【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。
(1)財政状態及び経営成績の状況①経営成績に関する説明当社グループは、2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画において、2030年までの長期ビジョンである「成長から進化へ」をグループ基本方針に据え、「環境問題への取り組み-Sustainability-」、「収益向上への取り組み-Profitability-」、「製品開発への取り組み-Green Innovation-」を通じ、2024年度には連結営業利益1,500億円以上の達成、また連結純利益1,000億円以上の安定的な継続を目指しています。このような基本方針のもと、当社グループは気候変動問題への対応として温室効果ガス削減や森林によるCO2純吸収量の拡大を推進するなど、環境問題への対応に継続して取り組むと同時に、最適生産体制の構築等を通じた既存事業の深化・海外パッケージング事業や環境配慮型製品等の有望事業の伸長を図り、事業価値を高めていきます。さらに、紙づくり・森づくりで培った多様なコア技術をベースに、環境配慮型素材・製品をはじめとした木質由来の新製品・新素材等の開発・早期事業化を進め、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」企業として、社会へ貢献してまいります。
当第2四半期連結累計期間の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞していた経済活動の再開による需要の回復やパルプ市況の上昇、また足元の原燃料価格高騰影響を受けた価格修正の実施により、前年同四半期を1,290億円(18.2%)上回る8,375億円となりました。なお、当社グループの海外売上高比率は前年同四半期を6.1ポイント上回る38.5%となりました。営業利益は、上記の価格修正の取り組みに加え、販売量も増加しましたが、原燃料価格高騰影響が大きく、前年同四半期を233億円(△36.6%)下回る404億円となりました。経常利益は、外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生がありましたが、前年同四半期を86億円(△12.5%)下回る602億円となりました。税金等調整前四半期純利益は、前年同四半期を103億円(△15.2%)下回る575億円となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同四半期を77億円(△16.8%)下回る379億円となりました。
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」、「機能材」、「資源環境ビジネス」、「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメントは、「その他」としています。なお、当第2四半期連結会計期間より、「生活産業資材」、「その他」に区分していた一部の事業について「資源環境ビジネス」に区分を変更しており、前年同四半期比較については、前年同四半期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。 生活産業資材・・・・・ 段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、 家庭紙事業、紙おむつ事業 機能材・・・・・・・・ 特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業 資源環境ビジネス・・・ パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業 印刷情報メディア・・・ 新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業 その他・・・・・・・・ 不動産事業、エンジニアリング、商事、物流 他
〈生活産業資材〉当第2四半期連結累計期間の売上高は前年同四半期比13.8%増収の3,898億円、営業利益は同94.1%減益の11億円となりました。国内事業では、段ボール原紙・段ボール、白板紙等、多くの品種において全体的な需要回復がみられることに加え、価格修正の実施により、売上高は前年に対し増収となりました。また、紙おむつは前年に対し減収となりましたが、家庭紙は前年に引き続き堅調に推移しました。海外事業では、段ボール原紙・段ボールは主に東南アジア・インドでの好調な販売、値上げの浸透に加え、マレーシアにおいて2021年10月から段ボール原紙の新マシンが稼働したことにより、売上高は前年に対し増収となりました。
〈機能材〉当第2四半期連結累計期間の売上高は前年同四半期比17.7%増収の1,076億円、営業利益は同0.6%減益の72億円となりました。国内事業では、特殊紙は前年に対し減収となりましたが、感熱紙は新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い減少した需要が回復傾向にあったことに加え、価格修正の実施により、売上高は前年に対し増収となりました。海外事業では、感熱紙は国内事業と同様、需要が回復傾向にあったことに加え、ブラジルにおいて設備増強・増設工事を実施し2022年1月から稼働したことにより、売上高は前年に対し増収となりました。
〈資源環境ビジネス〉当第2四半期連結累計期間の売上高は前年同四半期比41.4%増収の2,040億円、営業利益は同24.1%増益の293億円となりました。国内事業では、パルプ事業は市況の上昇を受け、売上高は前年に対し増収となりました。エネルギー事業は前年に引き続き堅調に推移しました。海外事業では、パルプ事業は販売が好調に推移したことに加え、市況の上昇により、売上高は前年に対し増収となりました。
〈印刷情報メディア〉当第2四半期連結累計期間の売上高は前年同四半期比14.1%増収の1,342億円、営業利益は同110億円減益の2億円の損失となりました。国内事業では、新聞用紙は需要の減少傾向が継続しているものの、印刷用紙は輸入紙の減少により国内品への需要が高まっていることに加え、価格修正の実施により、売上高は前年に対し増収となりました。海外事業では、江蘇王子製紙有限公司において、売上高は前年に対し増収となりました。
②財政状態に関する説明当第2四半期連結会計期間末の総資産は、有形固定資産、受取手形、売掛金及び契約資産、棚卸資産等の増加に加え、円安の進行による為替換算差もあり、前連結会計年度末に対し2,237億円増加し、22,774億円となりました。負債は、有利子負債等の増加により、前連結会計年度末に対し1,208億円増加し、12,991億円となりました。純有利子負債残高(有利子負債-現金及び現金同等物等)は、前連結会計年度末に対し934億円増加し、6,881億円となりました。純資産は、為替換算調整勘定や利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末に対し1,028億円増加し、9,783億円となりました。ネットD/Eレシオ(純有利子負債残高/純資産残高)は、経営目標である0.7倍を維持しています。
(2) キャッシュ・フローの状況当社グループでは、市場が縮小している事業では、生産体制再構築等によってコスト削減を徹底し、キャッシュ・フローの確保を図る一方、需要の伸びが期待できる国内事業や海外の経済発展が見込まれる地域へ投資を行い、ポートフォリオの拡充を図っています。当第2四半期連結累計期間末日の現金及び現金同等物の残高は、582億円(前年同四半期は1,056億円)となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、122億円の支出(前年同四半期は631億円の収入)となりました。主なキャッシュの増加は、税金等調整前四半期純利益に減価償却費を加えた金額927億円(前年同四半期は987億円)、及び仕入債務の増加176億円(前年同四半期は136億円の増加)であり、主なキャッシュの減少は、売上債権の増加446億円(前年同四半期は55億円の増加)、棚卸資産の増加333億円(前年同四半期は166億円の増加)及び法人税等の支払額312億円(前年同四半期は134億円の支払)によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出等により、722億円の支出(前年同四半期は483億円の支出)となりました。有形及び無形固定資産の取得による支出の主な内容は、品質改善、省力化、生産性向上、安全及び環境のための設備投資です。財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの発行による収入等により、814億円の収入(前年同四半期は475億円の支出)となりました。当社グループは、今後も海外事業や有望な事業等の成長分野に対しては、M&Aや設備投資、研究開発投資等を積極的に行っていく予定であり、所要資金の調達については、自己資金と外部調達との最適なバランスを検討し実施していきます。営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローは配当及び投資資金に充当し、有利子負債残高を適正水準に保ちながら、不足資金については借入金やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等による資金調達を行い、余剰資金については有利子負債の削減に充当します。なお、長期借入金や社債等の長期資金については、中期経営計画に基づく資金需要見通しや金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断して実施することとしています。当社は、主要連結子会社との間でグループファイナンスを行い、資金の一元管理を行うことにより、運転資金の効率的な運用を図っています。
(3) 経営方針・経営戦略等当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。これらの経営理念の下、「森のリサイクル」、「水のリサイクル」、「紙のリサイクル」という、バリューチェーンを通じた3つの資源循環を引き続き推進し、事業を通じて社会に対し価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していきます。また、企業存続の根幹である「安全・環境・コンプライアンス」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、労働災害リスク撲滅、環境事故防止、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守等、全役員・全従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けていきます。2022年5月、当社がさらなる発展を遂げるために、経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」という存在意義を新たに定義しました。健全に育て管理された森林は、二酸化炭素を吸収、固定するだけではなく、洪水緩和、水質浄化等の水源涵養、防災という機能の他に、生物多様性や人間の癒し、健康増進等にも貢献する効果があります。そして、森林資源を活かした木質由来の製品は、その原料が再生可能であり、化石資源由来のプラスチック、フィルムや燃料等を置き換えていくことができます。当社グループは、森林を健全に育て管理し、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、地球の温暖化や環境問題に取り組み、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていきます。また、当社グループのあるべき姿の実現に向け、2030年までの長期ビジョンとして、「成長から進化へ」をグループ基本方針に据え、具体的な取り組みとして「環境問題への取り組み -Sustainability-」、「収益向上への取り組み -Profitability-」、「製品開発への取り組み -Green Innovation-」の三本柱を掲げています。「環境問題への取り組み -Sustainability-」では、石炭使用量ゼロに向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス削減の推進や、植林地を取得・拡大し、有効活用することによる森林による純吸収量の拡大など、環境問題への対策を継続して進めていくことで事業の価値を高めていきます。「収益向上への取り組み -Profitability-」では、海外パッケージング事業や、環境配慮型製品の拡販等、有望及び新規市場へ事業を伸ばしていくと同時に、更なる最適な生産体制の構築等を通じ、既存事業を掘り下げ深めていくことで事業の価値を高めていきます。「製品開発への取り組み -Green Innovation-」では、環境配慮型素材や製品の開発、プラスチック代替品の商品化等、木質由来の製品を新しく世に出していくことで事業の価値を高めていきます。これらの取り組みを通じ、2030年度までに売上高2.5兆円、及び2020年9月に制定した「環境行動目標2030」を達成し、「森林を健全に育て、その森林資源を生かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」企業として、社会へ貢献してまいります。この2030年までの長期ビジョンに基づき、その目指すべき姿の実現のためにこれからの3年間で取り組むべき戦略・目標を中期経営計画としてまとめました。この2022年度から2024年度を最終年度とする新たな中期経営計画では、以下の数値目標を設定しています。
2024年度経営目標
連結営業利益
連結純利益
海外売上高比率
ネットD/Eレシオ※
1,500億円以上
1,000億円以上(安定的に1,000億円以上を継続)
40%(将来的には50%を目指す)
0.7倍 (2022年3月末0.7倍)
※ ネットD/Eレシオ=純有利子負債残高/純資産
具体的には以下の取り組みを行っています。
(a) 生活産業資材・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)海外では、引き続き東南アジア地域を中心にパッケージング事業の拡大を図ります。東南アジアでは、2021年10月にマレーシアで稼働した段ボール原紙マシンを活かし、同地域における原紙・加工一貫での事業展開を一段と推し進め、コスト競争力を強化していきます。川下の段ボール事業では、旺盛な需要に応えるべく、新工場建設やM&Aにより積極的に事業を拡大しています。2021年10月にインドで段ボールの製造・販売を行うEmpire Packages社を買収したほか、2022年度にはマレーシアとベトナムで3つの段ボール新工場が稼働し、さらに2023年度上期に新たに1工場が稼働予定です。オセアニアでは、ニュージーランドで段ボール新工場が2021年11月以降稼働を開始するなど、事業基盤のさらなる強化に努めています。国内では、原紙・加工一貫での生産体制を一層強化し、より品質の高い製品を持続的かつ効率的に供給する体制を整えます。2021年10月には王子製紙苫小牧工場において段ボール原紙マシンが稼働し、収益力向上を図っているほか、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される関東において、船橋地区では段ボール新工場を稼働させ、宇都宮地区では段ボールの原紙加工一貫工場の建設(2023年1月完成予定)を進めています。顧客のニーズに合わせた新製品の開発・提供にも引き続き注力していきます。ぴったりサイズの段ボールで配送コストを削減できる自動包装システム「OJI FLEX PACK’AGE」は、顧客やパートナー企業との連携を含め販路拡充を進めています。液体紙容器事業では、国内初となるミルクカートン原紙生産を開始し、原料から印刷加工までの国内一貫生産を実現しました。安心・安全な国産ミルクカートンを安定して供給し、国内外でさらなる事業拡大を目指します。フィルター事業では、新型コロナウイルスの感染拡大による衛生意識の高まりにより拡大する空気清浄機の需要に応じ、2021年10月に「用途別脱臭フィルター」を開発しました。加えて、世界的な環境意識の高まりに伴い、紙製品への一層の期待が集まる中、脱プラスチック製品の開発・拡販を一段と進めていきます。今後も生活に密着した素材・技術で社会全体の豊かさの向上に貢献していきます。
・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型製品や「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。2022年8月には、王子ネピア江戸川工場内で同社初となる物流倉庫が稼働しました。工場及び倉庫の使用電力の一部は、倉庫に新たに設置した太陽光パネルによる発電電力に置き換えます。家庭紙加工拠点と配送拠点の一体化により関東圏での家庭紙・紙おむつ事業の拡大を目指すと同時に、サプライチェーンの環境負荷低減を図ります。環境配慮型製品の開発にも積極的に取り組んでおり、2022年1月には、クラフト紙で包装したティシュ製品「nepia krafco mini」を、同年春には、パッケージを紙素材に変更した「ネピeco」シリーズのキッチンタオルとボックスティシュ、不織布に植物由来の素材を80%使用したバイオマスマスクを発売しました。また、当社グループは新型コロナウイルス感染拡大の早期終息に向け引き続き貢献していきます。2022年4月には、株式会社タイタンとコラボレーションした、小さなカバンやポーチに入れて運べる新しい包装形態のマスク「ネピア 鼻セレブポケットマスク」を、同年5月には、紙製パッケージを使用しリサイクル可能で中身が見える「ネピア 鼻セレブマスク 紙エールパッケージ」を、「ネピア 鼻セレブマスク」シリーズのラインアップにそれぞれ追加しました。紙おむつ事業の子供用分野では、国内外での統一ブランド「Genki!」の販売を通して、紙おむつ事業においても「ネピア」ブランドの価値向上に努めていきます。マレーシアでは紙おむつ加工機の新設を含む生産体制再構築により生産能力を増強し、インドネシアでは合弁会社における現地紙おむつ工場での製造及び販売によって、コスト競争力の確保と事業基盤の強化を図り、周辺国を含めて一層の事業拡大を進めています。さらに、中国では品質と性能をより高めた「Whito Premium(ホワイトプレミアム)」の拡販を進めるとともに、現地消費者のニーズを取り込んだ薄型商品の拡販を進めています。国内における大人用紙おむつについては、要介護・要支援人口の増加に伴い成長が見込まれていることを受け、2022年9月に王子ネピア福島工場で新たな加工機を稼働しました。 また、2022年3月には、医療・福祉施設向け製品「ネピアテンダー」シリーズから、介護をする方・される方、双方の介護負担軽減を目指した周辺商品を発売しました。引き続き、高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する製品の開発を進めていきます。今後も、環境への配慮や品質を重視した製品展開をもとに、顧客ニーズ、時代の変化に応じ、「ネピア」ブランドの再構築を行い、さらなる新製品の開発、価値創出を目指していきます。
(b) 機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)海外では、南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、ブラジルで生産能力をほぼ倍増とする設備増強・増設工事を実施、2022年1月から稼働しました。欧州においても感熱紙の設備増強(2024年1月稼働予定)を決定しています。また、2022年9月に、東南アジア及び中国の6か国に事業拠点を有する高機能ラベル印刷加工会社Adampakグループを買収しました。アジア地域で今後も成長が見込まれる電気製品やヘルスケア製品向けの高機能ラベル製品の品揃えを拡大させるとともに、原紙から加工までの一貫生産が可能となりました。引き続き東南アジア・南米・中東・アフリカ等の新興国市場の経済発展に伴って拡大する需要に応じて、これまで培ってきた「抄紙」や「紙加工(塗工・粘着)」、「フィルム製膜」といった当社グループの強みである基幹技術をベースに事業エリアの拡大を図ると同時に、既存拠点での競争力強化を目指していきます。国内では、機能材市場の需要構造の変化に応じて生産体制の継続的な見直しを行い、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。さらに高機能・高付加価値製品の迅速な開発に継続して取り組んでおり、2021年12月には、従来両立が困難であった高い遮熱性と光線透過性を両立した自動車用ウィンドウフィルムの開発に成功しました。環境配慮型製品の開発にも積極的に取り組んでおり、2022年2月には、従来は廃棄されていた繊維・端切れ・回収衣料等を紙原料として配合した循環資源混抄紙「MEGURISH(綿)」を、同年3月には、植物由来のセルロースとポリ乳酸を主原料とし、生分解性を有した不織布素材「キナリト」を開発しました。また、食品等の包装材料として、内容物の劣化進行を抑えられる紙製バリア素材の「SILBIOシリーズ」は、従来のバリア性に加え、遮光性、透明性、ヒートシール性などの機能を追加し、ラインナップを拡大しました。幅広い軽包装材のニーズへの対応を進め、2022年5月にはコーヒー豆などの食品向け包装材としても新たに採用されています。その他、脱炭素社会への転換がグローバルに進行し電動車が急速に普及していることを受け、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備を滋賀県に2基増設することを決定しています(2023年、2024年稼働予定)。これにより、生産能力は2022年2月時点に対し、倍増する予定です。今後も環境配慮型素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、期待を超える製品やサービスを迅速に提供できるよう、新たな事業領域の拡大に積極的に取り組んでいきます。
(c) 資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を強化するため、主要拠点において戦略的収益対策を継続して実施しています。ニュージーランドのOji Fibre Solutions社では、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルのCelulose Nipo-Brasileira社では製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。国内の溶解パルプ事業ではレーヨン用途向け製品に加えて、医療品材料や濾過材用途等の高付加価値品の生産を行い、収益力の強化を進めています。エネルギー事業では、再生可能エネルギーの利用拡大を目指しさらなる事業拡大を進めています。2022年中には、伊藤忠エネクス株式会社と合弁で建設しているバイオマス発電設備が徳島県で稼働予定です。また、エネルギー事業の拡大に合わせバイオマス燃料事業の強化を進めており、国内では未利用木材資源を活用した燃料用チップの生産増、海外では適法性と持続性を確保しつつ、インドネシアやマレーシアにおける燃料用パーム椰子殻の調達増に向けた取り組みを行っています。 植林事業では、環境行動目標に掲げる植林地の拡大のため、2030年度までに海外植林地面積を現在の250千haから400千haへ増やすべく、南米、オセアニア、アジア等にて持続可能な森林資源の取得を推進しています。木材加工事業では、国内外で製材や木材加工製品の生産能力増強に取り組みます。また、国内では建築資材分野での拡販等を通じ、収益力の強化を図ります。
(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)印刷情報分野の紙需要は、新型コロナウイルス感染症拡大以前のレベルを下回る状況が続いています。その中で、従来より進めてきた徹底した効率化とコストダウンに加え、王子製紙苫小牧工場での設備転換による段ボール原紙生産や、移設設備での特殊板紙の生産などの、王子グループ内の他事業との連携による生産体制の再構築を通じて、経営の効率化を進めています。さらに、2022年度に入ってからの急激な原燃料価格の上昇は、円安の進行とあいまって、事業経営を一層厳しくしています。今までの諸施策に加え製品価格の修正によって安定的な事業継続を図っていきます。加えて三菱製紙株式会社との業務提携を継続して進め、提携メリットの最大化に努めていきます。中国では、数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを徹底して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいきます。
(e) イノベーションの推進と持続可能な社会の実現に向けた取り組み当社グループでは、再生可能な森林資源の持つ可能性を最大限に引き出し、社会的課題の解決に向けてイノベーションを推進することにより、新たな価値創造を目指しています。まず、国内外に保有する豊富な森林資源を活用した、様々な木質由来の新素材開発を進めています。具体的には、化石燃料由来プラスチックからの脱却を目指し、木質由来で非可食であるセルロースから、ポリ乳酸などのバイオマスプラスチックを製造する取り組みを進めています。また、当社のポリプロピレンフィルムの製造加工技術を用い、ポリ乳酸を配合したバイオマスプラスチックフィルム「アルファンG」を開発しました(2022年2月より販売開始)。この製品は石油由来のポリプロピレンの使用量を削減しており、日本有機資源協会のバイオマスマーク商品に認定されました。一方、多分野での活用が期待されるセルロースナノファイバー(CNF)は、建築現場やスポーツ用品、化粧品等、具体的な製品への採用事例も増えておりますが、さらなる用途開拓に向けて、複合材料用途(樹脂・ゴム等)の実用化を目指し、信州大学との共同研究で開発した、硬さと伸びを両立した天然ゴムとCNFとの複合材サンプルの提供を開始しました。また、セルロースを補強繊維とした減プラ素材「セルロースマット」のサンプル提供も開始しています。この製品は、熱加工することで変形に強く割れにくい成形体が得られ、さらに当社が手掛けるCNFシートなどの機能性素材を貼り合わせることで剛性などの向上も可能であり、自動車部材などへの活用が期待されています。その他紙製品としては、紙コップなどの用途として、2022年4月にポリ乳酸を使用したラミネート紙を開発、7月には紙コップのリサイクルを可能にした水系塗工コップ原紙の開発に成功する等、新素材を次々と生み出しています。次に、メディカル&ヘルスケア領域として、森林資源や独自技術を医療分野に活かす新しい領域に挑戦しています。具体的には、ナノサイズの凹凸構造形成技術「ナノドットアレイ」を応用し、細胞を配向させ生体内に近い状態を作り出す細胞培養基材「Cell Array(セラレイ)」を開発しました(2022年10月より販売開始)。「セラレイ」の再生医療や創薬への活用を目指し、順天堂大学等との共同研究を進めています。また、王子ファーマ株式会社では、木質成分の「ヘミセルロース」を化学修飾して得られる「硫酸化ヘミセルロース」の医薬品開発を進めており、まずは動物用関節炎の治療薬として承認申請を進めています。その他、輸入に依存している漢方薬原料である甘草の国内安定供給に向け、王子薬用植物研究所株式会社で大規模栽培の取り組みを行っています。最後に、現代社会の様々な環境問題を解決するための新しいビジネスモデルの構築を進めています。近年の脱プラスチック等のニーズに応えるため、日常生活における様々な包装アイテムを紙に置き換える提案など、紙を知り尽くした当社グループならではの「脱プラスチックソリューション」を展開しています。また、水処理分野においても、長年培ってきた技術や操業ノウハウを活かし、国内外のお客様に水処理システムを提供しており、水資源の有効活用に貢献しています。
(4) 研究開発活動当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、4,447百万円です。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。