【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための行動制限が緩和されたことにより、経済活動の段階的回復が見受けられた一方、ロシアのウクライナ侵攻による国際情勢の不安定化、エネルギー価格の高騰及び円安の長期化など、依然として厳しく不安定な状況が続いております。
当社グループ事業を取り巻く環境は、原油価格の高騰等を背景に、食品や日用品の値上げが相次ぎ、消費者の家計防衛意識はより一層高まっております。また、当社グループにおいても、ユーティリティ単価の高騰や原材料値上げの影響等による各種コストの増加が当期利益を圧迫しております。
このような環境の中、当社グループは、中期経営計画に基づき、これまで長年培ってきた当社の生産技術・ノウハウ、販売力を活かし、プレミアムきのこ総合メーカーとしての基盤の確立と、まいたけを中心としたきのこが持つ機能性の開発と訴求により、安全・安心な製品を提供することを通じて消費者の健康に寄与し、健やかな社会の実現に貢献すべく事業展開を図ってまいりました。
また、約6年間の開発期間を経て、デリケートな性質のため栽培が難しく、安定生産には多くの高いハードルが存在していた白まいたけについて、高品質で安定生産できる新・白まいたけの自社菌の開発、量産化に成功し、2022年9月から「雪国まいたけ極 白」の発売を開始いたしました。当社は、引き続き「雪国まいたけ極 白」に続く、プレミアムきのこの拡充を図ってまいります。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末(2023年3月31日時点)の資産合計は、33,304百万円(前連結会計年度末に比べ2,791百万円減)となりました。流動資産は、7,180百万円(同2,555百万円減)となりました。これは主に、棚卸資産が173百万円増加した一方、現金及び現金同等物が2,662百万円減少したこと等によるものであります。非流動資産は、26,124百万円(同236百万円減)となりました。これは主に、繰延税金資産が117百万円増加した一方、有形固定資産が203百万円、使用権資産が84百万円及び退職給付に係る資産が87百万円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、22,895百万円(同2,730百万円減)となりました。流動負債は、6,592百万円(同1,417百万円減)となりました。これは主に、営業債務及びその他の債務が725百万円、未払法人所得税が790百万円減少したこと等によるものであります。非流動負債は、16,302百万円(同1,312百万円減)となりました。これは主に、約定返済等により借入金が1,243百万円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の資本合計は、10,409百万円(同61百万円減)となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益1,181百万円の計上及び剰余金の配当1,196百万円の支払いを実施したことにより利益剰余金が70百万円減少したこと等によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度の収益は42,204百万円(前連結会計年度比10.4%減)、このうち、売上収益は31,016百万円(同4.4%減)となりました。食品の値上げによる消費者の家計防衛意識の高まり及び他社増産による市場供給量の増加により、マーケットの需給バランスが歪んだ状況が継続したこと等により、茸事業の売上収益は30,649百万円(同4.3%減)となりました。また、燃料価格、電気料金の高騰や円安等の影響を受け、売上原価は31,688百万円(同6.1%減)、売上総利益は10,516百万円(同21.2%減)となりました。販売費及び一般管理費は運賃、販売手数料は減少した一方、労務費、株主優待費用及び水道光熱費等がそれぞれ微増し、8,258百万円(同1.4%増)となりました。
また、当社が業績を評価する上で有用な指標であるとしているコア営業利益は2,562百万円(同54.2%減)、コアEBITDAは4,663百万円(同38.4%減)と、いずれも前連結会計年度を下回る結果となりました。(「コア営業利益」等の定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (参考情報)」を参照ください。)
なお、当社では、IFRS農業会計(IAS第41号)の適用に伴い、きのこ製品で構成される生物資産を売却費用控除後の公正価値で測定しており、当該公正価値の変動による利益又は損失が、連結損益計算書の「公正価値変動による利得」に含まれております。当連結会計年度においては、IAS第41号「農業」の適用に関する公正価値変動による利得が、収益に11,188百万円、売上原価に11,473百万円、それぞれ含まれております。
当連結会計年度における事業セグメント別の売上収益の状況は以下のとおりであります。
〔茸事業〕
(ⅰ) まいたけ
まいたけの魅力をより広く消費者の皆様に知っていただくため、関東・関西エリアを中心に「あなたの一番そばに。」シリーズとしてテレビCMを放映いたしました。また、他食品メーカーとの共同企画による食べ方提案やSNSを活用したレシピ紹介等を実施いたしました。販売量は前年とほぼ同様となりましたが、競合他社の増産もあり販売単価は前年を下回りました。この結果、まいたけ事業の売上収益は17,919百万円(前連結会計年度比4.3%減)となりました。
(ⅱ) エリンギ
生産品質の向上により安定した供給を維持し、簡便性の高いピロー製品の導入や、エリンギ水煮を使用した中食メニュー提案等を実施いたしました。販売量はやや前年を下回りましたが、販売単価は前年とほぼ同様の推移となりました。この結果、エリンギ事業の売上収益は3,127百万円(同1.1%減)となりました。
(ⅲ) ぶなしめじ
青果市況と市場の動向を注視しながら、需給バランスに応じて1株製品と2株製品といった量目が異なる製品を活用した柔軟な製品投入を実施いたしました。販売量は前年をやや下回りましたが、販売単価は前年をやや上回りました。この結果、ぶなしめじ事業の売上収益は6,097百万円(同3.6%減)となりました。
(ⅳ) その他の茸
マッシュルームは、一時的に生産が不安定になったことにより市場の旺盛な需要にお応えすることができなかったため、前年に比べ販売は低調に推移いたしました。この結果、その他の茸事業の売上収益は3,504百万円(同7.8%減)となりました。
〔その他〕
その他の売上収益は、主に健康食品の販売及び瑞穂農林株式会社が取り扱う培地活性剤によるものであります。当連結会計年度においては、健康食品は前年に比べ堅調に推移しましたが、培地活性剤の製造及び販売量が減少いたしました。この結果、その他の売上収益は367百万円(同13.2%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,662百万円減少し、1,060百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(ⅰ) 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、3,101百万円(前期は5,606百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前利益1,794百万円や減価償却費及び償却費2,112百万円、支払利息383百万円の計上があった一方、法人所得税の支払1,497百万円があったこと等によるものであります。
(ⅱ) 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、2,996百万円(前期は2,554百万円の使用)となりました。これは主に、生産設備の増強・更新等に伴う有形固定資産の取得による支出2,919百万円があったこと等によるものであります。
(ⅲ) 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、2,767百万円(前期は3,107百万円の使用)となりました。これは主に、約定返済の実施により長期借入金の返済による支出1,348百万円、配当金の支払い1,195百万円があったこと等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
茸事業(百万円)
38,928
△1.4
その他(百万円)
–
–
合計(百万円)
38,928
△1.4
(注) 1.生産実績は、販売価格にて算定しております。
2.その他セグメントは生産活動によらない事業を含むため記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループは主に見込み生産を行っており、当連結会計年度における受注実績の重要性が乏しいため記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
茸事業
まいたけ(百万円)
17,919
△4.3
エリンギ(百万円)
3,127
△1.1
ぶなしめじ(百万円)
6,097
△3.6
その他の茸(百万円)
3,504
△7.8
その他(百万円)
367
△13.2
合計(百万円)
31,016
△4.4
(注) 1.茸事業の「その他の茸」の主な内訳は、マッシュルーム、本しめじ、はたけしめじとなります。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績については、連結売上収益10%以上に該当する販売先がないため、その記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ) 資産
資産につきましては、当連結会計年度末33,304百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,791百万円減少いたしました。これは主に、現金及び現金同等物の減少により、流動資産が2,555百万円減少し、有形固定資産が203百万円減少した一方、繰延税金資産が117百万円増加したこと等により、非流動資産が236百万円減少したことによるものであります。
(ⅱ) 負債
負債につきましては、当連結会計年度末22,895百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,730百万円減少いたしました。これは主に、営業債務及びその他の債務が725百万円、未払法人所得税が790百万円減少したこと等により、流動負債が1,417百万円減少し、約定返済により借入金が1,243百万円減少したこと等により、非流動負債が1,312百万円減少したことによるものであります。また、結果として当連結会計年度末時点のレバレッジ・レシオ(連結総有利子負債/直前12カ月のコアEBITDA)は3.8倍となっております。
(ⅲ) 資本
資本につきましては、当連結会計年度末10,409百万円となり、前連結会計年度末に比べ61百万円減少いたしました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益1,181百万円の計上及び剰余金の配当1,196百万円の支払いを実施したことにより利益剰余金が70百万円減少したこと等によるものであります。
経営成績の分析につきましては、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」を参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」を参照ください。
資本の財源及び資金の流動性に関する情報につきましては、当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金となります。
設備投資等の長期資金需要は、自己資金又は金融機関からの長期借入金等により賄い、運転資金等の短期資金需要は、主に自己資金にて賄っており、必要に応じて金融機関からの短期借入金にて調達しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、決算日における財政状態、報告期間における経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り・予測の評価を実施しております。なお、重要な会計上の見積りとした項目は「生物資産の測定」、「非金融資産の減損」及び「確定給付債務の測定」であり、見積りの詳細及び当該見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 見積り及び判断の利用」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりであります。
これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
(参考情報)
当社グループは、2021年11月に公表いたしました中期経営計画の策定に伴い、経営成績の推移を把握するための重要な経営指標の見直しを実施し、以下の算式により算定されたコア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンを、新たに重要な経営指標として位置づけております。コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、次のとおりであります。
なお、中期経営計画における定量目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略等」に記載しております。
(単位:百万円)
回次
国際会計基準
第5期
第6期
決算年月
2022年3月
2023年3月
営業利益
4,975
2,191
(調整額)
- IAS第41号「農業」適用による影響額 (注) 4
382
305
- その他の収益及び費用 (注) 5
231
66
- 一時的な収益及び費用 (注) 6
–
–
調整額小計
614
371
コア営業利益 (注) 1、7
5,590
2,562
(調整額)
+ 減価償却費及び償却費
1,974
2,100
コアEBITDA (注) 2、7
7,564
4,663
コアEBITDAマージン(%) (注) 3、7
23.3
15.0
(注) 1.コア営業利益=営業利益 - IAS第41号「農業」適用による影響額 - その他の収益及び費用 - 一時的な収益及び費用
2.コアEBITDA=コア営業利益 + 減価償却費及び償却費
3.コアEBITDAマージン=コアEBITDA ÷ 売上収益
4.IAS第41号「農業」適用による影響額とは、IAS第41号「農業」を適用し、きのこの生産工程である仕込みから収穫時までのきのこを生物資産として、売却費用控除後の公正価値で測定するものであり、当該公正価値の変動による利得及び損失を影響額としております。
5.その他の収益及び費用とは、主に減損損失、固定資産除却損等となります。
6.一時的な収益及び費用とは、通常の営業活動では発生しない一過性の収益及び費用となります。なお、2022年3月期及び2023年3月期において、一時的な収益及び費用の発生はありません。
7.コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは国際会計基準により規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社グループが有用であると考える財務指標であります。当該財務指標は、非経常的損益項目及び競合他社に対する当社グループの業績を適切に示さない項目の影響を除外しております。なお、コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、国際会計基準に準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおけるコア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、その結果、有用性が低下する可能性があります。
#C1375JP #雪国まいたけ #水産農林業セクター