【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおり
である。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における国内経済は、制限を伴う新型コロナウイルス感染症対策が徐々に緩和され、全体としては緩やかな持ち直しの動きが見られたが、資源価格の高騰、円安の進行など、製造業を取り巻く環境は厳しい状況で推移した。一方、世界経済は、各国における利上げが景気を下押しし、先行き不透明な状況が続いた。
このような状況の下、当社グループは、最終年度を迎えた中期経営計画「G-STEP30 1st(ジーステップ・サーティ ~ファースト)」に掲げる成長ステージに向けた基盤強化を最優先とした基本方針である、「強固な事業ポートフォリオの構築」「グローバル化の推進」「社内風土・意識改革」の実現に努めてきた。
この結果、当連結会計年度の売上高は前期比2.8%増収の117,942百万円となった。営業利益は同77.9%減益の1,327百万円となり、経常利益は同83.3%減益の1,069百万円となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益は同95.4%減益の102百万円となった。
事業セグメント別の経営成績は次のとおりである。
[高分子事業セグメント]
高分子事業セグメントでは、電気・電子用途を中心に需要が低迷した影響を受けた。また、製品価格の改定を実施したが、原燃料価格高騰の影響が改定の効果を上回り、収益に大きなマイナス影響を及ぼした。
フィルム事業では、包装分野における世界的な需給緩和の影響を受け、工業分野においては電気・電子用途の需要が急減し、それぞれ販売量が減少した。その一方で製品価格の改定を進め、エンブレムHGなどの高付加価値品へのシフトを進めた。この結果、事業全体で増収減益となった。
樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは、自動車生産回復の遅れや、中国におけるユーザーの工場稼働減少、欧州の景気停滞による需要低迷などの影響を受け、販売量が減少した。機能樹脂は、期後半に電気・電子分野への販売が落ち込んだ。一方で、海外での売上は伸長した。この結果、事業全体で増収減益となった。
以上の結果、高分子事業セグメントは増収減益となり、売上高は51,536百万円(前期比1.4%増)、営業利益は3,475百万円(同47.7%減)となった。
[機能資材事業セグメント]
機能資材事業セグメントでは、原燃料価格の高騰が製造原価を押し上げた。製品価格の改定を実施したが、収益に大きなマイナス影響を及ぼした。
活性炭繊維事業では、浄水器用途におけるサプライチェーンでの在庫調整の影響や電子分野の工場稼働率減少の影響を受け、苦戦した。
ガラス繊維事業では、産業資材分野は、テント、シート等の販売が堅調に推移した。電子材料分野のICクロスは、期後半に半導体市況が悪化し、販売が大幅に減少した。
ガラスビーズ事業では、燃料価格高騰を受け、価格改定を進めたが、道路用途においては工事件数減少、反射材用途においては欧州の景気低迷による需要減少の影響を受け、それぞれ販売は低調であった。
不織布事業では、海上物流が正常化に向かいつつある中で、海外での販売は順調に推移した。スキンケア用途など生活資材分野での販売は低調であった。原燃料価格高騰の影響により、苦戦した。
産業繊維事業では、国内向けは建築土木用途での販売は堅調であったが、一部のフィルター用途や水産用途などは低調であった。海外向けは欧州等の景気停滞の影響を受けた。
以上の結果、機能資材事業セグメントは増収減益となり、売上高は34,420百万円(前期比0.1%増)、営業損失は535百万円(前期は24百万円の利益)となった。
[繊維事業セグメント]
衣料繊維事業では、ユニフォームやレディス衣料などの販売はコロナ禍に比べ回復基調となった。更に、製品価格の改定を行った効果もあり、売上が伸長した。一方で、円安による輸入コスト高騰や原燃料価格の高騰により原価が大幅に上昇し、製品価格の改定では補いきれず、収益に大きなマイナス影響を受けた。
以上の結果、繊維事業セグメントは増収減益となり、売上高は31,917百万円(前期比8.4%増)、営業損失は1,535百万円(前期は610百万円の損失)となった。
[その他]
その他の事業については、売上高は68百万円(前期比18.1%増)、営業損失は69百万円(前期は55百万円の損失)となった。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,803百万円減少し、9,612百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加などがあったが、売上債権の減少などにより、509百万円の資金の増加(前期比94.1%減)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、8,092百万円の資金の減少(前期は8,989百万円の資金の減少)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済やB種種類株式の取得及び消却などにより、1,657百万円の資金の減少(前期は4,212百万円の資金の減少)となった。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、㈱ユニオン、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
高分子事業
52,689
12.9
機能資材事業
23,128
2.1
繊維事業
738
17.8
報告セグメント計
76,555
9.4
その他
-
-
合計
76,555
9.4
(注)生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。
b.受注実績
当社グループは主として見込生産を行っている。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
高分子事業
51,536
1.4
機能資材事業
34,420
0.1
繊維事業
31,917
8.4
報告セグメント計
117,874
2.8
その他
68
18.1
合計
117,942
2.8
(注)販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績及び財政状態の分析
a.売上高
当連結会計年度の売上高は117,942百万円となった。原燃料価格の高騰に伴い、製品価格の改定を行ったことなどにより、全体の売上が増加したためである。
b.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ4,678百万円(77.9%)減益の1,327百万円となった。原燃料価格の高騰によるマイナス要因が価格改定によるプラス要因を上回ったことにより、全体では減益となった。
c.営業外損益と経常利益
当連結会計年度の営業外損益については、為替の影響などにより、営業外収益は、前連結会計年度に比べ8百万円(0.4%)減少の1,932百万円となり、営業外費用は、シンジケートローン組成費用を計上した影響などにより、643百万円(41.7%)増加の2,190百万円となった。これらの要因により、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ5,330百万円(83.3%)減益の1,069百万円となった。
d.特別損益
当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、前連結会計年度に比べ41百万円(6.3%)増加の694百万円となった。特別損失は、前連結会計年度において、機能資材セグメントでの減損損失を計上していたことなどにより、前連結会計年度に比べ2,639百万円(72.0%)減少し1,027百万円となった。
e.親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については、特別損失が減少したが、営業利益段階での減益が影響し、前連結会計年度に比べ、2,120百万円(95.4%)減少の102百万円の当期純利益となった。
f.総資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ1,395百万円減少し、190,003百万円となった。これは、主として棚卸資産と有形固定資産が増加したが、現金及び預金と受取手形、売掛金が減少したことによるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ2,242百万円減少し、146,085百万円となった。これは、主として支払手形及び買掛金が減少したことによるものである。純資産は、前連結会計年度末に比べ847百万円増加し、43,918百万円となった。これは、主としてB種種類株式の取得及び消却により資本剰余金が減少したが、為替換算調整勘定と退職給付に係る調整累計額が増加したことによるものである。
ロ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析
当連結会計年度の事業セグメント別の経営成績については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。
ハ.資本の財源及び資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
b.契約債務
2023年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。
年度別要支払額(百万円)
契約債務
合計
1年以内
1年超
3年以内
3年超
5年以内
5年超
短期借入金
4,124
4,124
-
-
-
長期借入金
89,315
2,643
86,333
87
250
リース債務
378
71
115
190
1
c.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしている。運転資金の効率的な調達を行うため、当社と取引銀行1行との間で5,000百万円のコミットメントライン契約を締結し、資金の流動性を確保している。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。
また、設備資金調達を目的として、当社と取引銀行5行との間で6,900百万円の限度貸付契約を締結し、契約金額を上限とするコミットメントラインを設定している。設備投資の進捗にあわせて当該貸付枠を利用し資金調達を行うこととしており、当連結会計年度末における設定金額は4,500百万円である。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。
財務体質健全化については、在庫削減等による運転資金の効率化によって有利子負債の圧縮に努めている。
②重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としている。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。