【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(業績等の概要)
(1)業績
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による制限緩和により、社会・経済活動の正常化が進んでおり、景気は緩やかな回復基調を維持しております。他方で資源価格の高騰や欧米を中心とした金融引き締め等による景気後退の懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境のもと、当社は、2023年1月26日開催の取締役会において、ビジネスモデルの転換を決定しいたしました。これは、2022年、シスプラチンミセル(NC-6004)の第Ⅱb相臨床試験及び、Vasucular Biogenics Ltd.(NASDAQ: VBLT)から国内開発・販売権を取得したVB-111の国際共同第Ⅲ相臨床試験が相次いで開発中止となったことを受け、ビジネスモデルを全面的に見直した結果です。具体的には、mRNA医薬の創薬及び知財獲得を進め、当社がスポンサーとなる臨床開発の開始前に、製薬企業にライセンスアウトを行うことを事業の柱といたします。mRNA医薬の研究開発に6年以上に亘り取り組んできた経験と実績及びこの間に築いた豊富なネットワークに、アクセリード株式会社及び傘下企業との協業をブースーターとして加え、複数のパイプラインを同時進行でインキュベートし効率的にmRNA医薬のIPを創出するIP Generatorへと変貌してまいります。
なお、当社は、2021年4月、アクセリード株式会社と共同で株式会社PrimRNAを設立し、核酸医薬の研究開発を実施してまいりましたが、研究開発の進捗により当社の医薬品事業における同社の重要性が高まったことに伴い、当連結会計年度より連結の範囲に含めております。これにより、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の前年同期比較の記載は行っておりません。なお、新型コロナウイルス感染症の当連結会計年度における業績への影響につきましては、当社は医薬品等の研究開発段階にあるため、軽微であったと判断しております。
(mRNA医薬パイプライン)
COVID-19ワクチンにより急激に大きな市場を獲得したmRNA医薬ですが、既にその他の感染症の予防ワクチン、感染症以外の疾患に対する治療ワクチン、及び組織再生などの疾患治療薬の開発競争が開始されております。当社は、国内企業がmRNA創薬に着手する前から、mRNAを用いた変形性膝関節症に対する再生医薬の開発を推進しており、日本医療研究開発機構(AMED)資金を活用し非臨床開発段階まで進めております。今後、新たに製薬企業や非製薬企業、アカデミア等との共同研究を推進し、新規パイプラインの拡充を推進してまいります。
RUNX1 mRNA:
アクセリード株式会社と共同で株式会社PrimRNAを設立し、医師主導第Ⅰ相臨床試験開始に向けた研究開発を行っております。変形性膝関節症モデルにおいて良好な再現性試験結果が得られましたので、非臨床安全性試験及び原薬の製造などを現在進めております。
RUNX1 mRNAは、軟骨の増殖・分化に関わる転写因子RUNX1のmRNAを医薬品とするものです。軟骨組織の修復を促進することにより、変形性膝関節症の進行を抑制するとともに疼痛の軽減も実現する革新的な疾患修飾型治療薬を目指し、局所組織再生薬として開発を推進しています。本プロジェクトは、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業に採択されております。
(mRNA医薬以外のパイプライン)
これまで実施してまいりましたパイプラインの開発も継続して行っております。
コムレクス®
耳科用液1.5%
(開発コードENT103):
セオリアファーマと共同で行った国内第Ⅲ相臨床試験において主要評価項目を達成し、セオリアファーマが2022年4月に外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行い、2023年3月、同社は国内製造販売承認を取得しました。今後、薬価収載を経て、2023年度前半の販売開始を見込んでおります。
コムレクス®耳科用液1.5%(開発コードENT103)は、新規耳科用抗菌薬です。
NC-6100:
公益財団法人がん研究会有明病院において、再発・進行HER2陰性乳がんを対象に医師主導第Ⅰ相臨床試験が実施されております。
NC-6100は、慶應義塾大学等との共同開発プロジェクトであり、転写因子PRDM14に対するsiRNAのDDS製剤です。
TUG1:
脳腫瘍の中で最も悪性度が高い膠芽腫を対象とした医師主導第Ⅰ相臨床試験実施に向け、非臨床安全性試験において良好な成績を得て、現在治験薬の準備などを進めております。
TUG1は、長鎖非翻訳RNA TUG1に対するASO(アンチセンスオリゴ)のDDS製剤であります。本プロジェクトは、名古屋大学との共同研究であり、AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に採択されております。
(開発完了及び開発中止したパイプライン)
NC-6300:
2021年6月にファスト・トラック指定※を受け、米国における血管肉腫対象の例数追加試験において12例中5例でPR(奏功)を確認、2022年4月に全患者への投与が完了いたしました。ライセンス活動を実施しておりましたが、mRNA医薬のIP創出モデルへの転換に伴い、活動は中止いたしました。
NC-6300は、エピルビシンのミセル化ナノ粒子製剤です。
※ファスト・トラック指定
米国における画期的な新薬について優先的に審査する、優先審査制度です。完治が難しい疾患に対して高い治療効果が期待される新薬を優先的に審査して早期実用化を促すことを目的とした制度です。
NC-6004:
2022年4月、第Ⅱb相臨床試験の暫定的な解析において、主要評価項目達成の可能性が低いと判断し、開発を中止いたしました。
NC-6004は、シスプラチンのミセル化ナノ粒子製剤です。
VB-111:
2022年7月に受領した国際共同第Ⅲ相臨床試験(OVAL試験)トップラインデータでは、無増悪生存期間(PFS)の解析において、コントロール群に対して統計的に有意な改善が認められず、開発を中止いたしました。
VB-111はアデノウイルスベクターによる遺伝子治療用製品です。
(販売事業の状況)
株式会社アルビオンが販売する美容液エクラフチュール及び薬用美白美容液エクシア ブライトニング イマキュレート セラム用の当社技術を応用した原材料を供給しております。なお、同社との共同開発製品であるスカルプトータルケア製品「Depth」事業は、2022年12月末をもって全品の販売を終了しました。
また、株式会社エイオンインターナショナルとの契約に基づき、治療法がない領域に新たな医療を届ける一環として、PRP療法を用いた不妊治療をサポートしております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、化粧品材料供給収入、開発マイルストーン収入及びPRP事業に係る売上等により202,189千円、営業損失は1,246,000千円、経常損失は1,104,580千円、親会社株主に帰属する当期純損失は1,310,976千円となりました。
なお、当連結会計年度におきまして、以下の営業外収益、特別利益及び特別損失を計上しております。
・研究開発等に係る補助金収入70,038千円を営業外収益に計上しております。
・外国為替相場の変動による為替差益60,464千円を営業外収益に計上しております。これは主に、当社の保有する外貨建預金の評価替えにより発生したものであります。
・第20回新株予約権及び第6回転換社債型新株予約権付社債の発行に伴い、第5回転換社債型新株予約権付社債の払込みによる償還を行ったことにより、社債償還益39,030千円を特別利益に計上しております。
・第15回新株予約権の権利行使期間満了のため、新株予約権戻入益27,493千円を特別利益に計上しております。
・投資有価証券のうち、取得価額に比べ時価が著しく下落し、その回復可能性があると認められないものについて減損処理を行ったことによって、投資有価証券評価損268,000千円を特別損失に計上しております。
また、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、1,309,592千円となりました。キャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,087,051千円の支出となりました。研究開発の推進に伴う研究開発費の支出等による税金等調整前当期純損失1,308,486千円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,207,913千円の収入となりました。定期預金の預入による支出1,502,032千円、定期預金の払戻による収入2,447,956千円、有価証券の取得による支出6,240,350千円、有価証券の償還による収入7,000,000千円等によるものです。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当社グループは研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
(2)受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
202,189
-
(注)1.当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
2.主要な輸出先並びに輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。
なお、( )内は総販売実績に対する輸出販売高の割合であります。
輸出先
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
販売高(千円)
割合(%)
アジア
48,786
100.0
合計
48,786
(24.1%)
100.0
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
販売高(千円)
割合(%)
株式会社アルビオン
126,350
62.5
Orient Europharma Co., Ltd.
48,786
24.1
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態
①資産の部
当連結会計年度末における流動資産は4,668,826千円であり、主な内訳は、現金及び預金2,811,624千円、有価証券1,632,079千円であります。
当連結会計年度末における固定資産は1,115,564千円であり、主な内訳は、投資有価証券886,168千円であります。
②負債の部
当連結会計年度末における流動負債及び固定負債は合計で1,530,947千円であり、主な内訳は転換社債型新株予約権付社債1,108,916千円であります。
③純資産の部
当連結会計年度末における純資産は4,253,443千円であり、主な内訳は、資本金119,150千円、資本剰余金5,499,591千円、利益剰余金△1,371,505千円であります。
これらの結果、自己資本比率は73.5%となりました。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
(2)経営成績
当連結会計年度における経営成績については、「(業績等の概要) (1)業績」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フロー
当社グループは現在、主たる定例的な営業収益がありませんので、研究開発の推進に伴う研究開発費の支出を、主に株式の発行による収入で賄っております。当連結会計年度末日現在の資金残高は1,309,592千円ですが、一時的な余剰資金については預金又は元本維持を原則とした安全かつ流動性の高い金融商品等に限定して運用しており、それら預金や金融商品まで合わせますと4,443,704千円となります。
一方支出側としましては、当連結会計年度の経常損失は1,104,580千円、第28期の予想経常損失が995百万円~1,335百万円でありますので、当面のmRNA創薬ビジネスに係る研究開発資金の確保やM&A等の支出にも対応できる資金の確保までできていると判断しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
