【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
本項に記載した将来や想定に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、厳しい行動制限は緩和の方向にあり、それに伴う人流の回復など経済活動の正常化に向けた動きがみられ、景気の持ち直しが期待されております。一方で、依然として資材・エネルギー価格の高止まりが継続していることに加え、日米金利差の拡大などに起因する円安の進行、及び世界的な金融引き締めが国内景気を下押しするリスクとなっており、ひいては物価上昇による消費マインドの低下も懸念されております。また、住宅投資に関しては、新設住宅着工戸数は引き続き軟調に推移しており、貸家及び分譲については底堅い動きをみせているものの、持家は建築資材価格の上昇の影響などから減退傾向が続いていることもあり、先行きは不透明な状況となっております。
世界経済に関しては、新型コロナウイルス感染症対策の進展と行動制限の緩和により国内に先がけて経済活動の正常化が進んできているものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴う資材・エネルギー価格の高騰に加え、欧米各国のインフレ圧力に対する急速な金融引き締めの動きや中国のゼロコロナ政策の反動による経済成長の鈍化など、地政学的リスクによる景気回復の下振れの懸念が拭えず、先行きは依然として不透明感が続いております。
このような環境のもと、当第3四半期連結累計期間の売上収益は1兆1,238億17百万円(前年同四半期比4.6%増)と増収となりました。一方で、利益面においては、事業利益は209億97百万円(前年同四半期比66.0%減)、営業利益は242億40百万円(前年同四半期比59.6%減)、継続事業からの税引前四半期利益は214億22百万円(前年同四半期比63.3%減)とそれぞれ減益となりました。
その結果、非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する四半期利益は110億19百万円(前年同四半期比73.4%減)となりました。
第3四半期連結累計期間の業績は、海外事業においては引き続きサプライチェーンの寸断や米国及び中国地域での需要減退の影響を受けたものの、様々な困難を伴う事業環境下においても製品の安定供給体制の確保に努めた結果、為替換算の影響や国内事業におけるリフォーム売上の伸長などもあり、前年同四半期比で増収となりました。一方で、インフレーションと円安による資材及び物流費のコスト増加を反映させるべく国内・海外とも価格改定を実施してまいりましたが、想定以上の急激な円安の進行の影響を受けるとともに、資材・エネルギー及び部品価格の更なる上昇、欧州地域における物流体制の制約に伴うコスト増加に加え、米国地域における大幅な金利上昇を背景とした需要の軟化、中国地域の不動産市況の低迷などにより、前年同四半期比で減益となりました。
上記の通り、第3四半期連結累計期間では様々な要因の影響を受けて前年同期比で減益となったものの、直近3か月の第3四半期連結会計期間においては、期初から推進している国内事業における販売価格の適正化などの戦略的取り組みが奏功し、収益性は徐々に回復をみせております。依然として海外事業においては需要減退の懸念があるものの、足元では資材価格も落ち着きつつあり、販売価格の適正化を継続して進めるとともに、更なる収益性の改善に努めてまいります。
また、当社グループは、差別化された商品の提供拡大、原材料面における先進的な新素材の採用、機動的なサプライチェーンへの再編、米国及び中国地域などの海外市場におけるビジネスモデルの変革及び最適化など、様々な対策を推進することで外部環境の変化に対する基幹事業の耐性強化を図っております。とりわけ、将来性のある新規事業を育て、製品やサービスを通じて社会や環境課題の解決に貢献することで持続的な成長を実現してまいります。2022年10月に社外発表いたしました廃プラスチックと廃木材を融合した循環型新素材『レビア』はこうした取り組みの一環であり、舗装材をはじめ幅広い用途へと利用が拡大することを期待しております。
このような様々な取り組みを通じて、事業基盤をさらに強化し、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』という当社グループの存在意義と持続的成長の実現に向けて邁進してまいります。
セグメント別の概況は次のとおりであります。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前であります。
また、報告セグメントについては従来4区分で開示しておりましたが、当連結会計年度の第1四半期連結累計期間より2区分に変更しております。このため、前年同四半期との比較は、変更後の報告セグメントに基づき組み替えて行っております。変更の詳細につきましては、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 4.事業セグメント」に記載のとおりであります。
[ウォーターテクノロジー事業]
主に水まわり製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は新設住宅着工戸数が弱含みに推移しているものの、価格改定効果の発現に加え、リフォーム関連商品の売上が堅調であったことなどから、前年同四半期を若干上回る売上を確保いたしました。また、海外事業は米国地域における金利上昇を背景とした需要の軟化、中国地域における不動産市況の低迷の影響など外部環境によるマイナス要因があったものの、急激な円安による為替換算影響に加え、これまでコロナ禍で低迷していたアジア太平洋地域における経済活動の回復などもあり、対前年同四半期比で増収となりました。その結果、同事業の売上収益は6,832億13百万円(前年同四半期比5.6%増)と増収となりました。
一方で、事業利益は国内・海外とも価格改定効果による粗利の増加に加え、国内におけるリフォーム商品や中高級価格帯商品の売上構成比率の上昇がみられたものの、前連結会計年度から続いている資材・エネルギー価格の高騰に加え、海外においては欧州地域におけるサプライチェーンの混乱や米国地域における顧客の在庫調整の影響を受けたことなどもあり、360億19百万円(前年同四半期比44.2%減)と減益となりました。
[ハウジングテクノロジー事業]
主に国内にて住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、これまで取り組んできた価格改定効果の発現に加え、住宅性能・快適性の向上を目的としたリフォーム需要が堅調に推移したことなどにより、売上収益は4,542億79百万円(前年同四半期比2.9%増)と増収となりました。
一方で、事業利益は価格改定による粗利の確保に加え、高性能アルミサッシ商品の販売伸長や、アセットライト化が軌道に乗ってきたことによる収益性の改善が着実に進んでいるものの、主として急激な為替変動を背景とした想定以上の資材価格の高騰に加え、海外からの部品調達価格の更なる上昇による大幅なコスト増加などもあり、154億81百万円(前年同四半期比49.3%減)と減益となりました。
(注)1.「事業利益」は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業及びハウジングテクノロジー事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めております。
(2) 財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1,230億99百万円増加の1兆9,059億81百万円となりました。流動資産は、主にサプライチェーンの寸断への対応に伴う在庫水準の引き上げや米国地域における顧客の在庫調整の影響による棚卸資産の増加があったことなどから、前連結会計年度末に比べて1,048億1百万円増加の8,194億8百万円となりました。一方、非流動資産は、上場株式の売却によるその他の金融資産の減少などがあったものの、主にのれん及びその他の無形資産において急激な円安の進行による為替換算影響に加え、子会社の取得による増加があったことなどから、前連結会計年度末に比べて182億98百万円増加の1兆865億73百万円となりました。
また、資本は6,136億43百万円、親会社所有者帰属持分比率は32.1%(前連結会計年度末比2.2ポイント減少)であります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、101億57百万円の資金減少となりました。前年同四半期に比べて953億92百万円の大幅な減少となり、この主な要因は、継続事業からの税引前四半期利益の減少に加えて、営業債務及びその他の債務、営業債権及びその他の債権、棚卸資産などの運転資本の変動に伴う大幅な減少があったことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、上場株式の売却による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得に加え、子会社の取得による支出があったことなどから321億13百万円の資金減少となりました。前年同四半期に比べて125億24百万円の資金減少であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金やリース負債の支払のほか、資本効率の向上と株主還元の強化を目的として自己株式の取得を実施した一方で、社債の新規発行を含む有利子負債の調達と返済を機動的に行ったことなどから717億32百万円の資金増加となりました。前年同四半期に比べて1,387億13百万円の大幅な資金増加であります。
これらの結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響などを含めると、前連結会計年度末に比べて295億7百万円増加の1,299億11百万円であります。
なお、資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めております。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大などの影響に伴い経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しております。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じて更なる手元流動性の確保に努めております。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針及び経営環境に重要な変更はありません。また、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題についても重要な変更はありません。
なお、株式会社の支配に関する基本方針は、次のとおりであります。
当社では、多数の株主に株式を中長期で保有していただくことが望ましいと考え、業績を向上し企業価値を高めて、株主の支持をいただけるような施策を打ってまいります。よって、敵対的買収防衛策については、特に定めておりません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、17,328百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6) 主要な設備
前連結会計年度末時点において操業停止を計画していた株式会社LIXIL(当社)の前橋工場については、当第3四半期連結累計期間において、操業を停止いたしました。