【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営環境
当第2四半期連結累計期間の世界経済を概観しますと、世界的にインフレ圧力が緩和しつつあるものの、余剰貯蓄の取り崩し等に起因する堅調な個人消費や、OPECプラスやサウジアラビアの減産による原油価格の再上昇等を背景として、物価上昇率は引き続き高い水準で推移しました。また、金利水準も高止まり、利払い費の増加による債務不安や中国の不動産市況の悪化等、世界経済の減速が懸念されました。
米国経済は、労働市場の過熱に一服感が見られるも失業率は依然低水準に留まり、また個人消費も堅調なことから、インフレ率と金利水準の高止まりが継続しました。設備投資は比較的好調であるものの、銀行の貸出態度に厳格化の兆しが見られる等先行きに不安が残りました。欧州経済は、強い賃上げ圧力に起因するインフレの長期化や継続的な金融引き締め等により個人消費がやや低迷したものの、食品等の物価上昇率は緩やかになる等改善の兆しも見られました。中国経済は、中央銀行による今年2回目の利下げや政府による内需喚起策が実施されるも、不動産市場に端を発する景気悪化の懸念から消費マインドの悪化や住宅販売の低迷が継続する等、先行き不安が強まりました。新興国は根強いインフレと外需低迷が経済成長のペース鈍化につながりました。
こうした中、わが国経済は、インバウンドの回復と半導体不足等に起因する製造業の供給制約緩和による輸出の回復等から、緩やかながら経済が拡大しました。一方、消費者物価は引き続き高い水準で推移し、春闘による賃上げ後も実質賃金の低下が継続したほか、ALPS処理水の海洋放出による対中関係への影響等、本格的な景気回復に向けて懸念が残りました。
②セグメント別の事業活動
2023年4月1日より自動車本部をモビリティ本部に名称変更しております。
(Ⅰ)金属
製造プロセスにおけるDX推進による製造業界の課題解決への貢献を目的に、㈱LIGHTzの第三者割当増資を2023年6月に引き受けました。製造業のお客様の業務プロセスの変革の加速と、更なる付加価値の創出に取り組み、日本のモノづくりの伝統継承と未来に貢献していきます。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
インド市場における2輪車用EV駆動ユニットの製造・販売を目的に、武蔵精密工業㈱とDelta Electronics, Inc.と共に、2023年9月に合弁会社の設立に合意しました。同国市場をはじめ全世界での2輪EVの普及をリードするとともに、カーボンニュートラルの実現にも貢献していきます。
(Ⅲ)モビリティ
中南米地域での物流業界における社会課題の解決を目的に、ラストワンマイル物流デジタルプラットフォームサービス等を展開するMOOVA Inc.に約3百万米ドルを2023年6月に出資しました。ラストワンマイル配送業界のデジタル化の推進を通じて、物流業界全体の効率化とカーボンニュートラル推進に貢献していきます。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
㈱ユーラスエナジーホールディングス等が出資・設立した北海道北部風力送電㈱は、2023年4月、送電網に課題があった北海道道北地域にて、約78kmの送電線や国内最大規模のリチウムイオン蓄電池で構成される送変電設備一式の商業運転を開始しました。近隣エリアでは、ユーラス傘下会社を含む3社が2025年度までに国内最大級となる約540MW規模の風力発電所の建設も進めており、順次、送変電設備に接続していきます。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
リチウムイオン電池の需要増を見据えた将来の拡張に備えた土台づくりを目的に、Toyota Motor North America, Inc.と共に、現在建設中の車載用電池生産の会社であるToyota Battery Manufacturing, North Carolinaへ2.1億米ドルを追加投資する事を、2023年6月に発表しました。需要が拡大する電動車に必要なリチウムイオン電池を生産・供給し、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
(Ⅵ)食料・生活産業
海洋プラスチック汚染の主原因である廃漁網のリサイクル事業参入を目的に、2023年7月から千葉県外房エリアで漁業関係者等と協働し廃漁網のテスト回収を開始しました。国内で漁網は産業廃棄物として処理されることが一般的ですが、当社が出資する米国・Bureo Inc.の知見を活かしながら、廃漁網回収スキームを拡大させる事でナイロンtoナイロンの繊維リサイクル実現と、廃漁網100%再生ナイロン素材を安定供給できる調達体制構築を目指します。
(Ⅶ)アフリカ
安定かつ廉価な電力供給を喫緊の課題とするベナンにおいて、2023年8月に、同国で水エネルギー省傘下のベナン発電公社から、25MWの太陽光発電所建設工事を受注しました。西アフリカ地域における日本企業では初となる大型の再生可能エネルギー発電所建設案件であり、2025年の完工を予定しています。本事業を通じて、同国の電力事情の課題解消と経済の持続的な発展に寄与していきます。
③当四半期連結累計期間の経営成績
当社グループの当第2四半期連結累計期間の収益は、金属市況及び欧州電力価格下落の一方で、自動車販売の増加及び自動車生産関連の取り扱い増加等により、前年同四半期連結累計期間を2,275億円(4.6%)上回る5兆1,352億円となりました。
利益につきましては、営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費の増加の一方で、売上総利益の増加により、前年同四半期連結累計期間を252億円(12.1%)上回る2,331億円となりました。四半期利益(親会社の所有者に帰属)は、欧州電力価格下落による持分法投資損益の減少及び利息収支悪化の一方で、営業活動に係る利益の増加等により、前年同四半期連結累計期間を265億円(17.5%)上回る1,777億円となりました。
(Ⅰ)金属
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車生産関連の取り扱い増加の一方で、市況下落等により、前年同四半期連結累計期間を87億円(19.2%)下回る366億円となりました。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、日本、北米を中心とした自動車部品の取り扱い増加等により、前年同四半期連結累計期間を66億円(40.3%)上回る229億円となりました。
(Ⅲ)モビリティ
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州を中心とした海外自動車販売会社の取扱台数増加等により、前年同四半期連結累計期間を67億円(28.9%)上回る298億円となりました。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州電力価格の下落等により、前年同四半期連結累計期間を66億円(33.9%)下回る128億円となりました。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、エレクトロニクス事業、自動車材料事業における自動車生産関連の取り扱い増加等により、前年同四半期連結累計期間を36億円(14.1%)上回る289億円となりました。
(Ⅵ)食料・生活産業
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、南米食料事業における輸送費負担減少等により、前年同四半期連結累計期間を39億円(139.2%)上回る67億円となりました。
(Ⅶ)アフリカ
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、西アフリカ地域を中心とした自動車販売会社の取扱台数増加等により、前年同四半期連結累計期間を167億円(81.4%)上回る370億円となりました。
④財政状態
資産につきましては、その他の投資で1,514億円、営業債権及びその他の債権で1,214億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6,506億円増加の7兆276億円となりました。また、資本につきましては、四半期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金で1,415億円、在外営業活動体の換算差額で1,023億円、FVTOCIの金融資産で936億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ3,455億円増加の2兆4,140億円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、営業活動による増加、投資活動及び財務活動による減少等により7,864億円となり、前連結会計年度末より148億円の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、営業活動による資金の増加は2,032億円(前年同四半期連結累計期間比
1,245億円の収入増加)となりました。これは、税引前四半期利益等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、投資活動による資金の減少は1,751億円(前年同四半期連結累計期間比
1,130億円の支出増加)となりました。これは、子会社の取得及び有形固定資産の取得等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、財務活動による資金の減少は531億円(前年同四半期連結累計期間比
622億円の支出増加)となりました。これは、配当金の支払い等によるものです。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間において、特記すべき事項はありません。