【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績 当連結会計年度における国内経済は、輸出や生産に弱さがみられたものの第3四半期までは設備投資の増加や雇用情勢の改善など景気は緩やかながら回復基調にありました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により第4四半期において大幅に下押しされ急速に悪化し、先行きにつきましても極めて厳しい状況が続くことが見込まれます。一方、世界経済は、通商問題の動向やイギリスのEU離脱影響などの不安要素がありながらも全体としては回復基調にありましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行の影響により第4四半期において急速に減速しました。先行きにつきましても更なる下振れリスクが懸念されるなど不透明な状況となっています。 また、当社グループが最も影響を受ける自動車業界の市場におきましては、国内市場は底堅く推移する一方で、海外市場は中国が低迷するほか、北米・欧州においても減速感が強まっておりました。このような状況のなかで拡大した新型コロナウイルス感染症の影響は生産活動の停滞や需要の急減速にまで波及し、足元では極めて厳しい状況となっております。先行きにつきましても不透明な状況が続くことが見込まれます。 当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、国内事業は、中空エンジンバルブやPBWの量産拡大等の増収要因はありましたものの、精密鍛造歯車やバルブリフターの受注減少等により前年度に比べ減収となりました。海外事業は、アジアの一部地域では生産が拡大しましたものの、中国・北米の受注減少等により海外事業全体としては前年度に比べ減収となりました。 この結果、売上高は、424億65百万円(前年度比7.6%減)となりました。このうち為替変動の影響は0.1%増であります。 損益面につきましては、売上原価は、国内外事業における受注減少に伴う固定費の圧迫やその他コストの増加等により、売上原価率が前連結会計年度の86.0%から86.4%と0.4%増加しております。 販売費及び一般管理費は、売上原価同様、国内外事業における受注減少に伴う固定費の圧迫やその他コストの増加等により、対売上高率は前連結会計年度の8.4%から10.4%と2.0%増加しております。 この結果、営業利益は、13億37百万円(前年度比47.8%減)となりました。このうち為替変動の影響は3.5%増であります。 営業外収益は前連結会計年度から31百万円減少し、5億38百万円となっております。営業外収益の減少の主なものは、受取利息や雑収入の減少によるものであります。また、営業外費用は、前連結会計年度から10百万円増加し、2億71百万円となっております。営業外費用の増加の主なものは、為替差損の計上額の増加によるものであります。 この結果、経常利益は、16億4百万円(前年度比44.1%減)となりました。 親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却に伴い特別利益計上額が増加する一方で、インド及び国内の固定資産減損損失計上や損失補償金の支払いに伴う特別損失の計上及び海外合弁事業の減益等により、4億31百万円(前年度比46.7%減)となりました。 なお、当社グループでは経営成績を判断する上で、事業の拡大及び収益性の指標として売上高及び営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重視しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 (小型エンジンバルブ)国内事業は、新機種の本格量産やグループ内部での中空エンジンバルブの売上増加等の増収要因はありましたものの、欧米・東南アジア向け製品の低調や消費税率引上げに伴う自動車の販売不調に伴う受注減少等により四輪車用エンジンバルブが前年度に比べ減収となりました。二輪車用エンジンバルブはレジャー・中大型向け製品の低調により減収となりました。海外事業は、アジア地域では、インドネシアにおける生産拡大や為替換算の円安効果等の増収要因はありましたものの、中国・タイ・インド・ベトナムにおける受注減少により減収となりました。北米地域・欧州地域では、自動車の販売不調に伴う受注減少や為替換算の影響等により減収となりました。 汎用エンジンバルブは、新機種の立ち上がりや海外向け汎用製品の増加等により増収となりました。 当セグメントの損益面につきましては、新機種の本格量産による効果やタイ・ベトナムにおけるコスト削減等の増益要因はありましたものの、国内外事業における受注減少やコスト増加、中国子会社立ち上げコストの発生等により前年度に比べ減益となりました。 この結果、当セグメントの売上高は、327億97百万円(前年度比7.1%減)、セグメント利益(営業利益)は、11億28百万円(前年度比54.8%減)となりました。
(舶用部品)舶用関連製品につきましては、国内向け製品の好調や拡販の成果等により船舶用の組付部品・補給部品の受注は増加しましたものの、海外向け大型発電機用製品が減少し、前年度に比べ減収となりました。 当セグメントの損益面につきましては、主力製品の受注減少等により減益となりました。 この結果、当セグメントの売上高は、32億72百万円(前年度比6.1%減)、セグメント利益(営業利益)は、10百万円(前年度比93.7%減)となりました。
(可変動弁・歯車・PBW)可変動弁につきましては、量産終了に伴い、前年度に比べ減収となりました。 精密鍛造歯車につきましては、生産能力に応じた受注の適正化や海外向け製品の減少等により自動車用製品が前年度に比べ大幅な減収となりました。産業機械用製品は建機・農機向け製品の低調により減収となりました。 PBWにつきましては、当該製品の量産拡大及び生産能力増強により大幅な増収となりました。 当セグメントの損益面につきましては、PBWの量産拡大による効果等により黒字化しました。 この結果、当セグメントの売上高は、46億18百万円(前年度比10.6%減)、セグメント利益(営業利益)は、23百万円(前年度はセグメント損失(営業損失)1億98百万円)となりました。
(その他)バルブリフターにつきましては、関連会社への生産移管に伴う受注減少等により減収となりました。 工作機械につきましては、グループ内部での取引が減少し減収となりました。 ロイヤルティーにつきましては、前年度と同水準となりました。 農作物につきましては、事業規模は依然小さいものの販路拡大により増収となりました。 この結果、当セグメントの売上高は、35億76百万円(前年度比26.5%減)、セグメント利益(営業利益)は、1億30百万円(前年度比57.3%増)となりました。 なお、当セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高17億99百万円を含んでおります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高 (千円)
前年同期比(%)
小型エンジンバルブ
33,023,491
92.5
舶用部品
3,441,630
99.0
可変動弁・歯車・PBW
4,770,999
90.2
その他
3,508,434
71.0
合計
44,744,556
90.5
(注) 1 金額は販売価格によっております。2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②受注実績当社グループは、各納入先より提示された生産計画をもとに、当社グループの生産能力を勘案して生産計画を立てる方法が主体となっている事から、受注実績は生産実績に近似するため、記載を省略しております。
③販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
小型エンジンバルブ
32,797,641
92.9
舶用部品
3,272,356
93.9
可変動弁・歯車・PBW
4,618,831
89.4
その他
3,576,402
73.5
合計
44,265,232
90.7
(注) 1 金額は販売価格によっております。2 セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
新型コロナウイルス感染症による影響につきましては、当社グループの各事業拠点におきまして、顧客工場の稼働停止や各国におけるロックダウン等による売上減少が生じております。前年同期比で売上高の減少が生じている事業拠点における2020年1月から3月の売上高実績では、国内事業、海外事業とも約16%(前年同期比)の減少となりました。また、2020年4月から6月の売上高予測では、国内事業、海外事業とも大幅な減少を見込んでおり、事業セグメント別では、小型エンジンバルブ事業、可変動弁・歯車・PBW事業、その他事業においてその影響が顕著でありますが、舶用部品事業におきましては、影響は比較的穏やかであると認識しております。 このような状況下、当社グループでは、新型コロナウイルス感染症による影響が2020年夏頃まで継続するとの想定のもと、業績への影響の最小化を図るべく、スピード感を持って、経済対策の検討と実行を進めております。「安全第一の方針から縮小や中止を決めざるを得ない」ものと「不要不急な事案は、凍結してキャッシュ流出を抑える」という考えのもとで、勤務体制の変更や稼働日数の調整、各種社内行事の自粛、その他設備投資の抑制等を行い、コスト削減による対応を進めております。
(2) 財政状態当連結会計年度末の総資産は、561億92百万円となり、前連結会計年度末と比べ、10億73百万円減少しました。この主な要因は、投資有価証券が14億42百万円減少したものの、現金及び預金が2億6百万円増加したことなどによるものであります。 負債総額は267億6百万円となり、前連結会計年度末と比べ、77百万円減少しました。この主な要因は、設備支払手形が79百万円減少したことなどによるものであります。 純資産総額は294億85百万円となり、前連結会計年度末と比べ、9億96百万円減少しました。この主な要因は、その他有価証券評価差額金が9億15百万円減少したことなどによるものであります。 なお、通貨別の為替の変動につきましては、当社の連結子会社のある国では、前連結会計年度末と比べ、米ドル・人民元・ポーランドズロチ・ベトナムドン・インドルピーが円高に、タイバーツ・台湾ドル・インドネシアルピアが円安に進みました。
(3) キャッシュ・フロー 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は51億40百万円となり、前連結会計年度末に比べ、2億6百万円増加しました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動により、41億77百万円の資金増加(前連結会計年度は、58億50百万円の資金増加)となりました。これは主に、減価償却費46億41百万円を計上したことや、税金等調整前当期純利益16億55百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動により、56億63百万円の資金減少(前連結会計年度は、58億27百万円の資金減少)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入3億37百万円があったものの、有形及び無形固定資産の取得による支出58億92百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動により、17億3百万円の資金増加(前連結会計年度は、8億3百万円の資金減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入48億1百万円があった一方、長期借入金の返済による支出が18億44百万円、非支配株主への配当金の支払による支出7億2百万円によるものであります。
資金調達の基本方針、及び資金調達手段に関して、当社は円滑な事業活動に必要な流動性及び財務健全性の確保を、資金調達の基本方針としております。これに則し、金融機関との間で長期にわたり培った良好な関係に基づき、主として本邦銀行、生保等からの7年程度の長期資金を中心とした資金調達を行っております。同時に長期資金の年度別償還額の集中等を避けることで借り換えリスクの低減を図っております。さらに好条件の場合には、国際協力銀行などの政府系金融機関から資金調達を行っております。今期末において予定している次期の設備投資に関しては、自己資金、及び長期借入金による資金調達を行う予定です。 流動性の確保に関しましては、当連結会計年度における流動比率は212%、当座比率は124%となっており、十分な流動性を確保していると認識しております。 財務健全性に関しましては、当連結会計年度における自己資本比率は39.4%となり、円滑な業務遂行を維持するという点に関して、健全な範囲にあると認識しております。 新型コロナウイルス感染症の資金調達における影響につきましては、合理的な算定が難しい状況が継続しておりますが、2020年6月時点での生産状況が概ね1年間継続することを想定した緊急の借入枠の確保を目指しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要と考えている主なものは以下のとおりです。
(a) 繰延税金資産の回収可能性 当社グループは、将来減算一時差異の解消見込額について、収益力やタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が十分に確保できることを前提に、繰延税金資産を慎重に計上しております。 繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに左右されるため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の修正を行うため、将来の税金費用に影響を与える可能性があります。
(b) 退職給付債務及び退職給付費用の算定 当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率等の様々な計算基礎があります。 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(c) 減損会計における将来キャッシュ・フロー 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、管理会計上の区分を基準として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。 固定資産の回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損損失を計上し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
(d) 新型コロナウイルス感染症の影響 当社グループは、新型コロナウイルス感染症による影響が、2020年夏頃まで継続するとの前提のもと、会計上の見積りを行なっております。今後の感染動向や、それに伴う経済的な影響が想定と異なった場合、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。
#C6493JP #NITTAN #輸送用機器セクター