【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 業績の状況当第3四半期連結累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)における国内経済は、物価上昇による消費下押し圧力の影響があるものの、社会経済活動の正常化を追い風に回復基調で推移いたしました。また、新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ」)との向き合い方が新たな段階へ進む中、10月に水際対策が緩和され訪日外国人が大幅に増加したことにより、インバウンド消費にも回復の兆しが見られました。一方で世界経済は、コロナの世界的な動向、物価情勢、為替変動リスク等、今後も先行きが不透明な状況が続くものと考え、注視をしております。このような不確実性の高い事業環境のなか、中期経営計画(2022年度〜2024年度)の初年度となる本年度は、「再生」の確度を高め、「結実」を見越した「展開」を仕込み始める1年と位置づけており、「百貨店の再生」の足取りを確かなものとすることに取り組んでまいりました。「高感度上質戦略」の取り組みでは、(個人)外商改革において、両本店の伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店の個人外商売上高が好調に推移しているほか、水際対策の緩和による訪日外国人の増加、円安も追い風となり、10月に設置した「海外顧客担当」の売上高が大きく伸長いたしました。また、お客さまの幅広いご要望にお応えする取り組みとして、輸入自動車、不動産、旅行等の百貨店ではお取扱いのない商品やサービスの売上高についても順調に拡大いたしました。「個客とつながるCRM戦略」の取り組みでは、つながる個客の数の拡大と、利用額・頻度の向上を推進しております。特に、三越伊勢丹アプリ会員数については、前年、計画ともに大きく伸長したことにより、識別顧客数、識別顧客売上高の拡大を牽引いたしました。また、グループ企業が運用している公式SNSアカウントのフォロワー数についても拡大しており、百貨店の利用が少ない個客とも、日常的につながる状態を強化しております。これらの取り組みを通じて、当社グループのファン作り、個客の固定化の拡大につなげてまいります。「連邦戦略」の取り組みでは、活性化してきたグループ企業間の連携による売上高が順調に拡大しております。特に、グループコンテンツを外部企業に向けて販売するBtoB外販については、グループ内連携により、既存及び新規法人顧客からの大型受注につながり、売上高は順調に拡大しています。今後は、グループ企業が培ったスキルやノウハウを組み合わせ、提供価値をワンパッケージで提案することにより、更なる法人顧客の獲得と売上拡大につなげてまいります。「収支構造改革」の取り組みでは、売上高の回復により収益改善が進む中においても、経費コントロールの徹底を継続しております。今後は、免税売上高の回復等に伴い、より一層の利益拡大に寄与するものと考えております。加えて、グループ百貨店の商売構造を「科学的に解明」し、定量的な指標に基づき、収支構造、店舗構造、組織要員、業務等の改革を進めていくための手引きの体系化に取り組みました。また、「サステナビリティ」に関する取り組みとして、温室効果ガス排出量の削減、プラスチック使用量の抑制等、さまざまな社会課題の解決に向けた取り組みを進めております。百貨店事業においては、食品ロスや衣料廃棄等の社会課題に対し、全店での生ごみ廃棄物削減、一部店舗でのフードドライブ実施、衣料品回収キャンペーン等に取り組みました。12月には、国際的な環境非営利団体CDPによる気候変動に関する調査において、最高評価となる「Aリスト企業」に認定されました。今後も、社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指して取り組みを推進してまいります。当第3四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は367,194百万円(前年同四半期比16.7%増)、営業利益は24,552百万円(前年同四半期比716.4%増)、経常利益は25,617百万円(前年同四半期比559.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は19,562百万円(前年同四半期は親会社株主に帰属する四半期純利益923百万円)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。①百貨店業国内百貨店においては、行動制限が解除されて以降、個人消費が堅調に推移しており、売上高については、首都圏店舗計ではコロナ禍前の水準を回復、全国計ではコロナ禍前に近い水準にまで回復いたしました。また、10月の水際対策緩和により免税売上高が大きく伸長し、12月については、首都圏店舗計、および一部の地域店舗において2018年水準を回復いたしました。伊勢丹新宿本店については、海外からのお客さまがコロナ禍前の来店客数に回復していないなか、上期は統合以降最高の売上高を記録し、通期においても、過去一度しか達成していない3,000億円超の売上高(収益認識に関する会計基準等適用前の総額売上高)を見込めるほどの力強い回復となっております。特に、ラグジュアリーブランド、宝飾・時計等の高額品が、上期に引き続き好調に推移したほか、クリスマス等の年末イベント需要についても大変な賑わいとなりました。また、日本最大級の香水の祭典である「サロン ド パルファン 2022」を3年ぶりに催事場で開催し、初出店ブランドに加え、先行発売アイテムを取り揃える等、最旬・最新の商品、体験企画を展開したことにより、多くのお客さまにご来店いただきました。オンラインの取り組みでは、全国のグループ店舗をリモート接客でつなぐ、「三越伊勢丹リモートショッピング」による売上高が、前年、計画ともに上回り好調に推移いたしました。また、仮想都市型メタバースの「REV WORLDS」では、百貨店リアル店舗や外部企業等との連携企画を強化したほか、アバターのアクセサリ装着機能等の拡充にも取り組み、累計ダウンロード数は計画を大幅に上回り順調に拡大いたしました。今後も、オンライン上においても「お客さまの暮らしを豊かにする」ための取り組みを推進してまいります。海外百貨店においては、中国店舗ではコロナ等による影響で、厳しい状況が続いておりますが、マレーシア、シンガポール、米国の各店舗につきましては、来店客数、一人当たりの購買単価が2019年水準にまで回復する等好調に推移し、計画に対し増益となりました。このセグメントにおける売上高は315,883百万円(前年同四半期比12.4%増)、営業利益は17,583百万円(前年同四半期は営業損失6,195百万円)となりました。
②クレジット・金融・友の会業クレジット・金融・友の会業におきましては、当社グループ顧客への金融付帯サービスの拡充、金融商品の提案強化を進めるとともに、外部企業とのアライアンス等による、更なる顧客基盤の拡大に取り組んでおります。株式会社エムアイカードは、グループ内取引の変更で減益となったものの、行動制限の解除以降、大幅な回復傾向にある旅行や飲食領域等でのクレジットカード利用が伸長したことにより、百貨店外でのクレジットカード取扱高はコロナ禍前の水準を上回りました。今後も、クレジットカードの新規会員獲得、利用促進の強化に加え、経費コントロールを進めることにより、より一層の収益拡大を目指してまいります。このセグメントにおける売上高は22,996百万円(前年同四半期比0.3%減)、営業利益は3,108百万円(前年同四半期比34.1%減)となりました。
③不動産業 不動産業におきましては、株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインが、主要事業の建装事業において、コロナ禍で工事延期となっていた案件の完工増加や新規受注の拡大等により、前年に対し増収となりました。このセグメントにおける売上高は14,220百万円(前年同四半期比8.6%増)、営業利益は2,995百万円(前年同四半期比27.5%減)となりました。
④その他株式会社三越伊勢丹ビジネス・サポートでは、グループ内事業において、百貨店からのギフト商品等の配送・梱包業務の売上高が前年実績を下回りましたが、デジタル(EC)関連の配送・梱包業務については前年並みに推移いたしました。グループ外事業については、物流展示会等への積極的な出展により、新規クライアントからの受注獲得を推進いたしました。株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベルでは、海外旅行において、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか、約2年半ぶりに欧州リバークルーズの運航を再開いたしました。国内旅行については、行動制限の解除、全国旅行支援策等により回復傾向にあり、個人手配旅行の売上高については、コロナ禍前の水準を回復いたしました。株式会社エムアイフードスタイルでは、主力の食品スーパーマーケット事業において、現金ポイントカードのアプリ化等、CRMの強化に取り組みました。また、連邦戦略の取り組みで、グループ企業間連携を強化したことにより、外販製造事業における販路拡大、外部企業からのOEM受注獲得につなげました。株式会社三越伊勢丹ギフト・ソリューションズでは、商品開発事業が減収になったものの、カタログ事業が増収になったことに加え、経費コントロールの徹底を継続したことにより、計画に対し増収増益となりました。株式会社スタジオアルタは、連邦戦略におけるグループ企業間の連携が活性化したことにより、百貨店メディア営業と広告制作事業の収益改善が進んできたことに加え、屋外広告が好調に推移したことにより、増収増益となりました。このセグメントにおける売上高は57,720百万円(前年同四半期比49.2%増)、営業利益は664百万円(前年同四半期比220.1%増)となりました。
(2) 財政状態の分析当第3四半期連結会計期間末の総資産は1,252,733百万円となり、前連結会計年度末に比べ84,159百万円増加しました。これは主に、季節要因により受取手形、売掛金及び契約資産が増加したこと及び株式会社エムアイフードスタイルの株式を追加取得し、連結の範囲に含めたことなどによるものです。負債合計では709,718百万円となり、前連結会計年度末から58,804百万円増加しました。これは主に、季節要因により支払手形及び買掛金が増加したことなどによるものです。また、純資産は543,015百万円となり、前連結会計年度末から25,354百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益を計上したこと及び為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動該当事項はありません。
(5) 従業員数該当事項はありません。