【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
1.経営成績の状況当第2四半期連結累計期間においては、ウクライナ情勢の長期化など、多様化した地政学リスクによるさまざまな影響が生じております。また、世界的な金融引き締め政策の影響もあり、世界経済の下振れリスクも生じております。一方、国内においては、感染症対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、景気が持ち直していくことが期待されていますが、物価上昇による家計や企業への影響が発現するなど今後も国内外の情勢の動向を注視する必要があります。そのような中、森永乳業グループは生活必需品である食品を製造する企業としての使命を果たせるよう、従業員の安全と健康に引き続き最大限の配慮をし、できる限り商品の供給を継続すべく取り組んでまいりました。また、当期から開始した新たな「中期経営計画2022-24」のもと、当社グループならではの「健康価値」と「おいしさ・楽しさ価値」の提供に努め、特に、国内外での健康ニーズの高まりを背景に、ヨーグルトや機能性素材をはじめさまざまな健康課題に配慮した「健康5領域」商品の拡大に取り組みました。一方で、世界的な需要の高まりやさらなる円安の進行、およびウクライナ情勢の不透明感が加わり、原材料・エネルギー価格および物流コストにおいては、従前の環境とは大きく異なる水準で上昇しました。これに対し、チーズ、アイスクリームなどの価格改定や、利益率の高い事業や商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、グループ全体でのコストの見直しなどに努めましたが、コスト構造の急激な変化および消費動向の変化による大変厳しい環境は続いております。
<森永乳業グループ10年ビジョンと「中期経営計画 2022-24」について>当社グループは10年先を見据えた「森永乳業グループ10年ビジョン」を、2019年4月に制定しております。当ビジョンでは、・「『食のおいしさ・楽しさ』と『健康・栄養』を両立した企業へ」・「世界で独自の存在感を発揮できるグローバル企業へ」・「サステナブルな社会の実現に貢献し続ける企業へ」を10年後の当社グループのありたい姿と定め、・「営業利益率7%以上」「ROE10%以上」「海外売上高比率15%以上」を2029年3月期の数値目標に設定いたしました。
この考えのもと、2025年3月期までの3年間の「中期経営計画 2022-24」では、社会課題の解決と収益力向上の両立を目指し、・「事業の高付加価値化を通じた持続的成長の実現」・「将来を見据えた経営基盤のさらなる強化」・「効率性を重視した財務戦略」の3つを基本方針に定め、取り組んでいます。また、合わせて「サステナビリティ中長期計画2030」を制定し、「食と健康」「資源と環境」「人と社会」の3つのテーマにより2030年の目標、KPIを定め、経営の根幹に据えるとともに、中期経営計画と相互に連動させながら取り組みを進めております。中期経営計画の最終年度(2025年3月期)の数値目標については、売上高5,400億円、営業利益250億円、親会社株主に帰属する当期純利益154億円、売上高営業利益率4.6%、ROE(自己資本利益率)6%、海外売上高比率13%としています。
(資料1)「中期経営計画 2022-24」全体像
(資料2)「サステナビリティ中長期計画2030」
<当期の主な取り組み事項>当期は、当社グループが新たなステージに向かうための重要なスタートの1年と位置付けております。激変する環境に対応しながら、さらなる企業体質および事業の強化に努めてまいります。・原材料・エネルギーコスト上昇への対応- 価格改定、プロダクトミックス改善、合理化などあらゆる対応によりコスト上昇の影響を最小限に抑制・「中期経営計画 2022-24」「サステナビリティ中長期計画2030」に沿った取り組みの推進- 当社グループならではの「健康価値」と「おいしさ・楽しさ価値」を追求した、お客さまのニーズに応える商品・高付加価値商品の提供とその価値訴求- ヨーグルトや機能性素材を始めとするさまざまな健康課題に配慮した「健康5領域」商品の拡大- 海外事業の拡大(既存事業の拡大、NutriCo Morinaga (Private) Limited の株式譲渡契約締結など)- 主にBtoB事業(業務用乳製品)を中心とする、感染症による環境変化に対応した販売活動の促進- 経営基盤のさらなる強化に向けた成長分野への投資(2022年5月稼働:利根工場ドリンクヨーグルト設備増設、2024年4月稼働予定:神戸工場製造棟増築)- サステナビリティ経営の推進に向けた取り組み(本業を通じた健康への貢献、気候変動・プラスチック問題など環境課題への対応、人権・多様性への配慮、グループ全体のサステナビリティ意識の浸透、当社グループ初となるグリーンボンド発行など)
これらの結果、当社グループの連結売上高は増収となりました。栄養・機能性食品事業および主力食品事業においては、チーズ、アイスクリームなどの価格改定や、機能性ヨーグルト、「マウントレーニア」などの高付加価値商品の提供に努めました。特に主力食品事業は価格改定後の数量減、国内における消費動向の変化の影響を大きく受けたものの、業務用乳製品などの拡販によるBtoB事業の拡大、海外事業の伸長などもあり、全体では増収となりました。連結の利益面では、世界的な需要の高まりやさらなる円安の進行などによる、原材料・エネルギー価格の上昇の影響を大きく受けました。これに対し、価格改定やプロダクトミックスの改善、グループ全体でのコストの見直しなどを推進しましたが、大きなコストアップを吸収することができず、全体では前年を下回りました。
連結売上高
269,962百万円
(前年比
3.3%増)
連結営業利益
14,620百万円
(前年比
29.5%減)
連結経常利益
15,723百万円
(前年比
26.8%減)
親会社株主に帰属する四半期純利益
8,478百万円
(前年比
50.8%減)
(その他重要経営指標)売上高営業利益率
5.4% ROE(自己資本利益率)
4.0% 海外売上高比率
10.9%
セグメント別の状況は、次のとおりです。
(単位:百万円)
売上高
前年比
営業利益
前年比
当期
前期
当期
前期
食品事業
258,534
249,863
+3.5%
19,020
24,793
△23.3%
その他の事業
14,858
14,113
+5.3%
1,231
1,299
△5.3%
消去または全社
△3,430
△2,630
△5,630
△5,363
合計
269,962
261,346
+3.3%
14,620
20,730
△29.5%
食品事業:市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料などその他の事業:飼料、プラント設備の設計施工など
(参考)「中期経営計画 2022-24」における事業分野別(4本の事業の柱)業績概況①
栄養・機能性食品事業:事業全体の売上高は前年並みとなりましたが、健康ニーズの高まりを背景に、引き続き機能性ヨーグルトの取り組みを進め、「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」などが堅調に推移しヨーグルトは増収となりました。また、流動食などを扱うクリニコ社も増収となりました。利益面では、原材料・エネルギー価格の上昇の影響を受け、プロダクトミックスの改善やコスト削減に努めましたが、事業全体では減益となりました。
栄養・機能性食品事業 売上高
61,949百万円
(前年比
0.0%増)
栄養・機能性食品事業 営業利益
3,468百万円
(前年差
2,293百万円減)
② 主力食品事業:原材料・エネルギー価格の上昇の影響を大きく受け、チーズ、アイスクリーム、「森永の焼プリン」などの価格改定や、「マウントレーニア」などの高付加価値商品の拡大に努めましたが、価格改定後の数量減や、国内における消費動向の変化の影響もあり、事業全体では減収減益となりました。
主力食品事業 売上高
93,065百万円
(前年比
7.3%減)
主力食品事業 営業利益
5,566百万円
(前年差
4,200百万円減)
③ BtoB事業:構成比の高い業務用乳製品において、感染症による環境変化への対応や価格改定を進めたことなどから、事業全体では増収となりました。また、健康ニーズの高まりから、当社の保有する菌体をはじめとする機能性素材への高い関心も継続しております。利益面においては、増収効果はありましたが、原材料・エネルギー価格の上昇の影響などにより前年を下回りました。
BtoB事業 売上高
45,579百万円
(前年比
14.2%増)
BtoB事業 営業利益
838百万円
(前年差
735百万円減)
④ 海外事業:育児用ミルクや菌体の輸出などが堅調に推移し、乳原料を製造販売するMILEI GmbH(ミライ社)では原料市況の上昇に対応し価格転嫁を進めました。円安の進行もあり事業全体でも増収となりました。利益面では、増収効果の一方で、グローバル規模での原材料・エネルギー価格の上昇の影響や、MILEI社におけるラクトフェリンの寄与の落ち着き、成長のための費用投下などがありましたが、増収効果や円安の進行もあり事業全体では増益となりました。
海外事業 売上高
29,389百万円
(前年比
40.4%増)
海外事業 営業利益
3,343百万円
(前年差
139百万円増)
2.キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間の各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ164億3千2百万円収入減の121億3千5百万円の収入となりました。主な要因は、税金等調整前四半期純利益132億4千6百万円などがキャッシュ・フローの収入となり、売上債権の増加額60億3百万円などがキャッシュ・フローの支出となったことなどによります。投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ26億8千2百万円支出増の105億2千9百万円の支出となりました。主な要因は、固定資産の取得により113億3千2百万円の支出があったことなどによります。
これらを合計したフリーキャッシュ・フローは、前年同期に比べ191億1千4百万円減の16億5百万円となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ91億3千8百万円支出減の55億4千3百万円の支出となりました。主な要因は、長期借入金の返済により39億7千9百万円の支出があったことなどによります。これらの結果、当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前年同期末に比べ52億7千5百万円減の199億5千万円となりました。
3.経営方針・経営戦略等当第2四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありませんが、未発表でありました中期経営計画の最終年度(2025年3月期)の数値目標を策定し、公表いたしました。売上高5,400億円、営業利益250億円、親会社株主に帰属する当期純利益154億円、売上高営業利益率4.6%、ROE(自己資本利益率)6%、海外売上高比率13%としています。
4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。また、会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
5.研究開発活動当第2四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は、25億8千5百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
6.財政状態
(1) 貸借対照表の状況当第2四半期連結会計期間末の資産の部は、「現金及び預金」は減少した一方、季節的要因により「受取手形、売掛金及び契約資産」が増加したことなどから、合計では前連結会計年度末に比べ、63億7千2百万円増の4,651億6千万円となりました。負債の部は、流動負債の「未払費用」は増加した一方、「未払法人税等」が減少したことなどから、合計では前連結会計年度末に比べ、24億8千2百万円減の2,482億7千9百万円となりました。純資産の部は、「為替換算調整勘定」の増加などにより、合計では前連結会計年度末に比べ88億5千4百万円増の2,168億8千1百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の44.9%から46.2%となりました。
(2) 財務政策当社グループは、資金調達に際しては、内部資金を基本としながら、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーの発行、社債の発行などの外部からの資金も利用しております。外部からの資金調達につきましては、安定的かつ低利を前提としながら、将来の金融情勢の変化等も勘案してバランスのとれた調達を実施しております。なお、当社(提出会社)は機動的な資金調達および当社グループ全体の資金効率アップのため、金融機関10行と総額300億円のコミットメントライン契約を締結しております。調達した資金につきましては、経常設備投資および成長投資への支出と、財務安定性を維持(有利子負債コントロール)することにより基盤確保した上で、株主還元へ振り分けております。