【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(業績等の概要)
(1) 企業集団の業績当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による消費活動の自粛志向が薄らぎ経済活動の正常化が一段と進むことで、コロナ禍からのリバウンド需要を中心に回復基調となりました。その一方で、円安の進行、資源高の影響による物価上昇等もあり、引き続き先行きの見通せない状況が続いております。世界経済におきましては、ウクライナ情勢の長期化に伴う食料・エネルギー危機、中国でのゼロコロナ政策に伴う経済活動の抑制、インフレが加速したことによる積極的な金融引き締めが行われる等、経済成長は低水準で推移いたしました。IMFが2023年4月に公表した世界経済見通しでは、世界のインフレ率は2022年の8.7%から2023年は7.0%に鈍化する見込みであり、世界経済の成長率は2022年の3.4%から2023年には2.8%へ低下するとの見通しが示されました。当社の主要な販売先である造船・海運業界につきましては、2022年の新造船受注量は、鋼材価格高騰を背景とした船価の上昇で発注が控えられたこともあり2021年の特需は落ち着くものの、コンテナ船やばら積み船を中心に堅調に推移いたしました。また、海上輸送網の混乱も解消に向かい、人流制限等で停滞していた東南アジアを中心にメンテナンス需要も回復しております。このような企業環境下、当社グループにおきましては、大型機関やデュアルフューエル機関の受注が好調に推移するとともに、メンテナンス関連も好調に推移いたしました。その結果、当連結会計年度における連結売上高は72,113百万円(前期比25.2%増)となり、利益面におきましては、営業利益は3,601百万円(前期比72.1%増)、経常利益は3,660百万円(前期比46.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,948百万円(前期比49.8%増)になりました。
なお、当連結会計年度の当社および連結グループのセグメント別の業績は次のとおりであります。
(単位:百万円)
区分
売上高
セグメント利益
前連結会計年度
当連結会計年度
前年同期増減率(%)
前連結会計年度
当連結会計年度
前年同期増減率(%)
内燃機関部門
舶用機関関連
43,685
56,854
30.1
2,316
4,603
98.7
陸用機関関連
10,192
10,997
7.9
1,589
817
△48.6
その他の部門
3,722
4,261
14.5
418
670
60.1
調整額
―
―
―
△2,232
△2,489
―
計
57,599
72,113
25.2
2,092
3,601
72.1
(注) セグメント利益の調整額は全社費用であり、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。
<内燃機関部門>イ)舶用機関関連コンテナ船向けを中心に大型機関やデュアルフューエル機関の売上構成比率が増加したことに加え、メンテナンス関連の売上増加ならびに為替の影響等により、売上高は56,854百万円(前期比30.1%増)、セグメント利益は4,603百万円(前期比98.7%増)となりました。ロ)陸用機関関連機関売上は増加したものの、一部の物件の採算性が悪化したこと等により、売上高は10,997百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益は817百万円(前期比48.6%減)となりました。
従いまして、当部門の売上高は67,852百万円(前期比25.9%増)、セグメント利益は5,420百万円(前期比38.8%増)となりました。
<その他の部門>イ)産業機器関連アルミホイール部門に関しましては、売上構成の変化および原材料費の高騰により売上高は増加となり、セグメント利益は減少となりました。ロ)不動産賃貸関連不動産賃貸関連に関しましては、売上高、セグメント利益とも微増となりました。ハ)売電関連売電関連に関しましては、売上高、セグメント利益とも増加となりました。
ニ)精密部品関連精密部品関連に関しましては、売上高、セグメント利益とも増加となりました。
従いまして、当部門の売上高は4,261百万円(前期比14.5%増)、セグメント利益は670百万円(前期比60.1%増)となりました。
創業以来100年以上にわたり、当社の社会的使命は一貫して「社会インフラの一端を担う」ということであり、「私たちは、たくましい創造性とすぐれた技術を磨き上げ、社会を豊かにする価値を提供し、人々との共生を願い、限りなく前進する」を企業理念に掲げ、技術力で社会を豊かにする、つまり、舶用機関で海上物流を、陸用機関で常用・非常用の電力を確保する等、海のフィールドと陸のフィールドの両方から人々の安心安全な暮らしを支えてまいりました。
新型コロナウイルス感染症がもたらした未曽有のパンデミックを契機とし、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代に突入しております。また、造船・海運業界におきましては、脱炭素化機運の高まりを受けて石油系燃料から次世代燃料へと本格移行が進むとの予測があり、当社グループにとっては新たなチャンスである一方で、その移行スピードや、どの燃料が舶用機関の主力となるのかについて等、不確実な部分を抱えているのが現状です。このような変動性や不確実性の高い経営環境の中で、持続的な成長と、長期的な企業価値・株主価値の最大化を実現するため、昨年11月に中長期ビジョン「POWER! FOR ALL beyond 2030」を発表いたしました。
この中長期ビジョンにおきましては、「GHG(温室効果ガス)削減と経済的価値向上の両立」そして、「新たなお客様価値のご提供」この2点を2030年へ向け取り組むべき最重要テーマであると位置付けております。次世代燃料対応機関の開発だけではなく、AI・IoTを積極的に活用してお客様をサポートする技術を加速させ、新たなお客様価値をご提供することで、サービタイゼーションによるビジネスモデルの構築に取り組んでまいります。また、アフターメンテナンスの収益性を高めることを最優先課題の一つとして取り組むとともに、2030年以降の次世代燃料対応機関の本格移行までに人的資本への投資を加速させ、既存事業の経営体質強化と今後の事業環境の変化に備えた組織能力強化を図ってまいります。
今後もサステナブルな企業であり続けるため、成長分野への選択と集中による事業構造改革を推進し、グローバルな市場において成長性と収益性の向上に努めてまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の増減は、営業活動によるキャッシュ・フローは4,488百万円の増加、投資活動によるキャッシュ・フローは3,076百万円の減少、財務活動によるキャッシュ・フローは1,981百万円の減少となりました。結果として、資金は539百万円の減少(前連結会計年度は6,844百万円の増加)となりました。
・営業活動によるキャッシュ・フロー舶用内燃機関を中心とした売上の計上により、税金等調整前当期純利益4,007百万円を確保し、減価償却費計上(2,753百万円の増加)、仕入債務の増加(3,144百万円の増加)がありましたが、棚卸資産の増加(1,862百万円の減少)、売上債権の増加(2,509百万円の減少)、法人税等の支払額(1,488百万円の減少)等により、営業活動によるキャッシュ・フローは4,488百万円の増加(前連結会計年度は7,870百万円の増加)となりました。
・投資活動によるキャッシュ・フロー 次世代燃料対応機関開発のための設備投資を行ったこと等から有形固定資産の取得による支出が3,033百万円ありました。これにより投資活動によるキャッシュ・フローは3,076百万円の減少(前連結会計年度は1,300百万円の減少)となりました。
・財務活動によるキャッシュ・フロー借入金の返済による支出が1,150百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出が319百万円、配当金の支払による支出が476百万円ありました。これにより財務活動によるキャッシュ・フローは1,981百万円の減少(前連結会計年度は84百万円の増加)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
数
量
金
額
前年同期増減率
馬力
千円
%
内燃機関部門
舶用機関関連
1,242,276
56,854,918
30.1
陸用機関関連
80,183
10,997,455
7.9
その他の部門
―
3,630,439
17.3
合
計
71,482,812
25.5
(注) 金額は、販売価格によっております。
(2) 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受
注
高
受
注
残
高
数
量
金
額
前年同期増減率
数
量
金
額
前期同期増減率
馬力
千円
%
馬力
千円
%
内燃機関部門
舶用機関関連
1,356,955
72,119,784(44,506,576)
16.5
1,937,524
58,258,724(31,080,891)
35.5
陸用機関関連
75,035
10,735,515(1,352,553)
△2.5
87,031
5,295,108(782,899)
△4.7
その他の部門
―
3,895,258
29.2
―
862,918
44.3
(―)
(―)
合
計
86,750,558(45,859,130)
14.2
64,416,751(31,863,791)
31.1
(注) 1 金額は、販売価格によっております。2 ( )内は輸出受注高、輸出受注残高を示し、内数であります。
(3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
数 量
金 額
輸出比率
前期同期増減率
馬力
千円
%
%
内燃機関部門
舶用機関関連
1,242,276
56,854,918(36,427,907)
64.1
30.1
陸用機関関連
80,183
10,997,455(583,438)
5.3
7.9
その他の部門 (注)3
―
4,261,381
―
14.5
(―)
合 計
72,113,754(37,011,346)
51.3
25.2
(注) 1 ( )内は輸出高を示し、内数であります。2 主要な輸出地域およびその割合は次のとおりであります。アジア(74.3%)、欧州(17.8%)、中南米(4.7%)、北米(2.5%)、その他(0.7%)3 「その他の部門」には精密機器関連(1,690,693千円)、産業機器関連(1,939,745千円)および不動産賃貸関連等(630,942千円)を含んでおります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 財政状態についての分析当連結会計年度末における資産の部では、前連結会計年度末に比べ、現金及び預金が、518百万円減少しました。受取手形、売掛金及び契約資産は、前連結会計年度末に比べ、2,546百万円増加し、売掛債権回転日数は、前連結会計年度では115.0日でしたが、当連結会計年度は99.3日となっております。また、棚卸資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、1,862百万円増加し、棚卸資産回転日数は、前連結会計年度では74.2日に対し、当連結会計年度は68.9日となっております。有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ、682百万円増加しました。その結果、資産の部合計については、前連結会計年度末に比べ、6,108百万円増加し、95,377百万円となりました。負債の部では、支払手形及び買掛金と電子記録債務の合計が、前連結会計年度末に比べ、3,158百万円増加し、買掛債務回転日数は、前連結会計年度では69.2日に対し、当連結会計年度は、70.2日となっております。一方、短期借入金と長期借入金の合計は、約定返済等により、1,050百万円減少しました。当連結会計年度末における売上高有利子負債比率(リース債務を除く)は、前連結会計年度末から6.5ポイント低下して18.4%となっております。その結果、負債の部合計では、前連結会計年度末に比べ、3,453百万円増加し、49,652百万円となりました。純資産の部では、利益剰余金が、前連結会計年度末に比べ、2,471百万円増加し、40,865百万円となりました。純資産の部合計では、前連結会計年度末に比べ、2,654百万円増加し、45,724百万円となりました。その結果、当連結会計年度末における自己資本比率は47.9%となっております。自己資本比率の推移につきましては、「第1企業の概況 1主要な経営指標等の推移 (1)連結経営指標等」に記載のとおりであります。
(2) 当期の経営成績の分析
① 為替変動の影響について
当連結会計年度の為替レート変動により、売上高は前連結会計年度に比べ2,168百万円増加し、営業利益は1,286百万円増加したと試算されます。この試算は当連結会計年度の外貨建て売上高、売上原価、販売費及び一般管理費を、前連結会計年度の換算レートで再計算したものであり、為替変動に対応した財務政策等の影響は考慮されておりません。② 当期の経営成績についてコンテナ船向けを中心とした大型機関やデュアルフューエル機関の売上比率増加および移動制限緩和によるメンテナンス関連売上の増加により、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ25.2%増収となる72,113百万円となりました。当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度の44,318百万円に比べ13,181百万円増加し、57,500百万円となりました。なお、売上高原価率は、前連結会計年度から2.8ポイント上昇して79.7%となっております。また、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ176百万円減少し、11,012百万円となりました。売上高販管費率は、前連結会計年度から4.2ポイント低下して15.3%となっております。この結果、営業利益は、前連結会計年度の2,092百万円から72.1%増益の3,601百万円となり、売上高営業利益率は、前連結会計年度から1.4ポイント上昇して5.0%となりました。経常利益は、前連結会計年度の2,506百万円から46.0%の増益となる3,660百万円となり、売上高経常利益率は、前連結会計年度から0.7ポイント上昇して5.1%となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の1,968百万円から979百万円の増益となる2,948百万円となりました。なお、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の62.01円に対し、当連結会計年度は93.37円となりました。自己資本利益率(ROE)は、前連結会計年度から1.9ポイント上昇して6.6%となっております。目標とする経営指標の推移につきましては、以下のとおりであります。
第59期
第60期
第61期
第62期
第63期
決算年月
2019年3月
2020年3月
2021年3月
2022年3月
2023年3月
売上高営業利益率(%)
4.6
4.5
1.8
3.6
5.0
売上高経常利益率(%)
4.5
4.9
2.0
4.4
5.1
自己資本利益率(ROE)(%)
4.7
5.0
1.7
4.7
6.6
(3) キャッシュ・フローの分析当社グループのキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの資本の財源および資金の流動性につきましては、以下のとおりであります。当社グループは現在、必要な運転資金および設備投資資金につきましては、自己資金または金融機関からの借入金を基本としております。今後も原価低減等により利益確保に努め、併せて在庫の適正化や取引条件の改善等を通じて、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資金の流動性を高めていく考えであります。なお、当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は前連結会計年度末に比べ、1,291百万円減少し、13,601百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ539百万円減少し、25,815百万円となりました。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態および経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。なお、当社グループの事業は新型コロナウイルス感染症の影響が即座に及ぶものではなく、今後海運、造船業界全体を通じて間接的に影響を受けることから、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることは困難であります。その中、期末時点で取引先および公的機関より入手可能な情報を基に、今後、新型コロナウイルス感染症は収束していくという想定のもと、当社グループでは会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時までに入手可能な情報に基づき、合理的な金額を見積もって計上しております。
(棚卸資産の評価)「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(繰延税金資産の回収可能性)「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(固定資産の減損処理)当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
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