【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ13,410百万円増加し、129,208百万円となりました。当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,182百万円増加し、44,560百万円となりました。当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ10,228百万円増加し、84,648百万円となりました。
② 経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、インフレの加速に伴い金融政策が引き締めに方向転換する等の懸念要素がある中で、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され正常化に向かい、全体的には緩やかな持ち直しの傾向が見られました。我が国経済においても、原材料価格の上昇、生活必需品の高騰等もあり、一部に弱さは見られたものの、緩やかな持ち直しが見られました。しかしながら、世界的な金融引き締めが続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク等もあり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。このような状況の中で、当社グループの貴金属関連事業においては、貴金属リサイクルへの多様化するニーズに対し、資源リサイクルの総合力及び高機能電子材料の開発等により差別化し、貴金属原料の確保、化成品等の製商品販売及び産業廃棄物処理受託の拡大に取り組みました。また、食品関連事業においては、世界的な食資源の供給不安や仕入価格の上昇等にも調達力の強みを活かして柔軟に対処し、顧客ニーズに応えた商品の開拓と安全安心な商品の安定提供により、販売量の拡大に取り組みました。これらの結果、当連結会計年度の売上高は351,028百万円(前連結会計年度比28.9%増)、営業利益は13,818百万円(前連結会計年度比9.0%増)となりました。持分法利益等の営業外損益を加えた経常利益は13,843百万円(前連結会計年度比0.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,696百万円(前連結会計年度比1.4%増)となりました。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。
(貴金属関連事業)当事業の主力顧客であるエレクトロニクス業界の半導体・電子デバイス分野は、個人向けの電子機器需要は低迷したものの、自動車や産業機器用途の需要に支えられ、第2四半期までの生産活動は堅調に推移しましたが、第3四半期以降は、需要の減少に伴い生産活動の低下が続いております。このような状況の中で、当事業においては、白金族の一部で貴金属相場下落の影響を受けたものの、貴金属リサイクルの取扱量及び産業廃棄物の処理受託は増加し、金製品、銀製品及び白金族製品等の販売量も増加した結果、売上高及び営業利益は前連結会計年度に比べ増加しました。これらの結果、当該事業の売上高は246,578百万円(前連結会計年度比27.8%増)、営業利益は12,043百万円(前連結会計年度比16.4%増)となりました。
(食品関連事業)当事業の主力顧客である食品製造業界は、新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要は落ち着きを見せる一方、経済再開の動きにより業務用食品の需要は増加傾向となりましたが、原材料価格の高騰の影響により、総じて厳しい状況が続いております。このような状況の中で、当事業においては、水産品、畜産品、農産品の販売量は増加し、販売価格も総じて上昇したことから、売上高は前連結会計年度に比べ増加しましたが、運送費及び保管料の増加や仕入価格上昇の影響により営業利益は前連結会計年度に比べ減少しました。これらの結果、当該事業の売上高は104,530百万円(前連結会計年度比31.6%増)、営業利益は1,774百万円(前連結会計年度比23.9%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は11,761百万円となり、前連結会計年度末に比べ382百万円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動により増加した資金は10,646百万円となりました。これは主として税金等調整前当期純利益、減価償却費等による資金の増加と、棚卸資産の増加及び法人税等の支払いによる資金の減少の差引によるものです。なお、前連結会計年度の7,032百万円の資金の増加に比べ3,613百万円資金が増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動に使用した資金は12,194百万円となりました。これは主として土地・建物等の有形固定資産及びソフトウェア等の無形固定資産取得の支出によるものです。なお、前連結会計年度の2,521百万円の支出に比べ9,673百万円支出が増加しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動により増加した資金は1,382百万円となりました。これは主として借入金の増加による資金の増加と、配当金の支払による資金の減少との差し引きによるものです。なお、前連結会計年度の2,261百万円の資金の減少に比べ3,644百万円資金が増加しました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
回次
第70期
第71期
第72期
第73期
第74期
決算年月
2019年3月
2020年3月
2021年3月
2022年3月
2023年3月
自己資本比率 (注)1
72.8
63.9
62.8
64.2
65.4
時価ベースの自己資本比率
(注)2
45.3
35.3
50.9
55.8
45.8
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (注)3
1.2
―
93.2
2.3
1.8
インタレスト・カバレッジ・レシオ (注)4
111.2
―
2.6
106.4
55.6
(注) 1 自己資本比率:自己資本/総資産2 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産3 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー4 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。※ 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに算出しております。※ キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。※ 第71期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
④ 生産、受注及び販売の実績(生産実績)当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
貴金属関連事業
製品
233,131
128.0
処理
5,057
104.7
(注) 1 当社グループにおける生産活動は、貴金属関連事業においてのみ行われております。2 金額は、販売価格によっております。
(仕入実績)当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前年同期比(%)
貴金属関連事業
42,170
72.3
食品関連事業
91,412
132.4
合計
133,582
104.9
(注) 金額は、仕入価格によっております。
(受注実績)見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(販売実績)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
貴金属関連事業
246,578
127.8
食品関連事業
104,449
131.6
合計
351,028
128.9
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。(注)2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
三井物産株式会社
―
―
45,078
12.8
(注)前連結会計年度の三井物産株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針につきましては、「第一部[企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] [注記事項] (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりですが、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に退職給付会計、賞与引当金、税効果会計、貸倒引当金、減損会計、棚卸資産の評価であり、継続して評価を行っております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第一部 [企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] [注記事項] (重要な会計上の見積り)」に記載しております。なお、見積り及び判断・評価につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容イ 財政状態の分析a 資産の部流動資産は、棚卸資産が3,812百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ3,254百万円増加しました。固定資産は、土地・建物等の増加により有形固定資産が8,427百万円増加したことに加え、投資その他の資産が1,159百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ10,156百万円増加しました。これらの結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ13,410百万円増加し、129,208百万円となりました。
b 負債の部流動負債は、短期借入金が7,378百万円減少し、1年内返済長期借入金が1,514百万円増加したこと等の差引により、前連結会計年度末に比べ5,699百万円減少しました。固定負債は、長期借入金が8,784百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ8,882百万円増加しました。これらの結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,182百万円増加し、44,560百万円となりました。
c 純資産の部純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益が9,696百万円と、配当金の支払い1,278百万円、自己株式の消却2,418百万円等の差引により、利益剰余金は5,999百万円増加しました。これらの結果、前連結会計年度末に比べ10,228百万円増加し、84,648百万円となりました。なお、2022年8月10日開催の取締役会決議に基づき、2022年8月22日付で自己株式の消却を行った結果、利益剰余金と自己株式がそれぞれ2,418百万円減少しております。
ロ 経営成績の分析a 売上高当連結会計年度における売上高は351,028百万円(前連結会計年度比28.9%増)となり、前連結会計年度に比べ78,735百万円増加しました。セグメント別の売上高につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりですが、主要な分析は以下のとおりであります。
(貴金属関連事業)金製品の売上高は、前連結会計年度に比べ42,569百万円増加し、143,994百万円(前連結会計年度比42.0%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ16.6%上昇しました。銀製品の売上高は、前連結会計年度に比べ918百万円増加し、16,614百万円(前連結会計年度比5.9%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ4.4%上昇しました。白金族製品の売上高は、前連結会計年度に比べ10,171百万円増加し、63,438百万円(前連結会計年度比19.1%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ17.9%上昇しました。
(食品関連事業) 水産品の売上高は、前連結会計年度に比べ9,336百万円増加し、42,253百万円(前連結会計年度比28.4%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ22.8%上昇しました。 畜産品の売上高は、前連結会計年度に比べ9,769百万円増加し、41,548百万円(前連結会計年度比30.7%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ25.1%上昇しました。 農産品の売上高は、前連結会計年度に比べ4,055百万円増加し、13,185百万円(前連結会計年度比44.4%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ18.6%上昇しました。b 売上総利益当連結会計年度における売上総利益は33,299百万円(前連結会計年度比11.2%増)となり、前連結会計年度に比べ3,346百万円増加しました。売上総利益率は9.5%となり前連結会計年度比1.5ポイント低下しましたが、この主な要因は、仕入価格の上昇等による売上総利益率の低下によるものです。c 営業利益当連結会計年度における営業利益は13,818百万円(前連結会計年度比9.0%増)となり、前連結会計年度に比べ1,137百万円増加しました。営業利益率は3.9%となり前連結会計年度比0.8ポイント低下しましたが、この主な要因は、売上総利益率の低下に加え、運送費及び保管料等をはじめとする販売費及び一般管理費が2,209百万円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析イ キャッシュ・フローの分析キャッシュ・フローの分析につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
ロ 資本の財源及び資金の流動性についての分析当社グループは、貴金属関連事業におけるリサイクル原材料及び食品関連事業における食品加工原材料の仕入れ等の事業運営上必要となる資金の確保に加え、急激な環境変化にも備え流動性を維持する考えの下で、運転資金については営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入を、設備投資については営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当社は資金調達の機動性を高めるため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとする計4行の金融機関との間に3,000百万円の借入枠(コミットメントライン)を設定しております。当連結会計年度末における有利子負債の残高は、前連結会計年度末に比べ2,848百万円増加し19,237百万円となりました。売上高の増加等に伴う資金の需要増大に対し流動性の確保を図ると共に、資金調達コストの低減にも努め、金利変動リスクに対してもヘッジ手段として金利スワップ等を活用しております。「第一部[企業情報]第3[設備の状況] 3[設備の新設、除却等の計画] (1)重要な設備の新設等」に記載の設備投資につきまして、必要資金は営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入により賄う予定であります。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等「第一部[企業情報]第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、中期経営計画(2022-2025年度)では、計画の最終年度となる2025年度(2026年3月期)の業績目標を連結売上高3,000億円、連結営業利益130億円、連結営業利益率4.3%、連結自己資本利益率(ROE)9.0%、総資産経常利益率10.0%としております。なお、中期経営計画(2022年-2025年度)の初年度である当連結会計年度において、連結営業利益率を除き目標を達成しておりますが、世界的な金融不安やインフレ圧力による経済への影響が懸念される等、先行き不透明な状況が続いていることから、経営上の指標とする業績目標は変更しておりません。