【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 財政状態及び経営成績の状況
①財政状態
当第2四半期連結会計期間末の資産は、前連結会計年度末に比べ7,049億円増加し、14兆2,680億円となった。これは、流動資産が増加したことなどによるものである。
当第2四半期連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末に比べ1,896億円増加し、10兆6,307億円となった。これは、短期借入金が増加したことなどによるものである。
当第2四半期連結会計期間末の純資産は、前連結会計年度末に比べ5,153億円増加し、3兆6,373億円となった。これは、親会社株主に帰属する四半期純利益を計上したことなどによるものである。この結果、自己資本比率は25.3%と前連結会計年度末に比べ2.5ポイント上昇した。
②経営成績
当第2四半期連結累計期間の経常利益は、燃料費等調整制度の期ずれ影響が好転したことなどにより、4,796億円(前年同四半期は2,816億円の経常損失)となった。
また、特別損失に原子力損害賠償費660億円を計上したことなどから、親会社株主に帰属する四半期純損益は3,508億円の利益(前年同四半期は1,861億円の損失)となった。
当第2四半期連結累計期間における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
[ホールディングス]
売上高は、前年同四半期比14.2%増の2,985億円となり、経常利益は、基幹事業会社からの受取配当金の増加などにより、前年同四半期比33.1%増の1,155億円となった。
[フュエル&パワー]
売上高は、前年同四半期比0.9%減の19億円となり、経常利益は、株式会社JERAにおける燃料費調整制度の期ずれ影響が好転したことなどにより、1,342億円(前年同四半期は1,300億円の損失)となった。
[パワーグリッド]
売上高は、前年同四半期比24.0%減の1兆817億円となり、経常利益は、電気調達費用が減少したことなどにより、前年同四半期比133.0%増の1,449億円となった。
[エナジーパートナー]
売上高は、前年同四半期比4.2%増の2兆9,457億円となり、経常利益は、燃料費等調整制度の期ずれ影響が好転したことなどにより、1,931億円(前年同四半期は2,273億円の損失)となった。
[リニューアブルパワー]
売上高は、前年同四半期比2.1%増の937億円となり、経常利益は、修繕費や固定資産除却費が増加したことなどにより、前年同四半期比9.2%減の394億円となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,313億円(74.1%)増加し、1兆2,487億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は、3,475億円(前年同四半期は1,731億円の支出)となった。これは、税金等調整前四半期純利益が増加したことなどによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は、前年同四半期比383.9%増の2,886億円となった。これは、投融資の回収による収入が減少したことなどによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の収入は、前年同四半期比123.2%増の4,696億円となった。これは、短期借入れによる収入が増加したことなどによるものである。
(3) 経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はない。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、新たに発生した課題はない。
また、前事業年度の有価証券報告書に記載した課題のうち、見直しを行った項目は次のとおりである。
以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境及び対処すべき課題等」の項目番号に対応している。
本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。
小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止、ESG・SDGsに代表される社会的課題に対する意識の高まり、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化に向けた社会的要請に加え、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらした経済・社会活動の変容など、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化している。
このような事業環境変化のなかでも、当社グループは一丸となって、福島第一原子力発電所の事故を決して風化させることなく、福島への責任を全うするため、「復興と廃炉の両立」を推進していく。
2021年4月に国から示された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、安全を最優先として海洋放出を進めるとともに、関係者の皆さまの理解醸成に向けた丁寧な説明を積み重ねていく。
また、柏崎刈羽原子力発電所で発生した一連の核物質防護にかかる不適切な事案等により、事業を進めるうえで最も大切な社会の皆さまからの信頼を大きく損なうことになった。そのため、当該発電所の喫緊の課題である一連の核物質防護にかかる不適切事案に対する改善措置計画を着実に進めるとともに、原子力規制委員会による原子炉設置者としての適格性判断にかかる再確認についての基本検査も、真摯に対応していく。引き続き、原子力改革の実績を一つひとつ積み上げ、地域の皆さまから信頼され、原子力事業者として受け入れていただけるよう全力で取り組んでいく。
昨今、電力業界では、公正な競争や事業者への信頼を揺るがす事案が発生している。このような状況を踏まえ、当社グループとしては、社内体制の強化や社員教育などを通じて、関係法令の遵守を徹底するとともに、不適切な行為の防止に努めていく。
さらにはコロナ期に実施した在宅勤務拡大等の経験を活かし、社員一人ひとりの幸福度と企業価値の向上を目的とした、Afterコロナ時代における本格的な仕事と働き方の変革 “TEPCO Work Innovation”を推進していく。
2023年度夏季は、気温が高めに推移したが追加供給力対策や皆さまの節電へのご協力により、安定供給を確保することができた。
2023年度冬季は、1月の東京エリアの厳気象H1需要に対する予備率は5.2%と最低限必要な予備率(3.0%)を確保しているものの、電源の計画外停止や燃料調達リスク等に備え、引き続き最大限対応していく。
加えて、多様化する社会的な要請にお応えするために、当社グループは安定供給の継続に最大限尽力しながら、「カーボンニュートラル」と「防災」を軸とした、新たな価値を提供するビジネスモデルへと事業構造の変革を図り、収益力向上につなげていく。
②優先的に対処すべき課題
[ホールディングス]
<福島事業>
ハ.ALPS処理水の扱い
ALPS処理水の海洋放出にあたっては、実施計画に基づく安全・品質の確保や科学的根拠に基づく情報の国内外への発信、海域モニタリングの強化など、政府の基本方針を踏まえた取り組みを着実に進めていく。
また、国際原子力機関によるレビューを通じた客観性・透明性の確保に努めていく。さらに、ALPS処理水の放出に伴う風評影響を最大限抑制すべく、国内外の理解醸成に向けた科学的根拠に基づく情報発信に加えて、風評影響を受けうる産業への対策をさらに強化していくとともに、ALPS処理水の放出により被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償していく。あわせて、社内において関係部署を横断的に統括する体制を整備し、これらの取り組みを確実に進めていく。
[エナジーパートナー]
イ.販売戦略全体
最適な電気の調達ポートフォリオを構築するとともに、デマンドレスポンス等を活用して電力需要パターンを柔軟に変化させることで、需給ひっ迫の不安がなく価格変動の少ない安定的なサービスを提供するほか、お客さまの利用形態に応じた電気料金プランの策定などにより、強い収益基盤の構築に取り組んでまいる。
特別高圧・高圧の電気料金メニューについては、最新の販売動向、電源調達動向を適切に料金に反映させていただくため、2024年4月から燃料費等調整の算定諸元の見直しをさせていただくとともに、卸電力取引所におけるスポット市場価格の変動を反映させる割合が異なる3種類の電気料金プランも提供させていただく。今後もより一層の経営効率化とお客さまのニーズや市況に応じた魅力的なサービスの開発・提供を目指してまいる。
加えて、設備サービスを活用したエネルギーの地産地消を推進するとともに、省エネ設備の導入サポートを中心とする「TEPCO省エネプログラム2023」を実施するなど、カーボンニュートラル社会の実現とお客さまのご負担軽減に向けた取り組みを展開してまいる。
ロ.燃料価格高騰を受けた対応
当社グループは、お客さまに電力を安定的にお届けするよう取り組んでいるが、昨今の世界的な資源価格の高
騰を背景とした事業環境下において、東京電力エナジーパートナー株式会社は、経営合理化では追いつかないほどの燃料・卸電力市場価格の高騰によって、費用が収入を上回っている状態となっており、財務体質が年々悪化している。
こうした状況を踏まえ、東京電力エナジーパートナー株式会社の財務基盤を立て直すことを目的として、当社を引受先とする増資を決議し、東京電力エナジーパートナー株式会社に対し2022年10月に2,000億円、2023年1月に3,000億円の払込を行った。また、東京電力エナジーパートナー株式会社において、特に電力市場価格の影響が大きい「特別高圧・高圧」のお客さまを対象とした電気料金を2023年4月より見直しさせていただいている。
しかしながら、上記対応を施しても収支基盤としては十分ではなく、今後、安定供給に支障をきたすことになりかねないこと及び経営合理化などの経営努力だけでは克服が困難なことから、東京電力エナジーパートナー株式会社は、「低圧」のお客さまを対象とした規制料金について値上げをお願いすることとし、2023年5月19日に経済産業大臣の認可を受け、2023年6月1日より値上げを実施させていただいた。低圧自由料金についても、2023年7月1日から見直しをさせていただいた。
電気料金の見直しに伴い、お客さまにはご負担をおかけするが、ご理解いただけるように丁寧な説明を行ってまいる。また、電力・ガス取引監視等委員会による規制料金認可後のフォローアップに対しても、適切に対応してまいる。
一方、東京電力エナジーパートナー株式会社は2022年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づき、お客さまのご負担軽減を直接的に実現すべく、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(以下、「本事業」という。)に参加申請するとともに、特定小売供給約款における電気料金の特別措置の設定を経済産業大臣に申請した。東京電力エナジーパートナー株式会社は、本事業における電気・ガスの事業者として、2022年12月15日までに採択され、12月16日には経済産業大臣より、特定小売供給約款における電気料金の特別措置の認可を受けた。これに伴い、国からの補助金を受けながら、2023年1月使用(2月検針)分以降の電気・ガス料金において、国が定める値引き単価により、電気・ガスのご使用量に応じた値引きを行っている。
加えて、お客さまの電気料金のご負担を軽減する節電における取り組みとして、省エネ設備の導入サポートを中心とする「TEPCO省エネプログラム2023」を実施している。
以上の取り組み等により、お客さまに電力を安定的にお届けできるよう最大限努力してまいる。
(5) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、5,247百万円である。
なお、当第2四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はない。
(6) 生産及び販売の実績
当社グループは、原子力発電等を行う「ホールディングス」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」、電気の販売等を行う「エナジーパートナー」及び再生可能エネルギー発電等を行う「リニューアブルパワー」の5つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の実績については、電気事業のみを記載している。
なお、電気事業については、販売電力量を四半期ごとに比較すると、第1四半期・第3四半期と比べて、第2四半期・第4四半期の販売電力量は、冷暖房需要により増加し、相対的に高水準となる。また、第2四半期は、夏季のピーク需要に対応する供給コストの上昇を反映した夏季料金(7月1日から9月30日まで)を設定しており、料金収入に季節的変動がある。
① 発電実績
種別
2023年度第2四半期累計
(百万kWh)
前年同四半期比
(%)
発
電
電
力
量
水力発電電力量
6,831
89.0
火力発電電力量
80
99.0
原子力発電電力量
-
-
新エネルギー等発電電力量
32
100.5
発電電力量合計
6,943
89.1
(注)1.上記発電実績には、連結子会社の一部を含んでいる。
2.2019年4月1日付けで㈱JERAが承継会社となり、東京電力フュエル&パワー㈱の燃料受入・貯蔵・送ガス事業及び既存火力発電事業等を吸収分割により承継させた。これにより、火力発電電力量は東京電力パワーグリッド㈱の離島における発電電力量である。
② 販売実績
(a) 総販売電力量
種別
2023年度第2四半期
(百万kWh)
前年同四半期比
(%)
小売販売電力量
99,535
108.6
卸販売電力量
15,918
58.1
総販売電力量
115,453
97.0
(注) 連結子会社の一部を含んでいる。
(b) 電気料収入
種別
2023年度第2四半期累計
(百万円)
前年同四半期比
(%)
電気料収入
2,272,128
106.8
(注)1.連結子会社の一部を含んでいる。
2.電気料収入は小売販売電力量に相当する。
3. 「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づき実施される「電気・ガス価格激変緩和対策事業」により、国が定める値引き単価による電気料金の値引きを行っており、その原資として補助金(以下、「当該補助金」という。)313,220百万円を受領している。内訳は「パワーグリッド」が4,918百万円、「エナジーパートナー」が308,301百万円である。電気料収入には当該補助金収入を含んでいない。
(c) 託送収入
種別
2023年度第2四半期累計
(百万円)
前年同四半期比
(%)
託送収益
773,624
92.7
(注) 東京電力パワーグリッド㈱におけるセグメント間取引消去前の託送収入である。
(7) 設備の状況
前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設、除却等について、当第2四半期連結累計期間に重要な変更はない。また、当第2四半期連結累計期間に新たに確定した主要な設備の新設、除却等の計画はない。
なお、前連結会計年度末における主要な設備の新設等の計画の当第2四半期連結累計期間の完了分は、次のとおりである。
(変電設備)
会社名
件名
セグメントの
名称
最高電圧
(kV)
増加出力
(MVA)
着工
運転開始
東京電力パワーグリッド㈱
新京葉変電所
変圧器増設
パワーグリッド
500
450
2022年5月
2023年6月
(注) 新京葉変電所の変電設備の出力は7,500MVAとなった。
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