【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態の分析
<資産の部>
当第3四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比5,843億円(2.1%)増加の28兆1,154億円となりました。内訳は流動資産が同5,695億円(2.2%)増加の26兆5,791億円であり、このうち現金・預金が同1,266億円(2.8%)減少の4兆4,657億円、有価証券が同1,404億円(11.9%)減少の1兆374億円、トレーディング商品が同3,202億円(4.0%)増加の8兆3,251億円、有価証券担保貸付金が同4,918億円(5.9%)増加の8兆8,861億円、その他の流動資産が同837億円(8.7%)増加の1兆507億円となっております。固定資産は同147億円(1.0%)増加の1兆5,362億円となっております。
<負債の部・純資産の部>
負債合計は前連結会計年度末比5,663億円(2.2%)増加の26兆4,575億円となりました。内訳は流動負債が同4,153億円(1.8%)増加の23兆3,606億円であり、このうちトレーディング商品が同6,601億円(13.3%)増加の5兆6,060億円、約定見返勘定が同1,700億円(31.0%)増加の7,184億円、有価証券担保借入金が同2,219億円(2.3%)増加の9兆6,856億円、預り金が同823億円(18.0%)増加の5,387億円、受入保証金が同2,226億円(64.1%)増加の5,700億円、短期借入金が同1兆569億円(49.0%)減少の1兆987億円、コマーシャル・ペーパーが同1,823億円(157.2%)増加の2,983億円、1年内償還予定の社債が同626億円(14.0%)増加の5,094億円となっております。固定負債は同1,510億円(5.1%)増加の3兆932億円であり、このうち社債が同2,381億円(15.2%)減少の1兆3,254億円、長期借入金が同3,896億円(31.5%)増加の1兆6,266億円となっております。
純資産合計は同179億円(1.1%)増加の1兆6,578億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,777億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を467億円計上したほか、自己株式の消却を807億円、配当金399億円の支払いを行ったこと等により、同737億円(7.8%)減少の8,690億円となっております。自己株式の控除額は自己株式の消却等を行った結果、同625億円(46.6%)減少の716億円、その他有価証券評価差額金は同127億円(42.9%)減少の168億円、為替換算調整勘定は同255億円(54.1%)増加の728億円、非支配株主持分は同32億円(1.3%)増加の2,607億円となっております。
(2)経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第3四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比21.5%増の5,722億円、純営業収益は同13.3%減の3,384億円となりました。
受入手数料は2,071億円と、同15.4%の減収となりました。委託手数料は、マーケット環境の悪化により顧客フローが減少し、同17.7%減の479億円となりました。引受業務では、エクイティや債券の引受案件等が減少し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、同43.4%減の193億円となりました。
トレーディング損益は、エクイティのデリバティブ運営で苦戦したことから、同30.1%減の563億円となりました。
販売費・一般管理費は前年同期比1.5%増の2,961億円となりました。取引関係費は支払手数料が増加し同14.5%増の535億円、人件費は賞与が減少したことにより同2.0%減の1,480億円となっております。
以上より、経常利益は同50.1%減の561億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比39.2%減の467億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益
経常利益又は経常損失(△)
2021年
12月期
2022年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率
2021年
12月期
2022年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率
(注)
リテール部門
146,794
123,785
△15.7%
36.6%
35,104
19,614
△44.1%
33.4%
ホールセール部門
150,864
117,547
△22.1%
34.7%
40,539
△786
-
-
グローバル・
マーケッツ
100,142
77,695
△22.4%
22.9%
27,925
△3,327
-
-
グローバル・イ
ンベストメント
・バンキング
50,721
39,852
△21.4%
11.8%
11,429
1,502
△86.9%
-
アセット・マネジメント部門
53,291
52,825
△0.9%
15.6%
34,052
32,528
△4.5%
55.5%
証券アセット・マネジメント
34,117
32,536
△4.6%
9.6%
16,677
14,098
△15.5%
24.0%
不動産アセット・マネジメント
19,174
20,289
5.8%
6.0%
17,374
18,430
6.1%
31.5%
投資部門
6,940
9,399
35.4%
2.8%
3,089
6,505
110.6%
11.1%
その他・調整等
32,426
34,931
-
10.3%
△304
△1,748
-
-
連結 計
390,317
338,488
△13.3%
100.0%
112,481
56,112
△50.1%
100.0%
(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当第3四半期連結累計期間において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第3四半期連結累計期間においては、エクイティ収益は、委託手数料が減少したほか、募集・売出し案件が
前年同期に比べて少なかったことに起因する募集手数料収入の減少等により減収となりました。債券収益は募
集・売出し案件の減少等により減収となりました。株式投資信託についても、販売額が減少したことから販売手
数料収入は減収となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比15.7%減の1,237億円、経常利益は同44.1%減の196億円となりました。リテール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ36.6%及び33.4%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のリテール部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。
グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは減収減益となりました。エクイティ収益は、市場の不透明感を背景とした顧客フローの減少に加え、ポジション運営も苦戦したことから、減収となりました。フィクストインカム収益は、海外において、金利のボラティリティ上昇を背景に収益機会が増加したことから、増収となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は776億円(前年同期1,001億円)、経常損失は33億円(前年同期は279億円の経常利益)となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・インベストメント・バンキングは減収減益となりました。引受け・売出し手数料は、エクイティ・債券の双方で主幹事案件を多数積上げた前年同期との比較では、減収となりました。また、M&Aビジネスでは、国内外で多数の案件を遂行しました。これらの結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は398億円(前年同期507億円)、経常利益は15億円(前年同期114億円)となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は1,175億円(前年同期1,508億円)、経常損失は7億円(前年同期は405億円の経常利益)となりました。ホールセール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は34.7%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門は、証券アセット・マネジメントと不動産アセット・マネジメントで構成されます。
証券アセット・マネジメントの主な収益源は、大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は、持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。
証券アセット・マネジメントは減収減益となりました。大和アセットマネジメントでは、時価の下落により、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比5.6%減の20兆4,857億円となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比4.6%減の325億円、経常利益は同15.5%減の140億円となりました。
不動産アセット・マネジメントの主な収益源は、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益です。また、持分法適用関連会社であるサムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産市場・オフィス需要の動向が挙げられます。
不動産アセット・マネジメントは増収増益となりました。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比5.8%増の1兆3,532億円となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比5.8%増の202億円、経常利益は同6.1%増の184億円となりました。
当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比0.9%減の528億円、経常利益は同4.5%減の325億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ15.6%及び55.5%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬、株式への配当、売電収入などのインカムゲインです。
当第3四半期連結累計期間において、大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行し、大和エナジー・インフラでは、太陽光発電所の取得など、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しながら、インカムゲイン及びキャピタルゲインを計上しました。
その結果、当第3四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比35.4%増の93億円、経常利益は同110.6%増の65億円となりました。投資部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ2.8%及び11.1%でした。なお、新型コロナウイルス感染症を起因とする投資先の株価下落や業績悪化等による、当第3四半期連結累計期間の投資部門における業績への影響は限定的です。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、また、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第3四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比1.2%減の4兆1,489億円、銀行口座数は同4.5%増の164万口座となり、金融収支が改善した結果、当第3四半期連結累計期間の業績は増収増益となりました。
一方で、その他セグメントに属する一部のグループ会社が前年同期比で減益となったため、その他・調整等に係る純営業収益は349億円(前年同期324億円)、経常損失は17億円(前年同期は3億円の経常損失)となりました。その他・調整等の当第3四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体の連結純営業収益に占める割合は10.3%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のその他・調整等における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第85期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第3四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>
世界経済は、総じて2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの拡大基調が続いていますが、その改善ペースは鈍化しつつあります。IMF(国際通貨基金)が2023年1月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.2%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.4%へと低下したと見込まれています。世界的にコロナ禍で落ち込んだサービス活動の回復が継続する一方、歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気拡大ペースを抑制する要因となっています。また、2022年初に始まったロシアによるウクライナへの侵攻を契機とした地政学的リスクの高まりや、それに伴うエネルギー不足への懸念などが、世界経済における新たなリスクとなっています。
米国経済は、緩やかな回復傾向が続いています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率△0.6%と2四半期連続のマイナス成長となりました。中国・上海市でのロックダウンなどを背景とした供給制約によって生産が停滞し、在庫投資が大幅に減少したことに加え、金利上昇を背景に住宅投資が減少したことでGDPが押し下げられました。他方、労働市場が改善基調を維持する中、経済正常化によるサービス消費の回復もあり、個人消費は減速しつつも増加が続きました。7-9月期に入ってからも労働市場の改善は続いており、個人消費の増加を主因に7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.2%と3四半期ぶりの上昇に転じました。しかし、10-12月期にはFRB(連邦準備制度理事会)による利上げの影響によって、住宅投資が減少したほか、設備投資の増加ペースが鈍化したことにより、実質GDP成長率は前期比年率+2.9%と、前四半期から減速しました。高いインフレ率が引き続き家計の重荷になっていることに加え、利上げを受けた労働市場の回復ペースの鈍化などにより、米国経済の先行きの不透明感は増しています。
金融面では、FRBは歴史的な高インフレを鎮静化するため、金融引き締めを強化しています。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了しました。続く5月のFOMCでは、0.50%ptの利上げに加えて、6月からFRBのバランスシートの縮小を開始することが決定されました。6月のFOMCでは利上げ幅がさらに拡大され、0.75%ptの利上げが行われました。その後、7月、9月、11月のFOMCでもそれぞれ0.75%ptの利上げが実施されましたが、12月のFOMCでは利上げ幅が0.50%ptへと縮小されました。利上げペースの鈍化が明確になったこともあり、9月末には一時2010年以来となる4%超まで上昇していた米国の10年債利回りは、12月末には3%台後半へと低下しました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかな回復基調が続いたものの、2022年後半以降は停滞感が強まっています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、行動制限の緩和などによる個人消費の持ち直しなどから、前期比年率+3.4%と堅調な結果となりました。しかし、2月下旬に開始したロシアによるウクライナ侵攻の長期化やインフレ率の高進などから、個人や企業の景況感は大幅な悪化が続いています。また、インフレ率の高進を背景に、ECB(欧州中央銀行)が金融引き締めに転じたことによる借り入れコストの上昇も、投資や消費を下押しする要因となり、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.2%と減速しました。さらに、10-12月期には実質GDP成長率は前期比年率+0.5%となり、一段と伸び率が低下しました。
金融面では、ECBはコロナ禍以降の金融緩和を終了し、引き締めへと転じています。インフレが加速する中、2022年3月のECB理事会では、コロナ禍以前から実施されてきた資産買入プログラムの終了を前倒しする方針が示され、6月の理事会では、7月1日付で同プログラムを終了することが決定されました。続く7月の理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入されたマイナス金利が8年ぶりに解除されました。さらに、9月と10月の理事会では0.75%ptと過去最大の利上げ幅での利上げを実施しましたが、12月の理事会では利上げ幅を0.50%ptに縮小しました。
新興国経済は、2020年後半以降、総じて持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、2021年の新興国の実質GDP成長率は、前年の落ち込みの反動から+6.7%と高い成長となりました。また、2022年は+3.9%の成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、政府が掲げていたゼロコロナ政策の下、上海市などの多くの都市でロックダウンが実施されたため、4-6月期の実質GDP成長率は前年比+0.4%の低成長にとどまりました。しかし、ロックダウンが順次解除されたことに加えて、財政・金融政策による下支えもあり、7-9月期の中国の実質GDP成長率は前年比+3.9%となり、前期から伸びが加速しました。10-12月期には、感染者数が急増した結果、経済活動が停滞した影響で実質GDP成長率は前年比+2.9%にとどまりました。
中国以外の新興国は、総じて見れば持ち直しの動きが続きました。欧米を中心とした主要国経済の回復による外需の拡大が新興国経済を下支えしたことに加え、一部の資源国では、資源価格の上昇が経済を押し上げる要因となりました。一方、高インフレや、欧米での金融引き締め・金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされており、新興国でも景気の減速感は強まりつつあります。
<日本の状況>
日本経済は、2022年度に入り緩やかな回復が続いています。2022年1-3月期は、新型コロナウイルスの感染者数の増加を受けて多くの地域でまん延防止等重点措置が適用されたことに加え、半導体不足による供給制約なども影響し、実質GDP成長率は前期比年率△1.8%のマイナス成長となりましたが、その後、まん延防止等重点措置が解除され、経済活動の正常化が進んだことで、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.5%と成長ペースが大きく加速しました。7-9月期には輸入の急増を主因に実質GDP成長率は前期比年率△0.8%となったものの、10月以降、経済は再び持ち直しへ向かいました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は持ち直しの動きが続いています。2022年1-3月期は、感染再拡大に伴い多くの地域でまん延防止等重点措置が適用されたことで、サービス消費を中心に個人消費は減少しました。しかし、まん延防止等重点措置が3月21日を期限に全面解除されたことで、4-6月期は、サービス消費を中心に個人消費は持ち直しました。7-9月期には、再び新型コロナウイルスの感染が拡大しましたが、行動制限が導入されなかったため、緩やかながら個人消費の増加基調が継続しています。一方、家計による需要のうち住宅投資については、資材価格上昇を背景とした価格上昇などにより、2021年後半以降、減少傾向にあります。
企業部門の需要である設備投資は増加基調にあります。2022年1-3月期の設備投資は、供給制約による生産活動の停滞、さらにはロシアのウクライナ侵攻による先行きの不透明感などが影響し、前期から減少しました。しかし、4-6月期に入って新型コロナウイルスの感染者数が減少し、国内の経済活動が再開される中、設備投資にも再び増加の兆しが見られました。また、7-9月期以降は、それまで設備投資を抑制する要因となっていた、中国でのロックダウンなどによるサプライチェーンの混乱が解消に向かったこともあり、設備投資の回復傾向が続いています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから2021年度に見送られた設備投資の一部は2022年度に先送りされているとみられ、日銀短観(2022年12月調査)によれば、2022年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+15.1%と非常に高い伸びが見込まれています。
金融面では、短期金利に加えて長期金利も操作対象とする日本銀行の金融緩和措置が継続しています。ただし、日本経済がコロナ禍による落ち込みから持ち直す中、日本銀行は、2021年12月の金融政策決定会合で、コロナ禍への対応として導入された社債などの買い入れ増額の一部について2022年3月で終了することを決定しました。日本銀行による緩和的な金融政策が続くものの、2022年に入って米国長期金利が上昇する中、日本の10年国債利回りでも上昇圧力が強まっており、2022年度に入ってからは、日本銀行が政策目標とする範囲の上限である0.25%近傍で推移していました。こうした状況の中、12月の金融政策決定会合において、日本銀行は10年債利回りの変動幅を±0.5%へと拡大することを決定し、これを受けて、10年債利回りは12月末時点で0.454%へと上昇しました。
為替市場をみると、2022年度に入り円安が急速に進みましたが、11月以降は円高への揺り戻しがみられました。米国では高インフレを抑制するためにFRBが利上げを続ける姿勢を示し、金利の上昇が続いた一方、日本では日本銀行による低金利政策が維持されたことで、日米金利差が拡大し、対ドルレートは非常に速いペースで円安が進みました。年初時点で115円台だった対ドルレートは、10月には一時150円台とおよそ32年ぶりの円安水準となりました。しかし、その後、FRBによる利上げのペースが鈍化する公算が高まるなか、日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大もあり、12月には一時131円台まで急速に円高が進みました。
株式市場では、海外市場の動向に大きく左右される形で、株価が一進一退の推移を続けています。4-6月期は、米国での金融引き締めや、景気減速懸念によって米国の株価が一進一退となる中、日経平均株価も上昇・下落を繰り返す不安定な相場展開となりました。7-9月期に入ると、米国での景気減速懸念が強まったことに加えてインフレ率に鈍化の兆候が見られたことで、米国長期金利の低下が進み、8月中旬まで米国株価は上昇しました。日経平均株価もそうした米国株価の動きに追随して上昇し、8月半ばには一時29,000円台を回復しました。しかし、8月後半に入ると米国のインフレ懸念が再び高まり、これに対してFRBがタカ派的な姿勢を強めたため、9月末にかけて日米ともに株価は下落基調となりました。10月以降には、FRBによる利上げペースが鈍化するとの見方が広まったことなどもあり株価は上昇したものの、12月に入ると日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大を受けて再度下落に転じました。
2022年12月末の日経平均株価は26,094円50銭(同年9月末比157円29銭高)、10年国債利回りは0.454%(同0.177%ptの上昇)、為替は1ドル132円14銭(同12円18銭の円高)となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
(5)資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>
当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続するうえで十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、当第3四半期日次平均のLCRは139.6%です。当第3四半期末のNSFRは所定の比率を上回る見込みとなっております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCR及びNSFRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第3四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 2022年10月
至 2022年12月)
適格流動資産
(A)
27,575
資金流出額
(B)
39,764
資金流入額
(C)
20,015
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額
(D)
27,575
純資金流出額
(E)
19,748
連結流動性カバレッジ比率
(D)/(E)
139.6%
<グループ全体の資金管理>
当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>
当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び一部の海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第3四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比113億円減少し、1兆2,751億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,777億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益467億円を計上したほか、自己株式の消却を807億円、配当金399億円の支払いを行ったこと等により、前連結会計年度末比737億円減少の8,690億円となりました。自己株式の控除額は同625億円減少し、716億円となっております。
#C8601JP #大和証券グループ本社 #証券商品先物取引業セクター