【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績の状況当第1四半期連結累計期間の世界経済は、欧米を中心としたインフレと利上げの影響に加え、中国の回復が鈍化したこと等から回復に力強さを欠きました。国内経済については、コロナ禍からの正常化の動きが続いていますが、欧米景気の不透明感や半導体市場の調整長期化が下押し圧力となりました。このような事業環境の中で、当社グループは「持続的かつ健全な成長」を目指し、2023年度からは「持続的な成長の実現」「価値創出力強化」「競争力強化」「『人を基本とする経営』の深化」「リスクマネジメントとグループガバナンスの強化」の5つを基本戦略とした中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”を推進しています。以上の結果、当社グループの連結業績は、売上収益は前年同期比4.6%減の5,781億円、事業利益(注1)は同19.2%減の219億円となりました。営業利益は同59.1%減の208億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同65.1%減の139億円となりました。
セグメント別の経営成績は、以下のとおりです。
(繊維事業)衣料用途が欧米の市況悪化、衛材用途が需給バランス悪化の影響を受けて低調に推移しました。産業用途は自動車用途で需要が回復傾向となったほか、欧州における天然ガス等の価格低下からスプレッドが改善しました。以上の結果、繊維事業全体では、売上収益は前年同期比0.9%減の2,238億円、事業利益は同25.8%増の109億円となりました。
(機能化成品事業)樹脂・ケミカル事業は、樹脂事業が中国市場の需要減少等の影響により低調となりました。フィルム事業の光学用途・電子部品関連、及び電子情報材料事業の回路材料において、サプライチェーンの在庫調整により、需要が減少しました。以上の結果、機能化成品事業全体では、売上収益は前年同期比12.3%減の2,148億円、事業利益は同56.1%減の74億円となりました。
(炭素繊維複合材料事業)風力発電翼用途が調整局面となりましたが、航空宇宙用途の需要が回復傾向となったほか、一般産業用途において圧力容器用途が拡大しました。以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上収益は前年同期比0.2%増の687億円、事業利益は同13.8%増の27億円となりました。
(環境・エンジニアリング事業)水処理事業は、逆浸透膜の2大市場である米中向け出荷などが堅調に推移しました。また、国内のエンジニアリング子会社や建設子会社の売上が堅調に推移しました。以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上収益は前年同期比10.3%増の560億円、事業利益は同76.4%増の62億円となりました。
(ライフサイエンス事業)医薬事業は、経口そう痒症改善薬レミッチ®(注2)において、後発医薬品発売の影響と薬価改定の影響を受けたほか、経口プロスタサイクリン誘導体製剤ドルナー®が海外で在庫調整の影響を受けました。医療機器事業は、透析機器が原燃料価格高騰の影響を受けました。以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上収益は前年同期比8.4%減の113億円、事業利益は同6億円減の5億円の損失となりました。
(その他)売上収益は前年同期比0.8%増の34億円、事業利益は同4.0%増の4億円となりました。
(注) 1.事業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出しております。2.レミッチ®は、鳥居薬品㈱の登録商標です。
(2) 財政状態の状況当第1四半期連結会計期間末の財政状態は、資産・負債ともに、円安による海外子会社の円換算額増加の影響がありました。資産は、棚卸資産や有形固定資産、その他の金融資産が増加したことを主因に、前連結会計年度末に比べ1,533億円増加し3兆3,474億円となりました。負債は、借入金が増加したことを主因に、前連結会計年度末に比べ416億円増加し1兆5,998億円となりました。資本は、その他の資本の構成要素の増加を主因に、前連結会計年度末に比べ1,118億円増加し1兆7,476億円となり、このうち親会社の所有者に帰属する持分は1兆6,433億円となりました。当第1四半期連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.0ポイント上昇し49.1%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加が投資活動による資金の減少を125億円上回った一方、長期借入金の返済や配当金の支払を主因に財務活動による資金の減少が289億円となったこと等により、前連結会計年度末に比べ75億円減の2,165億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業債権及びその他の債権の減少額が前年同期比243億円増加、棚卸資産の増加額が同217億円減少した一方、営業債務及びその他の債務の減少額が同219億円増加したこと等により、営業活動による資金の増加は同215億円(94.3%)増の443億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)子会社の取得による支出が前年同期比65億円増加したこと等により、投資活動による資金の減少は同54億円(20.3%)増の318億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)短期借入債務の純減額が前年同期比192億円増加したこと等により、財務活動による資金の減少は同349億円増の289億円となりました。
(4) 研究開発活動当第1四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費総額は155億円です。