【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度における世界経済及び我が国経済は、COVID-19感染拡大により、景気が急激に悪化しましたが、経済活動が早期に正常化した中国に加えて、米国や欧州でも持ち直しの動きが見られました。日本では緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の発出等により経済活動の制限を余儀なくされるなど、終息が見通せない状況が続きました。
このような状況の中、当社グループは、特に第1四半期において自動車部品を中心に受注が大幅に落ち込み、稼働調整等を余儀なくされましたが、第3四半期から年度末にかけて他国に先駆けてCOVID-19影響を抑えたとされる中国を中心に、自動車部品事業のみならず空調・カスタム部品事業でも需要が急回復いたしました。また、エレメント部品事業は年間を通じて売上が堅調に推移しました。その結果、通期では前期比減収ながら、期中予想を上回る売上を計上いたしました。
自動車部品事業につきましては成長分野である電動化領域が堅調な伸びを示しましたが、既存品はCOVID-19の影響により第1四半期に大幅に落ち込んだため、全体では前期比減収となりました。空調・カスタム部品事業も下期に中国で急回復したもののASEANは前年に届かず、通期では減収となりました。一方でエレメント部品事業は5G普及に伴う光通信分野の需要増、新規取引先開拓により前期比増収となりました。
損益面は、上期は、大幅な減収に加えて前期までに実施した設備投資や人員増加によるコスト負担増により営業利益、経常利益とも損失となりましたが、年間を通じて将来に向けた投資範囲を慎重に判断してキャッシュを維持しつつ、生産工程の見直しによる生産性向上や全社レベルでの業務効率化に取り組んだ結果、売上が急回復した下期においては前期を上回る利益を計上いたしました。また、当期及び今後の業績見通し等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産29百万円を計上しております。なお、前連結会計年度に計上していた繰延税金負債の取崩15百万円を含め、法人税等調整額は△50百万円(△:益)となっております。
その結果、当社グループの当期の業績は、売上高10,752百万円(前期比6.0%減)、営業利益314百万円(同32.4%減)、経常利益289百万円(同26.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益224百万円(同1.6%増)となりました。
主な用途別売上高は、次のとおりであります。
a.自動車部品事業 6,412百万円(前期比10.0%減)
カーエアコン、エンジン領域等の既存製品は、第2四半期まではCOVID-19による各自動車メーカーの生産調整等の影響を受けました。第3四半期以降は中国はじめ各国で需要が急回復しましたが、通期では減収(前期比13.3%減)となりました。
一方、電動化領域は世界的なEV化の動きを受けて年間を通じて堅調な需要により増収(前期比25.2%増)となりました。
b.空調・カスタム部品事業 3,511百万円(前期比2.2%減)
空調は、COVID-19の影響で第2四半期まではASEANでの落ち込みが大きく、第3四半期以降は回復したものの通期では前期比で減収となりました。カスタムは、中国における工作機械市場が好調により他地域での落ち込みをカバーして全体で前期比で増収を確保いたしました。
c.エレメント部品事業 828百万円(前期比13.5%増)
自動車及び家電用の既存製品は減少いたしましたが、光通信分野は5Gの普及に向けたインフラ整備により中国を中心に増収(前期比73.7%増)となりました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度における資産は、10,117百万円となり前連結会計年度比674百万円の増加となりました。
主な増加要因は、業績回復による売上債権の増加379百万円、受注増に備えたたな卸資産の増加145百万円及び、海外子会社におけるリース資産の計上による有形固定資産の増加362百万円があります。一方、主な減少要因は、借入金返済を進めたことによる現預金の減少350百万円があります。
(負債)
当連結会計年度における負債は、7,400百万円となり前連結会計年度比136百万円の増加となりました。
主な増加要因は、受注増に対応する購入増による支払債務の増加131百万円及び、海外子会社におけるリース債務の計上によるリース債務の増加484百万円があります。一方、主な減少要因は、借入返済による減少492百万円があります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産は、2,716百万円となり前連結会計年度比537百万円の増加となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加224百万円及び、その他包括利益累計額の増加378百万円がありました。一方、配当金の支払いによる減少67百万円がありました。
この結果、自己資本比率は26.5%(前連結会計年度末は22.7%)となりました。
③当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動で549百万円獲得し、投資活動で384百万円使用し、財務活動で676百万円使用した結果、前連結会計年度末に比べて350百万円減少し、1,648百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は549百万円となりました。税金等調整前当期純利益278百万円、減価償却費502百万円等により、1,152百万円の資金の増加となりました。一方で、売上債権の減少311百万円、たな卸資産の減少77百万円及び、法人税等の支払額60百万円等により、602百万円の資金の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は384百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出366百万
円等によるものであります。主な設備投資は、クーラント用の生産ライン(当社子会社)です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は676百万円となりました。これは主に長期借入による収入337百万円があった
一方で、長期借入金の返済による支出495百万円、リース債務の支払による支出100百万円等があったことによる
ものであります。前連結会計年度においてCOVID-19に関連する資金リスクへの対処としての借入を行いましたが、現在および来年度の資金状況を踏まえて借入残高をコントロールしております。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。
2017年3月期
2018年3月期
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
自己資本比率(%)
16.5
20.7
24.3
22.7
26.5
時価ベースの自己資本比率(%)
58.5
82.4
56.9
36.5
76.1
債務償還年数(年)
6.5
5.5
5.0
9.5
8.6
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
5.9
8.2
14.3
7.3
8.9
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
(注4)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象とし
ています。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額及び手形売却
に伴う支払額を使用しております。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループは、温度センサ、電子部品等の製造販売及びこれらに付帯する業務の単一セグメントでありますが、社内の事業管理は事業部制をとっているため、生産、受注及び販売の実績の記載については、当社グループの事業の部門別に記載いたします。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
5,993,796
88.1
空調・カスタム
3,844,918
99.9
エレメント
962,855
102.9
合計
10,801,570
93.2
(注)1.金額は販売価格によっており、事業の部門間の取引は相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日 )
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
6,782,757
95.8
832,465
180.2
空調・カスタム
4,351,023
108.7
1,891,516
179.8
エレメント
1,089,595
111.9
741,038
154.3
合計
12,223,377
101.4
3,465,020
173.7
(注)上記の金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
事業の部門別の名称
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
自動車部品
6,412,268
90.0
空調・カスタム
3,511,596
97.8
エレメント
828,773
113.5
合計
10,752,637
94.0
(注)1.事業の部門間の取引は相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで
あります。
相手先
前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社デンソー
3,738,035
32.7
3,499,124
32.5
3.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸
表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成にお
ける重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。
たな卸資産の評価
一定の保有期間を超えるたな卸資産在庫については、販売可能性や他用途での使用可能性による分類を行った上で、当該分類ごとに帳簿価額を切り下げる方法を採用しております。これは重要な会計方針に記載している収益性の低下による評価損以外に、たな卸資産の滞留可能性や過剰の有無に対する評価を行うものであります。需要動向の変化などにより、計画通りの販売が実現できなくなった場合、滞留在庫や過剰在庫の評価を見直す可能性があります。
固定資産の減損損失
当社グループは、主に営業活動による損益等から減損の兆候を判定し、兆候がある場合には将来の事業計画等を勘案して減損の認識の判定を行っております。現時点では減損処理の必要な固定資産はありません。
しかし、将来の事業環境の変化、業績動向によっては減損処理が必要となる可能性があります。
②経営成績の分析
a.事業別の分析
当社グループの事業は、「自動車部品事業」「空調カスタム部品事業」「エレメント部品事業」に大別されます。これらの事業別の売上高は以下のような推移となりました。
全体を総括した場合、最も大きな影響があったのは、COVID-19の影響による顧客の生産調整にあります。これはすべての事業に影響を及ぼしました。
事業別には以下のように分析しております。
・自動車部品事業
COVID-19の影響を最も強く受けました。2020年8月までは前年同月比で減収が継続しました。その後9月以降は同増収に転じましたが、通期では前年実績を下回ることとなりました。
ただし、電動化領域は成長著しい分野であり、このような環境下においても前年比25%増となりました。
・空調カスタム部品事業
COVID-19の影響は大きく、第3四半期の半ばまで前年同月比で減収となりました。その後は、中国市場を中心に回復に転じましたが、国内およびASEAN地区の回復が計画よりも遅れたため、通期では前年実績を下回ることとなりました。
・エレメント部品事業
米中貿易摩擦及びCOVID-19の影響により低迷したものの、光通信分野は好調に推移しました。その結果、通期で前年実績を上回りました。
b.エリア別の分析
注)エリア別の売上高は、顧客単位で集計しております。
・日本向け
自動車部品事業での電動化領域は前期比で増収となりましたが、その他については第2四半期までの減収の
影響が大きく、通期でも前期比でマイナスとなりました。
・中国向け
COVID-19の影響からの回復が早かったこと、及び、その後も市況が好調に推移したことで、全事業領域にお
いて前期比で増収となりました。
・ASEAN向け
COVID-19からの回復が遅れたこともあり、エレメント部品事業以外は前期比で減収となりました。
c.四半期単位の推移
COVID-19の影響により第2四半期までは非常に厳しい利益水準となりましたが、中国市場の回復を受け第3四半期以降は前年度同期比で増収となりました。第4四半期には回復の遅れていた日本やASEANも回復基調となり、翌連結会計年度に向けての受注水準も回復が鮮明となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、P21 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]に記載しております。
④資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための資材・部品購入、製造費用及び
販管費用等であります。また、設備資金需要につきましては、当社グループ製品製造のための生産設備購入や工場
建設費用等があります。
当社グループが現時点で保有する資金の約60%程度は海外子会社が保有しております。グループ各社の資金需給
を踏まえつつ、グループ全体の戦略的な資金運用の観点から、配当等の手段により計画的に日本へ還流させており
ます。
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、自己資本比率及びネット有利子負債を戦略上の重要な指標としながら、必要に応じて金融機関からの借入を行い、又は返済を進めながら、各種の投資(設備、人材、研究開発等)を行っております。
原則的には、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローが投資活動の原資となりますが、企業価値向上に有益と考える投資に対しては、借入金によるキャッシュも原資として充当して投資を行います。
b.経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、既存事業の強化・成長、及び二次電池領域のような新規分野の拡充のために不可欠と考える設備投資や人材投資、並びに高付加価値製品の開発に必須の技術開発分野への投資を積極的かつ継続的に実施することで企業価値の向上を実現すべく、優先して経営資源を配分します。
一方で、財務体質の強化、及び株主還元についても重要な経営課題と位置付けております。
有利子負債について目標を設定し、過度の投資とならないよう「成長投資と財務体質」のバランスを常にモニタリングし、投資判断を行っております。その上で、市場環境や資金余力を総合的に勘案し、安定的な配当を実施してまいります。
c.資金調達の方法
当社グループの資金調達は、間接金融を原則的な調達手段と位置付けており、国内金融機関と長期間にわたり良好な関係を幅広く構築してまいりました。現在は取引銀行5行との間でシンジケート方式によるタームローン契約及び短期コミットメントライン契約を締結しております。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、P15 2[事業等のリスク]に記載しております。
⑥経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、P12 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]に記載しております。