【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高は前期比43億30百万円(9.9%)増の481億44百万円、営業利益は同3億02百万円(2.9%)増の105億58百万円、経常利益は同4億32百万円(4.1%)増の110億03百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同4億41百万円(6.4%)増の73億50百万円となり、売上、利益ともに過去最高を更新することができました。なお、セグメント別の状況につきましては、以下のとおりであります。
a. 溶射加工(単体)半導体分野向け加工において世界的に活発な設備投資や増産が追い風となったことに加え、鉄鋼、産業機械、環境・エネルギー分野も好調であったことから、当セグメントの売上高は前期比31億40百万円(9.5%)増の361億84百万円、セグメント利益(経常利益)は同2億54百万円(3.1%)増の83億41百万円となりました。
b. 国内子会社国内の自動車関連は新型コロナウイルス感染症に起因する部品供給は改善しているものの、半導体不足により生産が停滞し、また電力料高騰などによる影響から、当セグメントの売上高は前期比14百万円(0.6%)増の24億14百万円、セグメント利益(経常利益)は同1億19百万円(25.2%)減の3億52百万円となりました。
c. 海外子会社半導体関連や鉄鋼関連の受注が概ね好調であったことに加え、円安の為替影響もあり、当セグメントの売上高は前期比9億26百万円(16.3%)増の66億22百万円、セグメント利益(経常利益)は同1億15百万円(7.5%)増の16億53百万円となりました。
d. その他溶射加工(単体)、国内子会社、海外子会社以外のセグメントについては、農業機械部品向けTD処理加工が好調であったことや、半導体および医療分野への新技術の適用が進んだことなどから、売上高の合計は前期比2億42百万円(9.7%)増の27億45百万円、セグメント利益(経常利益)の合計は前期並みの4億68百万円となりました。
② 財政状態の状況当連結会計年度末における総資産は742億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ47億46百万円(6.8%)増加いたしました。流動資産は有価証券や原材料及び貯蔵品の増加などにより、24億62百万円増加いたしました。固定資産につきましては、当社東京工場鈴身事業所および神戸工場において工場用地を取得したことなどにより22億83百万円増加いたしました。一方、負債は166億20百万円と前連結会計年度末比4億37百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が14億47百万円減少した一方、未払金などの債務が増加したことなどによるものであります。当連結会計年度末における純資産は576億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ51億83百万円(9.9%)増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が73億50百万円となった一方で、剰余金の配当が28億89百万円であったことにより利益剰余金が44億61百万円増加したことなどによるものであります。この結果、当期末の1株当たり純資産は884円83銭(前期末比77円52銭の増加)、自己資本比率は72.5%(前期末比1.9ポイントの上昇)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前年度末に比べ3億78百万円増加し、195億20百万円となりました。なお、当年度における各活動別のキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
a.
営業活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、前期比20百万円(0.2%)増の98億94百万円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益109億89百万円、減価償却費29億87百万円であり、支出の主な内訳は法人税等の支払額32億24百万円、棚卸資産の増加額11億91百万円であります。
b.
投資活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は、前期比49百万円(1.0%)増の50億94百万円となりました。支出の主な内訳は、溶射加工(単体)セグメントを中心とした有形固定資産の取得による支出46億10百万円であります。
c.
財務活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は、前期比13百万円(0.3%)増の45億61百万円となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額28億88百万円、長期借入金の返済による支出14億47百万円であります。
前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症による影響に備え手元流動性を高め、慎重な資金運営を行った結果、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は47億99百万円と非常に健全な状態を維持していると考えております。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
前連結会計年度(自 2021年4月1日至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比
生産高(百万円)
生産高(百万円)
金額(百万円)
増減率(%)
溶射加工(単体)
33,043
36,184
3,140
+9.5
半導体・FPD製造装置用部品への加工
20,643
23,260
2,616
+12.7
産業機械用部品への加工
3,707
3,802
95
+2.6
鉄鋼用設備部品への加工
3,450
3,582
131
+3.8
その他の溶射加工
5,242
5,539
296
+5.7
国内子会社
2,399
2,414
14
+0.6
海外子会社
5,695
6,622
926
+16.3
報告セグメント
計
41,139
45,221
4,081
+9.9
その他
2,502
2,745
242
+9.7
合
計
43,642
47,966
4,324
+9.9
(注) 1
セグメント間取引については、相殺消去しております。2 上記の金額は、販売価格によっております。
b. 受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(受注高)
セグメントの名称
前連結会計年度(自 2021年4月1日至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比
受注高(百万円)
受注高(百万円)
金額(百万円)
増減率(%)
溶射加工(単体)
34,212
36,195
1,983
+5.8
半導体・FPD製造装置用部品への加工
21,861
22,742
881
+4.0
産業機械用部品への加工
3,743
3,864
120
+3.2
鉄鋼用設備部品への加工
3,355
3,954
599
+17.9
その他の溶射加工
5,252
5,633
381
+7.3
国内子会社
2,386
2,402
15
+0.6
海外子会社
6,112
7,115
1,003
+16.4
報告セグメント
計
42,711
45,713
3,002
+7.0
その他
2,683
2,706
22
+0.8
合
計
45,394
48,419
3,024
+6.7
(注) 1
セグメント間取引については、相殺消去しております。2 上記の金額は、販売価格によっております。
(受注残高)
セグメントの名称
前連結会計年度(2022年3月31日)
当連結会計年度(2023年3月31日)
前年同期比
受注残高(百万円)
受注残高(百万円)
金額(百万円)
増減率(%)
溶射加工(単体)
6,005
6,016
11
+0.2
半導体・FPD製造装置用部品への加工
4,471
3,953
△ 517
△11.6
産業機械用部品への加工
350
412
61
+17.7
鉄鋼用設備部品への加工
596
968
372
+62.5
その他の溶射加工
587
681
94
+16.1
国内子会社
46
34
△ 12
△26.4
海外子会社
1,458
1,951
493
+33.8
報告セグメント
計
7,509
8,002
492
+6.6
その他
386
346
△ 39
△10.3
合
計
7,896
8,349
452
+5.7
(注) 1
セグメント間取引については、相殺消去しております。2 上記の金額は、販売価格によっております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
前連結会計年度(自 2021年4月1日至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比
販売高(百万円)
販売高(百万円)
金額(百万円)
増減率(%)
溶射加工(単体)
33,043
36,184
3,140
+9.5
半導体・FPD製造装置用部品への加工
20,643
23,260
2,616
+12.7
産業機械用部品への加工
3,707
3,802
95
+2.6
鉄鋼用設備部品への加工
3,450
3,582
131
+3.8
その他の溶射加工
5,242
5,539
296
+5.7
国内子会社
2,399
2,414
14
+0.6
海外子会社
5,695
6,622
926
+16.3
報告セグメント
計
41,139
45,221
4,081
+9.9
その他
2,502
2,745
242
+9.7
事業セグメントに帰属しない売上高(受取ロイヤリティー等)
171
177
6
+3.7
合
計
43,813
48,144
4,330
+9.9
(注) 1
セグメント間取引については、相殺消去しております。2
主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
東京エレクトロン株式会社グループ
15,631
35.7
15,946
33.1
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績に関する分析等当連結会計年度におけるわが国経済は、ロシア・ウクライナ紛争の長期化、米中の覇権争いなど地政学的リスクの顕在化による、エネルギー・原材料価格の高騰から、国内製造業においてコスト上昇圧力が高まりました。これに加え、年度後半からは半導体業界が調整局面に入り、当社グループを取り巻く事業環境も先行き不透明感が強まっております。このような状況のもと、当社グループの売上高は、好調な受注が継続した半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)分野のほか、鉄鋼分野、産業機械分野ならびに環境・エネルギー分野なども堅調に推移し増収となりました。経常利益につきましても、労務費や電力費等の上昇の影響がありましたが、コスト削減に努めるとともに、受注価格の見直しも進めた結果、昨年7月に公表した業績の修正予想値には届かなかったものの、前期比では増益を確保いたしました。
(売上高)当連結会計年度の売上高は481億44百万円(前期比9.9%増)となりました。セグメント別の内訳は、溶射加工(単体)が361億84百万円(前期比9.5%増、構成比75.1%)、国内子会社が24億14百万円(前期比0.6%増、構成比5.0%)、海外子会社が66億22百万円(前期比16.3%増、構成比13.8%)、その他が27億45百万円(前期比9.7%増、構成比5.7%)、受取ロイヤリティー等が1億77百万円(前期比3.7%増、構成比0.4%)となっております。
(営業利益)売上原価が307億78百万円、販売費及び一般管理費が68億07百万円となり、当連結会計年度の営業利益は105億58百万円(前連結会計年度の営業利益102億55百万円に比べ3億02百万円(2.9%)増)となりました。なお、売上高営業利益率は、前期比1.5ポイント減少の21.9%であります。また、当連結会計年度における研究開発費の総額は14億00百万円(連結売上高比率は2.9%)であり、これに加え、連結売上高比2.0%程度の水準で、各工場の生産技術部門において技術開発を実施しております。
(経常利益)当連結会計年度における営業外損益(収益)は、純額で4億45百万円となりました。この結果、経常利益は110億03百万円(前連結会計年度の経常利益105億71百万円に比べ4億32百万円(4.1%)増)となりました。なお、売上高経常利益率は、前期比1.3ポイント減の22.9%であり、前期に引き続き目標とする20%を達成いたしました。セグメント別の内訳は、溶射加工(単体)が83億41百万円(前期比3.1%増、売上高経常利益率23.1%)、国内子会社が3億52百万円(前期比25.2%減、売上高経常利益率14.6%)、海外子会社が16億53百万円(前期比7.5%増、売上高経常利益率25.0%)、その他が4億68百万円(前期比微備増、売上高経常利益率17.1%)となりました。また、当連結会計年度における総資産経常利益率(ROA)は15.3%(前年度15.8%)であります。今後も収益性の向上と資本効率を意識した経営により、企業価値を高める努力を継続してまいります。
(税金等調整前当期純利益)当連結会計年度においては、特別利益として固定資産売却益4百万円、特別損失として固定資産除売却損18百万円を計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は109億89百万円(前連結会計年度の税金等調整前当期純利益104億48百万円に比べ5億40百万円(5.2%)増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度における実効税率(税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率)は28.7%で、当期純利益は78億38百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純利益が4億87百万円となったため、親会社株主に帰属する当期純利益は73億50百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益69億09百万円に比べ4億41百万円(6.4%)増)となりました。また、1株当たり当期純利益は120円83銭(前年度113円62銭)、自己資本純利益率(ROE)は14.3%(前年度14.8%)であり、目標とする15%に届きませんでした。引き続き利益を積み上げ収益性を改善し、目標とする15%水準に戻していきたいと考えております。
② 財政状態に関する分析等財政状態に関する認識及び分析・検討内容は下記となります。なお、資産については、事業セグメントに配分していないため、財政状態についてのセグメント別内訳は記載しておりません。
(流動資産)当連結会計年度末における流動資産の残高は388億27百万円で、前連結会計年度末に比べ24億62百万円増加いたしました。主な要因は、有価証券の増加10億00百万円、原材料及び貯蔵品の増加9億91百万円であります。なお、当連結会計年度末における流動比率(流動資産の流動負債に対する割合)は272.0%(前連結会計年度末は272.7%)であります。
(固定資産)当連結会計年度末における固定資産の残高は354億36百万円で、前連結会計年度末に比べ22億83百万円増加いたしました。主な要因は、溶射加工(単体)セグメントを中心に東京工場や神戸工場での工場用地取得や、次世代プロセス設備装置の設置のほか、台湾子会社での半導体・FPD分野での設備投資が行われた一方、減価償却が進んだことによるものであります。なお、当連結会計年度の設備投資総額は48億55百万円であります。また、当連結会計年度末における固定比率(固定資産の純資産に対する割合)は61.5%(前連結会計年度末は63.2%)、固定長期適合率(固定資産の長期資本(純資産と固定負債の合計)に対する割合)は59.1%(前連結会計年度末は59.0%)であり、当社グループの設備投資の現状に関して、問題のない水準であると判断しております。
(流動負債)当連結会計年度末における流動負債の残高は142億72百万円で、前連結会計年度末に比べ9億37百万円増加いたしました。主な要因は、未払消費税等などの流動負債その他が3億73百万円、未払金が2億65百万円増加したことなどによります。
(固定負債)当連結会計年度末における固定負債の残高は23億47百万円で、前連結会計年度末に比べ13億75百万円減少いたしました。主な要因は、長期借入金の減少14億47百万円であります。
(純資産)当連結会計年度末における純資産の残高は576億43百万円で、前連結会計年度末に比べ51億83百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が44億61百万円増加したことや、決算時の為替相場により在外子会社の純資産に係る換算差額が増加したことから為替換算調整勘定が2億25百万円増加したことによるものであります。この結果、当連結会計年度末の1株当たり純資産は884円83銭(前連結会計年度末比77円52銭の増加)、自己資本比率は72.5%(前連結会計年度末比1.9ポイントの上昇)となりました。今後も50%以上の自己資本比率を維持することで、健全な財務体質を確保していくことが、当社グループにとりまして重要であると判断しております。なお、当連結会計年度の剰余金の配当につきましては、1株当たり50円(うち中間配当22.5円)といたしました結果、連結配当性向は41.4%、純資産配当率(DOE)は5.9%となります。
③ キャッシュ・フローに関する分析等当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は3億78百万円増加し、期末残高は195億20百万円となりました。なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
65.6
65.9
68.9
70.6
72.5
時価ベースの自己資本比率(%)
92.6
101.4
137.2
119.0
106.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)
55.7
123.0
57.0
43.0
28.3
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
581.0
396.6
896.8
1,190.6
1,693.1
(注)
自己資本比率:自己資本/総資産時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
※
各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。※
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。※
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④ 資産の財源及び資金の流動性に関する認識等当社グループの運転資本や設備投資に係る財源としましては、営業活動により得られる資金以外に、資金需要に応じた金融機関からの借入を基本としております。手許資金の流動性につきましては、適正な水準の現預金残高を維持するよう財務部門での資金計画に基づいた管理を行なっておりますが、運転資金の効率的な調達のため、取引銀行と30億円の貸出コミットメント契約を締結しております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況
1 連結財務諸表等
(1)連結財務諸表
注記事項」における(重要な会計上の見積り)に記載しております。