【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、地政学的リスク影響等による輸入資源・原材料等の高騰、国内外におけるサプライチェーン寸断、中国の不動産投資減退等による景気減速、欧米の利上げに伴う景気後退リスク等の複合的な要因が相俟って、先行きが不透明な状況が継続した。 線材加工製品業界においては、普通線材製品のフェンス向けや土木向け等で需要減少が続いた。特殊線材製品では電力通信向けで前年度の特需が剥落するとともに、国内完成車生産の回復遅れ等により自動車向けの需要が低迷した。鋲螺線材製品については、中小物件が停滞する一方で、大型物件を中心に比較的需要が堅調に推移した。また、コスト面では、主副原料及びエネルギー等の価格が大幅に上昇し、これらの調達コスト増を製品価格に適切に転嫁することが収益を確保する上で不可欠となった。このような状況の中、当社グループは、主副原料及びエネルギー等のコスト上昇を踏まえた販価への転嫁、鋲螺線材製品の販売数量拡大、変動費・固定費両面でのコスト低減対策等を積極的に推進した。しかしながら、普通線材製品及び特殊線材製品の販売数量の大幅な減少等により、財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a.財政状態当連結会計年度末の財政状態については、総資産は70,633百万円と前連結会計年度末に比べ1,408百万円の増加、負債合計は19,014百万円と前連結会計年度末に比べ551百万円の減少、純資産合計は51,619百万円と前連結会計年度末に比べ1,960百万円の増加となった。
b.経営成績当連結会計年度の経営成績については、売上高は34,075百万円と前期に比べ3,354百万円(10.9%)の増収、営業利益は1,822百万円と前期に比べ190百万円(△9.5%)の減益、経常利益は2,289百万円と前期に比べ331百万円(△12.6%)の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は1,332百万円と前期に比べ382百万円(△22.3%)の減益となった。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。 また、セグメント利益は、営業利益ベースの数値である。
普通線材製品普通線材を素材とした各種めっき鉄線、また、めっき鉄線を素線とした加工製品からなり、公共土木向けのかご、落石防護網及び民間向けを含めた各種フェンス等に使用されている。 売上高は、フェンス向けや土木向け等で販売数量が減少した一方で、主副原料及びエネルギー等のコスト上昇を踏まえた販価改善により、9,381百万円と前期に比べ550百万円(6.2%)の増収となった。セグメント利益は、上記コスト上昇、販売数量減少及び在庫評価差等の減益要因が、販価改善及びコスト低減等の増益要因を上回ったことにより、251百万円と前期に比べ610百万円(△70.9%)の減益となった。
特殊線材製品特殊線材を素材とした硬鋼線、各種めっき鋼線、鋼平線、鋼より線、ワイヤロープ等からなり、自動車向け、電力通信向け及び公共土木向け等、多岐に渡って使用されている。 売上高は、電力通信向け等で販売数量が減少した一方で、主副原料及びエネルギー等のコスト上昇を踏まえた販価改善により、17,132百万円と前期に比べ1,851百万円(12.1%)の増収となった。セグメント利益は、販価改善及びコスト低減等の増益要因が、上記コスト上昇及び販売数量減少等の減益要因を上回ったことにより、517百万円と前期に比べ313百万円(153.1%)の増益となった。
鋲螺線材製品鋲螺線材を素材としたトルシア形高力ボルト、六角高力ボルト及びGNボルト等からなり、主として建築向けに使用されている。 売上高は、販売数量の拡大並びに主副原料及びエネルギー等のコスト上昇を踏まえた販価改善により、6,833百万円と前期に比べ1,013百万円(17.4%)の増収となった。セグメント利益は、販売数量の拡大、販価改善及びコスト低減等の増益要因が、上記コスト上昇等の減益要因を上回ったことにより、952百万円と前期に比べ124百万円(15.0%)の増益となった。
不動産賃貸主に賃貸用不動産を所有・経営している。 売上高は、165百万円と前期とほぼ同額となり、セグメント利益は105百万円と前期に比べ2百万円(2.9%)の増益となった。 その他めっき受託加工及び副産物の売上高は631百万円と前期に比べ9百万円(1.5%)の増収となった。セグメント損失は3百万円と前期に比べ19百万円(前期は16百万円の利益)の減益となった。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、8,788百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,306百万円(△20.8%)の減少となった。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりである。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果使用した資金は、344百万円(前期に営業活動の結果得られた資金は、2,080百万円)となった。これは主に、仕入債務の増減額の減少への転換、売上債権の増加額の増加、法人税等の支払額の増加、税金等調整前当期純利益の減少が棚卸資産の増加額の減少、未払消費税等の増減額の増加への転換、その他流動資産の増減額の減少への転換を上回ったことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は、1,370百万円となり、前期に比べ560百万円(69.1%)の増加となった。これは主に、投資有価証券の取得による支出の増加、有形固定資産の取得による支出の増加、有価証券の償還による収入の減少が投資有価証券の償還による収入の増加を上回ったことによるものである。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は、582百万円となり、前期に比べ354百万円(155.6%)の増加となった。これは主に、長期借入れによる収入の減少、配当金の支払額の増加が長期借入金返済による支出の減少、短期借入金の純増減額の増加への転換を上回ったことによるものである。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
普通線材製品
7,625,206
7.1
特殊線材製品
14,338,925
11.4
鋲螺線材製品
4,684,460
23.4
その他
263,761
17.2
合計
26,912,353
12.1
(注)金額は、製造原価によっている。
b.受注実績 当社グループは原則として需要状況を勘案した見込生産を行っているため、該当事項なし。
c.販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
普通線材製品
9,381,069
6.2
特殊線材製品
17,132,391
12.1
鋲螺線材製品
6,833,659
17.4
不動産賃貸
165,588
0.0
その他
631,835
1.5
調整額
△69,351
0.0
合計
34,075,193
10.9
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
株式会社メタルワン 鉄鋼製品販売
3,449,488
11.2
3,504,148
10.3
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析当社グループは、主副原料及びエネルギー等のコスト上昇を踏まえた販価への転嫁、鋲螺線材製品の販売数量拡大、変動費・固定費両面でのコスト低減対策等を積極的に推進した。その結果、当連結会計年度における売上高は34,075百万円と前期に比べ3,354百万円(10.9%)の増収となった。 営業利益は、普通線材製品及び特殊線材製品の販売数量の大幅な減少等により、1,822百万円と前期に比べ190百万円(△9.5%)の減益となった。 経常利益は、2,289百万円と前期に比べ331百万円(△12.6%)の減益となった。 特別利益は、前期とほぼ同額の0百万円となった。 特別損失は、解体撤去費用の減少等により、前期に比べ4百万円減少の27百万円となった。 以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前期に比べ326百万円減少の2,261百万円となった。また、税効果による法人税等調整額を含む税金費用は、前期に比べ81百万円減少し、非支配株主に帰属する当期純利益は137百万円増加した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,332百万円と前期に比べ382百万円(△22.3%)の減益となった。 セグメント別の経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載している。
b.財政状態の分析 (資産の部)当連結会計年度末の総資産は70,633百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,408百万円の増加となった。流動資産は37,168百万円となり、前連結会計年度末に比べ325百万円の増加となった。これは主に売掛金、製品の増加が、有価証券の減少を上回ったことによるものである。固定資産は33,465百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,082百万円の増加となった。これは主に投資有価証券の増加によるものである。
(負債の部)当連結会計年度末の負債合計は19,014百万円となり、前連結会計年度末に比べ551百万円の減少となった。流動負債は12,385百万円となり、前連結会計年度末に比べ100百万円の増加となった。これは主に短期借入金の増加によるものである。固定負債は6,629百万円となり、前連結会計年度末に比べ652百万円の減少となった。これは主に長期借入金の減少によるものである。
(純資産の部)当連結会計年度末の純資産合計は51,619百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,960百万円の増加となった。この結果、自己資本比率は68.3%となった。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載している。 当社グループの資金需要の主なものは、原材料の購入、設備投資等によるものである。 当社グループは、事業の運営に必要な資金については、自己資金を活用するとともに、銀行等金融機関からの借入により調達している。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施している。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであるが、特に以下の事項は連結財務諸表作成における重要な見積り判断に大きな影響を及ぼすと考えている。
(固定資産の減損処理)当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上している。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しているが、将来計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性がある。
(繰延税金資産の回収可能性)当社グループは、繰延税金資産について、将来計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上している。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性がある。