【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
本項に記載した将来や想定に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ移行したことにより厳しい行動制限もようやく緩和され、人流の回復や消費マインドの改善とともに社会活動、経済活動の正常化が進み、国内景気は緩やかな回復基調にあります。一方で、依然として物価の上昇が続いていることに加え、日米金利差の拡大などに起因する円安の進行、及び世界的な金融引き締めが国内景気を下押しするリスクとなっています。また、住宅投資に関しては、貸家及び分譲は底堅い動きをみせているものの、持家は住宅ローン金利上昇の懸念や建築資材価格の高止まりの影響等から減少傾向に歯止めがかからず、新設住宅着工戸数は軟調に推移し、先行きは不透明な状況となっています。しかしながら、政府主導で創設された過去に例のない大規模な住宅省エネ支援策である「先進的窓リノベ事業」における補助金制度の活用により、窓リフォーム市場においては引き続き大幅な需要喚起が期待されています。
世界経済に関しては、新型コロナウイルス感染症対策の進展と行動制限の緩和により国内に先がけて経済活動の正常化が進んできているものの、ロシア・ウクライナ紛争の長期化や米中関係などの地政学的リスクに加え、欧米各国のインフレーションの抑制に向けたさらなる金融引き締めの動きや、不動産市況の低迷による中国経済の回復ペースの鈍化などの影響を受けて景気の減速感が強まりつつあり、引き続き状況を注視していく必要があります。
このような環境のもと、当第1四半期連結累計期間の売上収益は3,591億57百万円(前年同四半期比0.3%減)と僅かながら減収となりました。また、利益面においては、事業利益は37億44百万円(前年同四半期比46.3%減)、営業利益は前年同四半期に計上した土地等の資産の譲渡益が剥落した影響があったことなどから24億25百万円(前年同四半期比79.9%減)、継続事業からの税引前四半期利益は有利子負債の増加に伴う金融費用の増加などもあり1億49百万円(前年同四半期比97.8%減)とそれぞれ大幅な減益となりました。
その結果、非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する四半期利益は3億77百万円(前年同四半期比93.4%減)となりました。
当第1四半期連結累計期間の業績は、世界経済全体で住宅設備及び建材の需要が総じて低調に推移し、引き続き厳しい事業環境となりました。特に海外事業は、金利上昇やインフレーションのさらなる進行を背景に、当社グループの主要市場である欧州地域を中心とした需要の減退の影響を受け、減収減益となりました。一方で、国内事業は政府の補助金による後押しもあり、高性能窓製品へのリフォーム需要が好調に推移し、新築需要低迷の影響をリフォーム売上がカバーしました。結果、当社グループ合計の事業利益は前年同四半期に比べて減益となりましたが、価格適正化の推進や海外市場における今後の需要回復を踏まえ、当連結会計年度の事業利益のうち8割程度は下半期に実現するという想定に変更はありません。
当社グループでは、かねてより外部環境の変化に左右されにくい企業体質の構築に取り組んでおり、経営の基本的方向性である「LIXIL Playbook」で示した優先課題への対応に注力し、着実に前進しています。
サプライチェーンの混乱による供給制約はほぼ解消したほか、国内事業ではリフォーム需要の取り込みが拡大し、収益力の強化が進んでいます。環境配慮型製品では、アルミリサイクル率100%を実現した低炭素型アルミ形材「プレミアル(PremiAL)R100」を今秋に投入予定であり、ラインナップの拡充を進めます。さらに、海外事業に関しては事業体制の包括的な見直しに取り組んでおり、生産性改善に向けた構造改革を加速させていきます。
このような様々な取り組みを通じて、事業基盤をさらに強化し、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』という当社グループの存在意義と持続的成長の実現に向けて邁進していく所存です。
セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。
[ウォーターテクノロジー事業]
主に水まわり製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は新築需要が弱含みに推移した影響があったものの、物価上昇に対応した価格改定効果の発現に加え、リフォーム関連製品の売上が引き続き堅調であったことなどから、ほぼ前年同四半期並みの売上を確保しました。しかしながら、海外事業はさらなる円安による為替換算影響があったものの、特に欧州地域における住宅市場価格の下落や追加の金利上昇に加え、インフレーションの継続により住宅関連の投資意欲がそがれたことによる需要の減退が著しく、対前年同四半期比で減収となりました。その結果、同事業の売上収益は2,140億84百万円(前年同四半期比3.1%減)と減収となりました。
また、事業利益は国内事業・海外事業とも価格改定効果による粗利の増加があったものの、前連結会計年度から続いている資材・エネルギー価格の高止まりによるコスト増加に加え、特に海外事業においては売上の減少による固定費負担をカバーしきれず、37億86百万円(前年同四半期比71.4%減)と大幅な減益となりました。
[ハウジングテクノロジー事業]
主に国内にて住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、新築需要の減退による影響が続いているものの、これまで取り組んできた価格改定効果の発現に加え、国策による大規模な補助金制度の導入を背景に住宅性能・快適性の向上や環境保護を目的としたリフォーム需要が刺激され大幅に伸長したことなどにより、売上収益は1,473億96百万円(前年同四半期比3.1%増)と増収となりました。
また、事業利益は引き続き資材・エネルギー価格の高止まりによるコスト増加影響はあるものの、リフォーム製品の増収効果や価格改定による粗利の確保に加え、高性能アルミサッシ製品の販売伸長や、生産現場のアセットライト化が軌道に乗ってきたことによる収益性の改善が着実に進んでいることなどから、83億73百万円(前年同四半期比2.7倍)と大幅な増益となりました。
(注)1.「事業利益」は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業及びハウジングテクノロジー事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。
(2) 財政状態の状況
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて613億32百万円増加の1兆9,148億66百万円となりました。流動資産は、季節的要因による営業債権及びその他の債権の減少等があったものの、さらなる円安の進行による為替換算に伴う増加影響などもあり、前連結会計年度末に比べて183億19百万円増加の7,628億52百万円となりました。一方、非流動資産についても、主にのれん及びその他の無形資産において為替換算に伴う増加影響があったことなどから、前連結会計年度末に比べて430億13百万円増加の1兆1,520億14百万円となりました。
また、資本は6,499億7百万円、親会社所有者帰属持分比率は33.8%(前連結会計年度末比0.1ポイント増加)です。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、229億60百万円の資金減少となりました。前年同四半期に比べて64億26百万円の減少となり、この主な要因は、継続事業からの税引前四半期利益の減少に加えて、営業債務及びその他の債務、営業債権及びその他の債権、棚卸資産などの運転資本の変動に伴う影響があったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産及び無形資産の取得による支出があったことなどから125億72百万円の資金減少となりました。前年同四半期に比べて165億46百万円の資金減少です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金やリース負債の支払があったものの、短期、長期とも有利子負債の調達と返済を機動的に行ったことなどから369億74百万円の資金増加となりました。前年同四半期に比べて228億6百万円の資金増加です。
これらの結果、当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響などを含めると、前連結会計年度末に比べて37億10百万円増加の1,103億87百万円です。
なお、資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。
当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大などの影響に伴い経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針及び経営環境に重要な変更はありません。また、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題についても重要な変更はありません。
なお、株式会社の支配に関する基本方針は、次のとおりです。
当社では、多数の株主に株式を中長期で保有していただくことが望ましいと考え、業績を向上し企業価値を高めて、株主の支持をいただけるような施策を打っています。よって、敵対的買収防衛策については、特に定めていません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、6,378百万円です。
なお、当第1四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。