【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績の状況
前第2四半期連結会計期間において、当社は、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」)が投資助言を行う投資ファンドが間接的に株式を保有する特別目的会社である株式会社BCJ-66との間で科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約を締結しました。これに伴い、前第2四半期連結会計期間より、科学事業に関わる損益を非継続事業に分類しています。なお、売上高、営業利益、税引前四半期利益、継続事業からの四半期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、四半期利益及び親会社の所有者に帰属する四半期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。
また、当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」「科学事業」及び「その他事業」の4区分を報告セグメントとしておりましたが、前第2四半期連結会計期間より「内視鏡事業」「治療機器事業」及び「その他事業」の3区分に変更しています。
なお、上記の株式譲渡契約に基づき、当社から吸収分割により当社の科学事業を承継した当社の連結子会社である株式会社エビデント(以下、エビデント)の全株式については、2023年4月3日に譲渡を完了しました。
業績全般に関する動向
当第2四半期連結累計期間における世界経済は、持ち直しの動きが継続しましたが、世界的な金融引き締めや中国における不動産市場の停滞に伴う影響は、景気下振れのリスクとなっており、足元では中東地域をめぐる情勢による影響も注視する必要があります。また、ウクライナにおける戦争や世界的なインフレもあり、原材料価格の上昇や、サプライチェーンの制約、部品不足による影響が発生しました。わが国経済においても、経済活動が回復する中、景気は緩やかに持ち直している一方で、為替の変動や世界経済と同様に原材料価格の上昇や、サプライチェーンの制約、一部部品の不足による影響が発生しました。
こうした環境下にあるものの、当社グループは、2023年5月に公表した経営戦略に沿って、「患者さんの安全と持続可能性」「成長のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーへの変革に向けて引き続き取り組んでいます。
業績の状況
以下(1)から(9)は継続事業の業績を、(10)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。
(単位:百万円)
前第2四半期累計
当第2四半期累計
増減額
増減率
(1)売上高
417,060
436,644
19,584
4.7%
(2)売上原価
139,534
148,207
8,673
6.2%
(3)販売費及び一般管理費
198,535
221,633
23,098
11.6%
(4)持分法による投資損益/
その他の収益/その他の費用
14,612
△62,015
△76,627
-
(5)営業利益
93,603
4,789
△88,814
△94.9%
(6)金融損益
△4,282
△5,747
△1,465
-
(7)税引前四半期利益(△は損失)
89,321
△958
△90,279
-
(8)法人所得税費用
19,795
10,532
△9,263
△46.8%
(9)継続事業からの四半期利益(△は損失)
69,526
△11,490
△81,016
-
(10)親会社の所有者に帰属する四半期利益
66,836
216,296
149,460
223.6%
為替レート(円/米ドル)
133.97
141.00
7.03
-
為替レート(円/ユーロ)
138.73
153.39
14.66
-
為替レート(円/人民元)
19.88
19.75
△0.13
-
(1)売上高
前年同期比195億84百万円増収の4,366億44百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業、その他事業の全ての事業で増収となりました。詳細は下段の「セグメント別の動向に関する分析」に記載しています。
(2)売上原価
前年同期比86億73百万円増加の1,482億7百万円となりました。売上原価率は、半導体のスポットマーケットでの調達が減少したものの、内視鏡事業で小腸内視鏡システムの自主回収に伴う費用約42億円を引当計上したことにより、33.9%と前年同期比0.4ポイント悪化しました。
(3)販売費及び一般管理費
前年同期比230億98百万円増加の2,216億33百万円となりました。主な要因は、効率性向上などを目的とした各種プロジェクト関連費用の増加や、将来の成長や品質保証・法規制対応をはじめとする事業運営基盤強化などに伴う人件費の増加です。
(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用
持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で620億15百万円の費用となり、前年同期比で損益は766億27百万円悪化しました。その他の収益に関して、前期は、固定資産売却益約164億円を計上していましたが、当期は、「その他事業」に含まれていたコラーゲン事業等の譲渡益約11億円を計上しており、前年同期比で、168億20百万円減少しました。一方、その他の費用に関して、前期は、「Transform Olympus」を推進するための関連費用約17億円を計上していましたが、当期は、Veran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約496億円や、FDA関連対応費用約119億円を計上しており、前年同期比で592億2百万円増加しました。
(5)営業利益
上記の要因により、前年同期比888億14百万円減益の47億89百万円となりました。
(6)金融損益
金融収益と金融費用を合わせた金融損益は57億47百万円の損失となり、前年同期比で14億65百万円悪化しました。損益の悪化は、主として各通貨に対して円安が進行したことにより為替差損が拡大したことによるものです。
(7)税引前四半期利益
上記の要因により、前年同期比で902億79百万円減少し9億58百万円の損失となりました。
(8)法人所得税費用
税引前四半期利益が減少したことにより、前年同期比で92億63百万円減少し105億32百万円となりました。
(9)継続事業からの四半期利益
税引前四半期利益が減少したことにより、前年同期比で810億16百万円減少し114億90百万円の損失となりました。
(10)親会社の所有者に帰属する四半期利益
当第2四半期連結累計期間に非継続事業において科学事業の譲渡益約3,490億円を計上したことにより、前年同期比で1,494億60百万円増加となる2,162億96百万円となりました。
(為替影響)
為替相場は前年同期と比べ、対米ドル及びユーロは円安、対人民元は円高で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=141.00円(前年同期は、133.97円)、1ユーロ=153.39円(前年同期は、138.73円)、1人民元=19.75円(前年同期は、19.88円)となり、売上高では前年同期比178億87百万円の増収要因、営業利益では前年同期比34億23百万円の増益要因となりました。
セグメント別の動向に関する分析
[内視鏡事業]
(単位:百万円)
前第2四半期累計
当第2四半期累計
増減額
前年同期比
売上高
258,472
270,867
12,395
4.8%
営業損益
68,899
50,909
△17,990
△26.1%
内視鏡事業の連結売上高は、2,708億67百万円(前年同期比4.8%増)、営業利益は、509億9百万円(前年同期比26.1%減)となりました。
消化器内視鏡分野では、前第1四半期連結会計期間に上海をはじめとする各都市のロックダウンの影響を受けていた中国で売上が回復した一方、前年同期にロシアなどで大型案件による押上げ効果のあった欧州や、消化器内視鏡システム「EVIS X1」発売前の買い控えの影響があった北米で売上が減少し、前年同期比減収となりました。
外科内視鏡分野では、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ」を発売したアジア・オセアニアや欧州の売上が増加した結果、前年同期比プラス成長となりました。
医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、全ての地域で前年同期比プラス成長となりました。
内視鏡事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、小腸内視鏡システムの自主回収に伴う費用約42億円を引当計上したことに加え、将来の成長や品質保証・法規制対応をはじめとする事業運営基盤強化などに伴う人件費等が増加したことや、FDA関連対応費用約76億円をその他の費用として計上したこともあり、減益となりました。
[治療機器事業]
(単位:百万円)
前第2四半期累計
当第2四半期累計
増減額
前年同期比
売上高
152,935
159,698
6,763
4.4%
営業損益
29,788
△28,542
△58,330
-
治療機器事業の連結売上高は、1,596億98百万円(前年同期比4.4%増)、営業損失は、285億42百万円(前年同期は、297億88百万円の営業利益)となりました。
消化器科(処置具)分野では、北米や欧州を中心にプラス成長となり、前年同期比増収となりました。また、病変の切除に使用されるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)用の製品群、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリング、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群で売上が増加しました。
泌尿器科分野では、欧州やアジア・オセアニアを中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前年同期比増収となりました。また、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極等も売上の増加に貢献しました。
呼吸器科分野では、北米や欧州を中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前年同期比増収となりました。EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具や気管支鏡で売上が増加しました。
その他の治療領域では、2023年4月にGyrus Medical Limitedを譲渡したことにより、前年同期比減収となりました。
治療機器事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、効率性向上などを目的とした各種プロジェクト関連費用の増加や、将来の成長や品質保証・法規制対応をはじめとする事業運営基盤強化などに伴う人件費の増加に加え、Veran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約496億円や、FDA関連対応費用約43億円をその他の費用として計上したこともあり、減益となりました。
[その他事業]
(単位:百万円)
前第2四半期累計
当第2四半期累計
増減額
前年同期比
売上高
5,653
6,079
426
7.5%
営業損益
△788
1,000
1,788
-
その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規
事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。
その他事業の連結売上高は、60億79百万円(前年同期比7.5%増)、営業利益は、10億円(前年同期は、7億88百万円の営業損失)となりました。
売上高は、第1四半期連結会計期間にオリンパステルモバイオマテリアル株式会社において、コラーゲン事業の譲渡前に需要の増加があり、増収となりました。その他事業の営業損益は、コラーゲン事業等の譲渡益約11億円をその他の収益として計上したこともあり、改善しました。
(2)財政状態の状況
[資産]
当第2四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末から1,094億57百万円増加し、1兆6,177億65百万円となりました。流動資産では、科学事業の譲渡対価の受領を主因に現金及び現金同等物が3,188億31百万円増加、自己株式取得のための預託金を主因にその他の金融資産が246億55百万円増加、棚卸資産が204億36百万円増加の一方で、科学事業の譲渡完了に伴い売却目的で保有する資産が1,696億21百万円減少しています。非流動資産では、為替の影響により有形固定資産が143億20百万円増加の一方で、科学事業の譲渡益等に対する繰延税金資産が971億96百万円減少し、また、Veran Medical Technologies, Inc.の減損を主因に無形資産が155億37百万円減少しています。
[負債]
負債合計は、前連結会計年度末から768億41百万円減少し、7,902億33百万円となりました。科学事業の譲渡益等に対する未払法人所得税が585億70百万円減少し、また、科学事業の譲渡完了に伴い売却目的で保有する資産に直接関連する負債が432億53百万円減少しています。
[資本]
資本合計は、前連結会計年度末から1,862億98百万円増加し、8,275億32百万円となりました。自己株式の取得639億76百万円、剰余金の配当202億40百万円を行った一方で、科学事業の譲渡益等、親会社の所有者に帰属する四半期利益を2,162億96百万円計上したこと、また在外営業活動体の換算差額を中心にその他の資本の構成要素が583億87百万円増加したことが主な要因です。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の42.4%から51.2%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から2,826億48百万円増加し、4,881億60百万円となりました。当第2四半期連結累計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、117億77百万円の減少(前第2四半期連結累計期間は63億7百万円の増加)となりました。減損損失の調整417億39百万円や減価償却費及び償却費の調整328億94百万円、営業債権及びその他の債権の減少124億5百万円等の増加要因はあったものの、法人所得税の支払905億70百万円、営業債務及びその他の債務の減少127億17百万円、棚卸資産の増加143億71百万円等により減少しています。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当第2四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、4,127億1百万円の増加(前第2四半期連結累計期間は156億53百万円の減少)となりました。生産設備等、有形固定資産の取得に伴う支出214億49百万円があったものの、科学事業の譲渡対価として3,818億98百万円を受領したこと、またエビデント等に対する貸付金526億37百万円を回収したことが主な要因です。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当第2四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、1,254億22百万円の減少(前第2四半期連結累計期間は354億52百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出639億76百万円、自己株式取得のための預託金の支払260億24百万円、配当金の支払202億40百万円が主な要因です。
(4)事業上および財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。 なお、当第2四半期連結累計期間において、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、350億46百万円です。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。