【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、世界的なインフレの進行、サプライチェーンの混乱、金融政策の引き締め、急激な為替変動に加え、ロシアのウクライナ侵攻を始めとする地政学的リスクや中国における厳格な新型コロナウイルス政策等による景気減速の懸念など不透明な状況で推移しました。
当社グループは、「創造」「実行」「苦労・克服」の精神のもと、お客様へ最高の価値を提供し、「未来を創る」企業としてものづくりを通して社会の持続的な発展に貢献すべく取り組んでいます。自動車や通信分野をはじめとした技術革新、省人化ニーズの高まり、カーボンニュートラル・持続可能な開発目標(SDGs)の促進を背景に、ものづくりの現場においても、更なる高精度化、高速化、自動化はもとより、操作性の向上、電力使用量や廃棄物の削減、工程集約、DX化の推進等が求められています。これらの「進化するものづくりへの貢献」を重要な経営課題と捉え、新製品開発の促進、トータルソリューションの展開、アフターサービスの充実、DXを活用した付加価値の提供等、事業の拡大とサステナビリティの取り組みを一体で推進しています。
このような状況のもと、当社は世界四大工作機械見本市である「JIMTOF2022」(日本)及び「IMTS2022」(米国・シカゴ)、プラスチック・ゴムに関する世界最大級の見本市である「K2022」(ドイツ・デュッセルドルフ)、国際的な食品機械の展示会である「FOOMA JAPAN 2022」に出展し、当社の技術力をPRしました。4年ぶりのリアル開催となったJIMTOF2022(日本国際工作機械見本市)へ出展し、EVのモーターコア用プレス金型や半導体パッケージのリードフレーム用金型等の製造向けに開発した超精密ワイヤ放電加工機「AX350L」、熱変位補正機能により品質安定に貢献するマシニングセンタ「UX450L」、複数の材料の使用でも交換等のメンテナンス負荷を抑え、大型サイズの安定造形を可能にした金属3Dプリンタ「LPM450」などの新製品の展示に加え、当社ブースをデジタルツインで再現し、特設Webサイトにて公開しました。今後もデジタルとリアルの両方でお客様とつながり、お客様のものづくりの課題を解決すべくご提案を行ってまいります。
このような状況のもと、当連結会計年度の業績は、売上高804億95百万円(前年同期比7.1%増)、営業利益58億13百万円(前年同期比14.7%減)、経常利益82億75百万円(前年同期比3.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益60億21百万円(前年同期比8.6%減)となりました。
② セグメント別の状況
工作機械事業
売上高
56,492百万円
(前年同期比
9.7%増
)
営業利益
7,046百万円
(前年同期比
129百万円減
)
中華圏における自動車、半導体関連での設備投資意欲の低下やウクライナ・ロシア情勢等を背景とした物価高騰、サプライチェーンの混乱等の影響はあるものの、日本、欧米、アジアにおいては電子部品、半導体、EV関連向けを中心に堅調に推移しました。為替の円安影響もあり、売上高は前年同期比で増加となりました。
ものづくりの高度化は今後も継続するとみられ、高速・高精度加工のニーズは高まるほか、操作性向上、省エネ対応、長時間の安定加工や加工物の大型化・複雑化等も重要な機会と認識し、同事業を展開しています。高精度な加工が求められる地域と顧客を視野に、強みのある放電加工機の一層の拡販と同時に、中長期的に大きな成長が期待できる金属3Dプリンタ、精密マシニングセンタについても、技術開発の推進や販売体制の強化により、高付加価値加工ニーズを取り込んでいきます。
上記のようなニーズに対応するため、当社独自のワイヤ回転機構により高速・高精度に加え消費電力量・ワイヤ消費量の削減を実現し、脱炭素社会に向けた環境に対応するワイヤ放電加工機「AL i Groove + Edition」シリーズを開発しました。「AL600G i Groove + Edition」は日刊工業新聞社主催の「第65回十大新製品賞」において本賞を受賞しました。
産業機械事業
売上高
10,656百万円
(前年同期比
2.8%増
)
営業利益
820百万円
(前年同期比
317百万円増
)
国内においてEV関連向けの需要が堅調である一方で、スマートフォンの需要減少の影響もあり電子部品関係の需要は低調となりました。また、各地域においても電子部品関連の需要減少による設備投資意欲の低下もみられましたが円安影響もあり、売上高は前年同期比で増加となりました。
中華圏、アジア地域において、ものづくりの高精度化が進展し、当社が得意とする超高精度の射出成形機の需要が高まることが予測されます。また、電力使用量や成形に伴う廃棄物の削減ニーズについても重要な機会と認識し、同事業を展開しています。
上記のようなニーズに対応するため、ハイブリッド竪型ロータリ式射出成形機「VREシリーズ」の後継機種として更なる制御能力向上に加え、エネルギーロスの少ない動作による電力消費量の削減を実現した「VR Gシリーズ」を開発しました。
食品機械事業
売上高
6,813百万円
(前年同期比
1.0%減
)
営業利益
447百万円
(前年同期比
383百万円減
)
中華圏での新型コロナウイルス政策による行動制限や世界的なインフレ等の影響を受けたお客様における原価上昇に伴う設備投資意欲の低下もみられましたが、国内向けの製麺機関連設備や海外向けの無菌包装米飯製造装置等の需要は堅調に推移したことに加え、中華圏での無菌包装米飯装置の複数案件が進捗したため、売上高は前年同期比で微減に留まりました。
今後、国内における製麺、米飯製造での衛生面、省人化ニーズへの対応に加え、惣菜、製菓、パン業界など幅広い分野での事業拡大を図るほか、さらに中華圏、アジアを中心とした海外市場にて食の高品質化やインフラの整備等で生麺や米飯の需要が高まると想定しており、生産能力確保のため、2023年1月から厦門新工場が稼働するほか、加賀事業所においても生産能力増強のための拡張、改修を進めています。
上記のようなニーズに対応するため、調味液等添加・撹拌工程の無人化を実現し、手作業工程の削減による調理麺商品の鮮度延長が可能となり、フードロス削減に貢献する調理麺製造ライン用自動麺ほぐし・調味機「ネオマザール」を開発しました。本製品は日刊工業新聞社主催の「第19回/2022年“超”モノづくり部品大賞」において「機械・ロボット部品賞」を受賞しました。
その他
売上高
6,533百万円
(前年同期比
1.5%増
)
営業利益
313百万円
(前年同期比
498百万円減
)
精密コネクタなどの受託生産を行う金型成形事業、リニアモータやセラミックス部材の販売等を行う要素技術事業から構成されています。金型成形事業においては自動車関連向けの需要が低調なため売上高は前年同期比微減となるものの、要素技術事業においては前年同期比で増加となりました。また、サプライチェーンの混乱や材料費高騰の影響の継続に伴う原価高により利益率は低下しました。
③ 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ35億66百万円増加し、1,384億33百万円となりました。主な増加要因としては、長期預金の増加45億62百万円、原材料及び貯蔵品の増加29億63百万円、商品及び製品の増加25億3百万円、建物及び構築物の増加20億26百万円、機械装置及び運搬具の増加17億34百万円などがあげられますが、現金及び預金の減少92億27百万円等により一部相殺されております。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ29億89百万円減少し、574億39百万円となりました。主な減少要因としては、長期借入金の減少34億89百万円などがあげられます。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ65億55百万円増加し、809億93百万円となりました。主な増加要因としては、為替換算調整勘定の増加37億12百万円、利益剰余金の増加30億82百万円などがあげられます。以上の結果、自己資本比率は、58.5%となりました。
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、以下のキャッシュ・フローの増減により、前連結会計年度末に比べ110億70百万円減少し、当連結会計年度末の残高は331億58百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、35億43百万円(前連結会計年度は76億42百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益80億85百万円、契約負債の増加32億30百万円などによるものですが、棚卸資産の増加51億25百万円などで一部相殺されています。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、109億57百万円(前連結会計年度は22億3百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出68億40百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、60億12百万円(前連結会計年度は19億32百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出69億21百万円、配当金の支払額13億99百万円などによるものですが、長期借入れによる収入50億円などで一部相殺されています。
⑤ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(百万円)
(2022年1月1日~2022年12月31日)
前年同期比(%)
工作機械事業
50,795
107.1
産業機械事業
11,121
94.8
食品機械事業
6,392
96.3
報告セグメント計
68,309
103.9
その他
9,601
122.0
合計
77,911
105.8
(注)1.金額は、販売価格によって表示しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、サービス売上等の生産を伴わないものは含めておりません。
b. 受注実績
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
工作機械事業
41,879
89.7
10,653
88.5
産業機械事業
8,580
92.1
2,528
97.2
食品機械事業
9,006
130.2
6,238
183.6
合計
59,467
94.5
19,420
107.6
(注)上記の金額には、サービス・消耗品等の受注は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(百万円)
(2022年1月1日~2022年12月31日)
前年同期比(%)
工作機械事業
56,713
109.3
産業機械事業
10,878
104.2
食品機械事業
6,813
99.0
報告セグメント計
74,404
107.5
その他
8,731
100.1
計
83,136
106.7
調整額
△2,640
-
合計
80,495
107.1
(注)金額にはセグメント間の内部売上高又は振替高を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来の事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく、将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
売上高につきましては、中華圏での工作機械及び射出成形機の販売台数が減少したものの、円安による押し上げ効果で、前期と比較して7.1%増加の804億95百万円となりました。
利益面につきましては、原材料・エネルギー価格の高騰、人件費等の増加などにより営業利益は前期比10億円減の58億13百万円となり、営業利益率は7.2%に低下しました。
b. 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④ キャッシュ・フローの状況」に詳細は記載しておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローで35億43百万円の資金を獲得し、設備投資など投資活動によるキャッシュ・フローで109億57百万円の支出となり、借入金の返済など財務活動によるキャッシュ・フローで60億12百万円の支出となりました。
当社グループの所要資金は、主に運転資金、設備投資などに対応するものであります。これらを自己資金、金融機関からの短期・長期借入金や社債(無利息の転換社債型新株予約権付社債についても対象としております。)により調達しており、運転資金の効率的な調達を行うため、複数の金融機関とコミットメント契約を締結しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高(短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、その他の流動負債に含まれるリース債務、社債、長期借入金、その他の固定負債に含まれるリース債務の合計)は326億66百万円であります。
d. 目標とする経営指標
当社の目標とする経営指標及び当該目標に対する当連結会計年度の達成度合は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。