【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
なお、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、以下の経営成績等に関して増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による社会経済活動の制限が段階的に緩和され、景気の持ち直しの動きが見られておりますが、ウクライナ情勢の長期化に伴うエネルギー高や資源価格の高騰に加え、外国為替市場における円安・ドル高やインフレへの警戒感が拭えない等、不透明な状況が続いております。
このような中、感染管理事業における需要の急激な減少に加え、2022年1月20日及び4月15日に消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けたことにより、対象製品の多くが店頭から一時撤去となるとともに、多額の返品が生じました。当連結会計年度において、製品パッケージの表示を変更したリニューアル品の販売を開始致しておりますが、上記の返品影響をカバーするまでには至っておりません。また医薬品事業においては、消費者の行動が徐々に元に戻りつつある中で需要は堅調に推移致しましたが、一時的な生産量低下の影響もあり、供給不足が継続致しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は5,040百万円(前期は11,299百万円)となりました。また、措置命令に伴う販売量低下の影響により、棚卸資産評価損等を売上原価に計上致しておりますため、差引売上総利益は1,078百万円(前期は2,746百万円)となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、売上高の低下傾向を踏まえ収益体質の改善が喫緊の課題であることから、期首より広告宣伝費や販売促進費を中心に費用発生の抑制に取り組むとともに、従業員希望退職施策の結果を踏まえた組織のスリム化、役員報酬の減額等による人件費の圧縮もおこなったことから、前期比で3,536百万円減少し、4,157百万円となりました。
これらの結果、当連結会計年度の営業損失は3,079百万円(前期は4,947百万円の営業損失)となりました。
営業外損益につきましては、前連結会計年度より引き続き感染管理事業の生産を停止していることから、工場で発生した製造関連費用を操業停止関連費用として営業外費用に計上しております。これらの結果、経常損失は3,352百万円(前期は6,131百万円の経常損失)となりました。また、特別損失には希望退職関連費用226百万円や感染管理事業における購入契約の中途解約に係る支払補償費499百万円に加え、措置命令に伴う課徴金引当金繰入額607百万円等を計上しております。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失につきましては4,895百万円(前期は9,594百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメント別の経営成績につきましては以下の通りであります。
(医薬品事業)
医薬品事業は3,624百万円の売上高となりました。
国内向けの売上高は2,527百万円、海外向けの売上高は1,097百万円となりました。セグメント利益は297百万円となりました。
(感染管理事業)
感染管理事業は1,408百万円の売上高となりました。
国内一般用製品の売上高は581百万円、国内業務用製品の売上高は658百万円、海外向けの売上高は167百万円となりました。セグメント損失は2,179百万円となりました。
(その他事業)
その他事業は7百万円の売上高となりました。セグメント損失は44百万円となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は15,046百万円(前連結会計年度末比7,489百万円減)となりました。また、負債合計は7,001百万円(同2,726百万円減)、純資産合計は8,044百万円(同4,763百万円減)となりました。前連結会計年度末からの主な変動要因は、売上高の減少に伴う受取手形及び売掛金の減少や感染管理製品の在庫圧縮に伴う棚卸資産の減少等による流動資産6,227百万円の減少、減価償却による有形固定資産の減少や投資有価証券の償還による投資その他の資産の減少等による固定資産1,262百万円の減少、未払金や返品調整引当金の減少による流動負債1,527百万円の減少、長期借入金の返済等による固定負債1,198百万円の減少、主に親会社株主に帰属する当期純損失に伴う利益剰余金の減少による純資産4,763百万円の減少であります。
なお、自己資本比率は前連結会計年度末から3.3ポイント低下し、53.5%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)が前連結会計年度より2,724百万円減少し、当連結会計年度末残高は2,797百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,994百万円(前期は1,595百万円の使用)となりました。主には税金等調整前当期純損失4,869百万円、支払補償費の支払額859百万円、返品調整引当金の減少699百万円等の減少要因の一方で、売上債権の減少2,315百万円、棚卸資産の減少1,257百万円、減価償却費737百万円の増加要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は190百万円(前期は1,622百万円の使用)となりました。主には投資有価証券の償還による収入300百万円等の増加要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は997百万円(前期は3,959百万円の獲得)となりました。主には長期借入金の返済による支出923百万円等の減少要因によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
医薬品事業
(百万円)
3,017
164.2
感染管理事業
(百万円)
1,678
46.0
その他事業
(百万円)
6
100.9
合計
(百万円)
4,703
85.6
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。医薬品事業につきましては、前期において在庫過多により在庫消化を優先した反動によるものです。また、感染管理事業につきましては、消費者庁から受けた景品表示法に基づく措置命令及び需要低迷を受けて生産調整をしたことによるものです。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
医薬品事業
(百万円)
40
195.4
感染管理事業
(百万円)
410
7.6
その他事業
(百万円)
-
-
合計
(百万円)
451
8.3
(注)当連結会計年度において、商品仕入実績に著しい変動がありました。医薬品事業につきましては、前期と当期における仕入スケジュールのズレによるものです。また、感染管理事業につきましては、主要仕入先との購買契約を見直したことによるものです。
c.受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
医薬品事業
(百万円)
3,624
83.3
感染管理事業
(百万円)
1,408
20.3
その他事業
(百万円)
7
113.7
合計
(百万円)
5,040
44.6
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.感染管理事業につきましては、2022年1月20日及び4月15日に消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けたことにより、多額の返品が生じましたことにより減少しております。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
㈱PALTAC
1,527
13.5
1,250
24.8
アルフレッサヘルスケア㈱
4,062
36.0
1,003
19.9
一徳貿易有限公司
985
8.7
919
18.2
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ⅰ 経営成績の分析
当連結会計年度は、医薬品事業、感染管理事業とも減収となり、売上高は5,040百万円(前期は11,299百万円)となりました。売上高の減少に伴う売上総利益の減少に加え、販売量低下に伴う棚卸資産の評価損等を計上したことから、差引売上総利益は1,078百万円(前期は2,746百万円)、差引売上総利益率は21.4%となりました。販売費及び一般管理費につきましては、期首より広告宣伝費や販売促進費を中心に費用の抑制に取り組むとともに、希望退職施策等により人件費の圧縮も行ったことから4,157百万円(前期は7,694百万円)と大きく減少致しました。
これらの結果、当連結会計年度の営業損失は3,079百万円(前期は4,947百万円の営業損失)、経常損失は3,352百万円(前期は6,131百万円の経常損失)となりました。また、特別損失の計上もあり親会社株主に帰属する当期純損失は4,895百万円(前期は9,594百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメント別の経営成績につきましては以下の通りであります。
(医薬品事業)
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症に関連する規制が段階的に緩和され、消費者の行動も元に戻りつつある状況の中で需要状況は着実に改善してまいりましたが、セイロガン糖衣Aの一部原材料変更に起因する一時的な生産量低下によって供給不足が継続致しました。また、正露丸につきましても、セイロガン糖衣Aの代替需要や他社製品欠品の影響を受け、高い需要状況で推移していることから、供給体制が追い付いておらず出荷制限をしながらの販売が継続致しました。これらの結果、国内向けの売上高は対前期比18.6%減少の2,527百万円となりました。また海外向けにつきましても、国内同様、需要は回復傾向にあるものの、国内向けの生産を優先していることから海外向けの供給数量が不足し、対前期比11.9%減少の1,097百万円となりました。
これらの結果、医薬品事業につきましては、対前期比16.7%減少の3,624百万円の売上高となりました。また、セグメント利益につきましては、売上高の減少や京都工場医薬品生産設備の稼働に伴う減価償却費等の増加等により、297百万円のセグメント利益(対前期比79.8%減)となりました。
(感染管理事業)
感染管理事業につきましては、2022年1月20日及び4月15日に「クレベリン」6品目に対し、消費者庁より景品表示法に基づく措置命令を受けたことに伴い、多くの販売店で対象製品等の一時撤去及び返品が行われたため、当連結会計年度の売上高は大きく減少致しました。当連結会計年度において措置命令の対象製品の表示の見直しは完了しており、リニューアル品の販売を開始致しましたものの、需要は伸び悩み当該返品影響をカバーするまでには至っておりません。また、事業再構築の一環として、一部在庫の廃棄や収益性が低下した棚卸資産に対して評価損を計上致しました。
これらの結果、売上高は1,408百万円(前期は6,942百万円)、セグメント損失は2,179百万円(前期は4,936百万円のセグメント損失)となりました。
(その他事業)
その他事業につきましては、主に木酢液を配合した入浴液や園芸用木酢液等の製造販売を行っております。売上高は7百万円、セグメント損失は44百万円となりました。
ⅱ 財政状態の分析
詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照下さい。
ⅲ 経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因としましては、以下のようなものがあります。
イ.特定製品への依存
当社グループにおける売上高の大半が「クレベリン 置き型」、「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」によって構成されております。当該製品の製造につきましては、培ってきたノウハウをもとに万全の品質管理・品質保証体制をもって臨んでおりますが、万一品質等に問題が発生した場合には販売中止・回収を余儀なくされることも考えられ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、感染管理事業においては、当社グループの強みとなる商品を軸に、研究やマーケティングへのリソースの分散を避けながら、製品ラインナップを拡げていくことと考えております。
ロ.国内市場規模の縮小
当社グループは日本国内を主要な販売地域のひとつとしているため、国内人口の減少等による市場規模の縮小の脅威にさらされており、今後国内市場の需要減少等により当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
こうした中、医薬品事業につきましては国内では市場の維持拡大に向けて新製品開発及び新規市場の開拓も行うとともに、海外では当社製品への潜在的需要が拡大しているアジア諸国において市場の開拓を強化してまいります。
一方、感染管理事業につきましては世界的に感染予防と衛生管理への関心が高まりつつあることから、二酸化塩素へのリソース集約を図り、「クレベリン」の信頼醸成に取り組み更なる販売拡大を目指してまいります。
ハ.競合他社の存在
当社グループは多数のメーカーが競合する厳しい競争環境にさらされており、今後他社による新たな製品開発及び競合品の価格引下げ等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
こうした中、当社グループでは、マーケティング戦略を刷新し正露丸シリーズ及びクレベリンシリーズのブランディングを見直すとともに、製品理解の促進及び使用用途の深耕を図り競合他社との差別化を打ち出すことで市場シェア向上を目指してまいります。
ニ.急激な需要の変化等
感染管理事業においては、衛生管理製品を市場に提供していくために二酸化塩素ガス特許技術を応用した製品等の企画・開発・販売を進めております。そのため、当該事業は感染対策を中心とした市場環境に影響を受け、新たな感染症の流行拡大及び予防意識の動向等によっては、製品の需要に急激な変化が生じます。想定以上の需要の変化が生じた場合には、一時的な製品供給不足や過剰生産能力、過剰在庫に陥る可能性があり、その結果として当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、急激な需要の変化に柔軟に応じられるサプライチェーンマネジメント体制の強化に取り組んでまいるとともに、長期的な需要を冷静に分析し、投資を意思決定する仕組みを強化してまいります。
ホ.法的規制等
当社グループの属する医薬品事業は、国内市場においては薬機法等関連法規、また、中国本土・香港・台湾を中心とする海外市場においても同等の法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点におきましては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、予期しない法令違反等によりその許認可等が取り消された場合や何等かの事由により許認可等の更新が出来なかった場合には、当社グループの運営に支障をきたし事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払い等によるものです。投資を目的とした資金需要は、企業価値の向上を図るための設備投資や研究開発等の投資等によるものです。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純損失の計上に伴う営業活動によるキャッシュ・フローや長期借入金の返済に伴う財務活動によるキャッシュ・フローにより前連結会計年度から2,724百万円減少し、現金及び現金同等物の期末残高は2,797百万円となりました。
今後の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、当連結会計年度において、取引銀行4行とシンジケーション方式コミットメントライン契約を締結し、総額5,000百万円の融資枠を確保しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載の通りであります。