【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 業績の状況当第2四半期連結累計期間(2023年4月1日~9月30日)における国内経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の位置づけが5類感染症に移行し、社会経済活動の正常化が進む中、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大など、緩やかな回復の動きを見せました。一方で、エネルギー・原材料価格の高騰や物価上昇が続くなど、消費行動に影響を及ぼす経済情勢の先行きは、依然として不透明な状況が続いています。こうした中、当社グループは、目指す姿である「お客さまの暮らしを豊かにする“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」の実現に向け、中期経営計画(2022年度~2024年度)を着実に推進しました。国内百貨店では、エムアイカード・三越伊勢丹アプリの会員化や、個のお客さまのニーズの具現化への取り組み、収支構造改革の進展により、首都圏店舗はもとより、地域百貨店においても増収増益となるなど堅調に推移しています。その他、グループ関係会社についても、それぞれの専門性や独自性を高めながら、グループの力を最大化するための連携を強化するなど、更なる収益拡大に向けた取り組みを進めています。この結果、当第2四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は248,518百万円(前年同四半期比11.5%増)、営業利益は20,190百万円(前年同四半期比125.7%増)、経常利益は22,907百万円(前年同四半期比140.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は14,865百万円(前年同四半期比91.3%増)となりました。中期経営計画に掲げた「百貨店の再生フェーズ」が前倒しで進展していることを踏まえ、各戦略の精度と実行スピードをさらに高めるとともに、当社グループが保有する不動産を最大限活用し、当社ならではのユニークな顧客体験を提供する“まち化”戦略の取り組みについても、引き続き着実に進めてまいります。
セグメントの業績は次のとおりであります。①百貨店業国内百貨店では、首都圏店舗を中心とした入店客数の高い伸びを背景に、国内外のお客さまお一人おひとりの幅広い関心事にお応えすべく品揃えやサービスの強化に取り組んだ結果、宝飾品やラグジュアリーブランドなどの高額品だけでなく、化粧品や食品など幅広いアイテムが好調に動き、総額売上高はコロナ禍からの反動で大きく伸長した前年実績を更に上回り、前年同期比2桁以上の増収となりました。特に9月には、当社が力を入れる「高感度上質戦略」「マスから個へのビジネスモデル転換」の象徴と言えるお得意様向けのご招待会(伊勢丹新宿本店「丹青会」、三越日本橋本店「逸品会」)を開催し、ラグジュアリーブランドからアート、食品まで幅広いアイテムを強化したことにより全国からお客さまの支持を集め、ともに過去最高の売上を記録しました。両本店のご招待会では自動車や不動産、楽器など普段は百貨店店頭で取扱いのない商材の商談も進み、外商顧客をはじめとする個のお客さまのニーズの深掘りに弾みがついております。また、エムアイカード会員獲得および三越伊勢丹アプリのダウンロード数拡大などに引き続き取り組んだ結果、当社が識別できる顧客(以下、識別顧客)の数は順調に拡大し、外商顧客を含めた識別顧客による総額売上高(国内百貨店合計)も前年同期実績を上回りました。特に、訪日外国人顧客によるインバウンド売上拡大においても、両本店の識別顧客による購買シェアは70%水準を維持しております。免税売上高については、訪日外国人顧客のニーズを見越したラグジュアリーブランドのハンドバッグや宝飾品などの高付加価値商品の品揃え強化が功を奏し、首都圏の都心店舗だけでなく地域百貨店においてもコロナ禍前の2018年度実績を上回る水準まで回復、当第2四半期連結累計期間における国内百貨店合計の免税売上高は過去最高額を更新しています。オンライン事業に関しても、カテゴリー別のサイトを中心に取り組みを強化しており、化粧品(meeco)、ふるさと納税などのサイトが前年同期実績を2桁以上上回るなど堅調に推移いたしました。これらの結果、首都圏の株式会社三越伊勢丹が大幅な増収となった他、地域百貨店についても“拠点ネットワーク戦略”として新宿・日本橋両本店との連携を強め、札幌や名古屋、福岡などの大都市を中心に前年実績を上回りました。特に伊勢丹新宿本店の単月の総額売上高は2022年4月以降、18ヶ月連続でコロナ禍前の2018年度の同月実績を上回って推移をしており、当第2四半期連結累計期間において過去最高額を更新しております。また、「百貨店の科学(収支構造改革)」による徹底した経費コントロールの取り組みを全国で加速させており、地域百貨店合計が黒字に転じるなど、国内百貨店事業の収支面は大幅に改善しております。海外事業(2023年1月1日~6月30日)は、ゼロコロナ政策からの転換を受け中国国内各店舗の売上が前年同期比でプラスに転じた他、マレーシアや米国の店舗では改装が寄与し前年実績を上回るなど概ね堅調に推移しました。
このセグメントにおける売上高は208,526百万円(前年同四半期比7.5%増)、営業利益は16,786百万円(前年同四半期比227.0%増)となりました。
②クレジット・金融・友の会業株式会社エムアイカードは、グループ百貨店の売上回復やグループ外での利用増などによりカード手数料収入が拡大した他、カードファイナンスの強化等が奏功し増収となりました。その一方、将来を見据えた基幹システム更改に伴う減価償却費増などの要因により当第2四半期連結累計期間においては減益に転じています。なお、この分野における成長戦略の一環として、百貨店事業を通じてつながったすべての識別顧客の暮らし全般に関わるご要望にお応えするべく、新たな金融サービスの開発に着手しております。
このセグメントにおける売上高は15,671百万円(前年同四半期比6.4%増)、営業利益は1,411百万円(前年同四半期比18.0%減)となりました。 ③不動産業不動産業では、グループの保有物件におけるテナントの入れ替えなどにより賃料収入が減収となりましたが、建装・デザインやコンストラクションマネジメントなどを手掛ける株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインにおいて外部の商業施設やホテル・オフィス関連の施工を中心に売上が拡大し、原材料費の高騰の影響を強く受けたものの、収支は改善しました。このセグメントにおける売上高は11,003百万円(前年同四半期比21.5%増)、営業利益は1,237百万円(前年同四半期比41.3%減)となりました。
④その他株式会社エムアイフードスタイルの損益が前年度の期中(2022年7月)より連結業績に加わり、このセグメントにおける当第2四半期連結累計期間の総額売上高を大きく押し上げています。同社は高品質なプライベートブランドを数多く品揃えする食品スーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」の運営や食品のOEM製造などを手掛けており、物価上昇局面において経費コントロールを徹底するとともに、三越伊勢丹のグループ力を活かしたプライベートブランドの販路やOEM受注の拡大などに取り組んでおります。旅行業の株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベルでは、旅行需要の回復に対し三越創業350周年の企画旅行や同社独自の欧州リバークルーズの再開などオリジナリティあふれる高付加価値商品を数多くラインアップし大幅な増収となったほか、コロナ禍において固定費を徹底して削減し、損益分岐点を引き下げたことで収支が大きく改善し、4年ぶりに黒字転換いたしました。また、メディア事業の株式会社スタジオアルタでは、グループ総合ハウスエージェンシー化に向けた取り組みの第一歩として百貨店の広告メディア販売事業を同社に統合したことと、クリエイティブ事業(広告・装飾の制作)の拡大などにより大幅な増収増益となりました。
このセグメントにおける売上高は42,480百万円(前年同四半期比33.1%増)、営業利益は664百万円(前年同四半期は営業損失165百万円)となりました。
(2) 財政状態の状況当第2四半期連結会計期間末の総資産は1,213,769百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,538百万円減少しました。これは主に、有利子負債の返済により現金及び預金が減少したことなどによるものです。 負債合計では635,865百万円となり、前連結会計年度末から28,923百万円減少しました。これは主に、有利子負債が減少したことなどによるものです。 また、純資産は577,903百万円となり、前連結会計年度末から25,384百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益を計上したこと及び通貨が円安に推移し為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、10,163百万円の収入となり、前第2四半期連結累計期間に比べ、収入が12,909百万円減少しました。これは主に、税金等調整前四半期純利益が増加した一方で、売上債権の増減額による支出(前第2四半期連結累計期間は収入)が増加したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、17,626百万円の支出となり、前第2四半期連結累計期間に比べ、支出が860百万円減少しました。これは主に、前第2四半期連結累計期間は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出があったことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、23,741百万円の支出となり、前第2四半期連結累計期間に比べ、支出が20,452百万円増加しました。これは主に、有利子負債の返済による支出が増加したことなどによるものです。上記の結果、当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ、29,301百万円減少し、79,738百万円となりました。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第2四半期連結累計期間において、当連結会社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(5) 研究開発活動該当事項はありません。
(6) 従業員数該当事項はありません。