたしました。既存顧客の単価向上に注力した結果、想定以上の成果を獲得した一方、2022年12月に顧客固有の理由によって最大顧客の一時解約が発生したことに伴い、第4四半期(10‐12月)のストック売上比率は85.1%(前年同期比5.1%減)となり、ARRは11.26億円(前年同期比4.2%増)と前四半期時点のARRから大幅な低下となりました。
③ソリューション事業
ファンの存在をマーケティングに活用し、ビジネスの成長を目指す概念が浸透しつつある中で、「SNS活用」や「ファンとの関係構築・強化」をキーワードに、顧客企業のマーケティングDX課題において企画立案から施策の実行までを包括的に支援する事業を行っております。
2022年戦略としては、『旺盛な需要に応えるべく人材中心に成長投資を実施し、既存顧客との更なる取引拡大』、『これまでの大企業中心の顧客構成に加え、新規事業における低額のSaaSツールをドアノック商材として中小企業にもアプローチすることで顧客層を拡大』の2つを重点ポイントとして事業を推進し、人材を中心とした成長投資が順調に進捗いたしました。
「SNSアカウント運用」・「ファンベース実行支援」・「デジタル広告運用」といった既存事業に加えて、新規事業としては株式会社ネクストバッターズサークル(2021年4月設立の子会社)において、SNS運用に必要なリソースのシェアリングサービス「QUMIAI(クミアイ)」を2022年2月から提供開始しました。また、2022年8月にデジタル広告運用の強化を目的として、株式会社デジタルチェンジを連結子会社化しました。
ストック売上比率の高い事業性質ではないものの、SNSアカウント運用の拡大を主として、第4四半期(10‐12月)のストック売上比率が21.1%(前年同期比5.6%増)に拡大し、四半期過去最高売上を達成いたしました。
④中国進出支援事業
近年急速に市場が拡大している越境ECへの出店による中国進出をしたい日本企業等に対し、日本の商品に愛着のある在日中国人や中華圏で人気のある日本人インフルエンサーの発信力を活用したプロモーション等の支援を行っております。インバウンド市場において訪日外国人をターゲットに商品やサービスを提供したい企業への支援については、新型コロナウイルス禍において人の往来が制限されていることから縮小しております。
2022年の戦略としては、『インフルエンサーを拡充し中国越境EC支援における影響力の増加』、『美容・健康食品業に加えて新たに中国進出したい顧客層の開拓』の2つを重点ポイントとして事業を推進し、SNS運営支援人材の拡充や、SNSにファンを増やすためのコンテンツ制作費・広告宣伝費の投下などの成長投資を実施いたしました。
越境EC支援を中心に支援プロジェクト数が増加した他、グループ方針に沿ってストック売上の創出にも成功し、ストック売上比率は第4四半期(10‐12月)に13.6%(前年同期は無し)となっております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,551,016千円(前期比28.8%増)、売上総利益は3,507,306千円(前期比26.5%増)となりました。また、営業利益は、売上高及び売上総利益の増加に伴い1,016,054千円(前期比31.2%増)となりました。さらに、経常利益は営業利益の増加に加え、為替差益や持分法による投資利益を計上したこと等により1,079,005千円(前期比27.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は経常利益の増加に加え投資有価証券売却益を計上したこと等により805,669千円(前期比10.8%増)となりました。
②資産、負債及び純資産の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度と比べて740,599千円増加し4,569,042千円となりました。これは主に、現金及び預金が413,458千円、受取手形及び売掛金が244,649千円それぞれ増加したこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,486千円減少し1,350,439千円となりました。これは主に、新規借入等に伴い長期借入金(1年以内返済予定長期借入金含む)が142,338千円、前受金が42,703千円それぞれ増加した一方で、未払法人税等が63,597千円、未払消費税等が151,027千円それぞれ減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて739,113千円増加し3,218,603千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が786,550千円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて413,458千円増加し、2,115,796千円となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動により増加した資金は、338,954千円となりました(前年同期は849,363千円の増加)。これは主に、税金等調整前当期純利益を1,092,418千円計上したこと及び減価償却費を122,197千円計上した一方で、法人税等の支払が323,467千円発生したこと及び売掛債権を195,357千円増加したこと及び為替差損益を180,934千円計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動により減少した資金は、66,632千円となりました(前年同期は87,759千円の増加)。これは主に、無形固定資産の取得による支出が72,754千円があったこと等によるものあります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動により増加した資金は、107,883千円となりました(前年同期は423,937千円の支出)。これは主に、新規の借入による収入が300,000千円あった一方で、借入金の返済に伴い長期借入金の返済による支出が176,467千円あったこと等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業はマーケティングDX支援事業を主な事業とする単一セグメントであるため、以下の事項はサービス別に記載しております。
生産実績
当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
受注実績
当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。
サービス
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
マーケティングサービス
3,704,871
69.1
1,273,024
322.5
CREADITSサービス
1,708,825
184.3
88,615
85.0
合計
5,413,697
86.1
1,361,639
272.9
(注)1.金額は、販売価格によっております。
販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
サービス
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
マーケティングサービス
2,826,601
53.0
CREADITSサービス
1,724,415
196.1
合計
4,551,016
73.3
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
サービス
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
オイシックス・ラ・大地株式会社
1,143,044
18.4
–
–
株式会社ブルックス
653,885
10.5
–
–
1.オイシックス・ラ・大地株式会社及びブルックス株式会社は、当連結会計年度においては、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の分析
当連結会計年度の売上高は4,551,016千円となりました。
事業別の粗利売上は、SaaS事業が1,314,180千円、海外SaaS事業が1,724,414千円、ソリューション事業が1,237,362千円、中国進出進出事業が275,058千円となり、国内事業であるSaaS事業とソリューション事業がグループ全体の収益を支える柱として安定収益である一方、海外関連事業である海外SaaS事業及び中国進出支援事業がグループの成長を牽引しているものと考えております。
また、事業別の売上高の事業別の推移は以下の通りであります。
②資本の財源及び資金の流動性
i)財務戦略
当社グループの財務の方針は、健全な財務基盤を維持しつつ、マーケティングDX支援事業の中長期的な成長のための投資を行うことを基本方針としております。そのため、当社グループの事業活動における主な資金需要は、各事業の事業規模拡大や新規事業推進に伴う国内外の子会社における運転資本等であります。
当社グループは、主として内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達をおこなっており、これらの事業活動に必要となる資金の安定的な確保に努めております。内部資金については、国内事業で安定的に利益剰余金を積み重ねることで維持している現預金を活用しており、各種事業への機動的な投資の実行を可能にするとともに、自己資本比率をはじめとする各指標のもと、資金効率の向上に努めており、2022年12月末時点における自己資本比率は69.0%となっております。
ii)投資方針
投資については、営業キャッシュ・フローの範囲内で行うことを目標としており、手元に残る資金は企業価値を大きく向上させる投資が必要な場合に備え、社内に留保しております。また、合わせて過年度に投資した投資有価証券の売却等、資産の効率的な運用に向けた対応も進めてまいります。
iii)資金調達
資金調達においては、当社は、金融機関に十分な借入枠を有しており、市場環境を勘案しながら慎重な判断のもと借入を行っております。当連結会計年度におきましては、2021年3月に3億円のコミットメントライン契約を締結し、借入金を増やすことなく、機動的な資金調達ができる環境を整えております。今後も引き続き十分な手元資金を維持できるように努めてまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び預金残高は2,115,796千円、借入金残高は485,276千円となっております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標達成を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年2月10日に公表した2023年12月期の業績予想である、売上高5,500百万円~6,000百万円、営業利益1,200百万円~1,300百万円、経常利益1,200百万円~1,300百万円を目標としております。
④重要な会計上の見積り
i)繰延税金資産の回収可能性
⑴当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
繰延税金資産 11,086千円
⑵会計上の見積りの内容について連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
繰延税金資産は、将来の事業計画に基づく課税所得の発生時期及び金額により見積もっております。当社は、過去の実績や直近の事業環境等に基づき、将来の顧客平均売上単価、新規顧客獲得数、顧客との契約の継続率及び顧客解約率等に一定の仮定を置いて売上高や営業費用を見積もっております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
ii)市場価格のない投資有価証券の評価
⑴当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
関係会社株式 120,683千円
投資有価証券 550,013千円
⑵会計上の見積りの内容について連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
投資有価証券のうち、市場価格のない投資有価証券については、投資先の実質価額が著しく低下したときには、実質価額の回復可能性が、投資先の事業計画等の十分な証拠によって裏付けられる場合を除き、評価減を行っております。
当社では、主要な投資先においては、定期的な面談等を通じて直近の事業環境や事業の進捗状況、今後の計画等を把握しており、これらの情報に基づき実質価額の回復可能性や事業計画の妥当性を慎重に判断しております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、投資先の事業が計画通りに進捗しない場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
iii)関係会社貸付金の評価
⑴当事業年度の財務諸表に計上した金額
関係会社貸付金 1,357,841千円
関係会社に対する貸倒引当金 464,204千円
⑵会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
関係会社に対する貸付金の評価にあたっては、債務者である関係会社の財政状態が悪化し、債権の回収に重大な問題が発生する可能性が高い場合に、個別に貸倒引当金を計上することとしております。貸倒引当金の金額算定に当たっては、関係会社の財政状態及び中期計画に基づき将来の支払能力を検討し、回収可能と見込まれる額を合理的に見積もっております。また、中期計画の見積りにおける重要な仮定は、これに含まれる売上高、営業費用の見積りであり、これらは将来の顧客平均売上単価、顧客獲得数及び顧客解約数等を考慮して作成しております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、関係会社の事業が計画通りに進捗しない場合には、翌事業年度以降の財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
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