【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
(ア)経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に係る行動制限が緩和され、経済活動が正常化に向け動き始めましたが、原材料やエネルギー価格の高騰による物価上昇や、世界的な金融引締めを背景とした為替相場の急激な変動等もあり、国内景気動向は依然として不透明な状況で推移しております。当社グループにおける事業環境は、繊維事業では、海外からの製品等仕入れにおいて、円安、原材料高、中国ロックダウンの影響を受けた一方、キャンプ関連商品の需要拡大が継続するなど、取扱品により差が出た事業活動となりました。不動産活用事業は、大型商業施設「イオンモール川口」を前期にイオンモール㈱に賃貸開始したことから、当期においては通期にわたって業績に寄与しております。また、既存の賃貸物件である「イオンモール川口前川」や病院施設等からの安定した賃貸収入を維持しており、営業収益の安定化が図られております。この結果、当連結会計年度の売上高は10,182百万円(前期比13.7%増)となりました。営業利益は1,092百万円(前期比69.2%増)となり、経常利益は1,186百万円(前期比60.2%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は733百万円(前期比46.8%増)となりました。事業別セグメントの概況は次のとおりであります。① 繊維事業マテリアル部は、織物販売事業を縮小したものの、原糸販売において市況の回復及び仕入れコスト上昇分の価格転嫁を進めたことから、増収増益となりました。アパレル部は、主要な取引先である百貨店からのユニフォームの新規受注が減少したことに加え、円安や輸送費の値上げ等の影響によりコスト増となり、減収減益となりました。アウトドア部は、コロナ禍における行動制限緩和を受け、キャンプ関連需要が高まり、取引先の取扱い商品の売場面積が拡大したこと等により、増収増益となりました。刺繍レースを扱うフロリア㈱は、服地及び付属レースの国内需要が落ち込み、またエネルギー価格の高騰で工場コストが増加し、減収減益となりました。昨年5月に設立したサイボークリエイト㈱は、主にプリント加工品の製造・販売を行っております。同事業は第3四半期連結会計期間より開始しておりますが、工場の生産体制を整えるため費用等が先行し、当初計画内の損失を計上しました。この結果、繊維事業の売上高は5,337百万円(前期比22.9%増)となり、営業利益は13百万円(前期比82.7%減)となりました。② 不動産活用事業不動産活用事業は、「イオンモール川口前川」が近隣の大型商業施設に比べ回遊型ショッピングができるという、お客様の利便性と近隣住民の生活環境にあった専門店選びが評価されております。また「イオンモール川口」は、新しい社会環境にあわせた最新型の商業施設として2021年5月よりイオンモール㈱に賃貸を開始し、当期初より売上に寄与したことから、増収に繋がりました。収益面では、「イオンモール川口前川」は前期からのリニューアル工事が計画通りに完了し費用を計上しておりますが、「イオンモール川口」における不動産取得税等一時的な費用が前期に比べ大幅に減少したことに加え、予定計上しておりました当該費用の金額が確定し費用の一部を戻入れたため、増益となりました。この結果、不動産活用事業の売上高は3,712百万円(前期比6.1%増)、営業利益は967百万円(前期比151.1%増)となりました。
③ ゴルフ練習場事業埼玉興業㈱が営む川口・黒浜・騎西の各グリーンゴルフ練習場は、SNSでの情報発信やキャッシュレス化の導入等により、来場者に対して利便性の高いサービスを提供するとともに、感染症対策に万全を期した営業を続けております。しかしながら、当期は新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きをみせ、行動制限が緩和されたことから、お客様のレジャーにおける選択の自由度が増し練習場への来場者が減少し、また水道光熱費等のコストが増加したため減収減益となりました。この結果、ゴルフ練習場事業の売上高は971百万円(前期比3.5%減)、営業利益は72百万円(前期比46.2%減)となりました。④ その他の事業神根サイボー㈱のインテリア施工事業は、一般住宅施工のほか大口物件の受注がありましたが、建築資材等の高騰により増収減益となりました。この結果、その他の事業の売上高は798百万円(前期比7.5%増)、営業利益は55百万円(前期比7.0%減)となりました。
(イ)財政状態の状況総資産は、前連結会計年度末に比べ1,047百万円減少して41,847百万円となりました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産や商品及び製品が増加したものの、流動資産のその他に含まれる未収消費税等の還付や有形固定資産の減価償却が進んだこと等による減少であります。負債は、前連結会計年度末に比べ1,741百万円減少して23,670百万円となりました。これは主に短期借入金や長期借入金が減少したこと等によるものであります。純資産は、前連結会計年度末に比べ693百万円増加して18,177百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上や繰延ヘッジ損益が増加したこと等によるものであります。
(ウ)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べ244百万円増加して2,671百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果、得られた資金は前連結会計年度末に比べ256百万円増加して2,295百万円となりました。これは主に売上債権や棚卸資産が増加し、また仕入債務が減少したものの、税金等調整前当期純利益の増加や未払又は未収消費税等の増減額が消費税等の還付により増加したこと等によるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果、支出した資金は前連結会計年度末に比べ2,830百万円減少して147百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したこと等によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果、支出した資金は1,901百万円(前連結会計年度末は得られた資金が1,744百万円)となりました。これは主に短期借入れによる収入や長期借入れによる収入が減少したこと、短期借入金の返済による支出が増加したこと等によるものであります。
(エ)生産、受注及び販売の状況当連結会計年度の「生産、受注及び販売の実績」をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。「生産実績」の金額は、当期製造費用、「商品仕入実績」の金額は、仕入価格で記載しており、それ以外のものは、販売価格によっております。また、セグメント間の取引については、相殺消去しております。① 生産実績
セグメントの名称
生産高(千円)
前期比(%)
繊維事業
387,169
△3.6
合計
387,169
△3.6
② 商品仕入実績
セグメントの名称
仕入高(千円)
前期比(%)
繊維事業
4,917,373
44.4
合計
4,917,373
44.4
③ 受注実績
セグメントの名称
受注高(千円)
前期比(%)
受注残高(千円)
前期比(%)
繊維事業
5,899,836
28.9
1,210,038
88.5
その他の事業
443,118
7.3
39,534
△11.2
合計
6,342,954
27.1
1,249,572
82.0
④ 販売実績
セグメントの名称
販売高(千円)
前期比(%)
繊維事業
5,331,664
23.0
不動産活用事業
3,431,036
6.6
ゴルフ練習場事業
971,427
△3.5
その他の事業
448,124
13.0
合計
10,182,253
13.7
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
イオンモール㈱
2,843,633
31.7
3,080,758
30.3
キャンパルジャパン㈱
1,269,737
14.2
2,099,929
20.6
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度の売上高は、前期に比べ13.7%増加して10,182百万円となりました。繊維事業は、コロナ禍による企業の購入意欲の低下、急激な円安や原材料価格の高騰による買い控え等の影響により各事業部において受注獲得が厳しい状況であったものの、キャンプ関連商品では、前期から続く活発なアウトドア市況により大幅な増収となり、また原糸販売では、輸入コストの増加に対して顧客への価格転嫁を進め増収となりました。また、当期には一部の取扱品の撤退を行う一方で、三国間貿易による海外販売への取組みを新たに開始し、また主にプリント加工品の製造・販売を行うサイボークリエイト㈱を設立し9月から販売活動を開始しました。以上の結果、繊維事業の売上高は前期比22.9%増加しました。不動産活用事業は、2021年5月から賃貸を開始した「イオンモール川口」の賃貸収入が当期は通期に渡り寄与したことや、医療施設の内装変更に伴い賃貸収入が増加したこと等により、売上高は前期比6.1%増加しました。ゴルフ練習場事業は、新型コロナウイルス対策としての行動制限が緩和され、お客様のレジャー・スポーツにおける自由度が増し、練習場への来場者が減少したことから、売上高は前期比3.5%減少しました。その他の事業は、インテリア施工事業が資材価格上昇等の影響があったものの、大口工事の受注獲得により、売上高は前期比7.5%増加しました。売上原価は前期に比べ9.8%増加して7,787百万円、販売費及び一般管理費は7.0%増加して1,302百万円となりました。売上原価は繊維事業が増収になったことに加え、円安による輸入コストの増加、期中に設立したサイボークリエイト㈱のプリント加工設備への先行費用の計上等が主な増加要因であります。一方、不動産活用事業では前期に「イオンモール川口」に係る不動産取得税の予定計上を行っていましたが、当期に金額が確定し費用の戻入れを行う等によりコストの縮減が図られています。販売費及び一般管費理の主な増加要因は、サイボークリエイト㈱の営業・管理に係る人件費が新たに発生したこと等によるものであります。営業利益は前期に比べ69.2%増加して1,092百万円となりました。繊維事業は大幅な増収となったものの、前述しておりますコスト増を賄うには至らず、営業利益は前期比82.7%減少しました。不動産活用事業は増収及び前期発生した一時費用がなくなったことから、営業利益は前期比151.1%増加しました。ゴルフ練習場事業は来場者数が減少した一方、練習場の営業維持コストは増加し、営業利益は前期比46.2%減少しました。その他の事業はインテリア施工事業が増収となったものの、資材価格上昇等によりコストが増加し営業利益は前期比7.0%減少しました。経常利益は前期に比べ60.2%増加して1,186百万円となりました。これは主に、営業利益の増益に加え、持分法による投資利益の増加により営業外収益が増加したこと等によるものであります。特別損益は、主に株式時価の下落により投資有価証券評価損を計上しました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ46.8%増加して733百万円となりました。② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報営業活動により得られた資金は前期に比べ256百万円増加して2,295百万円となりました。この主な要因は、繊維事業の売上高増加に伴う営業債権の増加や同事業の翌期の受注に対応するための棚卸資産の増加があったものの、前期に竣工した「イオンモール川口」に係る仮払消費税等の還付が当期に発生したこと等によるものであります。投資活動により支出した資金は前期に比べ2,830百万円減少して147百万円となりました。この主な要因は、前期は「イオンモール川口」の完工に伴い建設費に係る竣工時金等の支出がありましたが、当期は大規模な有形固定資産の取得による支出を行わなかったこと等によるものであります。財務活動により支出した資金は1,901百万円(前期は1,744百万円の資金増加)となりました。この主な要因は、前期は「イオンモール川口」の建設費に充当するための長期借入れを行いましたが、当期は大規模な設備投資をしなかったことにより短期及び長期借入金の返済による支出が進んだこと等によるものであります。当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、繊維製品の購入や賃貸等設備の維持管理に係る費用及び販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は主に設備投資等によるものであります。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入れを基本としており、賃貸等設備への設備投資に係る資金調達につきましては、賃借人からの保証金のほか、金融機関からの長期借入れを基本としております。③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4会計方針に関する事項及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループが目標とする経営指標は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。当連結会計年度の「ROE(自己資本利益率)」は前期比1.4ポイント増加し4.7%となりました。「1株当たり当期純利益」は前期比17円68銭増加し55円49銭となり、「売上高経常利益率」は前期比3.4ポイント増加して11.7%となりました。各指標の増減理由につきましては、前述しております「①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。