【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、ワクチン接種が進み国内外の経済活動の正常化が進んでいる一方、ロシアによるウクライナ侵攻など地政学的な影響を受け、物価上昇など事業環境は依然不安定な状況です。
当社の属する医療・介護業界においては、新型コロナウイルス感染拡大による医療・介護従事者及び患者様の感染対策やオンライン診療の規制緩和措置が拡大し、様々な対策が求められる状況となっております。
当社は、企業理念である「患者さん(利用者さん)が24時間365日、自宅で「安心」して療養できる社会インフラを創る」を実現するため、2023年1月13日から医療依存度が高く、要介護度も高い在宅患者様に適応した高齢者施設「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」を開設し、在宅訪問薬局事業及びきらりプライム事業の着実な拡大を図り、「プライマリーケアのプラットフォーム企業」という目標に向けて尽力しております。
この結果、当事業年度の売上高は6,657百万円(前年同期比15.1%増)となり、利益面では営業利益が530百万円(前年同期比2.2%増)、経常利益が557百万円(前年同期比10.2%増)、当期純利益が382百万円(前年同期比16.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(在宅訪問薬局事業)
在宅訪問薬局事業では、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、店舗では引き続き感染対策を実施し、患者様及び従業員の健康を守る取り組みを行ってきました。在宅患者数は当事業年度末時点において8,568人(前期比9.9%増)と好調に推移しており、当事業年度では4店舗を開局し、合計40店舗となりました。引き続きドミナント出店戦略を推進しております。
当事業年度では、第3四半期から本格的にコロナウイルス治療薬の供給が急速に進みました。当社が対応する在宅患者様は平均年齢83歳であり、コロナウイルス感染による重症化リスクが高いため、多くの患者様にお届けすることになりました。さらに、後発医薬品の供給制限が発生し、薬価差益の高い商品の取り扱いが一部困難になっております。その結果、薬価差益の低い医薬品の売上構成が高まり、下期は当初想定より医薬品の仕入原価率が2%程度高く推移しました。
以上の結果、売上高は5,821百万円(前年同期比13.1%増)、セグメント利益は665百万円(前年同期比15.1%増)となりました。
(きらりプライム事業)
きらりプライム事業は、中小規模の薬局と提携し、効率的な在宅薬局の運営ノウハウの提供、人材研修、24時間対応のためのオンコール体制の支援、在宅薬局特化型の在宅訪問支援情報システム(ファムケア)の貸与及び医薬品購入支援などのサービスを行っております。中小規模の薬局における在宅薬局の認知が高まっている中、当事業の営業体制の強化及びWeb広告による加盟店増加施策を実施することなどにより、当事業年度末時点で加盟法人数は579社(前期末は424社)、加盟店舗数は1,836店舗(前期末は1,103店舗)となり、提携薬局数は引き続き大幅な増加となっております。
以上の結果、売上高は634百万円(前年同期比46.4%増)、セグメント利益は390百万円(前年同期比50.5%増)となりました。
(ケアプラン事業)
ケアプラン事業は、現在西日本エリア3拠点、東日本エリア1拠点でサービスを提供しております。また、プライマリケアホーム事業の開始により、対応する要介護者数が今後増加する見込みであるため体制の強化を進めております。
以上の結果、売上高は131百万円(前年同期比7.2%増)、セグメント損失は9百万円(前期はセグメント損失7百万円)となりました。
(タイサポ事業)
タイサポ事業は、医療介護の専門スタッフが、高齢者施設等への入居を検討される利用者様の医療依存度及び介護度の高さに対応し、その利用者様のご要望などを満たした施設を提案・紹介し、サポートするサービスであります。
当社が目指す地域包括ケアのプラットフォーム企業のつなぎ役として、医療機関、高齢者施設、在宅訪問薬局と連携し、在宅患者をケアする役割に活動をシフトしております。そのため、タイサポ事業への取り組みが縮小傾向となっており、契約数も減少いたしました。
以上の結果、売上高は40百万円(前年同期比39.5%減)、セグメント損失は23百万円(前期はセグメント利益17百万円)となりました。
(その他事業)
当社のその他事業には、プライマリケアホーム事業※及びICT事業を含めております。
プライマリケアホーム事業は、定期巡回型随時対応型訪問介護看護サービスを行う住宅型有料老人ホームを運営しております。当事業の特徴は在宅訪問薬局事業で培った在宅医療ノウハウとネットワークを生かし、要介護度が高く、医療依存度が高い在宅患者に対応できる施設であります。さらに、介護人材不足の解消、運営効率を上げ収益性を高めるため、ベッド数を大型化し、自社開発したICT、DXを取り入れております。
2023年1月13日に1棟目となる、「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」を開設いたしました。当初は12月開設予定でしたが、コロナウイルス感染拡大の影響により開設時期が約1ヶ月半遅れ、さらに、12月末時点で入居予約及び申込が30件であったものの、コロナ感染によるご逝去や再入院などが発生し、開設直後の入居計画に遅れが出ることとなりました。
ICT事業は、入居者の健康状態を自動的に把握するウェアラブルウォッチ以外にも、入居者の離床、座位、臥床を検知するベッドセンサーを開発し、当社介護施設での実装実験を進めながら本格的な販売に向け準備しております。このベッドセンサーは、介護保険適用となるTAISコード及び貸与マークを取得しており、「福祉用具貸与商品」として取り扱うことが可能となりました。
また、オムツ内の排泄の有無、量を検知・計測する「排泄見守りセンサー」を追加開発し、高齢者のQOLの向上ならびに排泄ケアにおける介護現場の労務負担軽減を図る取り組みを進めております。
以上の結果、売上高は30百万円(前年同期比114.9%増)、セグメント損失は104百万円(前期はセグメント損失14百万円)となりました。
なお、2023年6月27日時点での入居者数は73名となっており、契約済及び入居予約の患者様を含めると95名の入居を予定しております。そのため開設から約4ヶ月で黒字化の目途が立つ状況になり入居計画の遅れを取り戻しております。
※(その他事業)に記載しておりました「高齢者施設運営事業」は、2023年3月期通期決算より「プライマリケアホーム事業」と事業名を変更しております。
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,959百万円となり、前事業年度末に比べ63百万円増加いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響による在宅訪問薬局事業の需要増及び4店舗の新規開局に伴う売掛金の増加156百万円によるものであります。
固定資産は955百万円となり、前事業年度末に比べ320百万円増加いたしました。これは主に、在宅訪問支援情報システム(ファムケア)の改修等による無形固定資産の増加144百万円及びプライマリケアホーム事業の「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」開設に伴う有形固定資産のリース資産の増加48百万円によるものであります。
その結果、総資産は2,914百万円となり、前事業年度末に比べ383百万円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は1,254百万円となり、前事業年度末に比べ18百万円増加いたしました。これは主に、売上増加に伴う仕入増加等により買掛金が36百万円増加したことによるものであります。
固定負債は177百万円となり、前事業年度末に比べ46百万円減少いたしました。これは主にプライマリケアホーム事業の「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」開設に伴う固定負債その他のリース債務が47百万円増加したものの、長期借入金が約定返済等により105百万円減少したことによるものであります。
その結果、負債合計は1,431百万円となり、前事業年度末に比べ27百万円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は1,483百万円となり、前事業年度末に比べ410百万円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上に伴い利益剰余金が382百万円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は567百万円となり、前事業年度末に比べ151百万円減少いたしました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動の結果として増加した資金は、342百万円となり、前事業年度末に比べ142百万円収入の減少となりました。これは主に、税引前当期純利益が534百万円計上されたものの、法人税等の支払額が171百万円計上されたことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動の結果として減少した資金は、383百万円となり、前事業年度末に比べ63百万円支出の増加となりました。これは主に、プライマリケアホーム事業の「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」開設に伴うリース資産の増加に伴い有形固定資産の取得による支出70百万円が計上されたこと及び在宅訪問支援情報システム(ファムケア)の改修等に伴い無形固定資産の取得による支出168百万円が計上されたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動の結果として減少した資金は、110百万円となり、前事業年度末に比べ127百万円支出の増加となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が136百万円計上されたことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b 仕入実績
当事業年度における仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
前期比(%)
在宅訪問薬局事業
2,939
14.5
きらりプライム事業
0
44.7
ケアプラン事業
5
128.7
タイサポ事業
-
-
その他事業
1
△73.2
合計
2,947
14.5
(注)金額は、仕入価格によっております。
c 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
前期比(%)
在宅訪問薬局事業
5,821
13.1
きらりプライム事業
634
46.4
ケアプラン事業
131
7.2
タイサポ事業
40
△39.5
その他事業
30
114.9
合計
6,657
15.1
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、当社が現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要の主なものは、商品仕入、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、新規出店等の新たな投資、ソフトウエアなどへの投資による一人当たりの生産性向上を目的とした投資に係る資金需要が生じております。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を自己資金から安定的に確保することを基本方針としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討しております。
⑤ 経営者の問題認識と今後の方針
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
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