【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1) 経営成績の分析当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
当第3四半期連結累計期間における世界経済は、緩やかな持ち直しが続いていますが、その先行きについては、世界的な金融引締めが進む中での金融資本市場の変動や物価上昇、供給面での制約等による下振れリスクに留意する必要があります。日本経済についても、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気は緩やかに持ち直しています。ウィズコロナ下での世界では、非接触・非対面により、商品を購入、サービスを享受することができるデジタルサービスの社会的需要が一層増していると当社は考えています。なお、今般のウクライナ情勢については、当社グループの営業活動への影響は一定程度あるものの、当社グループの経営成績及び財政状態に与える影響は限定的であると見込んでいます。このような環境下、当社グループは、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI等の先進的技術を活用したサービスの開発及び展開を進めています。楽天モバイルにおいては、携帯電話基地局等を含む無線アクセスネットワークのマルチベンダー化を実現するOpen RANや仮想化技術によるvRAN等を、世界に先駆けて商用ネットワーク全体に導入し、また、楽天シンフォニーにおいては、通信事業者におけるネットワーク機器の構成を刷新する取組が進むなか、『楽天モバイル』で実装したオープンで完全仮想化されたアーキテクチャを、世界の通信各社に提案しています。今後も、楽天エコシステムを更に進化させ、楽天グループの競争力を高めてまいります。インターネットサービスにおいては、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』における共通の送料無料ライン導入に代表される顧客利便性向上の施策等の奏功により、コロナ禍における「巣ごもり消費」等を背景に増加した顧客の定着が進んだほか、国内旅行に対する需要が堅調に推移したこと等により、国内EC取扱高の伸長に貢献しました。フィンテックにおいては、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続き、クレジットカード関連サービス、銀行サービス、証券サービス等において増収増益を達成しました。また、モバイルにおいては、通信料金収入の増加等により、当第3四半期累計期間における売上収益が拡大しました。この結果、当社グループの当第3四半期連結累計期間における売上収益は1,364,708百万円(前年同期比13.7%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、Non-GAAP営業損失は255,980百万円(前年同期は148,859百万円の損失)となりました。
(Non-GAAPベース)(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
売上収益
1,200,574
1,364,708
164,134
13.7
%
Non-GAAP営業損失(△)
△148,859
△255,980
△107,121
-
%
Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整当第3四半期連結累計期間において、Non-GAAP営業利益で控除される無形資産の償却費は7,160百万円、株式報酬費用は9,530百万円となりました。なお、前第3四半期連結累計期間に計上された非経常的な項目には、Altiostar Networks, Inc.の完全子会社化に伴う段階取得に係る差益59,496百万円及び楽天ポイントの規約等の変更によるポイント引当金の増加に伴う費用5,578百万円が含まれています。また、当第3四半期連結累計期間に計上された非経常的な項目には、楽天ポイントの規約等の変更によるポイント引当金の増加に伴う費用、子会社の元従業員及び取引先の共謀による不正行為に関連して発生した費用が含まれています(なお、後者は要約四半期連結損益計算書においてその他の費用に含まれています)。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
Non-GAAP営業損失(△)
△148,859
△255,980
△107,121
無形資産償却費
△5,615
△7,160
△1,545
株式報酬費用
△7,727
△9,530
△1,803
非経常的な項目
53,839
△14,423
△68,262
IFRS営業損失(△)
△108,362
△287,093
△178,731
当第3四半期連結累計期間の経営成績(IFRSベース)当第3四半期連結累計期間における売上収益は1,364,708百万円(前年同期比13.7%増)、IFRS営業損失は287,093百万円(前年同期は108,362百万円の損失)、四半期損失(親会社の所有者帰属)は258,090百万円(前年同期は103,905百万円の損失)となりました。なお、前第4四半期連結会計期間において、持分法適用関連会社である株式会社西友ホールディングスにおける企業結合に係る暫定的な会計処理の確定が行われたことに伴い、前第3四半期連結累計期間の数値を遡及修正しています。詳細は、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 14. 持分法による投資利益」をご参照ください。
(IFRSベース)(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
売上収益
1,200,574
1,364,708
164,134
13.7
%
IFRS営業損失(△)
△108,362
△287,093
△178,731
-
%
四半期損失(△)(親会社の所有者帰属)
△103,905
△258,090
△154,185
-
%
(2) セグメント別業績各セグメントにおける業績は次のとおりです。なお、IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。第2四半期連結会計期間より、本社管理部門と事業部門におけるポイント費用の集計方法を変更し、遡及適用しています。この変更に伴い、遡及適用前と比較して前第3四半期連結累計期間のインターネットサービスセグメントにおける売上収益及びセグメント損益がそれぞれ3,156百万円減少しています。また、前第3四半期連結会計期間のインターネットサービスセグメントにおける売上収益及びセグメント損益がそれぞれ806百万円減少しています。なお、連結上の売上収益、Non-GAAP営業損失、営業損失に与える影響はありません。
(インターネットサービス)主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進、共通の送料無料ラインの導入促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』や食品・日用品の宅配サービスを行う楽天西友ネットスーパー等においては、こうした施策の結果、コロナ禍における「巣ごもり消費」の拡大に伴うオンラインショッピング需要の高まりを背景に増加した顧客の定着が進み、取扱高はコロナ禍における業績の押し上げの影響を受けた前第3四半期連結累計期間と比較しても伸長しました。インターネット旅行予約サービス『楽天トラベル』においては、国内旅行に対する需要回復に合わせた販促施策等が奏功し、前第3四半期連結累計期間と比較して取扱高が拡大しました。海外インターネットサービスを含むその他インターネットサービスにおいては、効率的なマーケティング施策や人々の消費行動の回復に伴い、米国のオンライン・キャッシュバック・サービス『Rakuten Rewards』を中心に売上収益の伸びに回復が見られました。なお、前第3四半期連結累計期間に、投資事業におけるフィンテック関連企業への株式投資の評価益を27,658百万円計上しており、セグメント利益は前年同期比で減少しています。また、当社における物流事業に関して有する権利義務については、一部を除いて、日本郵便株式会社との合弁会社であるJP楽天ロジスティクス株式会社への承継が完了しており、同社は、前第3四半期連結会計期間より、当社の持分法適用関連会社となりました。これに伴い、前第3四半期連結会計期間までインターネットサービスセグメントで計上されていた物流事業の損益の一部が、前第3四半期連結会計期間より持分法による投資損益として計上されています。この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は765,425百万円(前年同期比9.5%増)、セグメント利益は58,402百万円(前年同期比27.2%減)となりました。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
699,092
765,425
66,333
9.5
%
セグメント損益
80,245
58,402
△21,843
△27.2
%
(フィンテック)クレジットカード関連サービスにおいては、2022年8月に『楽天カード』の累計発行枚数が2,700万枚を突破した後も顧客基盤の拡大が継続したほか、同年3月に、まん延防止等重点措置が解除されたこと等を背景に、オフライン消費の回復が見られ、ショッピング取扱高が伸長しました。銀行サービスにおいては、新規口座の開設が増加したほか、2022年9月には、預金口座数が1,300万口座を突破し、引き続き顧客基盤の拡大が継続しています。証券サービスにおいては、2022年6月に総合口座数が800万口座を達成して以降も、新規口座開設の増加が続いています。また、国内外株式売買代金の伸長による手数料収入等の増加に伴い、増収増益を達成しました。この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は487,300百万円(前年同期比7.0%増)、セグメント利益は74,388百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
455,589
487,300
31,711
7.0
%
セグメント損益
68,236
74,388
6,152
9.0
%
(モバイル)国内モバイルサービスにおいては、通信料金無料キャンペーンの終了及び2022年7月に開始した新料金プラン『Rakuten UN-LIMIT Ⅶ』により、通信料金の支払を開始したユーザーの増加が売上収益の増加に貢献しました。楽天シンフォニーにおいては、2022年4月に、Robin Systems, Inc.を完全子会社化しました。今後、同社との協業関係を強化し、顧客となる通信事業者に対して、エンドツーエンドで完全自動化されたクラウド、高度な統合クラウドプラットフォームを提供することで、更に高い顧客価値を実現してまいります。この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は254,239百万円(前年同期比56.7%増)となりましたが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、減価償却費等のネットワーク関連費用等が増加し、セグメント損失は380,196百万円(前年同期は302,519百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
前年同期
当期
増減額
増減率
(前第3四半期 連結累計期間)
(当第3四半期 連結累計期間)
セグメントに係る売上収益
162,208
254,239
92,031
56.7
%
セグメント損益
△302,519
△380,196
△77,677
-
%
(3) 財政状態の分析
(資産)当第3四半期連結会計期間末の資産合計は19,745,910百万円となり、前連結会計年度末の資産合計16,831,221百万円と比べ、2,914,689百万円増加しました。これは主に、銀行事業の貸付金が873,921百万円増加、銀行事業の有価証券が460,810百万円増加、証券事業の金融資産が408,591百万円増加、その他の金融資産が395,206百万円増加したことによるものです。
(負債)当第3四半期連結会計期間末の負債合計は18,734,141百万円となり、前連結会計年度末の負債合計15,713,931百万円と比べ、3,020,210百万円増加しました。これは主に、銀行事業の預金が1,108,028百万円増加、銀行事業の借入金が1,068,453百万円増加したことによるものです。
(資本)当第3四半期連結会計期間末の資本合計は1,011,769百万円となり、前連結会計年度末の資本合計1,117,290百万円と比べ、105,521百万円減少しました。これは主に、円安等によりその他の資本の構成要素が156,003百万円増加した一方で、当第3四半期連結累計期間における親会社の所有者に帰属する四半期損失を258,090百万円計上したこと等により利益剰余金が275,335百万円減少したことによるものです。
(4) キャッシュ・フローの状況当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ160,864百万円増加し、4,571,165百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、447,417百万円の資金流出(前年同期は417,784百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,102,950百万円となった一方で、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が873,723百万円、証券事業の金融資産の増加による資金流出が407,840百万円、債券貸借取引支払保証金の増加による資金流出が323,425百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、833,335百万円の資金流出(前年同期は430,058百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が466,288百万円(取得による資金流出が1,206,937百万円、売却及び償還による資金流入が740,649百万円)、有形固定資産の取得による資金流出が227,503百万円、無形資産の取得による資金流出が106,067百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,417,872百万円の資金流入(前年同期は819,302百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の短期借入金の純増減額による資金流出が480,130百万円となった一方で、銀行事業の長期借入れによる資金流入が1,575,600百万円、短期借入金の純増減額による資金流入が188,892百万円となったことによるものです。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの要約四半期連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この要約四半期連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第4 経理の状況 1要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 3. 重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。
(6) 経営方針、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、経営方針、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(7) 研究開発活動当社の研究開発活動は、当社及び当社グループの開発業務への貢献を目的とし、個々の事業とは別に研究を行っています。なお、研究開発活動の状況については、前連結会計年度より重要な変更はありません。当第3四半期連結累計期間における、当社グループが支出した研究開発費の総額は10,958百万円です。
(8) 従業員数当第3四半期連結累計期間において、連結会社又は提出会社の従業員数の著しい増減はありません。
(9) 生産、受注及び販売の実績当第3四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売実績の著しい増減はありません。
(10) 主要な設備当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の著しい変動及び主要な設備の前連結会計年度末における計画の著しい変更はありません。
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