【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度の世界経済及び我が国経済は、COVID-19による経済活動への影響から徐々に回復し、地域によっては市場需要の顕著な回復も見られました。一方、半導体不足に伴う車両メーカーの生産調整や中国経済の年度後半での停滞、原材料やエネルギー価格の高騰が影響しました。
自動車部品事業はEV化推進の時流を受け電動化領域は増収となったものの、半導体不足による車両減産が大きく影響し、全体では前期比で減収となりました。空調・カスタム部品事業は中国やASEAN地区での需要回復により堅調に推移し、当連結会計年度後半で中国市場の停滞の影響はあったものの前期比で増収となりました。
この結果、当社グループの売上高は11,960百万円(前期比0.7%増)と微増となりました。営業利益は、材料価格やエネルギー費用の高騰や成長投資の推進によるコスト負担増の影響が大きく294百万円(前期比50.9%減)となりました。経常利益は円安による為替差益の計上があり382百万円(前期比28.7%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は公開買付関連費用の計上等により188百万円(前期比55.9%減)となりました。
主な用途別売上高は、次のとおりであります。
a.自動車部品事業 5,930百万円(前期比5.1%減)
電動化領域においては、中国向け・欧州向けが半導体不足による影響を受け減収となりましたが、国内向け・ASEAN向けは新規受注品の量産やEV化推進の影響で増加し、全体では増収となりました(前期比1.9%増)。
一方、既存品については、ASEAN向け・欧州向けが好調に推移したものの国内向け・中国向け等で減収となりました(前期比6.6%減)。
この結果、事業全体では前期比5.1%減となりました。
b.空調・カスタム部品事業 5,046百万円(前期比9.1%増)
空調関係においては、ASEAN向け・北米向けを中心に個人消費者向け販売が増加したことや、欧州における環境保全を目的としたヒートポンプ需要が増加したことで増収となりました(前期比10.5%増)。また、カスタム関係では、工作機市場が好調に推移したことにより増収となりました(前期比3.8%増)。
この結果、事業全体では前期比9.1%増となりました。
c.エレメント部品事業 984百万円(前期比2.7%減)
既存品については自動車用、家電用、産業機械用の各領域で顧客の在庫調整等により減収となりました(前期比18.6%減)。一方、光通信用はFTTx需要の増加により増収となりました(前期比19.2%増)。
この結果、事業全体では前期比2.7%減となりました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度における資産は、12,232百万円となり前連結会計年度比882百万円の増加となりました。
主な増加要因は、第1四半期に実行した第三者割当増資による現預金及び棚卸資産が増加したことにより、流動資産が前連結会計年度末に比べて748百万円増加しました。また、有形固定資産及び繰延税金資産が増加したことにより、固定資産は前連結会計年度末に比べて134百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度における負債は、7,756百万円となり前連結会計年度比115百万円の減少となりました。
主な増加要因は、長期借入金の流動負債への振替え等により流動負債が前連結会計年度末に比べて1,789百万円増加しました。一方、主な減少要因は、固定負債は長期借入金の流動負債への振替え等により前連結会計年度末に比べて1,905百万円減少しました。
(純資産)
当連結会計年度における純資産は、4,475百万円となり前連結会計年度比998百万円の増加となりました。
配当金の支払いにより67百万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益188百万円の計上及び第三者割当増資800百万円により増加しました。
この結果、自己資本比率は36.6%(前連結会計年度末は30.6%)となりました。
③当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動で221百万円獲得し、投資活動で401百万円使用し、財務活動で607百万円獲得した結果、前連結会計年度末に比べ524百万円増加し、2,207百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は221百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益303百万円及び減価償却費490百万円等により資金が増加しましたが、棚卸資産の増加196百万円、仕入債務の減少149百万円及び税金等の支払額169百万円等の資金の減少を上回ったものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は401百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出423百万円等の資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は607百万円となりました。これは主にリース債務による返済による支出が145百万円等はありましたが第三者割当増資による774百万円の増加によるものであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
24.3
22.7
26.5
30.6
36.6
時価ベースの自己資本比率(%)
56.9
36.5
76.1
67.3
62.4
債務償還年数(年)
5.0
9.5
8.6
14.5
22.8
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
14.3
7.3
8.9
3.7
2.4
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
(注4)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象とし
ています。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額及び手形売却
に伴う支払額を使用しております。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループは、温度センサ、電子部品等の製造販売及びこれらに付帯する業務の単一セグメントでありますが、社内の事業管理は事業部制をとっているため、生産、受注及び販売の実績の記載については、当社グループの事業の部門別に記載いたします。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
6,083,563
98.4
空調・カスタム
4,935,870
100.4
エレメント
993,874
84.4
合計
12,013,308
97.9
(注)1.金額は販売価格によっており、事業の部門間の取引は相殺消去しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日 )
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
6,652,322
102.7
1,787,635
167.8
空調・カスタム
5,397,330
104.8
2,768,508
114.5
エレメント
1,086,793
88.1
1,066,721
110.7
合計
13,136,445
102.1
5,622,865
126.4
(注)1.金額は販売価格によっており、事業の部門間の取引は相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
5,930,004
94.9
空調・カスタム
5,046,876
109.1
エレメント
984,005
97.3
合計
11,960,886
100.7
(注)1.事業の部門間の取引は相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで
あります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社デンソー
2,761,184
23.2
2,816,903
23.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸
表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成にお
ける重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。
棚卸資産の評価
一定の保有期間を超える棚卸資産在庫については、販売可能性や他用途での使用可能性による分類を行った上で、当該分類ごとに帳簿価額を切り下げる方法を採用しております。これは重要な会計方針に記載している収益性の低下による評価損以外に、棚卸資産の滞留可能性や過剰の有無に対する評価を行うものであります。COVID-19や半導体の供給不足などの外的環境に影響を受ける需要動向の変化により、計画通りの販売が実現できなくなった場合、滞留在庫や過剰在庫の評価を見直す可能性があります。
固定資産の減損損失
当社グループは、主に営業活動による損益等から減損の兆候を判定し、兆候がある場合には将来の事業計画等を勘案して減損の認識の判定を行っております。現時点では減損処理の必要な固定資産はありません。
しかし、将来の事業環境の変化、業績動向によっては減損処理が必要となる可能性があります。
②経営成績の分析
a.事業別の分析
当社グループの事業は、「自動車部品事業」「空調カスタム部品事業」「エレメント部品事業」に大別されます。これらの事業別の売上高は以下のような推移となりました。
全体を総括した場合、最も大きな影響があったのは、半導体不足に起因する車両減産にあります。当連結会計年度は空調・カスタム部品事業においてASEAN市場や欧州市場での受注増加がありましたが、自動車部品事業においては顧客の生産計画が下方に調整された影響を受け、当社グループの受注高にもマイナスの影響が生じました。
事業別には以下のように分析しております。
・自動車部品事業
半導体の供給不足問題の影響から自動車メーカー各社が減産調整を行ったことにより当連結会計年度を通じて既存品受注は苦戦が続きましたが、電動化領域は通期で好調に推移しました。
・空調カスタム部品事業
ASEAN市場及び欧州市場が好調に推移したことにより増収となりました。また、カスタム分野においても前連結会計年度からの受注回復の状況が継続しました。
・エレメント部品事業
光通信分野は新しい分野(FTTx)が特に上半期において需要増加が顕著となり増収となりましが、既存品につきましては自動車用、家電用、産業機械用の各領域で顧客の在庫調整等により減収となりました。
この結果、全体としては減収となりました。
b.エリア別の分析
(注)エリア別の売上高においては、前期・当期ともに顧客先への仕向地を基礎として集計しております。
・日本向け
自動車部品事業での電動化領域においては前期比で大幅な増収により、車両減産の影響や、また、エレメン
ト部品事業の既存品の低迷がありましたが、前期比で増収となりました。
・中国向け
車両減産の影響、および、年度後半からの市況悪化の影響により前期比で減収となりました。
・ASEAN向け
自動車部品事業での電動化領域においてインド向けが稼働した影響で増収、また、空調・カスタム事業が通
期で好調を維持しましたが、半導体の供給不足問題の影響から自動車メーカー各社が減産調整を行ったこと
により全体は前期比で減収となりました。
c.四半期単位の推移
年度当初は空調カスタム部品事業を中心に受注が好調であり、また、円安の影響もあり増収増益となりました。しかし、半導体の供給不足に起因する自動車部品事業の受注回復が大幅に遅れたこと、および、材料価格やエネルギー価格の高騰の影響が顕著になった年度後半は減収減益となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]に記載しております。
④資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための資材・部品購入、製造費用及び販管費用等であります。また、設備資金需要につきましては、当社グループ製品製造のための生産設備購入や工場建設費用等があります。
当社グループが現時点で保有する資金の約50%程度は海外子会社が保有しております。グループ各社の資金需給を踏まえつつ、グループ全体の戦略的な資金運用の観点から、配当等の手段により計画的に日本へ還流させております。
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、自己資本比率及びネット有利子負債を戦略上の重要な指標としながら、必要に応じて金融機関からの借入を行い、又は返済を進めながら、各種の投資(設備、人材、研究開発等)を行っております。
原則的には、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローが投資活動の原資となりますが、企業価値向上に有益と考える投資に対しては、借入金によるキャッシュも原資として充当して投資を行います。
b.経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、既存事業の強化・成長、及び二次電池領域のような新規分野の拡充のために不可欠と考える設備投資や人材投資、並びに高付加価値製品の開発に必須の技術開発分野への投資を積極的かつ継続的に実施することで企業価値の向上を実現すべく、優先して経営資源を配分します。
一方で、財務体質の強化、及び株主還元についても重要な経営課題と位置付けております。
有利子負債について目標を設定し、過度の投資とならないよう「成長投資と財務体質」のバランスを常にモニタリングし、投資判断を行っております。その上で、市場環境や資金余力を総合的に勘案し、安定的な配当を実施してまいります。
c.資金調達の方法
当社グループの資金調達は、間接金融を原則的な調達手段と位置付けており、国内金融機関と長期間にわたり良好な関係を幅広く構築してまいりました。現在は取引銀行5行との間でシンジケート方式によるタームローン契約及び短期コミットメントライン契約を締結しております。
なお、当連結会計年度において第三者割当増資により800,030千円の払い込みを受けております。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、3[事業等のリスク]に記載しております。
⑥経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]に記載しております。