【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社グループは単一セグメントのため、セグメント別の業績については記載しておりません。
(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況a 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、ワクチン接種が進んでいること、新型コロナウイルスの致死率低下等による感染症対策の緩和により個人消費にとって明るい兆しは見えてきているものの、いまだ、先行きは不透明な状況にあります。また、米中間の対立、米露間の対立等、不安定な国際情勢の影響等及び米国長期金利の値上げ観測、インフレ率の上昇による物価上昇等、世界経済のさらなる悪化が懸念される中、景気についてもいまだ不透明な状況が続いております。 このような経済情勢の中、当社サービスの基盤となる、インターネット及びブロードバンド関連の環境につきましては、リモートワーク率の上昇、巣ごもり需要等を取り込み着実に増加しており、2022年9月末時点で固定系ブロードバンド契約数が約4,197万(前期比0.7%増)とインターネットを利用する機会が広く普及しております。また、スマートフォンやタブレット端末の利用者の増加により移動系超高速ブロードバンド契約数(3.9-第4世代)は約1億3,273万(前年同期比1.7%減)と減少する一方、第5世代携帯電話契約数が5,736万(前期比11.4%増)を超えるなど、インターネットを利用する環境は引き続き拡大基調にあります(出所:総務省電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表)。一方、2022年1月から12月の雑誌全体の販売状況は前年同期比約9.1%減の4,017億円となっており、また、書店からの返品率も40.6%(前年同期比0.1ポイント増)となり、返品率も悪化しております(出所:公益社団法人全国出版協会 出版月報2023年1月号)。 このような環境の中、当社グループは、当連結会計年度においても、雑誌の定期購読者の囲い込み、新規読者の獲得のため、第19期事業年度に引き続き、各マーケティングチャネルの充実、SEO対策やリテンション対策による雑誌購読者の定期購読者化、新規受注高の増加及び継続率の上昇による継続受注高増加のための各種施策を実施して参りました。さらに、出版社の配送支援業務及びWEB経由以外で新規の雑誌定期購読者数を増やすために、出版社が管理する既存の定期購読顧客の管理を当社に移管し、当社グループが購読顧客の獲得、管理、配送までを一括で受ける「Fujisan VCS(Fujisan Value Chain Support)」の展開及び法人顧客開拓についても、引き続き注力して参りました。 この結果、雑誌出版市場が大きく前年比で縮小する中、当社グループは当連結会計年度末において総登録ユーザー数(一般購読者及び法人購読者の合計数)は3,938,685名(前連結会計年度末比188,993名増加)、そのうち課金期間が継続している継続課金ユーザー数(「Fujisan.co.jp」に登録しているユーザーのうち、12月末時点で年間定期購読及び月額払い定期購読の申込みを継続しているユーザー並びに当月内に雑誌を購読したユーザーの合計数)は600,866名となり、当社グループ会員数は雑誌市場の減少にかかわらず着実に伸びているものの、ユーザーの増加率及び紙雑誌の定期購読サービス領域の新規顧客獲得については、1件当たりの獲得コストの効率化を進めていることもあり鈍化しております。また、アクティブユーザー数については、休刊誌の増加に伴い減少幅が大きくなっております。 デジタル雑誌関連の事業(「第2の矢」事業)については、2018年第2四半期連結会計期間より、新たに株式会社電通と合弁で設立した株式会社magaportの事業開始に伴い、従来の「Fujisan.co.jp」上でのデジタル雑誌販売のみならず、他電子書店向けのデジタル雑誌取次分野及び派生するサービス領域事業に注力しております。本事業は主に雑誌読み放題サービスにおいて2021年度に引き続き、着実に成長を続けており、2022年12月末においては当社グループの売上の33.9%を占めるまでになり、第2の柱となっております。また、既存の雑誌読み放題サービスへの取次だけでなく、記事単位の提供サービスのトライアル、株式会社図書館流通センターと共同で電子図書館事業の検証事業への参加を行う等、デジタル雑誌資源を用いた新たなサービス領域の開拓も行っております。 雑誌購読者情報を用いた事業(「第3の矢」事業)については、株式会社イードと立ち上げた株式会社イデアが手掛ける出版社ECサイトの運営支援事業が主軸となっておりますが、当期については業務委託先の変更、クレジットカードの不正利用によるチャージバックの影響等により営業赤字となりました。 コスト面については、第3四半期連結会計期間に引き続き、主にマーケティングの効率化により発生するリスティングに関するコストを抑えておりますが、将来への投資である人件費及び新たなマーケティング施策の試験的な運用、SEO対策のためのWEBサイトのコンテンツ追加等により販売管理費は増加しております。上記の施策の結果、当連結会計年度における取扱高(連結取引消去前における当社グループから出版社への定期購読の注文取次高、当社の仕入販売高、当社グループが出版社から配送業務及び広告PR業務等を受けた請負業務の取扱高の合計)は11,876,724千円(前年同期比0.2%増)となりました。売上高は5,968,157千円(同0.6%増)となりました。利益面につきましては、営業利益443,419千円(同15.6%減)、経常利益442,546千円(同15.5%減)、当期純利益307,398千円(同17.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益288,109千円(同16.9%減)となりました。
b 財政状態の状況 (資産) 当連結会計年度末の総資産は5,652,411千円(前連結会計年度末比194,333千円増)となりました。総資産の内訳は、流動資産が4,878,502千円(同155,362千円増)、固定資産が773,909千円(同38,971千円増)であります。主な変動要因は、前連結会計年度末に比べ現金及び預金が133,101千円増加したこと、売掛金が10,680千円増加したこと、未収入金が13,548千円増加したこと、ソフトウエアが38,361千円増加したこと等によるものであります。
(負債) 当連結会計年度末における負債合計は3,496,849千円(前連結会計年度末比50,766千円減)となりました。主な変動要因は、前連結会計年度末に比べ買掛金が17,240千円減少したこと、未払金が42,727千円増加したこと、未払法人税等が52,389千円減少したこと等によるものであります。
(純資産) 当連結会計年度末における純資産合計は2,155,562千円(前連結会計年度末比245,100千円増)となりました。主な変動要因は、当期純利益等の計上に伴い利益剰余金が278,217千円増加したこと、自己株式の取得等に伴い自己株式が52,318千円増加したこと等によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ、133,101千円増加し、3,025,659千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動の結果得た資金は、435,215千円(前年同期532,922千円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益441,855千円、減価償却費202,911千円、未払金の増加額39,855千円等による資金の増加と、仕入債務の減少額17,240千円、法人税等の支払額188,077千円等による資金の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、239,816千円(前年同期は478,543千円の支出)となりました。これは、ソフトウエア開発に伴う無形固定資産の取得による支出239,716千円等による資金の減少によるものであります。資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローを財源としております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、62,298千円(前年同期は7,850千円の支出)となりました。これは、自己株式の取得による支出65,453千円、ストック・オプションの行使に伴う自己株式の処分による収入3,155千円によるものであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性当社グループが事業を展開している雑誌定期購読市場は成長率が鈍化傾向にあるものの、WEB雑誌市場、WEBコンテンツ市場は急速な成長を続けております。このような環境の中、既存事業の成長を継続させるとともに、アライアンス、M&Aや戦略投資を効果的に活用す ることで非連続的な成長の実現を目指しております。売上の成長や事業規模の拡大により市場シェアを高めていくこ とが中長期的な企業価値向上に資すると考えております。
当社グループではこれらの資金需要については、原則的には当社グループの既存主力事業である雑誌定期購読支援 事業において生み出されている営業キャッシュ・フローで賄っております。2022年12月期における当社グループの営 業キャッシュ・フローは435,215千円となり、2022年12月期における投資活動によるキャッシュ・フロー239,816千円を賄えております。
④ 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b 仕入実績当連結会計年度における仕入実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(千円)
前年同期比(%)
雑誌販売支援事業
2,731,049
+10.5
合計
2,731,049
+10.5
(注) 金額は、仕入価格によっております。
c 受注実績当社グループは受注活動を行っていないため、該当事項はありません。
d 販売実績当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
雑誌販売支援事業
5,968,157
+0.6
合計
5,968,157
+0.6
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
業務報酬(千円)
割合(%)
業務報酬(千円)
割合(%)
楽天ブックスネットワーク株式会社
883,774
14.9
900,637
15.1
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績の分析(取扱高)当連結会計年度における取扱高(連結取引消去前における当社グループから出版社への定期購読の注文取次高、当社の仕入販売高、当社グループが出版社から配送業務及び広告PR業務等を受けた請負業務の取扱高の合計)は11,876,724千円(前年同期比0.2%増)となりました。取扱高の主な伸びは子会社である株式会社magaportが手掛ける雑誌読み放題向けの取次及び配送請負業務に関連する受注によるものであります。
(総登録会員数)当社グループは当連結会計年度末において総登録ユーザー数(一般購読者及び法人購読者の合計数)は3,938,685名(前連結会計年度末から188,993名増加)、そのうち課金期間が継続している継続課金ユーザー数(「Fujisan.co.jp」に登録しているユーザーのうち、12月末時点で年間定期購読及び月額払い定期購読の申込みを継続しているユーザー並びに当月内に雑誌を購読したユーザーの合計数)は600,866名となり、継続課金ユーザー数は雑誌の休刊数の増加により減少したものの、当社グループ会員数は雑誌市場の減少にかかわらず着実に伸びを続けております。
(営業利益率)当社グループでは、安定成長型のサブスクリプションビジネスである雑誌の定期購読を主軸に事業を展開しております。当社では売上と売上を獲得するために費やしたコストを管理するために営業利益率を主要なKPIとして管理しております。当連結会計年度における営業利益率は7.4%(前年同期は8.9%)となりました。
(売上高)
当連結会計年度においては、子会社である株式会社magaportの雑誌読み放題関連の売上の増加及び雑誌配送請負サービスにおける請負単価の値上げ、受注増の影響により、売上高は5,968,157千円(前年同期比0.6%増)となりました。
(売上総利益)当連結会計年度においては、売上総利益は1,851,979千円(前年同期比8.2%減)となりました。また、売上総利益率は31.0%(前年同期比3.0ポイント減)と悪化しております。この原因は雑誌定期購読サービスに比べて利益率が低い配送請負サービス、デジタル雑誌読み放題サービスを中心に、売上高が拡大したためであります。また、収益認識会計基準等の適用により、従来は販売費及び一般管理費に計上していた販売手数料の一部を売上高より控除しております。この影響により、売上総利益が105,845千円減少しております。
(営業利益) 当連結会計年度においては、営業利益は443,419千円(前年同期比15.6%減)となりました。雑誌の休刊等に起因する売上高の減少により、体制強化に伴う固定費の増加を賄いきれなかったことによるものであります。
(経常利益)当連結会計年度において、補助金収入の発生等により、営業外収益は2,879千円(前年同期は1,532千円)となりました。また、支払利息等が発生したこと等により、営業外費用が3,752千円(前年同期は3,142千円)となりました。この結果、当連結会計年度における経常利益は442,546千円(前年同期比15.5%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度において、法人税、住民税及び事業税138,054千円、法人税等調整額△3,598千円を計上した結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は288,109千円(前年同期比16.9%減)となりました。
③ 財政状態の分析財政状態の状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
④ キャッシュ・フローの状況の分析キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 ⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 ⑥ 経営者の問題意識と今後の対応について当社グループは、既存事業の雑誌の定期購読サービスについては、「雑誌のFujisan」のブランド構築を実現し、定期購読市場の拡大、定期購読市場内でのシェアの拡大を実現するため、出版社に対する定期購読サービス推進のためのサポートの促進、購読者獲得ノウハウの確立、定期購読ユーザーの継続率向上を図って参ります。新規事業である雑誌のWEB化、記事抽出の技術開発、出版社に対してWEB記事を活用する基盤であるCMSの提供等を進めて参ります。また、電子図書館等、デジタル雑誌の販売先の開拓にも注力して参ります。当社グループの会員データを用いたEC等のサービスにおいては、前事業年度に引き続き、収益基盤の確立に力を注ぐとともに、大口顧客の開拓に注力して参ります。上記施策の実行のためには、市場環境に即応できる組織体制の構築、技術力の強化、システム安定性の確保、情報管理体制の強化等により、組織としての体力を高めていくことが経営上の課題であると認識しております。これらの課題に対応するために当社の経営陣は、最大限入手可能な情報に基づき現在の事業環境を確認し、最善の経営方針を立案するよう努めて参ります。
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