【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
本文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績の状況当第3四半期連結累計期間において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」については、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)から承認取得のために必要であると指摘を受けた試験について追加実施した上で再申請する方針であり、2023年後半の承認取得を見込んでいます。「CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても治験許可申請をFDAに提出済みです。また、当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。
当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。
<開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、以下「Cipla Tech」)に変更となっております。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了し、臨床第Ⅱ相試験の準備を進めています。臨床第Ⅱ相試験は、米国にて、チザニジン経口製剤を摂取中の痙性麻痺患者20-40名程度を対象とした最長4週間の用量増加試験を計画しています。臨床第Ⅱ相以降の開発及び事業化はCipla Techが実施することを開発・販売ライセンス契約において定めていますが、2020年2月にCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techから今後の開発の進め方について申し入れがあり協議を続けています。現時点において、今後の開発の進め方について当社とCipla Techとの間で新たに決定した事実はありませんが(新たな事項が決定された場合は速やかに適時開示します。)、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、当社グループが臨床第Ⅱ相試験費用の一部又は全部を負担することを本線として協議を進めています。
<開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2021年において約270億円(246 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。米国規制当局であるFDAから承認取得のために必要であると指摘を受けた試験について追加実施した上で再申請する方針です。追加実施する試験の内容詳細についてFDAと合意しており、2023年前半に追加試験を完了して承認申請を行い、6ヵ月間の審査期間を経て2023年後半に承認取得することを見込んでいます。
<開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2021年において約170億円(154 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。
<開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めたテープ型貼付剤です。オピオイド貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、2018年2月に、単回PK試験(P1a)においてMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。P1a終了後は、製剤の粘着性等の改良を進めてきました。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、トランプ米大統領(当時)がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言するなど、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。そういった状況の下、オピオイド乱用について製薬会社に対する巨額訴訟が相次ぎ、2019年9月にはオキシコドン経口剤の最大手の製造販売元であったパーデュー・ファーマ社が補償負担に耐えかねて経営破綻に追い込まれる事態となる等、オピオイド系新薬についての製薬会社の開発・導入意欲は大きく減退しています。当社では、AMRTS®を用いたMRX-1OXTはより安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待していますが、上記の導出環境の悪化を踏まえ、MRX-1OXTについては新薬承認取得しないと提携・事業化することは困難であるとの判断に至りました。そして、同じオピオイド貼付剤として、MRX-1OXTと比べて市場ポテンシャルは劣るものの、新薬承認取得可能性が高く、新薬承認取得までの開発費も少額と見込まれる、MRX-9FLTの開発を優先する方針としています。
<開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年12月に、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、当社グループが示した非臨床試験内容で臨床第Ⅰ相試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第Ⅱ相試験、臨床第Ⅲ相試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。米国での臨床試験を実施するための非臨床試験、及び、製造委託先における治験薬製造が完了し、2021年11月に治験許可申請(IND)をFDAに提出しました。臨床試験開始に向けて準備を進めています。2021年において米国アルツハイマー治療薬市場は約400億円(366 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約90億円(82 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。
<開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における慢性疼痛市場は2019年時点で約3.5兆円(31.5 billion USドル)であり、変形性関節症疼痛、慢性腰痛等の患者人口の増加等により2027年まで年平均成長率3.4%を記録すると予測されています(出所: Reportocean.com)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。
<マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場について、2020年4月から稼働開始し、2021年1月にはワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心とした設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、2021年8月に株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を、2022年3月にコロンビア大学(米国ニューヨークシティ)と免疫賦活剤および抗がんペプチドとMNを組み合わせた乳がん治療のための共同研究を、2022年10月にVaxSyna Inc.(米国ニューハンプシャー州フランクリン)とヒトパピローマウイルスに対するワクチンとMNを組み合わせた子宮頸がんワクチンに関する共同研究を開始しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。
上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。
<上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当第3四半期連結累計期間の製品売上として9百万円を計上しました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は9百万円(前年同四半期は8百万円)、研究開発費用とその他経費を合わせた販売費及び一般管理費は628百万円(前年同四半期は681百万円)を計上しました。営業損失は621百万円(前年同四半期は675百万円)、営業外収益として、東かがわ市事業強靭化補助金交付事業に係る助成金収入1百万円等を含め1百万円を計上、営業外費用として、主に破産更生債権に係る貸倒引当金繰入額2百万円、在外子会社の財務諸表項目の換算及び外貨建未払金の換算等により生じた為替差損9百万円、第22回及び第23回新株予約権並びに行使価額修正条項付第24回新株予約権の発行に係る営業外支払手数料3百万円等を含め16百万円を計上し、経常損失は636百万円(前年同四半期は680百万円)、特別利益として従業員の退職に伴う新株予約権戻入益2百万円により、親会社株主に帰属する四半期純損失は635百万円(前年同期は677百万円)となりました。この結果、1株当たり純損失は25円82銭(前年同期は32円93銭)となりました。なお、当社は単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(2) 財政状態の状況(資産)当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて600百万円減少し、1,508百万円となりました。これは現金及び預金が609百万円減少したこと等によるものです。流動資産は1,188百万円となりました。主な内容は、現金及び預金1,093百万円等であります。固定資産は320百万円で、主な内容は建物及び構築物228百万円、長期前払費用43百万円及び差入保証金38百万円等であります。(負債)負債は、前連結会計年度末に比べて13百万円減少し、139百万円となりました。これは主に未払金の増加14百万円、未払法人税等の減少29百万円等によるものであります。流動負債は111百万円となりました。主な内容は未払金95百万円、未払法人税等13百万円であります。固定負債は27百万円となりました。内容は資産除去債務22百万円、繰延税金負債5百万円であります。(純資産)純資産は、前連結会計年度末に比べて586百万円減少し、1,369百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純損失635百万円により利益剰余金のマイナスが635百万円拡大したこと等によるものであります。また、 2022年3月30日開催の第20期定時株主総会において、資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分に関する議案が承認可決されました。その結果、資本金及び資本準備金がそれぞれ7,753百万円、4,486百万円減少しており、その合計額12,240百万円を繰越利益剰余金に振り替えることにより欠損てん補を行いましたが、これによる純資産に与える影響はありません。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の89.9%から86.5%となりました。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は450百万円であります。
(5) 主要な設備該当はありません。
