【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済・社会活動の制限が徐々に緩和されつつあるものの、中国における都市封鎖や、ロシアのウクライナ侵攻の長期化に伴う世界的な経済成長率の鈍化、物価上昇に伴う原燃料価格の高騰に加えて、急激な円安の進行やその後の円高への揺り戻しなど、先行きの不透明な状況が続きました。このような経済状況におきまして、当社グループは、スマートフォンやノートPCの市場低迷があったものの、上位機種のノートPCやタブレット用を中心とする光学製品やクリーンエネルギー関連製品などの高付加価値製品の販売促進活動を世界各地の拠点で強化するとともに、生産性の向上と新規事業に対する研究開発に努めました。 また、生活・環境イノベーション事業において差別化製品の開発・生産を強力に推進するために、SATC K-Site(旧九州工場)に引き続き、SATC T-Site(旧東京工場)の機能を滋賀ATセンターに集約いたしました。この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は21,102百万円(前期比16.4%増)、営業利益は5,569百万円(前期比77.6%増)、経常利益6,202百万円(前期比78.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,860百万円(前期比89.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、当社グループの報告セグメントは、当連結会計年度より、「光学シート事業」、「生活・環境イノベーション事業」、「地球の絆創膏事業」の3事業区分に変更し、当社グループの経営状況をより適切に表示することといたしております。「生活・環境イノベーション事業」、「地球の絆創膏事業」の報告セグメントの名称につきましては、「生活・環境イノベーション事業」は、人々の生活に役立ち、地球環境の保護に貢献する革新的な製品・サービスを提供する、「地球の絆創膏事業」は、様々な構造物に「KYŌZIN®」を絆創膏のように貼ることで長期間保護し地球をレスキューする、という事業コンセプトを明確に表現することを念頭に置いて決定いたしております。また、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」をご参照ください。
[光学シート事業]ノートPC・タブレット向けでは、第2四半期の中国上海地区を中心とする都市封鎖(ロックダウン)の影響による一時的な販売減少などはあったものの、高性能な直下型ミニLED液晶ディスプレイ向けに新規開発した複合拡散板「オパスキ®」が、前連結会計年度に引き続き概ね順調な売上を維持したほか、光拡散フィルム「オパルス®」についても、従来型の液晶ディスプレイの高精細化に寄与する高性能な当社製品の採用が増えたことなどから、売上が増加いたしました。その一方、スマートフォン向けでは、一部の機種で液晶ディスプレイから有機ELディスプレイへの変更が進んだことなどから光拡散フィルム「オパルス®」の売上が減少いたしました。利益面においては、売上の増加に加え、高付加価値製品の販売構成比が前年比で増加し収益性が向上したことや、為替相場が円安基調で推移したことなどにより、大きく伸長いたしました。この結果、売上高17,462百万円(前期比25.2%増)、セグメント利益8,700百万円(前期比61.4%増)となりました。
[生活・環境イノベーション事業]前連結会計年度中に実施した事業再構築の一環として高品質による差別化が可能な製品に絞り込んだことなどにより、生活・環境イノベーション事業全体の売上は減少いたしました。また、前連結会計年度に引き続き、クリーンエネルギー車や医療・衛生向けの特殊フィルム製品など、高い成長が見込まれる分野での販売拡大に注力し、製品構成の変化による収益性向上に努めました。しかしながら、SATC K-Site(旧九州工場)及びSATC T-Site(旧東京工場)の滋賀ATセンターへの機能集約などの事業再編に伴う費用の増加や、製造が停止する集約期間中の供給責任を果たすために前連結会計年度に増加した製品在庫が出荷により減少したことなどから、収益は一時的に悪化いたしました。この結果、売上高3,615百万円(前期比13.5%減)、セグメント損失93百万円(前連結会計年度は136百万円のセグメント利益)となりました。
[地球の絆創膏事業]当連結会計年度から屋根用保護シート「KYŌZIN Re-Roof®」の量産販売を開始いたしました。展示会への出展やセミナーの開催などを通じて、戸建て住宅に加えて工場建屋や倉庫、店舗等の大型案件のお引合いやご注文が増加傾向を続けており、普及の初期に入っております。また、需要の増加に対応し、生産能力の確保や製品価値の更なる向上のための開発・製造拠点として兵庫県淡路市に「地球の絆創膏本部淡路ベース」を新設するなど、将来に向けた先行投資を実施いたしました。この結果、売上高25百万円、セグメント損失97百万円となりました。
② 財政状態の状況(資産の部)資産合計は、現金及び預金が2,740百万円、受取手形及び売掛金が854百万円それぞれ減少したものの、有価証券(譲渡性預金)が4,000百万円、有形固定資産が341百万円、無形固定資産が441百万円それぞれ増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ561百万円増加し、29,332百万円となりました。
(負債の部)負債合計は、未払法人税等が677百万円が増加したものの、支払手形及び買掛金が831百万円、営業外電子記録債務が2,064百万円、長期借入金が1,244百万円それぞれ減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ4,199百万円減少し、10,425百万円となりました。
(純資産の部)純資産合計は、剰余金の配当により240百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により4,860百万円増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ4,761百万円増加し、18,907百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,091百万円増加し、9,994百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、6,760百万円の収入(前期は2,176百万円の収入)となりました。主な要因としては、仕入債務の減少額1,256百万円、法人税等の支払額1,081百万円などの支出があった一方で、税金等調整前当期純利益6,699百万円、減価償却費1,515百万円などによる収入があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、4,004百万円の支出(前期は2,274百万円の支出)となりました。主な要因としては、有形固定資産の取得による支出4,108百万円があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,680百万円の支出(前期は4,951百万円の収入)となりました。主な要因としては、長期借入金の返済による支出1,373百万円があったことによります。
(2) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
光学シート事業
11,915,383
123.9
生活・環境イノベーション事業
1,912,802
58.9
地球の絆創膏事業
43,855
-
合計
13,872,040
107.8
(注) 金額は、標準原価によっております。
② 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
光学シート事業
26,310,784
136.5
2,831,306
83.1
生活・環境イノベーション事業
4,054,184
103.9
99,192
58.1
地球の絆創膏事業
29,464
-
1,685
-
合計
30,394,432
131.2
2,932,183
82.0
③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
光学シート事業
17,462,417
125.2
生活・環境イノベーション事業
3,615,176
86.5
地球の絆創膏事業
25,171
-
合計
21,102,765
116.4
(注) 主な相手別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
瑞儀光電股份有限公司
5,118,923
28.2
9,996,798
47.37
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。なお、見積りの評価については、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の報告数値と異なる可能性があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容当社グループは、営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としており、顧客に貢献する高付加価値製品の製造・販売に集中し、省力化や歩留の改善を更に進めることにより、営業利益を向上させることを目指しております。なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
a 売上高当連結会計年度における売上高は、21,102百万円(前期比16.4%増)となりました。光学シート事業では、スマートフォンやノートPCの市場低迷があったものの、上位機種のノートPCやタブレット用を中心とする高付加価値製品の販売促進活動を世界各地の拠点で強化し、売上高は17,462百万円(前期比25.2%増)となりました。生活・環境イノベーション事業では、前連結会計年度中に実施した事業再構築の一環として高品質による差別化が可能な製品に絞り込んだことなどにより売上が減少し、売上高は3,615百万円(前期比13.5%減)となりました。地球の絆創膏事業では屋根用保護シート「KYŌZIN Re-Roof®」の量産販売を開始し、売上高は25百万円となりました。b 売上総利益当連結会計年度における売上原価は10,910百万円(前期比0.1%減)となり、売上総利益は、より付加価値の高い製品へのシフト、生産効率の向上、コスト削減等により10,191百万円(前期比41.4%増)となりました。売上原価率は高性能製品の販売構成割合の上昇、前期から引き続き高い歩留まりを維持したこと等により、前連結会計年度の60.3%に対し、51.7%と8.5ptの低下となり、売上総利益率は48.3%(前連結会計年度は39.7%)と向上しております。c 販売費及び一般管理費、営業利益販売費及び一般管理費は、4,622百万円(前期比13.5%増)となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度の22.5%に対し、21.9%と0.6ptの下降となりました。この結果、営業利益は5,569百万円(前年度は3,135百万円の利益)となりました。d 経常利益当連結会計年度における営業外損益は、主として為替差益の計上により、632百万円の利益(前連結会計年度は332百万円の利益)となりました。この結果、経常利益は6,202百万円(前年度は3,467百万円の利益)となりました。e 特別損益当連結会計年度における特別損益は、497百万円の利益(前連結会計年度196百万円の損失)となりました。これは主に、生産拠点移転統合費用による損失を91百万円、固定資産売却益による利益を610百万円計上したことによるものです。f 税金等調整前当期純利益当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は6,699百万円(前連結会計年度は3,271百万円の利益)となりました。g 法人税等当連結会計年度における法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額は1,838百万円(前連結会計年度は701百万円)となりました。h 親会社株主に帰属する当期純利益当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は4,860百万円(前連結会計年度は2,569百万円の利益)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性についての分析当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」記載のとおりです。主として、原材料の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用として必要となる運転資金の調達にあたっては、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。また、当社は、貸出コミットメントライン契約および当座貸越契約を取引銀行と締結し、フレキシブルな資金調達手段を確保することで、流動性リスクを適切にコントロールしております。設備資金の調達にあたっては、自己資金及び金融機関からの長期借入に加え、公募増資等の直接金融手段を検討してまいります。健全な財務バランスを維持しつつ、生産設備や研究開発投資を通じた企業価値向上を実現するため、引き続き、資金調達の多様化を図ってまいります。
④ 経営者の問題認識と今後の方針当社グループが今後も高品質な製品やサービスを継続的に提供していくためには、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営課題に対処することが必要であると認識しております。具体的には、当社グループが掲げる“自然と産業の調和を創造する”という経営理念を念頭に、以下の5項目に注力してまいります。a 新規事業の創出b コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスの強化c 人材の確保及び育成d 生産性を高める人事戦略e 経営基盤の強化