【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営環境
当第1四半期連結累計期間の世界経済を概観しますと、コロナ禍からの経済活動再開による需要拡大や半導体供給の回復による生産制約の解消等に支えられ、緩やかな回復基調となりました。原油をはじめとするエネルギーの価格下落もあり、世界的なインフレにも一服感が生まれる一方で、金融引き締めの長期化による事業環境の悪化や金融市場の先行き不透明感は残りました。また中国やグローバルサウスとの関係を巡って国際社会におけるいくつもの重要な動きが見られました。
米国経済は、家計の余剰貯蓄の取り崩し等を背景として個人消費が堅調であるものの、政府の債務上限引上げに伴う国内政治の混乱から金融市場に動揺が見られた他、金利水準の高止まり等による住宅や商業用不動産の市況悪化が重石となりました。欧州経済は、インフレの長期化や継続的な金融引き締め等により企業部門は低迷したものの、エネルギー価格の下落等を背景に個人消費は堅調に推移し、足下でマイナス成長を回避しました。中国経済は、ゼロコロナ政策解除後に個人消費が経済を牽引するも、輸出や生産の面で回復ペースが鈍化した他、若年層の失業率の悪化や低調な不動産市況等に不安が残りました。新興国は急激な金利上昇や低調な外需を背景に経済成長のペースは鈍化しました。
こうした中、わが国経済は、春闘における30年ぶりの高水準となる賃上げの実現やインバウンド需要の回復、堅調な企業収益を反映して株価指標が33年ぶりの高値を更新する等、国内経済に持ち直しの兆しが見られました。一方、消費者物価の高止まりや金融緩和政策の先行きの不透明感が懸念材料となりました。
②セグメント別の事業活動
2023年4月1日より自動車本部をモビリティ本部に名称変更しております。
(Ⅰ)金属
電動車普及の加速に伴い、今後の更なる需要に対応する事を目的に、リチウムイオン電池部材の一つである集電体用アルミ箔を製造するSama Aluminium CO, Ltdの第三者割当増資を引き受ける事を、2022年12月に決定しました。2023年1月末には引き受けを完了し、電池用アルミ集電箔のグローバル供給体制確立に向けた協議を進めています。本事業を通じて、電動車の普及に欠かせない電池製造を支え、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
ラストワンマイル配送のプロセス効率化や省人化を目的に、ウィルポート㈱とパイオニア㈱と共に、最適配送計画サービスを2022年11月から提供開始し協業を推進しています。配送事業者の負担軽減やEコマースの発展に寄与するとともに、交通渋滞緩和や交通事故の削減等にも貢献していきます。
(Ⅲ)モビリティ
中古車のオンライン輸出販売での協業を目的に、㈱カーペイディーエムの株式を2023年2月に追加取得し協業を推進しています。今後、益々需要拡大が見込まれるアフリカを中心とした中古車市場において世界のお客様に安心安全なカーライフを提供し、安全で快適なモビリティ社会の実現に貢献していきます。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
再生可能エネルギー事業の更なる拡大を目的に、ソフトバンクグループ㈱が保有するSBエナジー㈱の85%の株式を取得し、2023年4月に子会社化するとともに、社名をテラスエナジー㈱に改めました。同社が有する再エネの最先端技術の活用により、新規事業の創出や再エネ分野のテクノロジーの進化を加速させることでカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
リチウムイオン電池の需要増を見据えた将来の拡張に備えた土台づくりを目的に、Toyota Motor North America, Inc.と共に、現在建設中の車載用電池生産の会社であるToyota Battery Manufacturing, North Carolinaへ2.1億米ドルを追加投資する事を、2023年6月に発表しました。需要が拡大する電動車に必要なリチウムイオン電池を生産・供給し、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
(Ⅵ)食料・生活産業
2050年までに、廃棄される全ての衣料品が、再び衣料品として生まれ変わる機会と未来を創ることを目的に、繊維・ファッション領域のサーキュラーエコノミーを推進するプロジェクト「PATCHWORKS™(パッチワークス)」を2023年4月から開始しました。まずは、ポリエステル、コットン、ナイロン等が使用されている利用済み衣料品を回収し再資源化する“繊維 to 繊維”リサイクルを確立させ、リサイクルしやすい繊維素材や製品の開発をパートナー企業と推進する等、サーキュラーエコノミーシステム構築の実現に取り組んでいきます。
(Ⅶ)アフリカ
2023年3月に、ナイジェリア電力省からラゴス州に電力供給するアパパロード変電所の増強プロジェクトを受注し、2025年9月に完工予定です。同国経済の中心地ラゴスにおいて、電力供給の安定化及び質の高い経済成長のための基盤づくりに寄与することが期待されています。今後もエネルギー・港湾・水といった基礎インフラの整備を通して、アフリカの未来の子供たちにより良い環境を届けていきます。
③当四半期連結累計期間の経営成績
当社グループの当第1四半期連結累計期間の収益は、金属市況及び欧州電力価格下落の一方で、自動車販売の増加及び自動車生産関連の取り扱い増加等により前年同四半期連結累計期間を1,651億円(7.0%)上回る2兆5,407億円となりました。
利益につきましては、営業活動に係る利益は販売費及び一般管理費の増加の一方で、売上総利益の増加により、前年同四半期連結累計期間を114億円(11.1%)上回る1,137億円となりました。四半期利益(親会社の所有者に帰属)は欧州電力価格下落による持分法投資損益の減少及び利息収支悪化の一方で、営業活動に係る利益の増加等により前年同四半期連結累計期間を179億円(23.9%)上回る927億円となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
(Ⅰ)金属
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車生産関連の取り扱い増加の一方で、市況下落等により、前年同四半期連結累計期間を24億円(11.0%)下回る192億円となりました。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、日本、北米を中心とした自動車部品の取り扱い増加等により、前年同四半期連結累計期間を37億円(46.5%)上回る117億円となりました。
(Ⅲ)モビリティ
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州を中心とした海外自動車販売会社の取扱台数増加等により、前年同四半期連結累計期間を18億円(14.9%)上回る141億円となりました。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州電力価格の下落等により、前年同四半期連結累計期間を21億円(20.8%)下回る79億円となりました。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、エレクトロニクス事業、自動車材料事業における自動車生産関連の取り扱い増加等により、前年同四半期連結累計期間を22億円(17.3%)上回る145億円となりました。
(Ⅵ)食料・生活産業
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、南米食料事業における輸送費負担減少等により、前年同四半期連結累計期間を34億円上回る36億円となりました。
(Ⅶ)アフリカ
四半期利益(親会社の所有者に帰属)については、西アフリカ地域を中心とした自動車販売会社の取扱台数増加等により、前年同四半期連結累計期間を94億円(118.7%)上回る172億円となりました。
④財政状態
資産につきましては、その他の投資で1,034億円、棚卸資産で1,005億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ5,974億円増加の6兆9,744億円となりました。また、資本につきましては、在外営業活動体の換算差額で727億円、FVTOCIの金融資産で656億円増加したこと及び四半期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金が549億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,956億円増加の2兆2,641億円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、営業活動及び財務活動による増加、投資活動による減少等により8,219億円となり、前連結会計年度末より503億円の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間において、営業活動による資金の増加は922億円(前年同四半期連結累計期間比653億円の収入増加)となりました。これは、税引前四半期利益等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間において、投資活動による資金の減少は1,295億円(前年同四半期連結累計期間比1,012億円の支出増加)となりました。これは、子会社の取得及び有形固定資産の取得等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間において、財務活動による資金の増加は550億円(前年同四半期連結累計期間比111億円の収入増加)となりました。これは、借入金の増加等によるものです。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間において、特記すべき事項はありません。