【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の分析
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。なお、当第1四半期連結会計期間の期首よりIFRS第17号「保険契約」を適用しています。これにより、基準移行日である前連結会計年度期首時点に基準変更による累積的影響額を反映し、前第1四半期連結累計期間のフィンテックセグメントに係る数値を修正再表示しています。詳細は、第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 2. 重要性がある会計方針をご参照ください。(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当第1四半期連結累計期間の経営成績(Non-GAAPベース)当第1四半期連結累計期間における世界経済は、一部の地域において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いていますが、その先行きについては、世界的な金融引締めに伴う影響、物価上昇等による下振れリスクの高まりに留意する必要があります。日本経済については、一部に弱さがみられるものの、個人消費を含め緩やかに持ち直しており、先行きについても、各種政策の効果もあって景気が持ち直していくことが期待されています。「情報通信白書」(注)によると、ドローン、AI等の新たなICTサービスが登場し、社会へ急速に浸透していく中で、ICTはもはや生活に欠かすことのできない社会・経済インフラとなっていると指摘されています。また、ウィズコロナからアフターコロナへの変革期を迎えている今、様々なデジタルサービスの社会的需要が一層増していると当社は考えています。このような環境下、当社グループは、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI等の先進的技術を活用したサービスの開発及び展開を進めています。楽天モバイルにおいては、携帯電話基地局等を含む無線アクセスネットワークのマルチベンダー化を実現するOpen RANや仮想化技術によるvRAN等を、世界に先駆けて商用ネットワーク全体に導入し、また、楽天シンフォニーにおいては、通信事業者におけるネットワーク機器の構成を刷新する取組が進む中、『楽天モバイル』で実装したオープンで完全仮想化されたアーキテクチャを世界の通信各社に提案しています。今後も楽天エコシステムを更に進化させ、当社グループの競争力を高めていきます。インターネットサービスにおいては、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』において、コロナ禍における「巣ごもり消費」等が一巡した後も、顧客の利便性や満足度の向上を追求した各種施策や販促活動等の奏功により顧客の更なる定着が進みました。また、国内旅行に対する需要の堅調な回復が継続したこと等により、国内EC取扱高が伸長しました。フィンテックにおいては、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続き、クレジットカード関連サービスや銀行サービス、証券サービス等において増収増益を達成しました。また、モバイルにおいては、通信料金収入の増加等により、前第1四半期連結累計期間と比較して売上収益が拡大し、これに伴いセグメント損失は着実に縮小しています。この結果、当社グループの当第1四半期連結累計期間における売上収益は475,635百万円(前年同期比9.3%増)となりました。モバイルにおいては、前第1四半期連結会計期間をピークにセグメント損失は縮小していますが、自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、当社グループのNon-GAAP営業損失は68,968百万円(前年同期は99,139百万円の損失)となりました。(注) 出典:「令和4年版 情報通信白書」(総務省)
(Non-GAAPベース)(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
売上収益
435,020
475,635
40,615
9.3
%
Non-GAAP営業損失(△)
△99,139
△68,968
30,171
-
%
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整当第1四半期連結累計期間において、Non-GAAP営業利益で控除される無形資産の償却費は2,099百万円、株式報酬費用は4,115百万円となりました。なお、前第1四半期連結累計期間に計上された非経常的な項目8,614百万円は、楽天ポイントの規約等の変更によるポイント引当金の増加に伴う費用です。また、当第1四半期連結累計期間に計上された非経常的な項目には、前連結会計年度に発覚した子会社の元従業員及び取引先の共謀による不正行為に係る弁護士費用等、外部の専門家に対する報酬等が含まれています。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
Non-GAAP営業損失(△)
△99,139
△68,968
30,171
無形資産償却費
△1,972
△2,099
△127
株式報酬費用
△3,459
△4,115
△656
非経常的な項目
△8,614
△1,012
7,602
IFRS営業損失(△)
△113,184
△76,194
36,990
③ 当第1四半期連結累計期間の経営成績(IFRSベース)当第1四半期連結累計期間における売上収益は475,635百万円(前年同期比9.3%増)、IFRS営業損失は76,194百万円(前年同期は113,184百万円の損失)、四半期損失(親会社の所有者帰属)は82,567百万円(前年同期は91,842百万円の損失)となりました。
(IFRSベース)(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
売上収益
435,020
475,635
40,615
9.3
%
IFRS営業損失(△)
△113,184
△76,194
36,990
-
%
四半期損失(△)(親会社の所有者帰属)
△91,842
△82,567
9,275
-
%
(2) セグメント別業績各セグメントにおける業績は次のとおりです。なお、IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。当社グループは、前第2四半期連結会計期間より、本社管理部門と事業部門におけるポイント費用の集計方法を変更し、遡及適用しています。この変更に伴い、遡及適用前と比較して前第1四半期連結累計期間のインターネットサービスセグメントに係るセグメント利益が985百万円減少しています。なお、連結上の売上収益、Non-GAAP営業損失、営業損失に与える影響はありません。また、当第1四半期連結会計期間より、従前モバイルセグメントに含まれていたメディア&エンターテインメント部門に属する子会社及び事業について、楽天エコシステムの拡大及びシナジー効果を高めること等を目的に、インターネットサービスセグメントに移管しています。これらの変更により、前第1四半期連結累計期間のインターネットサービスセグメントに係る売上収益は3,735百万円増加、セグメント利益は2,726百万円減少し、モバイルセグメントに係る売上収益及びセグメント損失は同額減少しています。
(インターネットサービス)主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進、共通の送料無料ラインの導入促進等の施策に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』においては、顧客の利便性や満足度の向上を追求した各種施策や販促活動等の奏功により顧客の更なる定着が促進したほか、インターネット旅行予約サービス『楽天トラベル』においては、政府による支援施策等の継続に後押しされ、国内旅行の需要回復に合わせた販促施策等が奏功し、前連結会計年度と比較して取扱高が大幅に拡大しました。また、国内EC取扱高の伸長を受け、マーケットプレイスとして魅力が増したことで、広告事業の売上も引き続き拡大しました。海外インターネットサービスを含むその他インターネットサービスにおいては、米国のオンライン・キャッシュバック・サービス『Rakuten Rewards』を中心に売上収益が伸長しました。また、米国地域における広告事業等が景気減速の影響を受けたこと等により、セグメント利益は前第1四半期連結累計期間と比較して減少しています。この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は271,138百万円(前年同期比8.7%増)、セグメント利益は11,851百万円(前年同期比17.1%減)となりました。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
249,518
271,138
21,620
8.7
%
セグメント損益
14,291
11,851
△2,440
△17.1
%
(フィンテック)クレジットカード関連サービスにおいては、2022年12月に『楽天カード』の累計発行枚数が2,800万枚を突破した後も新規発行枚数の増加が継続しました。2022年3月に、まん延防止等重点措置が解除されたこと等を背景に、オフライン消費の回復が見られたことに加え、コロナ禍における「巣ごもり需要」で定着したオンライン消費もニーズが継続し、ショッピング取扱高が伸長しました。銀行サービスにおいては、2022年12月に預金口座数が1,338万口座を突破した後も引き続き顧客基盤が拡大しました。証券サービスにおいては、『楽天キャッシュ』決済での投信積立設定者がサービス開始からわずか9ヶ月で100万人を突破する等、顧客の更なる定着が進みました。この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は168,025百万円(前年同期比7.6%増)、セグメント利益は26,640百万円(前年同期比20.4%増)となりました。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
156,152
168,025
11,873
7.6
%
セグメント損益
22,129
26,640
4,511
20.4
%
(モバイル)モバイルにおいては、計画の前倒しによる自社基地局の整備に注力することでネットワーク品質の向上に努めました。また、新料金プラン移行に伴い、通信料金収入が増加し、売上収益の増加に貢献しました。他方で、減価償却費等のネットワーク関連費用も増加しました。この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は96,333百万円(前年同期比25.7%増)となりました。モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、セグメント損失は102,662百万円(前年同期は132,320百万円の損失)となりましたが、前第1四半期連結会計期間をピークに損失は縮小しています。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第1四半期 連結累計期間)
(当第1四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
76,618
96,333
19,715
25.7
%
セグメント損益
△132,320
△102,662
29,658
-
%
(3) 財政状態の分析
(資産)当第1四半期連結会計期間末の資産合計は20,349,537百万円となり、前連結会計年度末の資産合計20,402,281百万円と比べ、52,744百万円減少しました。これは主に、銀行事業の貸付金が232,606百万円増加した一方で、現金及び現金同等物が190,130百万円減少、カード事業の貸付金が128,456百万円減少したことによるものです。
(負債)当第1四半期連結会計期間末の負債合計は19,570,120百万円となり、前連結会計年度末の負債合計19,553,570百万円と比べ、16,550百万円増加しました。これは主に、その他の金融負債が141,065百万円減少、カード事業の社債及び借入金が70,765百万円減少した一方で、銀行事業の預金が145,718百万円増加、銀行事業の借入金が107,740百万円増加したことによるものです。
(資本)当第1四半期連結会計期間末の資本合計は779,417百万円となり、前連結会計年度末の資本合計848,711百万円と比べ、69,294百万円減少しました。これは主に、当第1四半期連結累計期間における親会社の所有者に帰属する四半期損失を82,567百万円計上したこと等により利益剰余金が90,829百万円減少したことによるものです。
(4) キャッシュ・フローの状況当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ190,130百万円減少し、4,504,230百万円となりました。当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当第1四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、122,561百万円の資金流出(前年同期は209,972百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の預金の増加による資金流入が143,975百万円となった一方で、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が232,487百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当第1四半期連結累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、109,862百万円の資金流出(前年同期は403,607百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が28,269百万円(取得による資金流出が133,801百万円、売却及び償還による資金流入が105,532百万円)、有形固定資産の取得による資金流出が67,637百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当第1四半期連結累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、39,243百万円の資金流入(前年同期は529,470百万円の資金流入)となりました。これは主に、短期借入金の減少による資金流出が123,500百万円、コマーシャル・ペーパーの減少による資金流出が110,000百万円、カード事業のコマーシャル・ペーパーの減少による資金流出が51,200百万円、カード事業の長期借入金の返済による資金流出が39,674百万円、証券事業の短期借入金の減少による資金流出が35,000百万円となった一方で、社債の発行による資金流入が305,046百万円、銀行事業の長期借入金によるネットの資金流入が100,000百万円(借入れによる資金流入が367,600百万円、返済による資金流出が267,600百万円)となったことによるものです。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの要約四半期連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この要約四半期連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第4 経理の状況 1要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 3. 重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。
(6) 経営方針、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第1四半期連結累計期間において、経営方針、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(7) 研究開発活動当社の研究開発活動は、当社及び当社グループの開発業務への貢献を目的とし、個々の事業とは別に研究を行っています。なお、研究開発活動の状況については、前連結会計年度より重要な変更はありません。当第1四半期連結累計期間における、当社グループが支出した研究開発費の総額は3,620百万円です。
(8) 従業員数当第1四半期連結累計期間において、連結会社又は提出会社の従業員数の著しい増減はありません。
(9) 生産、受注及び販売の実績当第1四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売実績の著しい増減はありません。
(10) 主要な設備前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設等について、当第1四半期連結累計期間に重要な変更があったものは、以下のとおりです。
会社名
所在地
セグメントの名称
設備の内容
投資予定額
資金調達方法
着手年月
完了予定
総額
楽天モバイル(株)
東京都世田谷区
モバイル
「4G」「5G」に関する基地局、ネットワーク設備ほか
(変更前)3,000億円(変更後)2,000億円
自己資金、借入金、社債発行及び新株発行等
2023年1月
2023年12月
#C4755JP #楽天グループ #サービス業セクター