【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。なお、当社グループは第1四半期連結会計期間より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前第3四半期連結累計期間および前連結会計年度の数値もIFRSベースに組み替えて比較分析を行っています。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
売上高
(百万円)
コア営業利益
(百万円)
営業利益
(百万円)
税引前四半期利益(百万円)
親会社の所有者に帰属する四半期利益(百万円)
EBITDA
(百万円)
2022年12月期第3四半期
762,743
36,235
35,660
43,585
29,046
74,564
2021年12月期第3四半期
728,430
29,715
95,588
94,278
47,019
67,493
増減率
4.7%
21.9%
△62.7%
△53.8%
△38.2%
10.5%
外貨増減率
△4.1%
実質増減率
1.8%
(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、当第3四半期連結累計期間・前第3四半期連結累計期間におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下、事業譲渡影響)を除いて計算しています。
当第3四半期連結累計期間(2022年1月1日~2022年9月30日)における世界経済は、全体として新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化が進む一方で、中国における断続的なロックダウンや、ウクライナ紛争の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、円をはじめとする他国通貨に対するドル高の急激な進行等、引き続き不透明な状況が継続しました。国内化粧品市場は、幅広い分野での値上げが化粧品購買への重石となる一方で、行動制限の緩和や外出機会の増加により緩やかに回復しました。海外化粧品市場は、中国では、上海や海南島を中心としたロックダウンによる店舗営業活動の制限やサプライチェーンの混乱等の影響を受け、厳しい市場環境となりました。一方、欧米では、経済活動の再開が本格化するとともに消費の回復が継続し、化粧品市場も全カテゴリーで力強く成長しました。
当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ&インクルージョンの実現といった社会課題解決に向けたイノベーションに積極的に取り組み、2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。2021年にコロナ禍の難局に対応する中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を策定し、当社の強みを活かしたスキンビューティー領域への注力、事業ポートフォリオの再構築や、欧米事業を中心とした収益性改善などを通じて、より収益性とキャッシュ・フローを重視した経営へと抜本的な改革を進めてきました。2年目となる当期は、「再び成長軌道へ」の年と位置付け、グローバルブランドの成長促進やDXの加速・進展等に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間の売上高は前年比4.7%増の7,627億円、現地通貨ベースでは前年比4.1%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比1.8%増となりました。実質ベースの売上高は、ロックダウンの影響が続く中国事業では前年を下回ったものの、トラベルリテール事業、アジアパシフィック事業、欧州事業、米州事業においては、力強い成長を実現しました。注力しているスキンビューティーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」や主力メイクアップブランド「NARS」が大きく伸長し、成長をけん引しました。また、日本事業は9月の「エリクシール」のリニューアル等により成長へ転じました。 コア営業利益は、中国での売上減に伴う差益減やパーソナルケア事業譲渡の影響等はあったものの、構造改革を通じた固定費の低減や機動的なコストマネジメントの推進により、前年に対し65億円増益の362億円となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年にパーソナルケア事業譲渡に伴う譲渡益を計上していた一方、当期はパーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失を計上したことなどから、前年に対し180億円減益の290億円となりました。なお、EBITDAベースでは、9.8%のマージンとなりました。当第3四半期連結累計期間における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=128.1円、1ユーロ=136.0円、1中国元=19.4円です。
各報告セグメントの経営成績は次のとおりです。なお、報告セグメントの区分方法の変更については「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記(5. 事業セグメント)」をご参照ください。
【連結】
(単位:百万円)
区
分
当第3四半期(累計)
構成比
前第3四半期(累計)
構成比
増
減
増減率
外貨増減率
実質増減率
売上高
日本事業
178,557
23.4%
198,145
27.2%
△19,587
△9.9%
△9.9%
1.3%
中国事業
171,899
22.5%
190,892
26.2%
△18,993
△9.9%
△22.1%
△10.7%
アジアパシフィック事業
48,737
6.4%
47,146
6.5%
1,590
3.4%
△6.4%
10.2%
米州事業
97,910
12.8%
89,775
12.3%
8,134
9.1%
△7.3%
7.7%
欧州事業
89,700
11.8%
79,446
10.9%
10,253
12.9%
7.8%
10.0%
トラベルリテール事業
120,137
15.8%
88,670
12.2%
31,466
35.5%
16.5%
15.2%
プロフェッショナル事業
8,381
1.1%
10,999
1.5%
△2,617
△23.8%
△28.8%
―
その他
47,419
6.2%
23,354
3.2%
24,065
103.0%
101.1%
1.1%
合
計
762,743
100.0%
728,430
100.0%
34,312
4.7%
△4.1%
1.8%
区
分
当第3四半期(累計)
売上比
前第3四半期(累計)
売上比
増
減
増減率
セグメント間の内部売上高または振替高を含めた売上高
当第3四半期(累計)
前第3四半期(累計)
コア営業利益または損失
日本事業
△5,949
△3.2%
7,488
3.4%
△13,438
―
183,270
220,922
中国事業
△8,652
△5.0%
△5,240
△2.7%
△3,412
―
172,594
191,662
アジアパシフィック事業
4,083
8.0%
4,122
8.4%
△38
△0.9%
50,968
48,891
米州事業
6,776
6.7%
1,284
1.3%
5,491
427.5%
100,624
96,436
欧州事業
8,598
8.8%
2,739
3.2%
5,859
213.9%
97,762
86,895
トラベルリテール事業
26,812
22.3%
15,491
17.4%
11,320
73.1%
120,275
88,989
プロフェッショナル事業
1,314
15.0%
1,089
9.5%
224
20.6%
8,732
11,456
その他
5,721
2.6%
12,601
6.5%
△6,880
△54.6%
218,800
192,554
小 計
38,703
4.1%
39,577
4.2%
△873
△2.2%
953,029
937,809
調整額
△2,468
―
△9,861
―
7,393
―
△190,286
△209,378
合
計
36,235
4.8%
29,715
4.1%
6,519
21.9%
762,743
728,430
(注) 1 第1四半期連結累計期間より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「その他」に計上していた資生堂美容室㈱
の業績は「日本事業」へ計上しています。また、従来「米州事業」に計上していた「NARS」および「Drunk Elephant」ブランドの
ブランドホルダー機能に係る業績は「その他」へ計上しています。なお、前第3四半期連結累計期間のセグメント情報については、
変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 従来「日本事業」、「中国事業」および「アジアパシフィック事業」に計上していた各地域販売子会社のパーソナルケア事業に係
る売上高は、パーソナルケア事業の譲渡および商流変更に伴い、2021年7月1日以降、一部を除き発生していません。一方で、当社
および当社製造子会社による㈱ファイントゥデイ資生堂およびその関係会社への売上は同日以降「その他」に計上しています。
3 従来「プロフェッショナル事業」に計上していた各地域販売子会社に係る売上高は、プロフェッショナル事業の譲渡に伴い、2022
年7月1日以降、一部を除き発生していません。
4 売上高における実質増減率は、事業譲渡影響を除いて計算しています。
5「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業および飲食業などを含んでいます。
6 コア営業利益または損失における売上比は、セグメント間の内部売上高または振替高を含めた売上高に対する比率です。
7 コア営業利益または損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
①
日本事業日本事業では、創業150周年を記念したプロモーションのほか、スキンビューティーブランドへの戦略的投資を継続的に強化しました。9月には「エリクシール」から最新のコラーゲン技術を搭載した化粧水・乳液をリニューアル発売し、得意先と協働で、ブランド・商品の価値伝達強化に取り組みました。また、店舗やEコマースなどの販売チャネルやブランドごとに提供していた会員サービスを一つに集約した新会員サービス「Beauty Key」を導入し、よりお客さまのニーズに対応したカウンセリングサービスを可能にしたほか、デジタルコミュニケーションの強化にも努めました。以上のことから、売上高は1,786億円となりました。前年比は9.9%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比1.3%増となりました。コア営業損失は、経費効率化を進めたものの、パーソナルケア事業譲渡に伴う減益等により、前年に対し134億円悪化の59億円となりました。
②
中国事業中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めています。主要プラットフォームへの展開拡大、効果・効能にフォーカスしたコミュニケーション強化等を通じ、Eコマース売上は成長を継続しました。また、実店舗ならではのユニークな体験価値の提供、愛用者基盤の拡大の継続的な取り組みにより、上期には前年比マイナスだったオフラインのお客さま購買は、第3四半期には前年並みまで回復しました。一方で、ロックダウン等による引き続き厳しい環境や先行きの不透明感を受け、市場では流通在庫の調整が生じました。以上のことから、売上高は1,719億円となりました。前年比は9.9%減、現地通貨ベースでは前年比22.1%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比10.7%減となりました。コア営業損失は、売上減による差益減等により前年に対し34億円悪化の87億円となりました。
③
アジアパシフィック事業アジアパシフィック事業では、台湾など、一部の国・地域で回復に遅れが見られましたが、韓国や東南アジアを中心に力強い成長を実現しました。また、主要Eコマースプラットフォームへの展開強化、デジタル活用によるお客さま接点の拡大を継続することで、アジア全体のEコマースはシェアを拡大しました。以上のことから、売上高は487億円となりました。前年比は3.4%増、現地通貨ベースでは前年比6.4%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比10.2%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増の一方、人件費、経費等の増加により、前年並みの41億円となりました。
④
米州事業米州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続しました。その中でも、特に「NARS」は、新商品の好調さやデジタルマーケティング強化を通じたEコマースの力強い成長により、シェアを拡大しました。また、北米アンバサダーを新たに起用するなど現地ニーズをとらえたプロモーションを強化した「クレ・ド・ポー ボーテ」も好調に推移しました。以上のことから、売上高は979億円となりました。前年比は9.1%増、現地通貨ベースでは前年比7.3%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比7.7%増となりました。コア営業利益は、構造改革を通じた固定費削減などにより、前年に対し55億円増益の68億円となりました。
⑤
欧州事業欧州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続しました。その中で当社は、需要の回復を捉えたプロモーションにより、「NARS」や「narciso rodriguez」等が力強い成長を実現し、シェアを拡大しました。加えて、「クレ・ド・ポー ボーテ」の店舗数拡大も着実に進め、売上を拡大しました。以上のことから、売上高は897億円となりました。前年比は12.9%増、現地通貨ベースでは前年比7.8%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比10.0%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた固定費削減等により、前年に対し59億円増益の86億円となりました。
⑥
トラベルリテール事業トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、海南島におけるロックダウンの影響を受けた一方、その他の地域では新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴い旅行客の往来が再開し、欧米を中心として急速に回復が進んでいます。また、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「イプサ」を中心としたスキンビューティーブランドの店舗数拡大も着実に進めました。以上のことから、売上高は1,201億円となりました。前年比は35.5%増、現地通貨ベースでは前年比16.5%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比15.2%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し113億円増益の268億円となりました。
⑦
プロフェッショナル事業プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで展開していましたが、2022年7月に一部を除き、同事業を譲渡しました。以上のことから、売上高は84億円となりました。前年比は23.8%減、現地通貨ベースでは前年比28.8%減となりました。コア営業利益は、前年に対し2億円増益の13億円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物は、当連結会計年度期首残高1,565億円に比べ476億円減少し、1,089億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益(436億円)に減価償却費及び償却費(570億円)、事業譲渡益(152億円)などの非資金損益項目があった一方、法人所得税の支払額(626億円)、営業債務の減少(270億円)、営業債権の増加(213億円)、棚卸資産の増加(42億円)などにより、前年同期に比べ972億円支出は増加し、178億円の支出となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入(171億円)、事業譲渡による収入(121億円)があった一方、有形固定資産の取得による支出(259億円)、無形資産の取得による支出(215億円)、定期預金の預入による支出(147億円)などにより、前年同期に比べ881億円支出は増加し、236億円の支出となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増加(461億円)があった一方、リース負債の返済による支出(237億円)、配当金の支払額(214億円)、社債の償還による支出(150億円)などにより、前年同期に比べ1,138億円支出は減少し、196億円の支出となりました。
(3) 経営方針・経営戦略等有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
(5) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、187億円(売上高比2.5%)です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6) 従業員数当第3四半期連結累計期間において、従業員数に著しい増減はありません。
(7) 生産、受注及び販売の実績当第3四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売の実績について著しい変動はありません。
(8) 主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の重要な異動または前連結会計年度末において計画中であったものに著しい変更はありません。
(9) 経営成績に重要な影響を与える要因及び経営戦略の現状と見通し当第3四半期連結累計期間における親会社の所有者に帰属する四半期利益は290億円となっており、通期業績予想の当期利益255億円を上回っていますが、当第4四半期において非経常項目として、構造改革に伴う費用の計上を予定していることなどから、これを含む通期の連結業績予想に変更はありません。
(10) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①
資金調達と流動性マネジメント資金調達と流動性マネジメントの基本方針は、有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から変更ありません。なお、当第3四半期連結会計期間末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は引き続き高いと考えています。また、2022年8月に金融機関と1,000億円のグローバルコミットメント契約を締結し、緊急時の流動性を確保しています。本契約における借入実行残高はありません。
②
格付けムーディーズ・ジャパン株式会社より取得している2022年10月31日現在の発行体格付けはA3(見通し:安定的)となっています。
③
資産及び負債・純資産当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前年の事業譲渡に伴う法人税や配当金の支払いなどにより現金及び現金同等物が減少し、また、パーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失の計上により有形固定資産が減少した一方で、円安による在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ570億円増の1兆3,580億円となりました。負債は、運転資本を使途とする短期借入金が増加した一方で、未払法人所得税の減少に伴い流動負債が減少したことにより235億円減の7,153億円となりました。資本は、在外営業活動体に関連した為替換算の影響などにより806億円増の6,427億円となりました。また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.11倍となりました。