【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態および経営成績の状況(a) 経営成績当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、企業収益について一部に弱さが見られるものの総じて改善しているほか、個人消費が持ち直す等、景気は緩やかに回復しています。先行きについては、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、ウクライナ情勢等による不透明感が見られる中で、原油価格の高止まり、原材料価格の上昇、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要があります。当社グループを取り巻く環境は引き続き厳しく、当連結会計年度は、前期比較では、乗船客数及び関連する大島島内でのホテルやバスなどの利用は回復傾向となりましたが、コロナ禍以前との比較では乗船客数は約7割の水準に留まっています。一方で貨物輸送量は、生活関連品目、工事関連品目共に堅調に推移しました。このような状況の下、当社グループでは、流動性資金を確保し、コスト削減に加えて各種補助制度の利用に努め、また三密の回避、船内換気、従業員のワクチン接種促進など感染拡大防止に取り組みながら安全運航に努めました。また、消毒の徹底、マスクの着用、三密の回避、船内換気・抗菌コーティング、乗船時の検温実施、従業員のワクチン接種促進など感染拡大防止に取り組み、お客様と従業員の安全確保を図りました。この結果、当連結会計年度の業績は、乗船客数の増加、連結子会社化した小笠原海運株式会社の売上高を通期で取り込んだこと、国及び東京都からの支援等により、売上高は139億2千9百万円(前期108億1千万円)と大幅に増加しました。費用面で船舶燃料費、船舶修繕費等の増加がありましたが、営業利益は4億5千2百万円(前期1億9千7百万円)、営業外費用に固定資産除却損を9千2百万円計上したことなどにより、経常利益は2億9千9百万円(前期2億3千4百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億8千万円(前期純損失7千8百万円)となりました。(注)当連結会計年度に含まれる小笠原海運株式会社の売上高は26億7千6百万円、営業利益は1億7千万円です。また、個別業績につきましては、売上高は104億1千6百万円(前期87億2千6百万円)、営業利益は2億5百万円(前期営業損失8千1百万円)、経常利益は6千万円(前期経常損失1億4百万円)、当期純利益は8千3百万円(前期純損失1億6千2百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
《海運関連事業》主力の海運関連事業の旅客部門は、年初から新型コロナウイルス感染症に係るまん延防止等重点措置が続く中、前年はオンライン開催であった大島の最大イベント「椿まつり」が本年は通常開催となったことから、個人向け商品の営業を強化しました。行動制限解除後は、高速ジェット船就航20周年を記念した東京湾周遊クルーズ、ジェット船の臨時運航(御前崎、焼津、田子の浦など)、他社との御船印船ツアーの共同開催、都民割を活用した企画商品販売等により集客に努めました。最多客期となる夏季は、3年ぶりに運航再開した夏の風物詩である東京湾納涼船に多くのお客様がゆかた姿で乗船し夜景を楽しんでいただくなど好評を博しました。この結果、乗船客数は63万3千人(前期38万9千人)と大幅に増加し、船舶燃料費や船舶修繕費の増加がありましたが、国及び東京都からの支援により生活航路の維持を図ることができました。一方、貨物部門は、お客様の利便性と集荷効率の引き上げを引き続き図り、集荷に遺漏がないように取り組んだ結果、生活関連品目、工事関連品目共に堅調に推移し、貨物取扱量は全島で30万6千トン(前期30万トン)となりました。尚、当期については、小笠原海運株式会社の乗船客数4万9千人、貨物取扱量2万3千トンを取り込んでおります。
小笠原航路については、事前のPCR検査を継続実施するなど感染防止を行いながら、安全運航と集客に努めました。また、5月のドック入渠時には昨年に続き、さるびあ丸が代替運航しました。この結果、当事業の売上高は、122億4千万円(前期95億2千万円)、費用面で船舶燃料費、船舶修繕費等の増加がありましたが、営業利益は8億5千万円(前期6億1千9百万円)となりました。
《商事料飲事業》商事部門は、関係先と連携を密にし工事情報を積極的に収集するなど販売強化に取り組み、島しょ向けセメント、船舶燃料等の販売が増加しました。また料飲部門も、東京湾納涼船の運航再開により売上が増加しました。なお、商事部門においては、島しょ向け生活通販「ショップ東海」と島産品の全国向け販売「島ぽち」のECサイトを積極的にPRし、島民の皆さまの利便性向上と物流の活性化に取り組んでおります。この結果、当事業の売上高は13億8千8百万円(前期10億7千7百万円)、費用面で仕入価格の上昇や人件費の増加等があり、営業利益は8千7百万円(前期8千9百万円)となりました。
《ホテル事業》大島温泉ホテル事業は、新型コロナウイルス感染症防止対策を行いながら、大島の豊富な海の幸の料理・高品質の源泉掛け流し温泉・露天風呂からの三原山の眺望など、「島の魅力」を前面に押し出した営業活動を行いました。大島の最大イベント「椿まつり」が通常開催され、個人向けに造成したワクチン接種割引などの宿泊プランを中心に宿泊客は増加し、また行動制限解除後は、都民割を活用した宿泊プランなどで集客に努めました。この結果、当事業の売上高は2億6千2百万円(前期1億7千万円)、営業損失は8百万円(前期営業損失5千4百万円)となりました。
《旅客自動車運送事業》当事業の中心となる大島島内におけるバス部門は、お客様に安心してご乗車いただくため、「安全運行」と「良質のサービスの提供」を基本理念とした安全方針に基づき、全社一丸となって安全運行に取り組んでおり、貸切バスにおいては、日本バス協会の安全性評価制度における最高評価となる三ッ星を更新するなど長期優良事業者として認定を受けております。大島の最大イベント「椿まつり」が通常開催されたことから乗客数は増加し、また行動制限解除後は、観光バスプランの需要や夏休みシーズン・秋の行楽シーズンの旅行客もあり、乗客数は増加しました。この結果、当事業の売上高は2億5千7百万円(前期2億2千3百万円)、営業損失は4百万円(前期営業損失2千7百万円)となりました。なお、定期路線バスにおいては大島町から継続的な支援を受けております。
(b) 財政状態当連結会計年度末の総資産は237億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億5千7百万円減少しました。その主な要因は、現金及び預金が9億8千6百万円増加した一方で、営業未収金等が2億1千2百万円減少、また、有形固定資産が船舶の減価償却などにより9億5千6百万円減少したことによるものです。負債は173億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億7千6百万円減少しました。その主な要因は、借入金が6億9千1百万円減少した一方で、船舶燃料油等の営業未払金が1億1千6百万円、特別修繕引当金が1億3千万円増加したことによるものです。純資産は63億3千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億1千9百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金が1億7千8百万円増加、また非支配株主持分が5千7百万円増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、21億3千5百万円のキャッシュ・イン(前期15億1千5百万円のキャッシュ・イン)となりました。その主な要因は、資金増加項目である税金等調整前当期純利益2億9千2百万円、減価償却費13億3千4百万円、売上債権の減少額2億1千2百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、4億5千5百万円のキャッシュ・アウト(前期15億3千4百万円のキャッシュ・イン)となりました。その主な要因は、有形固定資産の取得による支出4億7千8百万円、無形固定資産の取得による支出1億4千9百万円が、補助金の受入による収入1億4千1百万円を上回ったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、6億9千2百万円のキャッシュ・アウト(前期12億7千1百万円のキャッシュ・アウト)となりました。その主な要因は、借入金の減少額6億9千1百万円です。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ9億8千6百万円増加し、45億2千3百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況当社グループは、海運関連事業を主な内容としており、商事料飲事業、ホテル事業、旅客自動車運送事業を展開しております。従って、生産、受注を行っておらず、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額で示すことはしておりません。
(a) セグメントの売上高
セグメントの名称
金額(千円)
前年同期比(%)
海運関連事業
12,240,019
28.6
商事料飲事業
1,388,072
28.8
ホテル事業
262,902
54.4
旅客自動車運送事業
257,415
15.1
計
14,148,409
28.7
調整額
△218,442
-
合計
13,929,966
28.9
(注) 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(b) 当社(東海汽船㈱)の営業実績(参考)提出会社の部門別営業実績は、下記のとおりであります。
部門別
前事業年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
当事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
年間(千円)
構成比(%)
年間(千円)
構成比(%)
海運業収益
7,710,214
88.4
9,180,723
88.1
商事収益
1,016,329
11.6
1,235,698
11.9
合計
8,726,543
100.0
10,416,422
100.0
(注) 1 海運業収益は運賃収益(旅客・貨物)、その他海運業収益の合計であります。2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(c) 当社(東海汽船㈱)の主要航路及び就航状況(参考)提出会社の航路および就航船舶・就航状況は、下記のとおりであります。
航路
区間
就航船舶(2022年1~12月)
就航状況(2022年1~12月)
東京~大島・神津島
東京-(横浜・久里浜)-大島-利島-新島-式根島-神津島
貨客船
さるびあ丸
通年運航
高速船
ジェットフォイル
通年運航
東京~八丈島
※東京-三宅島-御蔵島-八丈島
貨客船
橘丸さるびあ丸
通年運航
熱海~大島
熱海-(伊東)-大島
高速船
ジェットフォイル
通年運航季節運航
稲取~大島
稲取-大島
高速船
ジェットフォイル
季節運航
館山~大島
館山-大島
高速船
ジェットフォイル
季節運航
熱海~神津島
熱海-大島-神津島
高速船
ジェットフォイル
季節運航
東京湾内周遊
東京-羽田沖周遊(夏期納涼船)
貨客船
さるびあ丸
季節運航
臨時・不定期
東京-伊豆諸島-国内沿岸各地
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(注)就航船舶「ジェットフォイル」はセブンアイランド「愛」「友」「大漁」「結」の4隻であります。※ ゴールデンウィーク・夏期の一部期間は、復路のみ大島寄港
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の分析「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③ 資金の財源及び資金の流動性当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金および設備投資であり、資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、巨額の資金需要に対応する場合等は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保及び財務の健全性・安定性を維持するため、銀行等から借入等を行う方針です。資金調達を行う際は、期間や国内外の市場金利動向等、また自己資本比率、DEレシオ(負債資本倍率)やROEといった財務指標への影響度等を総合的に勘案しながら、最適な調達を実施します。