【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績等の概要
① 業績
第2四半期連結会計期間において、当社は、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」)が投資助言を行う投資ファンドが間接的に株式を保有する特別目的会社である株式会社BCJ-66との間で科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約を締結しました。これに伴い、第2四半期連結会計期間より、科学事業に関わる損益を非継続事業に分類しており、当連結会計年度及び前連結会計年度についても同様の形で表示しています。なお、売上高、営業利益、税引前利益、継続事業からの当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。
また、当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」「科学事業」及び「その他事業」の4区分を報告セグメントとしておりましたが、第2四半期連結会計期間より「内視鏡事業」「治療機器事業」及び「その他事業」の3区分に変更しています。
業績全般に関する動向
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による厳しい状況から経済活動が回復する中で、持ち直しの動きが継続しました。一方で、世界的な金融引き締めは、景気下振れのリスクとなっています。また、中国における新型コロナウイルスの感染拡大の影響、およびウクライナにおける戦争や世界的なインフレもあり、原材料価格の上昇や、サプライチェーンの制約、半導体及びその他の部品不足による影響が発生しました。わが国経済においても、経済活動が回復する中、景気は緩やかに持ち直している一方で、為替の変動や世界経済と同様に原材料価格の上昇、サプライチェーンの制約、半導体及びその他の部品不足による影響が発生しました。
こうした環境下にあるものの、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指しており、内視鏡事業及び治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に努めています。その一環として当社から吸収分割により当社の科学事業を承継した当社の完全子会社である株式会社エビデント(以下「エビデント」)の全株式を譲渡する契約を締結し、本契約に基づき、当社は2023年4月3日に譲渡を完了しました。
業績の状況
以下(1)から(9)は継続事業の業績を、(10)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。
(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
増減額
増減率(%)
(1)売上高
750,123
881,923
131,800
17.6%
(2)売上原価
243,423
285,074
41,651
17.1%
(3)販売費及び一般管理費
357,510
420,547
63,037
17.6%
(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用
△3,002
10,307
13,309
–
(5)営業利益
146,188
186,609
40,421
27.7%
(6)金融損益
△4,487
△4,315
172
–
(7)税引前利益
141,701
182,294
40,593
28.6%
(8)法人所得税費用
31,074
44,304
13,230
42.6%
(9)継続事業からの当期利益
110,627
137,990
27,363
24.7%
(10)親会社の所有者に帰属する当期利益
115,742
143,432
27,690
23.9%
為替レート(円/米ドル)
112.38
135.47
23.09
–
為替レート(円/ユーロ)
130.56
140.97
10.41
–
為替レート(円/人民元)
17.51
19.75
2.24
–
(1)売上高
前期比1,318億円増収の8,819億23百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業では増収、その他事業では減収となりました。詳細は次ページのセグメント別の動向に関する分析に記載しています。
(2)売上原価
前期比416億51百万円増加の2,850億74百万円となりました。売上原価率は、32.3%と前期比0.1ポイント改善しました。
前期は、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円、2021年3月期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円を、それぞれ計上しました。一方、当期は、半導体をはじめとする原材料の調達コストが上昇したものの、当連結会計年度に中国での売上が増加したことによる地域別売上構成の変化および円安による為替影響等により、売上原価率は改善しました。
(3)販売費及び一般管理費
前期比630億37百万円増加の4,205億47百万円となりました。特に、販売活動に伴う費用や、品質保証・法規制対応等における事業運営基盤強化に係る費用が増加しました。
(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用
持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で103億7百万円の収益となり、前期比で損益は、133億9百万円改善しました。その他の収益は、前期において、2019年3月期に当社の海外子会社が行った間接税に係る自主調査に関して追加的な負担を見込んで引当計上した税額の内、発生が見込まれなくなった約30億円や、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円等を計上し、また当期において固定資産売却益約164億円、Medi-Tate Ltd.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動により、取得時の買収対価が修正され、約14億円を計上した結果、前期比で、約100億円増加しました。一方、その他の費用は、前期において内視鏡事業の開発資産について約16億円の減損損失、また企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用として約88億円をそれぞれ計上しましたが、当期においては企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用が約65億円減少したこともあり、前期比で、約43億円減少しました。
(5)営業利益
上記の要因により、前期比404億21百万円増益の1,866億9百万円となりました。
(6)金融損益
金融収益と金融費用を合わせた金融損益は43億15百万円の損失となり、前期比で損益は1億72百万円改善しました。損益の改善は、主としてドル金利の上昇により受取利息が増加したことによるものです。
(7)税引前利益
上記の要因により、前期比で405億93百万円増加となる1,822億94百万円となりました。
(8)法人所得税費用
税引前利益が増加したことにより、前期比で132億30百万円増加し、443億4百万円となりました。
(9)継続事業からの当期利益
上記の要因により、前期比で273億63百万円増加となる1,379億90百万円となりました。
(10)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算)
上記の要因および非継続事業からの当期利益を合わせて、前期比で276億90百万円増益となる1,434億32百万円となりました。
(研究開発支出および設備投資)
当期においては、非継続事業を除いた継続事業で768億66百万円の研究開発費を投じるとともに、720億23百万円の設備投資を実施しました。
(為替影響)
為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=135.47円(前期は112.38円)、1ユーロ=140.97円(前期は130.56円)、1人民元=19.75円(前期は17.51円)となり、売上高では前期比で983億81百万円の増収要因、営業利益では前期比で443億45百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比4.5%の増収、連結営業利益は前期比2.7%の減益となります。
セグメント別の動向に関する分析
売上高
営業利益又は営業損失(△)
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減率
(%)
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減率
(%)
内視鏡
461,547
551,823
19.6
133,204
152,769
14.7
治療機器
275,586
318,207
15.5
60,826
63,692
4.7
その他
12,990
11,893
△8.4
△2,018
△914
-
小計
750,123
881,923
17.6
192,012
215,547
12.3
消去又は全社
-
-
-
△45,824
△28,938
-
連結計
750,123
881,923
17.6
146,188
186,609
27.7
(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。
[内視鏡事業] 内視鏡事業の連結売上高は、5,518億23百万円(前期比19.6%増)、営業利益は1,527億69百万円(前期比14.7%増)となりました。
消化器内視鏡分野では、第2四半期連結累計期間まで上海をはじめとする各都市のロックダウンの影響を受けていた中国において売上が回復し、また北米や欧州においても売上が増加した結果、すべての地域で前期比プラス成長となりました。製品別では、消化器内視鏡システム「EVIS X1」シリーズの販売が好調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管ビデオスコープや大腸ビデオスコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合も徐々に上昇しています。
外科内視鏡分野では、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ」を発売したアジア・オセアニアや、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ」と硬性鏡および外科用ビデオスコープの組み合わせでの販売が堅調に推移した北米における売上が寄与し、前期比プラス成長となりました。
医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、全ての地域で前期比プラス成長となりました。
内視鏡事業の営業損益は、増益となりました。2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円の影響が当期はなくなったことに加え、EVIS X1をはじめとした販売等の費用や、品質保証・法規制対応等における事業運営基盤強化に係る費用等が増加しました。一方で、増収による売上総利益の増加に加えて、前期に計上した開発資産に係る減損損失約16億円の影響がなくなりました。
なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比6.0%の増収、営業利益は前期比11.8%の減益となっています。
[治療機器事業]
治療機器事業の連結売上高は、3,182億7百万円(前期比15.5%増)、営業利益は636億92百万円(前期比4.7%増)となりました。
消化器科(処置具)分野では、北米や欧州を中心にプラス成長となりました。また、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリングの製品群で売上が増加しました。
泌尿器科分野では、北米と欧州を中心に好調に推移し、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の販売が順調に拡大しました。なお、2023年3月期より治療機器事業のその他の治療領域に分類していた婦人科製品については、治療機器事業の泌尿器科に含めています。
呼吸器科分野では、北米と中国を中心にプラス成長となりました。EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具が好調に推移しました。
その他の治療領域では、エネルギーデバイスを中心に売上が増加しました。特に「POWERSEAL」の売上が寄与しました。
治療機器事業の営業損益は、増益となりました。前期にその他の収益として計上したMedi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円や、2021年3月期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円の影響が当期はなくなったことに加えて、品質保証・法規制対応等の費用が発生したことや事業活動の回復に伴い販売等の費用が増加しました。一方で、増収による売上総利益の増加およびMedi-Tate Ltd.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動により、取得時の買収対価が修正され、その他の収益に約14億円を計上しました。
なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比2.7%の増収、営業利益は前期比13.8%の減益となっています。
[その他事業] その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。
その他事業の連結売上高は、118億93百万円(前期比8.4%減)、営業損失は9億14百万円(前期は20億18百万円の営業損失)となりました。
売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いてきたこともあり、FH ORTHO SASの売上が増加したものの、動物市場向けの医療機器の販売を終了したことにより、減収となりました。その他事業の営業損益は、減収となったものの、前期に計上していた株式会社AVS(動物市場向けの医療機器の販売を行っていた子会社)の清算に伴う費用がなくなったこと等の要因により、改善しました。
② 財政状態の状況
前連結会計年度末
(百万円)
当連結会計年度末
(百万円)
増
減
(百万円)
増減率
(%)
資産合計
1,357,999
1,508,308
150,309
11.1
資本合計
511,362
641,234
129,872
25.4
親会社所有者帰属
持分比率
37.6%
42.4%
4.8%
[資産]
当連結会計年度末は、円安による為替影響と繰延税金資産の増加を主因に、資産合計が前連結会計年度末から1,503億9百万円増加し、1兆5,083億8百万円となりました。流動資産では、科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約 が締結されたことに伴い、譲渡が見込まれる科学事業の資産として1,649億36百万円を売却目的で保有する資産へ振 替えています。また、法人所得税の支払975億67百万円や有形固定資産の取得による支出475億70百万円等により、現金及び現金同等物が1,332億43百万円減少しています。非流動資産では、為替影響およびOdin Medical Ltd.の買収によりのれんが180億7百万円増加、および科学事業のエビデントへの集約等に伴い繰延税金資産が987億60百万円増加しています。
[負債] 負債合計は、前連結会計年度末から204億37百万円増加し、8,670億74百万円となりました。流動負債では、科学事 業の譲渡に関する株式譲渡契約が締結されたことに伴い、譲渡が見込まれる科学事業の負債として432億53百万円を売却目的で保有する資産に直接関連する負債へ振替えています。また、科学事業のエビデントへの集約等に伴い未払法人所得税が652億14百万円増加しています。非流動負債では、社債及び借入金が期日返済に伴い437億59百万円減少しています。
[資本]
資本合計は、前連結会計年度末から1,298億72百万円増加し、6,412億34百万円となりました。剰余金の配当及び自己株式の取得を行った一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益1,434億32百万円を計上および在外営業活動体の 換算差額の増加を主因とするその他の資本の構成要素424億62百万円増加が主な要因です。
また、当社は、2022年5月11日開催の取締役会決議に基づき、2022年6月8日付で232億71百万円の自己株式の消 却を行った一方で、2022年11月11日開催の取締役会決議に基づき、自己株式の取得500億円および一部消却438億17百 万円を行ったこと等により、自己株式が175億3百万円減少しています。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の37.6%から42.4%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減
(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー
169,729
98,490
△71,239
投資活動によるキャッシュ・フロー
△71,016
△58,414
12,602
財務活動によるキャッシュ・フロー
△40,667
△143,178
△102,511
現金及び現金同等物期末残高
302,572
205,512
△97,060
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度において営業活動により増加した資金は、984億90百万円(前連結会計年度は1,697億29百万円の増加)となりました。法人所得税の支払975億67百万円、営業債権及びその他の債権の増加270億13百万円、棚卸資産の 増加268億52百万円等の減少要因はあったものの、税引前当期利益1,822億94百万円および減価償却費及び償却費の調整667億41百万円等の増加要因により増加しています。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度において投資活動により減少した資金は584億14百万円(前連結会計年度は710億16百万円の減少)となりました。幡ヶ谷の土地を含む有形固定資産の売却による収入204億60百万円を計上した一方で、生産設備等の 有形固定資産の取得に伴う支出475億70百万円及び研究開発資産等の無形資産の取得による支出230億53百万円を主因に減少しています。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度において財務活動により減少した資金は、1,431億78百万円(前連結会計年度は406億67百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出500億3百万円、社債の償還による支出400億円、リース負債の返済に よる支出209億14百万円、配当金の支払178億22百万円、長期借入金の返済による支出135億47百万円等により減少しています。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して970億60百万円減少し、2,055億12百万円となりました。なお、関連指標のうちインタレスト・カバレッジ・レシオは社債及び借入金が前期末から437億59百万円減少したものの、営業活動によるキャッシュ・フローが984億90百万円と前連結会計期間と比較して712億39百万円減少したことにより、前期末の39.6倍から18.3倍となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
内視鏡
420,972
18.6
治療機器
230,680
9.0
その他
8,751
37.1
計
660,403
15.2
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
② 受注実績
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。
③ 販売実績
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
内視鏡
551,823
19.6%
治療機器
318,207
15.5%
その他
11,893
△8.4%
計
881,923
17.6%
(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。
(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析
当社グループは、2019年11月に発表した中長期の経営戦略において、目標とする業績指標を、特殊要因を調整した調整後営業利益率で定めており、2023年3月期に20%超に改善することを目指して事業活動を推進してきました。
当連結会計年度における調整後営業利益率は、20.0%となりました。内視鏡事業では消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販が進み、治療機器事業でも消化器科処置具、泌尿器科、呼吸器科の3領域を中心に売上が増加したことで増収となり、これに伴う売上総利益の増加が寄与しました。
2023年5月に発表した経営戦略に基づき、今後も20%前後の調整後営業利益率を維持しつつ、安定的な価値創造と競争力のある成長を実現していきます。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況
(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、営業活動により資金が増加した一方で、自己株式の取得による支出、社債の償還および長期借入金の返済による支出等があったことで、当連結会計年度末時点で保有する手元資金は2,055億12百万円(前連結会計年度末より970億60百万円減少)となりました。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。
(ⅱ) 財務政策
当社グループは、財務健全性の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率性の向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、D/Eレシオや有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達基盤の多様化、拡充を進めており、調達コストの低減に取り組んでいます。
当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2023年3月31日現在における状況は、次のとおりです。
格付投資情報センター:A+(長期、見通し安定的)、a-1(短期)
S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通しポジティブ)
ムーディーズ・ジャパン:Baa2(長期、見通しポジティブ)
(ⅲ) 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは、人件費および広告・販売促進費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は、様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および欧米を中心とした製造、修理拠点の拡充など、生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、引き続き積極的に対応してまいります。
(ⅳ) 資金調達
当社グループの運転資金および設備投資資金は、内部資金により充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行により資金を調達しています。これらの借入金および社債については、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できると考えており、今後も成長に必要となる資金の調達に問題はないものと考えています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA格、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+及びムーディーズ・ジャパンはBaa2となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金を調達することが出来ると考えています。さらに、主要通貨(米ドル・ユーロ・円)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。
財務健全性の維持と資本効率性の向上の両立を意識しながら、今後も資金需要に応じて適正な調達を検討していきます。
(ⅴ) 資金配分
(ⅳ) 資金調達に記載したとおり、機動的な資金調達体制により、当社グループは、成長投資や株主還元に必要な手元資金も十分に確保出来ています。当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ継続的に増配する方針で、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。
③ 重要な会計方針および見積り
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等
連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。