【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の当社グループを取り巻く環境は、日本・欧米などの先進国経済の持ち直しが続くなか、総じて緩やかな回復が継続しました。一方で、半導体等の部品不足による生産活動への影響や世界的なインフレの進行、急激な為替変動に加え、ロシアのウクライナ侵攻を始めとする地政学的リスクや中国における厳格な新型コロナウイルス政策等による景気減速の懸念など、各種リスク要因を注視する必要があります。
このような状況の中、当社グループは、「創造」「実行」「苦労・克服」の精神のもと、お客様へ最高の価値を提供し、「未来を創る」企業としてものづくりを通して社会の持続的な発展に貢献すべく取り組んでいます。自動車や通信分野をはじめとした技術革新、省人化ニーズの高まり、カーボンニュートラル・持続可能な開発目標(SDGs)の促進を背景に、ものづくりの現場においても、更なる高精度化、高速化、自動化はもとより、操作性の向上、電力使用量や廃棄物の削減、工程集約、DX化の推進等が求められています。これらの「進化するものづくりへの貢献」を重要な経営課題と捉え、新製品開発の促進、トータルソリューションの展開、アフターサービスの充実、DXを活用した付加価値の提供等、事業の拡大とサステナビリティの取り組みを一体で推進しています。
2022年7月には「Sodick 中国華南テックセンター」を設立し、金型加工市場の成長が継続する同地区のお客様に対し、提案力アップとアフターサービスの充実を図っています。
このような状況のもと、当第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高597億58百万円(前年同四半期比10.7%増)、営業利益45億58百万円(前年同四半期比7.9%減)、経常利益77億38百万円(前年同四半期比27.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は51億54百万円(前年同四半期比17.7%増)となりました。
セグメントの状況は以下のとおりであります。
工作機械事業
売上高
42,564百万円
(前年同期比
14.3%増
)
営業利益
5,507百万円
(前年同期比
246百万円増
)
日本及び欧米、アジアにおいては電子部品、半導体、EV関連向けの需要が堅調である一方で、足元では中華圏において、EV関連向けの需要はあるものの、スマートフォンや民生機器等の需要のピークアウトや厳格な新型コロナウイルス政策の影響による設備投資意欲の低下もみられました。為替の円安影響もあり、売上高は前年同期比で増加となりましたが、事業環境は先行きが不透明な状況です。
ものづくりの高度化は今後も継続するとみられ、高速・高精度加工のニーズは高まるほか、操作性向上、省エネ対応、長時間の安定加工や加工物の大型化・複雑化等も重要な機会と認識し、同事業を展開しています。高精度な加工が求められる地域と顧客を視野に、強みのある放電加工機の一層の拡販と同時に、中長期的に大きな成長が期待できる金属3Dプリンタ、精密マシニングセンタについても、技術開発の推進や販売体制の強化により、高付加価値加工ニーズを取り込んでいきます。
上記のようなニーズに対応するため、製品開発の取組みとして、放電加工機においてはワイヤ放電加工機のエントリーモデル「VLシリーズ」を刷新し、医療機器や航空宇宙産業向け部品加工や金型加工での複雑形状の加工に対応する「VN400Q/600Q」や、EVのモーターコア用プレス金型や半導体パッケージのリードフレーム用金型等の製造向けに超精密ワイヤ放電加工機 「AX350L」を開発しました。マシニングセンタにおいては、更なる高速・高精度加工のほか、操作性向上、省エネにも対応したリニアモータ駆動マシニングセンタ「UX450L」、同時5軸制御により高速・高精度加工の両立を実現した「HP300L」を開発しました。金属3Dプリンタにおいては、大型サイズの安定造形を可能にした「LPM450」を開発したほか、昨年リリースした長時間高速安定造形対応の「LPM325S」が日刊工業新聞社主催の「第52回機械工業デザイン賞 IDEA」において最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞しました。
これらの製品については、2022年11月開催の日本国際工作機械見本市 JIMTOF2022へ出展しています。
産業機械事業
売上高
8,115百万円
(前年同期比
17.1%増
)
営業利益
733百万円
(前年同期比
459百万円増
)
日本においてEV関連や電子部品向けの需要が堅調である一方で、足元では米国において金利高の影響により減速傾向がみられました。また、中華圏においてはEV関連や医療関連向けの需要はあるものの、スマートフォン関連向けの需要減や厳格な新型コロナウイルス政策の影響による設備投資意欲の低下もみられました。売上高は前年同期比で増加となりましたが、事業環境は先行きが不透明な状況です。
中華圏、アジア地域において、ものづくりの高精度化が進展し、当社が得意とする超高精度の射出成形機の需要が高まることが予測されます。また、電力使用量や成形に伴う廃棄物の削減ニーズについても重要な機会と認識し、同事業を展開しています。
上記のようなニーズに対応するため、製品開発の取組みとして、電動式射出成形機「MSシリーズ」の後継機種として更なる制御精度、操作性を高めた「MS G2 シリーズ」を開発しました。現在の主力である電動、油圧で制御するハイブリッド式射出成形機よりもハイサイクルかつ電力使用量の削減を実現できることから、今後は電動式射出成形機の販売比率を上げていきます。
食品機械事業
売上高
4,164百万円
(前年同期比
17.8%減
)
営業利益
93百万円
(前年同期比
472百万円減
)
国内向けの製麺機関連設備や海外向けの無菌包装米飯製造装置等の需要は堅調であるものの、中国での新型コロナウイルス政策による行動制限や世界的なインフレ等の影響を受けたお客様における原価上昇に伴う設備投資意欲の低下もみられ、複数の案件において商談が長期化し受注時期が後ろ倒しとなり、売上高は前年同期比で減少となりました。
今後国内における衛生面、省人化のニーズは製麺、米飯製造に留まることなく、惣菜、製菓、パン業界など幅広い分野での拡大を見込めるほか、さらに中華圏、アジアを中心とした海外市場にて食の高品質化やインフラの整備等で生麺や米飯の需要が高まると想定しており、更なる生産能力が必要となるため、厦門工場、加賀事業所において食品機械生産ラインの増強を進めています。
その他
売上高
4,913百万円
(前年同期比
3.8%増
)
営業利益
364百万円
(前年同期比
324百万円減
)
精密コネクタなどの受託生産を行う金型成形事業、リニアモータやセラミックス部材の販売等を行う要素技術事業から構成されています。金型成形事業において売上高は前年同期比横ばいの状況でありますが、サプライチェーンの混乱による影響は継続しております。要素技術事業においても前年同期比で売上高は微増の状況でありますが、材料費高騰の影響による原価高に伴い利益率は低下しました。
(2)財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末の資産は、前連結会計年度末と比較して、104億17百万円増加し、1,452億83百万円となりました。主な増加要因としては、商品及び製品の増加32億80百万円、原材料及び貯蔵品の増加31億51百万円、建物及び構築物の増加22億36百万円、機械装置及び運搬具の増加15億26百万円などがあげられます。
また、負債は前連結会計年度末と比較して、14億97百万円増加し、619億26百万円となりました。主な増加要因としては、契約負債の増加50億77百万円などがあげられますが、前受金を含むその他の流動負債の減少37億20百万円などにより、一部相殺されております。
純資産は前連結会計年度末と比較して、89億19百万円増加し、833億57百万円となりました。主な増加要因としては、為替換算調整勘定の増加64億25百万円、利益剰余金の増加22億25百万円などがあげられます。以上の結果、自己資本比率は、57.3%(前連結会計年度末比2.1ポイント増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用しております。詳細については、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、22億89百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因及び経営戦略の現状と見通し
当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては内外の市場動向が挙げられます。ウクライナ情勢や各国の対ロシア経済制裁、東アジアでの地政学リスク、急激な円安の進行による為替変動リスクのほか、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの混乱が懸念されるものの、グローバルにものづくりが発展していく中で、設備投資需要は継続的に拡大していくものと見ています。その中でも、当社の主要な仕向け先である自動車産業における軽量化への対応、電装化、次世代自動車へのシフトに加え、スマートフォンの高機能化の動きもあり、高精度機のニーズはさらに高まっていくことが予想されます。
足元では新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の制限や景気の減速による先行きの不透明感が極めて強い状況であることに加え、収束後には世界的なサプライチェーンの見直し、IoT・5G等のITを駆使したリモート環境活用の加速、保護主義的な自国への生産回帰等の構造的な変化が進むことも考えられ、当社グループとしては状況の変化に臨機応変に対応しつつ、収束後を見据えた取り組みを着実に行ってまいります。
こうした中、工作機械事業及び産業機械事業におきましては、日本・欧米などの成熟市場と中国市場、東南アジアをはじめとする新興国市場それぞれに応じた事業展開を推進しております。成熟市場においては、競争力のある製品を投入しシェアアップを図るとともに、既存の納入機のユーザーへの継続的な技術指導や保守メンテナンスを通じて、更新需要の取り込みや周辺機器及び消耗品の販売強化を図ってまいります。中国市場及び新興国市場においては、市場のニーズを反映した低価格機種の開発、販売を強化するとともに、拠点整備などを推進し、収益力の確保を図っております。当社グループは、グローバル市場におけるリスクへの対応力を高め、特定の業種や地域の需要環境に依存しない、安定した収益構造を目指してまいります。
また、次世代のものづくりを担う金属3Dプリンタを新たな成長ドライバーに事業の拡大を図っております。金属3Dプリンタにおいて、加工速度・加工精度の向上、製品ラインナップの拡充、対応する金属粉の種類の充実、残留応力の抑制により大型金型部品の安定造形を可能とする「SRT工法」の開発など、研究開発に力を入れ販売を強化しています。さらに、新たに開発した金属3Dプリンタ「LPM325S」は、従来の鉄系・ステンレス系の粉末に加え、アルミニウムやチタン粉末による造形も可能となったほか、独自開発の粉末自動供給、自動回収、自動ふるい用のユニットを標準装備したことにより、粉末交換作業の簡易化を実現し、生産性の向上に貢献するなど、従来のOPMシリーズに加え、金型だけでなく部品加工の分野まで裾野を広げることでさらなる需要の拡大を目指してまいります。さらに、ものづくりのすべての工程が当社グループの技術のみで完結できるワンストップソリューションの強みを活かし、「プラスチック成形革命」をキーワードに、金型製造リードタイムの短縮や生産コストの削減に加えて、金属3Dプリンタで製造した金型専用の射出成形機「MR30」を活用して成形サイクルの短縮を実現してまいります。
産業機械事業においては、海外売上高比率の向上を図るため、マーケットニーズの高い全電動射出成形機「MSシリーズ」のラインナップを拡充し、新興国などのボリュームゾーンでの販売拡大を図ってまいります。
さらに、景気動向に左右されにくい事業ポートフォリオ構築を目指し食品機械事業にも注力してまいります。国内市場では、調理麺の品質向上を目的とした設備の導入、海外市場においては膨大な人口と豊かな食文化をもつ中国の存在、日本食ブームの高まりなど、食品機械事業の成長性は非常に高いと言えます。加えて製麺機の技術を応用して、製菓業界や惣菜業界など製麺業界以外への展開や包装米飯製造装置の国内外での販売先の拡大を進めております。今後は放電加工機と同様、食品機械業界のリーディングカンパニーとなることを目指し、事業の拡大に取り組んでまいります。
当社グループは従来から放電加工機等をネットワークに接続し活用するアプリケーションソフトウエアを提供してまいりましたが、近年のDXなどの動きを踏まえ様々な取り組みを推進しています。当社では、金属3Dプリンタで造形した金型専用の射出成形機「MR30」を用いた金型の自動交換システム「ICF-V」を開発し、射出成形のIoTを具現化したスマートファクトリーを提案しています。成形機への金型の装着から材料乾燥・供給、成形品の製造、金型交換までを完全無人化・自動化できるシステムであり、ネットワークに接続された機械の各情報を活用し、監視、保守、制御、分析することで、工程の見える化を実現できます。今後もさらなる生産性向上、生産自動化など、様々な取り組みを強化してまいります。
(7)経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループのメイン事業である工作機械及び産業機械事業の業績は、製造業の設備投資動向に依るところが大きく、景気変動の影響を強く受けます。これに対し、当社グループでは、景気による影響が比較的少ない食品機械事業などの事業を拡充するほか、要素技術事業で新たな顧客を獲得し、景気変動リスクの低減を図ってまいります。さらに、研究開発の成果等によって新しい事業を興し、リスク分散を図り、安定した事業ポートフォリオの構築を図ってまいります。
近年、地震のような自然災害、火災、大規模なシステム障害などにより事業継続が困難になる事象も発生しております。当社グループでは、そのような危機に直面した場合でも、被害を最小限に抑え、事業継続を確実にするため、事業継続計画を策定し運用しています。生産能力の分散化を図るなど災害に強い生産体制の再検討・再構築を図ってまいります。また、地球温暖化など急激な環境変化を背景に、持続可能な社会に貢献する事業活動の重要性が高まっております。当社グループは、気候変動や脱炭素への対応は重要な経営課題であると認識しており、次世代自動車や車両の軽量化など環境負荷低減の取組みにも積極的に関与し、地球環境に配慮したものづくりを通してサステナブルな社会に寄与する事業展開を強化するため、2022年1月に専任部門であるEFM室を発足し、TCFD提言への対応、カーボンニュートラルへの取組、GHG排出量の新たな目標設定等を推進するとともに、その取組状況について社内外への情報発信に努めてまいります。
(8) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の
分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。